医学検査
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63 巻, 5 号
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原著
  • 駒 美佳子, 浅岡 伸光, 寺西 ふみ子, 細井 亮二, 伊藤 亜矢子, 星田 四朗
    原稿種別: 原著
    2014 年63 巻5 号 p. 529-534
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    近年,慢性腎臓病(CKD)は動脈硬化を反映し促進すると報告されており,早期から腎機能並びに動脈硬化進展度を評価する必要がある.今回我々は頸動脈超音波検査とCAVI計測を同時に行った症例において,CAVI,頸動脈IMT,stiffness βの3指標の中で腎機能を中心とした各種指標と最も関連性があるのはいずれか比較検討した.対象期間2012年5月~2012年12月の間に頸動脈超音波検査とCAVIを同時に施行した患者計260例を対象とした.結果,腎機能の指標であるeGFRとCAVIならびにmean IMTはeGFR値との間に有意な負の相関を認め,eGFRの低下と共にCAVIやmean IMTは高値を示した.すなわち,腎機能の悪化とこれら2指標による動脈硬化進展には関連性があるとの結果が得られた.一方,stiffness βはeGFRと有意な相関は認められなかった.eGFR値をG-1:eGFR ≧ 90,G-2:60 ≦ eGFR < 90,G-3:eGFR < 60(mL/min/1.73 m2)に群分けして検討した結果,G-1とG-2の間ではCAVIもmean IMTも有意差を認めこの時期の腎機能の変動に追随してこれらの2指標は変化していたが,G-2とG-3の間ではCAVIのみ有意差を認めた.これより,CAVIが最も腎機能の変動と関連があり,腎機能分類を鋭敏に反映する指標と考えられた.
  • 桝谷 亮太, 田中 秀磨, 池本 敏行, 田窪 孝行
    原稿種別: 原著
    2014 年63 巻5 号 p. 535-544
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    現在,Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)ガイドラインではプロトロンビン時間prothrombin time(PT)の測定条件として室温保存を推奨している1).その理由として検体の低温保存によって起こる第VII因子のcold activationによりPTの測定秒数が短縮することが挙げられている2),3).今回,検体の保存条件(温度と容器の種類)がPT,ヘパプラスチンテストhepaplastin test(HPT),トロンボテストthrombotest(TT)の測定秒数と凝固因子活性値に及ぼす影響を検討した.プラスチック容器保存の場合,室温,氷冷ともに検体採取直後に比べ8時間後のPTの測定秒数と第VII因子活性値に影響は認められず,ガラス容器保存の場合,室温,氷冷ともに8時間後のPTの測定秒数は短縮し,第VII因子活性値の上昇が認められた.この結果は室温保存に比べ氷冷保存でより顕著であり,ガラス容器では第VII因子のcold activationが起こった可能性が示唆された.今回の検討ではPTの測定における第VII因子のcold activationの影響はプラスチック容器保存の場合には検体採取後8時間までは認められなかったが,室温保存ではHPT,TTの測定秒数が短縮する検体が認められたため,検体を保存する場合には室温よりも氷冷のほうが適していると思われた.
  • 橋本 佳祐, 眞野 容子, 古谷 信彦
    原稿種別: 原著
    2014 年63 巻5 号 p. 545-549
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    Candida albicansは二形性真菌であり,ヒトに対して病原性を発揮する際には菌糸形として存在する.しかし,現在臨床現場で行われているC. albicansの薬剤感受性試験は酵母形を対象としたものであり,実際の人体内において病原性を発揮する菌糸形の薬剤効果を反映したものとは異なると考えられる.このことから,今回我々は酵母,発芽管,菌糸各形態最大時のC. albicansに対する抗真菌薬の効果について比較検討した.C. albicansは2時間培養した時点で発芽管細胞の割合が約80%と最大になり,4時間培養した時点では菌糸形の割合が約90%と最大になった.MICの比較は形態による差はみられなかった.酵母形最大時におけるamphotericin B添加ではsub-MICでも菌糸形への形態変化が抑制された.5-fluorocytosine(5-FC),fluconazole(FLCZ)はMICのみ抑制された.しかし,発芽管あるいは菌糸最大時における添加では5-FC,FLCZとも酵母への分裂に影響を及ぼさなかった.以上のことから薬剤添加時のC. albicansの形態によって薬剤応答にも変化が生じる可能性が示唆された.
症例報告
  • 手代森 隆一, 坂本 勇一, 柴田 絵里子, 高野 康之, 三上 英子, 赤平 恵美, 立花 直樹, 大西 基喜
    原稿種別: 症例報告
    2014 年63 巻5 号 p. 550-556
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    AmpC β-ラクタマーゼ産生菌の遺伝情報はプラスミドによって菌株,菌種を超えて伝達されるため,院内感染対策で問題となる.今回我々は,長期に抗菌薬投与をされていた肺炎患者において,Klebsiella pneumoniae Carbapenemase(KPC)型との鑑別を要したAmpC β-ラクタマーゼ産生Klebsiella pneumoniaeを検出した一例を経験したので報告する.患者は62歳,男性.平成23年8月近医にて肺化膿症と診断され,治療中に肺出血を併発し当院へ転院した.患者は,入院2週間前からカルバぺネム系薬が投与されていた.気管内採痰から検出されたK. pneumoniaeは,カルバぺネム系薬を含む全βラクタム系薬に耐性であったことから,KPCなどのカルバぺネマーゼ産生菌が疑われた.しかし,Hodge’s test,シカベータテスト,メルカプト酢酸の酵素阻害試験はいずれも陰性であった.本菌は,ボロン酸を用いた酵素阻害試験で阻止円の拡大が認められたことから,AmpC β-ラクタマーゼ産生株と推定された.さらに,遺伝子学的検査の結果,本菌はDHA型のAmpC β-ラクタマーゼ産生K. pneumoniaeであることが確認された.今回の分離株におけるimipenem(IPM)のMIC値は4 μg/mLであり,2010年以降のCLSIのブレイクポイントで耐性と判定される株であった.AmpC β-ラクタマーゼでありながらIPMのMICが高かった理由は不明であるが,染色体性カルバぺネマーゼ保有の可能性も否定できないと考える.このような耐性菌に遭遇した場合に備え,検査室では酵素阻害試験などを追試できる体制を整えておくことが必要である.
  • 森 正樹, 岩崎 和美, 前川 秀樹, 太田 諒, 今村 好章
    原稿種別: 症例報告
    2014 年63 巻5 号 p. 557-562
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    頚部リンパ節穿刺吸引細胞診の穿刺針の洗浄液から液状処理細胞診Liquid-based cytology(LBC)標本を作製し,細胞学的形態のみならず胚細胞系マーカー等の免疫細胞化学的染色を行ったことにより,胎児性癌の頚部リンパ節転移と診断し得た1例を経験したので報告する.症例:30歳代,男性.左鎖骨上部の腫脹を主訴に当院紹介受診.頚部リンパ節穿刺吸引細胞診では,大型不整形核と明瞭な大小の不整形核小体を有する腫瘍細胞を集塊状及び散在性に認めた.LBC標本を用いた免疫染色ではCD30,Oct3/4,SOX2およびcytokeratin AE1/AE3が陽性を呈したことから胎児性癌の頚部リンパ節転移が疑われ,頚部リンパ節生検で胎児性癌の転移と診断された.胸腹部CT検査では,左頚部~鎖骨上窩・上縦隔および傍大動脈~左総腸骨動脈周囲のリンパ節が腫大し,これらに一致してFDGの強い集積を認めた.また,左精巣にも点状の集積亢進を認めたが,触診と超音波・CT検査では,精巣腫瘍は指摘出来なかった.結論:リンパ節穿刺吸引細胞診やそれ以外の細胞診材料において,胚細胞腫瘍に遭遇する可能性を認識することが肝要である.LBC標本を用いた適切なマーカーによる免疫染色が診断に有用と考える.
  • 仲田 佑未, 藤原 弘光, 森下 奨太, 室田 博美, 大楠 清文, 原 文子, 本倉 徹
    原稿種別: 症例報告
    2014 年63 巻5 号 p. 563-567
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    血液培養陽性ボトルからの分離培養および同定に難渋したClostridium symbiosumC. symbiosum)の1例を経験した.症例は65歳,女性.2013年5月に胸部大動脈ステントグラフト内挿術が施行され,2013年6月に実施した血液培養検査が嫌気ボトルのみ陽性となった.血液培養ボトル内溶液のグラム染色像はグラム陰性桿菌が認められたが,サブカルチャーでは発育を認めなかった.そのため,ヒト血液に培養液を加えて血液培養ボトルに接種し,新たな血液培養検査を実施するとともに,培養液からの直接16S rRNA遺伝子解析を外部機関に依頼した.新たに実施した血液培養検査は,翌日嫌気ボトルのみ陽転し,ブルセラHK寒天培地(極東製薬)を用い,嫌気培養下で翌日発育を認めた.Ryuの試験は陰性,性状確認試験では,0.001% crystal violet耐気試験はSensitive,20%胆汁耐気試験はResistant,Esculin加水分解能はNegative,硫化水素産生能はPositiveであった.質量分析装置MALDI Biotyper(ブルカー・ダルトニクス)ではC. symbiosum,VITEK MS(シスメックス・ビオメリュー)では,Clostridium clostridioforme,16S rRNA遺伝子解析ではC. symbiosumと同定された.生化学的性状,質量分析,16S rRNA遺伝子学的解析の結果から総合的に判断してC. symbiosumと判定した.血液培養検査のような,迅速かつ正確に菌を同定することが必要とされている場合で,自施設で同定困難な場合は,早期に外部機関に依頼し同定検査を進めていく必要性がある.本症例では,最終同定には16S rRNA遺伝子解析と質量分析が有用であったが,Ryuの試験,性状確認試験は本菌種同定の一助となった.
技術論文
  • 中島 英恵
    原稿種別: 技術論文
    2014 年63 巻5 号 p. 568-572
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    ダプトマイシン(DAP)非感性株を含むStaphylococcus aureusS. aureus)13株を使用し,市販の3ブランド(BD,栄研,極東)のミュラーヒントン寒天培地を用いた際のEtest法によるDAPのブレイクポイント(BP)(MIC値が1 μg/mL)付近のMIC値の測定精度について,微量液体希釈法を基準に,比較検討した.精度管理(QC)株には,S. aureus ATCC29213およびEnterococcus faecalis ATCC29212を使用した.S. aureus 13株に対するMIC測定では,QC株に対するMIC値がQCレンジ外であった栄研及び極東で,偽感性が発生した.BDは,QC株に対するMIC値はQCレンジ内であったが,偽非感性が発生した.S. aureusに対するDAPのMIC測定では,BPとかけ離れたMIC値を示すS. aureus ATCC29213だけでなく,DAPのBP値を示すS. aureus株もQC株として設定していく必要がある.
  • 服部 拓哉, 西山 秀樹, 池上 志乃富, 鈴木 真由子, 村上 いつか, 美濃島 慎, 山岸 宏江, 湯浅 典博
    原稿種別: 技術論文
    2014 年63 巻5 号 p. 573-578
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    マトリックス支援レーザー脱離・イオン化―飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)法による細菌名同定に関する報告は多数あるが,最新のMALDI-TOF MS装置であるVITEK MSと従来の細菌名同定法を比較した報告は少ない.我々は臨床分離株314株を用いて,VITEK MSと細菌の生化学的性状に基づく菌名同定機器VITEK2の菌名同定結果を比較した.VITEK MSの同定率は属レベルで93.6%,種レベルで88.9%,VITEK2の同定率は属レベルで95.9%,種レベルで85.0%であった.属レベルではVITEK2の方がVITEK MSより高い同定率を示したが,種レベルではVITEK MSがVITEK2より有意に高い同定率を示した.腸内細菌科の株では検査手技に起因してVITEK MSで菌種が同定できないことがあった.手技の向上及びデータベースの整備によりVITEK MSの同定率は上がると考えられる.
  • 仲田 夢人, 田仲 祐子, 野上 智, 原 文子, 本倉 徹
    原稿種別: 技術論文
    2014 年63 巻5 号 p. 579-585
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    ラテックス凝集比濁法を測定原理とする血清中マトリックスメタロプロテイナーゼ-3(MMP-3)測定試薬「LZテスト‘栄研’MMP-3」(栄研化学株式会社,以下栄研)ならびにパナクリアMMP-3「ラテックス」(積水メディカル株式会社,以下積水)の2社製品について院内導入を目的に基礎的検討を行ったので報告する.基礎的検討の結果,同時再現性は変動係数(C.V.)が栄研1.47~2.75%,積水0.89~1.88%,日差再現性は栄研1.21~3.83%,積水2.41~4.45%と両試薬とも良好な結果が得られた.また,希釈直線性は栄研1,200 ng/mL,積水1,500 ng/mLまで原点を通る良好な結果が得られた.2社試薬の相関性についても良好な結果が示された[栄研(x)×積水(y):r = 0.993,y = 1.07x + 6.96,n = 142].MMP-3測定試薬「LZテスト‘栄研’MMP-3」ならびにパナクリアMMP-3「ラテックス」の基礎的検討を行った結果,両試薬とも基礎的性能は良好であり,院内導入は十分に可能であると考えられた.
  • 松木 美貴, 竹村 浩之, 上野 剛, 脇田 満, 久野 豊, 堀井 隆, 田部 陽子, 大坂 顯通
    原稿種別: 技術論文
    2014 年63 巻5 号 p. 586-589
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    尿中ケトン体測定は,日常検査法としてニトロプルシドナトリウム反応を使用した試験紙が用いられているが,本反応では薬剤による偽陽性が多く報告されている.特に抗リウマチ薬であるブシラミンなどスルフヒドリル基(SH基)を有する薬剤と反応し,偽陽性を示すことが問題となる.「ウロペーパーα III‘栄研’改良ケトン体試験紙」(改良KET試験紙:栄研化学)は,SH基を含む薬剤による偽陽性反応の回避を目的として開発された尿試験紙である.本検討では,従来の「ウロペーパーα III‘栄研’ケトン体試験紙」(KET試験紙:栄研化学)との比較を行い,改良KET試験紙の臨床的有用性について検討した.改良KET試験紙とKET試験紙による尿中ケトン体検出結果の完全一致率は89.4%(261/292)で,不一致を示した検体31件(10.6%)中25件は,改良KET試験紙が陰性,KET試験紙が陽性を示した.この乖離検体の尿中ケトン体を酵素法で測定した結果,全検体が陰性であり,ブシラミン服用中の関節リウマチ患者の尿検体であった.改良KET試験紙は,従来法のKET試験紙で認められたブシラミンによる偽陽性反応を回避し,より正確なケトン体検出が可能であると考えられた.
  • 福崎 裕子, 間瀬 浩安, 篠生 孝幸, 野崎 司, 浅井 さとみ, 吉岡 公一郎, 宮地 勇人
    原稿種別: 技術論文
    2014 年63 巻5 号 p. 590-595
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    我々は,汎用自動分析装置で測定可能なラテックス比濁法を原理としたクレアチニンキナーゼMB分画(creatinine kinase MB)測定試薬「LタイプワコーCK-MB mass」(和光純薬株式会社)の基礎的性能,および臨床的妥当性評価を行った.測定の同時再現性および日差再現性は,変動係数coefficient of variation(C.V.)は5%以下と良好であった.測定の安定性は15日間まで良好であった.測定の直線性は,範囲1.2~200.0 ng/mLまで良好であり,プロゾーン現象は認めなかった.免疫阻害活性法を原理とした対照試薬との相関性はy = 0.97x – 8.6,相関係数r = 0.986と良好であった.共存物質による影響は全ての物質で認められなかった.心筋梗塞患者と非心筋梗塞患者の診断一致率はトロポニンI測定>CK-MB蛋白量測定>CK-MB活性測定の順に高く,CK-MB活性測定よりも蛋白量測定の有用性が確認できた.本試薬の基本的性能評価および臨床的妥当性評価の結果は良好であり,日常検査に適している.
  • 吉森 雅弘, 則常 浩太, 土井 千春, 関藤 真由美, 岡村 恵美, 脇坂 知苗, 田中 信利
    原稿種別: 技術論文
    2014 年63 巻5 号 p. 596-601
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    輸血検査は緊急性が高く,且つ専門性の高い検査であり,24時間誰でも正確・安全に検査が行えることが求められる.当院では全自動輸血検査装置オートビューイノーバ(オーソ社)を導入し輸血検査を行っているが,赤血球試薬の蒸発による赤血球濃度の上昇や,撹拌による赤血球の物理的ダメージが生じるため,24時間連続架設は行っていなかった.2013年,赤血球試薬の濃縮を軽減させ,オンボードスタビリティの向上が期待される「E-cap」が発売された.今回,「E-cap」を使用することで,赤血球試薬の性能の維持が可能であるか検討を行った.その結果,毎日の精度管理と定期的なメンテナンスが行われていれば,「E-cap」を使用することにより赤血球試薬の24時間連続架設が可能と考えられた.
  • 鈴木 優治
    原稿種別: 技術論文
    2014 年63 巻5 号 p. 602-608
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    3種類の市販試験紙による尿比重測定における塩の反応性について検討した.測定値は塩の種類と市販試験紙の種類により異なった.塩は,NaClよりも高値を与える塩,NaClよりも低値を与える塩およびNaClと同等の値を与える塩の3群に分けられた.塩を生成する酸の化学種はpHにより変化するので,尿比重は塩濃度が同じでもpHにより異なる値になると考えられる.
  • 二谷 悦子, 志賀 朋子, 東岩井 久, 高橋 正宜
    原稿種別: 技術論文
    2014 年63 巻5 号 p. 609-614
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    子宮頸がんの原因であるHuman papillomavirus(HPV)の検出には様々なHPV検出試薬が用いられている.子宮膣頸部擦過材料からHPV検査を行う際,従来塗抹標本作製後に残った細胞から検出する方法と,液状化検体細胞診liquid-based cytology(LBC)検体から標本作製とHPV検出検査を実施する方法が主に使用されている.今回,同一患者から2回の細胞採取を行い,2法の細胞診判定とHPV検出結果の比較を行った.HPV検出検査はHC IIで行い,専用のHPVサンプラー採取の検体とLBCシステムの1つであるTACASに固定した検体を用いた.前者は試薬添付文書に則り,後者は前処理キットHC2 Sample Conversion Kitを使用してから既定のプロトコールに則り測定を行った.従来塗抹標本とTACAS標本の細胞診判定結果一致率は94.8%であり不一致率は5.2%であった.HC II測定結果一致率は93.1%であった.HC II測定結果が不一致であった例はいずれもインデックス値のカットオフ値付近であり,全体の6.9%であった.今回の結果より,TACASバイアルを用いたHC II測定はHPVサンプラーと同等もしくは同等以上の測定が可能であり有用な方法であることが確認された.
資料
  • 岡野 典子, 松原 朱實, 横山 幸枝, 小山 由実, 濵田 麻紀, 横崎 典哉
    原稿種別: 資料
    2014 年63 巻5 号 p. 615-622
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    われわれは,先行研究において患者データによる正常者平均値法で呼吸機能検査の客観的な内部精度管理法を提案し,一定の成果を得た.今回,内部精度管理手法としての妥当性を検証するために,日常精度管理データを用いた「測定の不確かさの推定」を含めた正常者平均値法の3年間比較を行った.また,「呼吸機能検査ガイドライン」で週に1回,既知非喫煙健常者で再現性の確認が推奨されているが,先行研究と同様に,正常者平均値法を2012年の数ヶ月を週別に抽出して応用できるかも併せて検討した.「測定の不確かさの推定」は,機種間差や機器劣化などの管理に有効と考える.正常者平均値法では,月別の全患者・正常者群もともに安定したが,週別ではバラツキが認められた.しかし,一定のn数があれば,安定すると考える.したがって,内部精度管理として機器の管理を含めた管理手法である本法は十分有効であ‍る.
  • 上野 寿行, 丹羽 欣正, 鈴木 久惠, 井上 史江, 櫻井 香織, 宮野 悟, 秋田 豊和
    原稿種別: 資料
    2014 年63 巻5 号 p. 623-628
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    血液形態学における細胞観察のトレーニングは,血液検査部門内でのレベルアップ及びその後の高レベル維持に必要不可欠である.しかしながら,トレーニングに必要な絶対的基準が無く,現在のところJAMT勧告法かJSLH標準法案を参考に対応しているのが現状である.両法を対比すると,好中球とリンパ球の一部に大きな差異を認める以外は,内容的に大差を認めない.今回のトレーニングでは,差を認めない部分にJAMT勧告法を用い,大きく基準が異なる好中球桿状核球と分葉核球の鑑別,正常リンパ球・異型リンパ球以外の類縁細胞の取り扱いについては,以下の理由で現在使用中の基準法を踏襲することとした.当部門では,古くから成熟好中球の鑑別にはJAMT勧告法に近い基準が,リンパ球にはJSLH標準法案に近い基準が用いられており,この両法を効率よく使用することは,最新の標準法に合わせつつ現在の基準を大きく逸脱しない使用法として推奨できる.また,問題内容のレベルを2段階に分け,出現頻度が高く日常検査上見逃しが許されない異常を必須問題,出現頻度は低いが知識として必要な異常を参考問題とし,特に前者については全員の目標値到達を目指した.同一問題の繰り返し使用については,前回との比較が容易である反面,丸覚えの危険があるので6ヶ月の空白期間を作り,その間は問題については一切触れないよう留意した.
  • 原 祐樹, 浅井 幸江, 川島 誠, 城殿 麻利子, 野村 勇介, 山田 直輝, 伊藤 守, 小笠原 智彦
    原稿種別: 資料
    2014 年63 巻5 号 p. 629-634
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    肺炎は,日本人の死因の第3位に入る疾患であり,肺炎の原因微生物の特定に微生物検査が果たす役割は大きい.2010年3月から2010年12月までに我々の施設において,肺炎と診断された169名(市中肺炎111名,医療ケア関連肺炎58名)を解析の対象とした.82名(48.5%)の患者で原因菌が同定された.原因菌が同定された割合は,市中肺炎が44.1%,医療ケア関連肺炎が56.8%であり,原因菌が同定された割合は,医療ケア関連肺炎の方が高かった.喀痰が提出された145名の患者のうち,Geckler分類で4群もしくは5群に分類される喀痰は,38名(26.2%)であった.市中肺炎では,重症度が上がるにつれて,原因菌の検出される割合が高くなる傾向が見られ,超重症例の69.2%で原因菌が検出された.一方,医療ケア関連肺炎では,重症度による原因菌の検出割合に差は見られなかった.医療ケア関連肺炎の方が,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,緑膿菌およびグラム陰性腸内細菌科細菌の検出割合が高かった.マイコプラズマ属,レジオネラ属およびクラミドフィラ属をはじめとする非定型病原体は,1例(1.7%)のみであった.肺炎の原因微生物特定には,患者背景,肺炎の種類や重症度を考慮しながら,培養検査の構築をすることも重要であると考えられた.
  • 西尾 美津留, 宮木 祐輝, 小川 有里子
    原稿種別: 資料
    2014 年63 巻5 号 p. 635-639
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    C. difficile関連下痢症(CDAD)の診断は,一般的に糞便中の毒素検出により行われるが,検出感度は十分でなくC. difficile感染症(CDI)の一部は見落とされている.今回我々はC. difficile抗原(GDH抗原)とToxinA,ToxinBが同時検出可能な迅速キットC. DIFF QUIK CHEK COMPLETE(QUIK CHEK:アリーアメディカル)におけるGDH抗原検出の有用性を評価した.CDAD疑いで検査依頼のあった158件において,培養とGDH抗原の結果一致率は96.8%,感度100%,特異度96%と良好な結果が得られた.SHEA(米国病院疫学学会)/IDSA(米国感染症学会)ガイドラインに記載された通り,GDH抗原がCDAD診断の一次スクリーニング検査として有用である事が確認された.これによりGDH抗原が陰性の場合は,培養検査を省略する運用法に変更した.また毒素陰性・培養陽性分離株におけるQUIK CHEK検査では,20件中17件(85%)が毒素陽性であり,GDH抗原陽性ならば培養を行い,次に分離株にて毒素検査を実施する事で,より正確なCDI診断が可能になると思われ,運用法の変更は検査精度向上に有用と考えられた.またGDH抗原陽性の場合は速やかにICTに報告し,感染対策を実施することとした.今回の検討結果を臨床に報告した事により,臨床側のC. difficile感染対策の意識を向上させることが出来たと考える.
  • 平原 智恵美, 槙田 香子, 遠藤 竜也, 日浦 未幸, 平井 克典, 尾上 隆司, 谷山 清己, 川本 俊治
    原稿種別: 資料
    2014 年63 巻5 号 p. 640-647
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    今回,病院内の全心電計を管理できる心電図管理システムの導入による利用者の利用度並びに登録精度に及ぼす影響を明らかにする.平成23年9月に呉医療センター・中国がんセンターでは電子カルテ更新,全業務のペーパーレス運用に伴い,無線LANを用いて院内全心電計を一元管理できるシステムを導入した.従来のオーダエントリーシステムによる生理検査室での心電図実施に加え,救急外来や病棟などで実施する部門心電図は,心電計で患者IDを登録するか,心電図サーバで患者IDを修正登録し実施した.さらに医用波形標準化規約Medical waveform Format Encoding Rules(MFER)を利用して過去11年間の他社製心電図ファイリングから新システムへの波形移行を行うことにより,新システム上で同一患者の過去心電図を閲覧可能とした.心電図管理システム導入により,部門実施心電図件数は増加し,対全心電図件数比率も増加し,3割以上に達した.患者IDが登録されていない心電図比率は6ヶ月後には減少した.また,職員健康診断の心電図も紙運用であったが,全職員のカルテ番号を作成し,一元管理とした.結語:MFERを活用した過去心電図ファイリング波形の移行ならびに統合心電図管理システムの導入で,心電図管理および利便性が著しく改善し,患者誤認防止にも有効であった.
  • 古川 聡子, 河口 勝憲, 加瀬野 節子, 前田 ひとみ, 末盛 晋一郎, 通山 薫
    原稿種別: 資料
    2014 年63 巻5 号 p. 648-654
    発行日: 2014/09/25
    公開日: 2014/11/10
    ジャーナル フリー
    溶血・混濁は測定値に影響を与えるため,血清情報(溶血・混濁)を臨床側に報告することは病態把握および検査値を解釈する上で必要である.しかし,血清情報に関しては各施設任意の判定基準を採用しており,標準化が行われていないのが現状である.そこで,現状把握のため調査を実施した.調査内容はアンケート調査,溶血・混濁の希釈系列を用いたコメント付加開始点の調査(岡山県近隣施設の施設間差と目視判定の個人差)および測定値への影響について行った.アンケート調査では,約7割の施設が自動分析装置で血清情報の測定を行っており,報告形態は定性値の軽度(弱または微)・中度・強度の3段階が最も多く使用されていた.溶血のコメント付加開始点の調査ではヘモグロビン(Hb)濃度40~50 mg/dLでの設定が多く,Hb濃度50 mg/dLにおける測定値の変化はLD:53.0 U/L(+29.7%),K:0.16 mEq/L(+4.2%),AST:2.5 U/L(+10.2%)の上昇であり,その他の項目では影響(変化率:4%未満)は認めなかった.混濁のコメント付加開始点はイントラリポス濃度0.02%前後の設定が多く,イントラリポス濃度0.02%では測定値の変化は認められなかった(変化率:4%未満).また,溶血・混濁のコメント付加開始点は施設間で異なり,目視判定も個人の認識に差があることが明らかとなった.
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