医学検査
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63 巻, 4 号
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原著
  • 宮澤 孝仁, 間瀬 浩安, 宮地 勇人
    原稿種別: 原著
    2014 年 63 巻 4 号 p. 399-406
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    ヒト血清から5種類の有機リン系化合物と2種類のカーバメート化合物の同時抽出法および大気圧化学イオン化とエレクトロスプレーイオン化質量分析装置を用いた液体クロマトグラフィー質量分析法の評価を行った.極性の異なる化合物は,活性炭を充填したInertSep Active Carbon Jr.とOasis-HLBカートリッジを連結した固相抽出法によって同時に抽出することが可能であった.クロマトグラフ分離は,カラムにXterra MS C18(3.5 μm 2.1 × 150 mm),移動相に0.1%酢酸水溶液と0.05%酢酸メタノール溶液を用い,流速を0.2 mL/minとして行った.直線性は相関係数0.996以上と良好な結果が得られ,低値定量限界は0.01~0.5 μg/mLであった.日差再現性はC.V. 2.5~18.4%,回収率は82.0~108.3%であった.本法は実際の中毒症例にも応用可能であった.
症例報告
  • 高森 稔弘, 宮本 直樹, 村田 あや, 橋本 裕希, 細田 優太, 佐藤 研吾, 福田 千佐子, 前垣 義弘
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 4 号 p. 407-412
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症(MG)はアセチルコリン受容体(AChR)もしくは,muscle-specific receptor tyrosine kinase(MuSK)に対する自己抗体による神経筋接合部の伝達障害が原因で発症する自己免疫性疾患である.MGの診断には主に反復神経刺激試験(RNS),抗AChR抗体測定,テンシロンテストが行われる.われわれは全身型重症筋無力症と診断された14歳8ヵ月,女児のRNSの臨床経過を報告する.患児は寛解と再発を繰り返し,寛解時にはRNSにて漸減現象が消失し,再発時には認められるようになった.RNSの結果は患児の臨床経過に伴い変化した.RNSは血清抗AChR抗体濃度より鋭敏に再発を捉えられた.
  • 大金 亜弥, 常名 政弘, 増田 亜希子, 大久保 滋夫, 平野 賢二, 小池 和彦, 矢冨 裕
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 4 号 p. 413-417
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    無顆粒球症は,末梢血液中の好中球数が500/μL以下の状態と定義される.原因としては薬剤性が多い.我々は,検査室からの連絡が迅速な対応につながった薬剤性無顆粒球症を経験したので報告する.症例は67歳,女性.細菌感染を伴う原発性硬化性胆管炎に対して様々な抗生剤を投与されていたが,2週間後に白血球数が1,700/μL(好中球0%)まで減少した.無顆粒球症の可能性が考えられたため,直ちに担当医に連絡し,早期に治療が開始された.薬剤性無顆粒球症では,免疫学的機序と中毒性機序の2つの発生機序が考えられている.本症例の骨髄像では顆粒球系細胞の成熟障害を認めたため,中毒性機序が考えられた.無顆粒球症ではしばしば重症感染症を合併するため,早期発見が重要である.副作用として無顆粒球症の頻度が低い薬剤の場合,白血球数のモニタリングが十分に行われていない可能性があるため,臨床への迅速な結果報告が必要と考えられた.
  • 松木 浩子, 森合 博一, 小林 英樹, 山田 裕輔, 鈴木 妙子, 竹村 真一, 鈴木 勝男, 野沢 佳弘
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,男性,左側腹部から背部にかけての疼痛を主訴に当院受診.胸腹部CTにて腹腔内に多数の結節とリンパ節腫大,右胸水,腹水を認め,PET-CTで腹膜,胸膜に高度のFDGの集積を認めた.血清CEA,CA125,可溶性IL-2レセプター抗体が上昇していた.癌性腹膜炎,悪性リンパ腫,悪性中皮腫,結核性腹膜炎などとの鑑別を要したが,確定診断が得られず腹腔鏡下腹膜生検を施行した.大網,腹膜及び肝表面に白色の小結節が多数認められ,大網は腹壁に癒着していた.術中迅速病理診断にて,乾酪壊死とLanghans巨細胞を伴う類上皮性肉芽腫を認めたことから,結核性腹膜炎と診断した.結核性腹膜炎は稀な疾患で,臨床像および検査結果から癌性腹膜炎との鑑別が困難であるが,腹腔鏡下腹膜生検の術中迅速病理診断が有用であった.
  • 弓狩 加恵, 津郷 幸子, 井川 真希, 石橋 直美, 𠮷澤 梨津好, 島田 典明, 橋本 徹
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 4 号 p. 423-427
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    横紋筋融解症による急性腎不全は,筋肉から流出したミオグロビンが尿細管上皮細胞を傷害することや尿細管腔をミオグロビン円柱が閉塞することなどで惹き起こされる.ミオグロビン円柱は形態的に顆粒円柱やろう様円柱に類似しており,尿沈渣検査で通常行うSternheimer染色で両者を鑑別することは難しい.ミオグロビン尿性急性腎不全の利尿期に尿中に流れ出した顆粒円柱やろう様円柱の中には,ミオグロビン円柱が含まれる可能性がある.今回我々は,横紋筋融解症による急性腎不全の利尿期にろう様円柱の増加がみられ,それらにミオグロビン円柱を認めた症例を経験したので報告する.
  • 重松 由美恵, 大﨑 博之, 則松 良明, 和仁 洋治, 柳井 広之
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 4 号 p. 428-433
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    尿中に腫瘍細胞が出現した後天性嚢胞性腎疾患acquired cystic disease of the kidney(ACDK)関連腎細胞癌の1例を経験したので,その形態学的・免疫細胞化学的所見について報告する.症例は30歳代,男性.IgA腎症による腎機能不全のため血液透析を受けていた.血液透析開始11年後にMRIで腎細胞癌を疑われ,尿細胞診が施行された.尿細胞診では大型核小体と泡沫状細胞質を有する類円形の異型細胞が出現していた.その後,両側の腎臓摘出術が実施され,摘出材料による病理組織学的検討により,両側性のACDK関連腎細胞癌と診断された.長期透析を受けている患者の尿中に,大型核小体と泡沫状細胞質を有する類円形の異型細胞が出現した場合にはACDK関連腎細胞癌の可能性を考慮する必要がある.
  • 加藤 真由佳, 田中 雅彦, 松井 みどり, 橋本 由徳, 神谷 葉子, 神谷 剛, 渡邉 賢司
    原稿種別: 症例報告
    2014 年 63 巻 4 号 p. 434-439
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    異常ヘモグロビンとはグロビン鎖のアミノ酸配列異常を呈するヘモグロビンの総称である.鎌状赤血球貧血患者の研究に端を発し,Hb M-Iwateの発見により日本人においても異常ヘモグロビン症が証明された.異常ヘモグロビン症は等電点電気泳動法の応用や技術改良による検出頻度の拡大を経て,現在ではヘモグロビンA1cの測定に用いられる高速液体クロマトグラフィの異常クロマトグラムより発見される例が増えている.今回われわれは,非血縁2家系,4例の異常ヘモグロビン症を経験した.同疾患は遺伝性疾患であり人口移動の少ない地域では出現に注意する必要がある.異常クロマトグラムであってもヘモグロビンA1cが測定される場合があり,クロマトグラムのパターンに注意を要する.遺伝子解析には十分に配慮する必要があるが,不要な検査,治療を避けるためにも患者が自身の病態について理解しておくことは重要と考える.普段から臨床医とコミュニケーションを図り,適切な情報を臨床側に提供していく必要があると考えられる.
技術論文
  • 石嶺 南生, 川崎 健治, 重藤 聖子, 島﨑 朋之, 菅野 光俊, 本田 孝行
    原稿種別: 技術論文
    2014 年 63 巻 4 号 p. 440-446
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    C-反応性蛋白C-reactive protein(CRP)は細菌感染症,組織障害,炎症性疾患の鋭敏なマーカーとして日常検査で用いられている.近年では冠動脈疾患などの動脈硬化を基盤に持つ疾患は炎症性疾患であるという概念が定着しており,これらの疾患の危険予測因子としてCRPの有用性が数多く報告されている.今回3社より発売されているCRP濃度測定試薬の基礎性能評価を行った結果,各試薬とも従来の炎症マーカーとして用いるに十分な高濃度域(約35 mg/dL)までの直線性を有し,かつ良好な正確性,精密性,再現性を保持していることが確認された.各試薬とも高感度CRP測定試薬に近い性能を有する汎用試薬として今後日常検査に大きく貢献する試薬であると考えられる.
  • 立石 亘, 飯沼 克弘, 平塚 高司, 高野 洋, 坪井 五三美
    原稿種別: 技術論文
    2014 年 63 巻 4 号 p. 447-452
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    ラテックス凝集比濁法を測定原理としたリウマトイド因子Rheumatoid Factor(RF)測定試薬「オートRF・BML」を開発し,RF定量に関する基礎検討を行った.同時再現性は2.0%以内,日差再現性はCV 3.0%以内,検出限界は2.5 IU/mL,共存物質の影響はなく,希釈直線性も良好な結果であった.本試薬は,同様の測定原理である比較対照製品(イアトロRF II)に対して良好な相関関係を示した(y = 1.055x + 1.4,r = 0.995,n = 315).TIA法を測定原理とした比較対照製品(オートTIA RF「ニッスイ」)に対しても良好な相関関係を示した(y = 1.066x + 4.0,r = 0.983,n = 342).「オートRF・BML」は,日常の臨床検査に十分適応可能な試薬性能を有していた.
  • 田中 京子, 西川 武, 小関 久恵, 森田 剛平, 武田 麻衣子, 中井 登紀子, 笠井 孝彦, 大林 千穂
    原稿種別: 技術論文
    2014 年 63 巻 4 号 p. 453-459
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    乳癌におけるHER2検査でのDISH法の有用性を検討したので報告する.HER2 immunohistochemistry(IHC)法にてスコア2+であった浸潤性乳癌27例を用い,FISH法およびDISH法でのHER2遺伝子増幅の有無を検討した.HER2 DISH法の判定は,4名で行いその判定者間での結果も比較した.DISH法の測定者間での比較では,測定値では10例(37%)で,測定者間でばらつきがみられたが,判定結果の相違はいずれの症例も確認されなかった.FISH法およびDISH法での判定結果の比較では,21例(78%)では一致していたが,6例(22%)で乖離が見られた.FISH法とDISH法の測定値は有意な相関がみられた.
  • 犬飼 ともみ, 藏前 仁, 松井 奈津子, 加藤 礼子, 奥川 勝, 中村 清忠
    原稿種別: 技術論文
    2014 年 63 巻 4 号 p. 460-463
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)のM100-S18に微量液体希釈法によるStaphylococcus属のCLDM誘導耐性検出法が追記され,全自動同定感受性検査システム「BDフェニックス​TM」においても新たにiMLSB wellが追加されたグラム陽性菌用パネル「BDフェニックス​TMグラムポジティブPMIC/ID74」が開発された.これにより同定・感受性検査と同時に,追加試験無しでiMLSBテストによるCLDM誘導耐性の検出が可能となった.そこでStaphylococcus属120株を対象としその基本性能について検討を行った.iMLSBテストと対象として用いたD-テストとの一致率は99.2%と良好な結果が得られた.本パネルを用いることでCLDM誘導耐性を従来法より迅速に報告することが可能となり,有用な検査であると考える.
  • 中川 正巳, 杉浦 直子, 安田 誠
    原稿種別: 技術論文
    2014 年 63 巻 4 号 p. 464-470
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    ラテックス免疫比濁法によるCK-MB蛋白測定試薬の基礎的検討を行った.同時再現性,日差再現性,直線性,共存物質の影響などの基本性能において良好な結果が得られた.化学発光免疫測定法およびCK-MB活性を測定する酵素法(免疫阻害法)との相関はほぼ良好であった.本試薬はミトコンドリアCK,およびマクロCKの影響がなく,CK-BBの影響も少ない.しかしながら,異好性抗体の影響に注意が必要である.本試薬は,汎用自動分析装置で短時間に測定可能である.日常的な臨床検査に用いることのできる有用性のある試薬と考えられる.
  • 杉野 永, 井川 加奈子, 山地 瑞穂, 中上 美絵, 河野 早苗, 石川 千広, 大平 知弘, 高橋 宗孝
    原稿種別: 技術論文
    2014 年 63 巻 4 号 p. 471-478
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    テイコプラニンteicoplanin(TEIC)はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌Methicilin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)を含むグラム陽性菌に対して抗菌活性を有しており,「抗菌薬TDMガイドライン」にて治療薬物モニタリングtherapeutic drug monitoring(TDM)の実施が勧められている.今回我々はテイコプラニン測定試薬「ナノピアTDMテイコプラニン」の基礎的検討及びC反応性蛋白C-reactive protein(CRP),総コレステロール,リウマトイド因子の影響について検討した.同時再現性では変動係数C.V. 1.60%~6.59%,日差再現性ではC.V. 0.46%~11.95%となり,いずれもテイコプラニン濃度10 μg/mL付近の低濃度域で若干高めであった.希釈直線性は良好であり,100 μg/mLまでプロゾーン現象はなく,共存物質の影響はみられなかった.添加回収試験の結果,CRP,コレステロール,リウマトイド因子に関して,テイコプラニン測定値への影響は確認されなかった.また生理食塩水を用いた希釈では測定値が低値化することが示唆され,検体希釈の際は専用希釈液またはテイコプラニン濃度0 μg/mLのプール血清を用いるのがよいと考えられた.蛍光偏光免疫測定法Fluorescence Polarization Immunoassay(FPIA)との相関性は相関係数r = 0.986,回帰式y = 0.94x + 1.87と良好であった.
資料
  • 北仲 博光, 和知野 純一, 荒川 宜親
    原稿種別: 資料
    2014 年 63 巻 4 号 p. 479-485
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    近年,カルバペネム耐性の腸内細菌科菌種(CRE)の存在が,日常の臨床現場において問題となっており,カルバペネム耐性の表現型に基づいたCREの分子機構の解明は極めて困難となりつつある.本研究では,カルバペネム非感性又はセフェム耐性を示すEscherichia coli 3株(NUBL-5310,NUBL-5317及びNUBL-9600),Klebsiella pneumoniae 2株(NUBL-5307及びNUBL-5309),Enterobacter aerogenes 1株(NUBL-5311)及びEnterobacter cloacae 1株(NUBL-7700)について,薬剤感受性の測定や阻害剤試験及びPCRを用いてβ-lactamaseの種類の特定を試みた.一部の株については,接合伝達実験,形質転換実験,クローニング,塩基配列の決定を行った.解析したE. cloacae NUBL-7700においては,PCRによりblaIMPblaCTX-M-1の保有が確認された.カルバペネムに低感受性もしくは耐性を示す残りの6菌株からは新規のカルバペネマーゼ遺伝子は検出されなかったが,blaCMYblaDHAblaCTX-M-のβ-lactamase遺伝子が検出された.E. aerogenes NUBL-5311については,アミノフェニルボロン酸によりセフェム系抗菌薬の感受性が回復することやPCRによりプラスミド性のβ-lactamase遺伝子が検出されない事から染色体性のAmpC型β-lactamaseの産生量が増加していることが推測された.解析した残りの6株については,CMY-,DHA-あるいはCTX-M-型β-lactamaseの産生量の増加に特定の外膜蛋白質の減少または欠失が加わる事によりカルバペネムへの耐性度が上昇しているという可能性が考えられた.
  • 石平 悠, 星 周一郎, 永井 久美子, 田村 優子, 高野 美菜, 酒井 俊希
    原稿種別: 資料
    2014 年 63 巻 4 号 p. 486-491
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    Aspergillus属は深在性真菌症の原因菌として重要である.今回我々は,2000年から2011年までに当院で分離されたAspergillus属344株(320症例)について,分離菌種と分離数の経年変化,患者背景,塗抹,血清学的検査との関連を検討した.分離菌種はA. nigerが126株(36.6%)と最も多く,次いでA. fumigatusが113株(32.8%),A. terreusが53株(15.4%),A. flavusが22株(6.4%),その他のAspergillus属(分類不能を含む)が30株(8.7%)であった.検体種別にみると,呼吸器検体ではA. fumigatusが46.0%,耳鼻科検体ではA. nigerが48.3%を占めていた.特に呼吸器検体からのA. fumigatusA. nigerの分離が近年増加傾向にあった.呼吸器検体からAspergillus属が分離された患者の多くは呼吸器系の基礎疾患を有していた.臨床検体からAspergillus属が分離された場合には患者背景の他,臨床症状や画像所見,血清学的検査を踏まえて原因菌か否かの鑑別を行う必要がある.また,菌種による薬剤感受性の違いや耐性菌の出現なども報告されており,今後もAspergillus属の検出動向を注視していくことが重要である.
  • 松岡 拓也, 外園 宗徳, 亀山 広喜, 増永 純夫, 西山 明美, 近藤 妙子
    原稿種別: 資料
    2014 年 63 巻 4 号 p. 492-496
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    バーチャルスライドとは標本スライドの一部あるいは全体を画像化したものであり,自由な視野移動や観察倍率の変更など,顕微鏡に近い観察環境をコンピュータ上に再現することが可能である.今回熊本県一般検査研究班は,尿沈渣研修会においてバーチャルスライドを用いた症例検討を実施した.オリンパス社製VS120を使用し,尿沈渣標本をバーチャルスライドにした.研修会で受講者はガラス標本を鏡検し,出題者はバーチャルスライドで解説した.受講者は経験年数の浅い技師が多く,尿沈渣を鏡検法のみで行っている施設がほとんどであるため,スクリーニングの訓練としても有用であると思われた.また,今回初めて本研修会でバーチャルスライドを使用したが,受講者には好評であった.バーチャルスライドは研修会以外にも,精度管理サーベイや稀少症例標本の永久保存など,一般検査分野でもさまざまな応用が期待できる.
  • 上杉 里枝, 河口 勝憲, 黒川 幸徳, 小橋 吉博, 通山 薫
    原稿種別: 資料
    2014 年 63 巻 4 号 p. 497-503
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    結核診断法の一つとしてのインターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)であるクォンティフェロン(QFT)検査について,当院での約5年間における検査の実施状況と結果の解析を行った.結核既感染でも陽性となるQFTは,高齢者での陽性率が高かった.「判定不可」の判定は免疫抑制状態の患者が多い血液内科,腎透析患者の多い腎臓内科で高率であった.QFT検査と同時期に実施された抗酸菌検査(塗抹,培養,PCR)との比較を行った.QFT検査陰性において結核菌は検出されなかった.QFT検査陽性の157例については,結核菌検出は18例であり,125例は抗酸菌検査陰性であった.QFT検査陽性例について,抗酸菌検査の結果別にQFT測定値を比較検討した.測定値の平均値は抗酸菌検査陰性群,非結核性抗酸菌群,結核菌群の順に高値となる結果であったが3群間に有意差は認められなかった.QFT検査陰性症例からは抗酸菌検査で結核菌は検出されなかったことから,QFT検査は結核診断の第一選択スクリーニング検査として有用であると思われた.しかし,QFT検査陽性の場合には,その測定値での判断も困難であり,症状,既往歴,他の検査など総合的な判断による診断が重要であると思われる.
  • 板橋 匠美
    原稿種別: 資料
    2014 年 63 巻 4 号 p. 504-508
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    公益社団法人東京都臨床検査技師会(都臨技)は,2008年より都内の高校生を対象にSTI(Sexually transmitted infection:性感染症)予防教室を実践している.今回,STI予防教室終了後に実施したアンケート調査をもとに今後も効果的な予防教室を行うことを目的とし,性感染症に対する生徒の意識について検討を行った.研究の目的や内容に同意を得られた高校1年生から高校3年生を対象に,1,548名から回答を得た.STI予防教室に対する理解度や初めて知った事柄に関する分析から,現在の若年層は性感染症に対する知識が不十分であると推察され,早期の予防教育が重要であると考えられた.感染予防におけるコンドームの重要性については,学年,性別を問わず高い理解度を示す結果となった.自由感想からは,女子生徒では学年を問わず妊娠や出産への影響を心配する意見が多く,男子生徒では予防方法の実践に関する感想が多かった.検討より得られた生徒の意識やニーズの変化を捉えて今後の講演に役立てていきたい.
  • 塚原 美香, 河村 一郎, 盛 啓太
    原稿種別: 資料
    2014 年 63 巻 4 号 p. 509-512
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    菌血症は一般的に好気性菌または通性嫌気性菌により引き起こされ,嫌気性菌菌血症はまれとされている.嫌気性菌は消化管粘膜の常在菌叢であることを反映し,嫌気性菌菌血症は複数菌菌血症として表現されることがある.しかし,嫌気性菌の複数菌菌血症における位置づけは明らかになっていない.そこで,複数菌菌血症における嫌気性菌が検出される割合及び検出される菌の組み合わせについて後向きに検討した.2年間で認めた菌血症は738症例あり,複数菌菌血症は83症例(83/738,11.2%)認めた.複数菌菌血症83症例のうち,嫌気性菌を含む菌血症は21症例(21/83,25.3%)であった.検出した嫌気性菌の菌種は,Bacteroides fragilis groupが11株(11/36,30.6%)と最も多く検出された.次いで,Clostridium spp. 7株(7/36,19.4%),Fusobacterium spp. 2株(2/36,5.6%),嫌気性グラム陽性球菌5株(5/36,13.9%)であった.嫌気性菌が関与する菌血症の組み合わせとしては,嫌気性菌のみの組み合わせが最も多く9症例(9/21,42.9%)であった.その他にグラム陰性桿菌の組み合わせは4症例(4/21,19.0%),グラム陽性球菌との組み合わせは5症例(5/21,23.8%)認めた.今回の検討では,過去の報告と同様に複数菌菌血症において嫌気性菌を検出する割合が高かった.嫌気性菌菌血症に対して適切な抗菌薬の投与が行われない場合の予後は不良とされており,血液培養陽性時のグラム染色で複数菌を認める所見や嫌気ボトルのみ陽性など嫌気性菌を疑う所見が得られた場合は嫌気性菌の関与を視野に入れて診断検査及び抗菌薬の選択を行う必要がある.
有用性検討
  • 岡 有希, 西村 美幸, 安藤 友歌, 荒木 雅裕, 松田 雅子, 石澤 貢, 霧生 孝弘, 竹縄 寛
    原稿種別: 有用性検討
    2014 年 63 巻 4 号 p. 513-517
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2014/09/10
    ジャーナル フリー
    アメーバ性大腸炎は,感染者の多くが男性同性愛者,知的障害者施設収容者などであり近年増加傾向を示している.その診断には糞便からの虫体検出や血清抗体検査などが用いられるが,糞便では検出感度が低く,血清抗体検査においては必ずしも現在の感染状態を反映していないなどの問題点がある.そこで内視鏡下生検組織の直接鏡検を実施し,アメーバ性大腸炎診断における有用性を検討した.2012年6月~2013年4月に大腸内視鏡を施行し,大腸に潰瘍・白苔などが認められた症例の病変から採取した組織を対象とした.対象期間中に6件の検査依頼があり,そのうち3件においてアメーバ栄養型が認められた.病理組織検査と血清抗体検査も併せて比較検討したが,結果として乖離がみられた.今回検討した生検組織の直接鏡検は,全て30分以内で結果が判明し,陽性と報告した3件はアメーバ性大腸炎と診断され即日治療開始となった.このことから,一般検査領域における生検組織を用いた直接鏡検は,アメーバ性大腸炎の診断に有用と考えられた.
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