医療情報学
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39 巻, 1 号
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特集 ユビキタス時代の医療ICTへの挑戦―医療保健チームの広がりと新たな機能分化― ―第38回医療情報学連合大会(第19回日本医療情報学会学術大会)―
大会長講演(鼎談)
  • 坂本 すが, 飯野 奈津子, 宇都 由美子
    原稿種別: 大会長講演(鼎談)
    2019 年 39 巻 1 号 p. 5-6
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル フリー

    [セッション抄録]

     わが国の医療・介護は,2025年問題に象徴される高齢化の速度と量の問題への対応に揺れ動いています.「効率的かつ質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステムの構築」が掲げられ,最終的には,「利用者の視点に立って切れ目のない医療及び介護の提供体制を構築し,国民一人ひとりの自立と尊厳を支えるケアを将来に渡って持続的に実現していく」ことが目指されています.これらを本音ベースで言い換えると,何とかして限られた医療・介護資源の中で,効率を高め,質も維持・向上させながら,乗り切りたいということになります.切れ目のない医療・介護の提供体制の構築に関する取り組みは,今に始まったことではなく,「保健・医療・福祉の連携」として,何十年間もその時々の施策に反映されてきました.しかし,各ケースの情報共有程度では済まなくなってきたため,医療も介護もわかるという人材レベルの育成・共有という段階に進もうとしています.

     高齢化の速度と量の問題への対応について,厚生労働省は平成27年6月に,「保健医療2035提言書」を出し,「キュア中心からケア中心へ」を挙げています.ケアの担い手として,看護職はこれまで以上に在宅医療や介護施設での活躍が期待されています.限られた医療・介護資源の中で,より効率的・効果的に山積した問題解決に当たっていくためには,ユビキタス社会を背景としたICTの活用によって,突破口が得られるはずです.そして,それを支える医療保健チームの役割拡大と機能分化に新たな工夫ができれば,どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会が実現できるはずです.

     大会長講演という貴重な機会を賜りましたので,元日本看護協会長の坂本すが先生,NHK解説委員の飯野奈津子先生のお力をお借りして,本大会のテーマに果敢に取り組んでみたいと思います.大会長の私が凡人なので,あえて「三人寄れば文殊の知恵」と書かせていただきますが,文殊の知恵を持っておられるお二人と凡人の浅はかな智恵しか持たない私が,90分間に渡って繰り広げる鼎談を是非お楽しみください.

学会企画シンポジウム
  • 大江 和彦, 松村 泰志, 岡田 美保子, 豊田 建, 岡田 美保子, 松元 恒一郎, 佐井 君江, 川瀬 弘一
    原稿種別: 学会企画シンポジウム
    2019 年 39 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル フリー

    [セッション抄録]

    医療情報の国際標準化の状況と動向

     大江和彦(日本医療情報学会,東京大学)

     国内では厚生労働省標準やHELICS標準化指針などがあり,様々なところで報告がなされている.一方で医療情報の国際標準の動向を学会員が知る機会はあまり多くない.そこで本企画では,国際標準のうち,ISOのTC215の活動から抜粋して標準化活動の状況を紹介するとともに,WHOの手術処置コードとして標準化されつつあるICHIや,ICHで議論されISO規格となった医薬品辞書に関するデータ項目と基準に基づく医薬品コード標準化の動向をそれぞれの専門家が紹介し,医療情報の国際標準の現状,最新情報を共有できる機会としたい.

大会企画4
  • 宇都 由美子, 石垣 恭子, 宇都 由美子, 前田 直美, 伊藤 明美, 高見 美樹, 村岡 修子, 宇都 由美子
    原稿種別: 大会企画4
    2019 年 39 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル フリー

    [セッション抄録]

    生産性と患者満足・仕事満足を高める患者記録のあり方

    ―特にチーム医療における看護記録(看護者による情報提供)のあり方―

     宇都由美子(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 システム情報学/鹿児島大学病院 医療情報部)

     諸外国に例を見ない速度で高齢化が進んでいるわが国では,団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は,国民の医療・介護の需要がさらに増加することが見込まれ,地域包括ケアシステムの構築が急がれている.その一方で生産労働人口の減少に伴い,労働生産性を上げ,仕事満足度を高めるために働き方改革が急ピッチで進もうとしている.これらの社会的な変化を背景として,医療界においてはチーム医療というキーワードが重要になってきた.

     本シンポジウムでは,①チーム医療のために共有される記録としての看護記録(看護者による情報提供)のあり方,②保健医療福祉サービスが専門職・非専門職の協働の下で提供されることを鑑み,専門職・非専門職が内容を理解できるような看護記録を目指した今後の取組み,③看護の専門性を高め,今後の二次利用に耐えうる看護記録を支援する標準的なマスタ開発やICT支援を柱として,意義あるディスカッションを進めていきたい.

大会企画10 産官学連携シンポジウム
  • 石川 広己, 石川 広己, 渡邉 大記, 江崎 禎英, 大山 永昭, 屋敷 次郎, 山本 隆一
    原稿種別: 大会企画10 産官学連携シンポジウム
    2019 年 39 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2019/07/05
    公開日: 2020/07/08
    ジャーナル フリー

    [セッション抄録]

    改めて医療等分野に係る個人情報保護のあり方を考える―公益と個益の視点から―

     石川広己(日本医師会)

     大量の個人情報を集めることができる時代,その情報を分析することで経済活動に活用したり,新たな知見を得たりする取り組みが世界中で行われている.一方で,国民の権利,利益を守るための保護のあり方も同様に議論がなされている.

     とりわけ,健康・医療・介護に係る情報に関しては,一層の保護措置が必要との認識は世界共通である.例えば,2017年5月に全面施行された改正個人情報保護法では,病歴を要配慮個人情報として,本人同意を得ない取得を禁止している.2018年5月に適用が開始されたEU一般データ保護規則(GDPR)でも,第9条のProcessing of special categories of personal dataで健康に関するデータの取扱いを制限している.

     このように,健康・医療・介護等の情報の保護の重要性は誰もが強く認識してはいるものの,国民の目線からは十分に保護されるのか不安が生じる.最近の医療情報分野におけるKey wordを挙げてみると,「保健医療記録共有サービス」,「情報銀行」,「次世代医療基盤法」,「被保険者記号番号の個人単位化」などがある.これらは,医療等分野に係る情報を関係者で共有することで適切な医療を提供することを目指す,情報を活用して,その便益を個人に還元する,医療分野の研究開発に生かす,個人の健康・医療に係る情報を生涯に亘り追いかけることで健康寿命の延伸に資することができるなど,多くの可能性を持っている.これらの可能性を探ることは,少子高齢時代を迎えるわが国にとって極めて重要な問題である.ただし,これを実現するには明快で十分な説明の上で,国民一人ひとりの理解と協力がないと実現は難しい.

     そこで,医療等分野に係る個人情報の保護を通して,改めて公益と個益,またそれを実現するための様々なインフラのあり方について識者を交えてディスカッションを行いたい.

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