【セッション抄録】
第3次AIブームを起こした深層学習の開発からしばらくの間,識別系AIがAI分野の中心として普及していたが,近年生成AI(Generative Artificial Intelligence)を主役とする第4次AIブームが到来したと取り沙汰されている.
生成AIとは,大量のデータから学習し,その結果をもとに新しいコンテンツを生成する技術であり,あたかも人間が作成したかのような文章や,実物のような画像や音声,動画などを生成することができる.医療に限らず様々な分野で画期的な応用が期待されている一方で,生成されたコンテンツに対する信頼性や偏り,倫理面への配慮や悪用への懸念など,注意すべき点についても議論されている.
本セッションでは,生成AIや大規模言語モデルの開発や利活用に関して,4名の先生方よりそれぞれ別々の観点からご講演をいただいた後,医療情報学分野への応用の可能性に関するディスカッションを行う.各講演では,1)生成AIおよび大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)に関する研究動向について,2)生成AIの教育/人材育成への活用,3)電子カルテベンダから見る生成AIの活用の可能性,4)生成AIに関するセキュリティ面からの考察,をテーマに取り扱う.ディスカッションでは,1)医療情報学分野において研究・開発・人材育成における活用への期待,2)生成AIを活用するにあたり,医療情報学で特に留意すべきこと,をテーマに取り扱う.
生成AIの活用に大きな期待が集まっているが,医療情報学をさらに発展させる道具になり得るのか,それとも大きなリスクとなるのか.本セッションが聴衆にとって活用のヒントを与えうるものとなるよう有意義な議論を展開したい.
【セッション抄録】
近年,日本国内外において医療機関へのサイバー攻撃による被害が多く報告されており,国内においても複数の医療機関が被害を受けている.医療分野は政府が定める重要インフラ分野の一つであり,地域医療を支える医療機関が長期にわたり診療が停止することがないように万全の対策が望まれる.本年4月に医療法施行規則が改正され,医療機関の管理者が遵守すべき具体的事項として,サイバーセキュリティの確保について必要な措置を講じることが定められたほか,厚生労働省から同年5月に公表された「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」では,医療機関の経営管理層の関与をはじめ,情報セキュリティに関する組織的な対応を強く促す内容に改訂されたところである.
これから医療DXを推進していくためには,国民や患者が安心できるように,サイバーセキュリティが確保された環境を構築し,その環境を継続して維持していかなければならない.しかし,医療分野では情報セキュリティに対応できる人材の不足が指摘されており,知識,技術,経験を有する人材の育成が急務となっている.医療分野においては,診療業務をよく理解し,医療をとりまく技術動向等を踏まえたなかで対策を講じていくことが肝要であり,現在,厚生労働行政推進調査事業費により「安全な地域医療の継続性確保に資する医療機関における情報セキュリティ人材の育成と配置に関する研究(23IA2007)」(研究代表者:大阪大学 武田理宏 教授)のなかで人材育成と配置について研究が進められている.
本セッションでは,厚生労働省医政局 岡本 潤 室長補佐,日本病院会 大道道大 副会長,情報処理推進機構 奥村明俊 理事のほか,学会内の有識者に登壇いただき,医療機関等において,情報セキュリティを継続的に担える人材の必要性やその人材に求められるスキルセット,スキルレベルについて議論する.
【セッション抄録】
日本医療情報学会は,日本の医療情報に関連する研究者・実務者の多数が参加していることからも,最新の医療情報技術のインテグレータやコーディネータとしての役割の他,社会環境や医療政策に柔軟に対応し,学術面からのシンクタンクとしての役割を有している.働き方改革など医療環境と生成AIなどの情報技術は,予想を超えるスピードで変化・進展しており,日本医療情報学会としても関係する諸機関等と連携・協力しながら活動が不可欠となっている.
昨年の第42回医療情報学連合大会において,そのシンクタンク機能をより強化するためにも,日本医療情報学会医療情報総合戦略部会から政策提言および学術構想について活動報告を行った.初めての取り組みであったが,会場参加者数で約90名,Web参加者が約110名と200名ほどの参加があり,会場では多くの学会員との熱心な議論が行われた.日本医療情報学会としても,学会員の声を直接聞くことができる貴重な機会として,その報告の重要性を感じ得た.
昨年学会内に政策提言WG,学術構想WG,活動方針WGを設置したが,この1年間で,政策提言WGにおいても現状の医療情報のセキュリティに関して一定の方向性を示し,学術構想WGにおいても本学会からの提案に関して吉報を待てる状況になるなど,着実にその成果が上がっている.今年度も,医療情報学連合大会の場を借りて,政策提言WGおよび学術構想WGに加え,活動方針WGおよび倫理委員会からのAIに関する倫理の方向性などの報告を行いたい.更なる日本医療情報学会の活動を促進するためにも,これらの報告に関して広く会員からの忌憚のない意見を求め,議論を進めたい.