医学検査
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64 巻, 5 号
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総説
  • 米山 昌司, 南里 和秀
    原稿種別: 総説
    2015 年 64 巻 5 号 p. 517-526
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    超音波検査は装置フルデジタル化を契機に分解能は向上し,またエラストグラフィー,造影超音波検査,フュージョンイメージ,スッペクトラッキング,3D超音波などの検査手法が開発されてきた。検査は検診から精密精査,治療のガイドなど多様化し,検査室以外の救急外来やベットサイドなどでも有用である。検査者は状況を把握し適切な結果を報告するスキルが求められるが,幅広い知識と技術が必要であり検査者に依存することが多い。学会による超音波検査士の認定制度もあり,臨床検査技師が臨床診療の中で活躍する場は多い。未来には新技術や新しい検査法の実用化が期待され,検査に携わる我々は探求心と努力を惜しまず検査と向きあう必要がある。
原著
  • 畠山 義彦, 三杉 昌子, 佐藤 慶子, 菊池 桂舟, 千葉 勉, 櫻庭 健太, 達子 瑠美, 北村 一幸
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 5 号 p. 527-533
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    我々は,グラム陰性桿菌の発酵・非発酵推定と,純培養を行うことのできる平板培地の必要性,問題点を考え,その培地を試作した。培地作成の手順は,寒天(Difco)11 g,Nacl 5 g,ゲリセートペプトン(BBL)8 g,ハートインフジョンブロス(Difco)0.5 g,肝ブイヨン(Oxoid)0.5 gを精製水970 mLに加温溶解した。次いで,41.7%リン酸水素二カリウム(関東化学)溶液2.1 mL,0.2%フェノールレッド(関東化学)溶液10 mLを添加し,115℃ 15分間高圧滅菌した。培地温度が50℃程度になった時点で,滅菌済みの,システン・糖溶液を加えた。システン・糖溶液組成は次のとおりである。L-システン(関東化学)0.2 g,D-グルコース(関東化学)1.5 g,シュークロース(関東化学)0.5 g,D(–)-マンニットール(関東化学)0.5 g,L(+)-アラビノース(関東化学)0.25 g,D(–)-ソルビトール(関東化学)0.25 g,全量20 mL。よく攪拌した後,シャーレに20 mLずつ分注した。冷えた後使用した。発育コロニーの酸産生観察で,発酵菌か非発酵菌の推定と純培養について,一定の試験結果を得た。
  • 大野 明美, 永野 勝稔, 山方 純子, 野口 昌代, 柴田 綾子, 菊池 春人, 村田 満
    原稿種別: 原著
    2015 年 64 巻 5 号 p. 534-540
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    ジアゾカップリング法を用いたビリルビン尿試験紙検査は,しばしば偽陽性を示すため,ビリルビン真陽性かどうかの確認試験が必要である。尿ビリルビンの測定法として,酸化法を測定原理とするRosin法,Harrison法,Watson-Howkinson法があるが,我々はこれらの方法とHarrison法,Watson-Howkinson法をアレンジした方法について確認検査としてどれが最も適切かの検討を行った。その結果,Watson-Howkinson法をアレンジした方法(W法-C)を選定した。W法-Cは吸収パッドの保存が簡単,操作も簡便で短時間に少量検体でも測定可能であった。W法-Cについて使用する吸収パッド,最低検体量,検出限界,イクトテストとの一致率を検討した。その結果,吸収パッドはワンショットドライが尿3滴で判定しやすい発色が得られ,適当と考えられた。イクトテストとの一致率は92.6%と良好であった。W法-Cはコスト面でも安価であり,日常検査における尿ビリルビン確認試験として十分使用可能であると考えられた。
症例報告
  • 松本 正美, 田中 佳, 田中 千津, 中川 静代, 柳田 善為, 永田 勝宏, 藤木 拓磨, 飯沼 由嗣
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 64 巻 5 号 p. 541-547
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    近年,尿沈渣中の酸性尿酸アンモニウム(ammonium acid urate; AAU)結晶が結石形成の可能性から注目され始めている。今回我々は小児のネフローゼ症候群(nephrotic syndrome; NS)で尿沈渣中にAAU結晶を認めた4例を経験したので報告する。症例は11歳,1歳,7歳,4歳のいずれも男児で,浮腫・高度の蛋白尿で入院し,ステロイド療法にて寛解後退院している。4例とも尿比重が高く尿量も少ない濃縮尿であり,入院期間中1–2回のみ尿中にAAU結晶を認めている。うち1症例では同日にバルーン先端に詰まったAAU結石を認めた。結石の形成機序は不明な点も多いが,小児のNSにおいてはロタウイルス腸炎でみられるような下痢・嘔吐を伴わなくとも強い脱水と尿の濃縮が起こり,AAU結晶が生成されるものと思われた。尿中の結晶出現はその成分の飽和状態を示すものであり,小児のNSにおいてもAAU結石症による急性腎後性腎不全発症の危険性を示唆する重要所見である。またAAU結晶の出現時期はいずれもNSの病勢の強い時期ではあるものの,尿の蛋白・比重・尿量の時系列データからは回復する直前に出現している傾向が推察された。
  • 津郷 幸子, 吉澤 梨津好, 石橋 直美, 井川 真希, 弓狩 加恵, 好川 貴久, 橋本 徹
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 64 巻 5 号 p. 548-552
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    神経皮膚黒色症は,皮膚の巨大な色素性母斑を特徴とし中枢神経系にメラニン産生細胞であるメラノサイトが増殖をきたす稀な先天性疾患である。吉岡らの診断基準によれば神経皮膚黒色症は,髄液細胞診で色素顆粒を有する異常細胞を検出することがあげられている。今回我々は,髄液一般検査の細胞数算定時に通常とは異なる染色性を示した色素顆粒細胞を検出した。サムソン染色によるスクリーニング検査の段階で臨床側に重要な情報を提供できると考えたので報告する。
  • 盛合 亮介, 小林 大介, 遠藤 明美, 近藤 崇, 近藤 啓, 東 恭悟, 淺沼 康一
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 64 巻 5 号 p. 553-557
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍(blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm; BPDCN)の1例を経験した。本症例の腫瘍細胞は,細胞質の色調が弱塩基性,核網が繊細かつ複数の核小体を持つ芽球様細胞で, 唯一BPDCN細胞に特徴的とされている,偽足様の細胞質突起や細胞質膜に沿う空胞はみられなかった。BPDCNは細胞形態が多彩であり,本症例のように,BPDCNに特徴的な細胞形態を認めない芽球様細胞が末梢血や骨髄に出現している場合,メイ・ギムザ染色ではBPDCNを推測することも,他の急性白血病およびリンパ腫の白血化例と鑑別することも困難である。また,細胞表面抗原の発現についても,必ずしも典型的なパターンをとらず,本症例でみられたCD123に代表される形質細胞様樹状細胞関連抗原を検査しなければ診断に至らない。また,TCRおよびIg遺伝子の再構成やEBER-1等の陰性所見もBPDCNの迅速,確実な診断に必要である。BPDCNは稀な疾患であるが,予後が極めて不良であり,本症例も診断時から約6ヵ月で死亡の転帰をとった。可能な限りの早期治療に向けて,BPDCNは常に忘れてはならない疾患であることを知っておきたい。
  • 西川 詩織, 徳満 貴子, 野口 裕史, 黒木 栄輝, 大野 招伸, 甲斐 眞弘, 佐藤 勇一郎
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 64 巻 5 号 p. 559-563
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)の細胞診検体においてセルブロック法が診断に有用であった2例を経験したので報告する。症例1:40歳代女性。腹部CTにて7 cm大の後腹膜腫瘍を指摘。EUS-FNA細胞診で神経内分泌腫瘍が疑われ,同時に作製したセルブロックを用いて免疫染色を実施した。腫瘍細胞はChromogranin AとSynaptophysinに陽性を示し,神経内分泌腫瘍と診断した。症例2:70歳代男性。背部痛を自覚し,腹部CTにて胃に接する18 cm大の腫瘍を指摘。EUS-FNA細胞診でGastrointestinal stromal tumor(GIST)が疑われ,セルブロックを用いた免疫染色で腫瘍細胞はDOG-1,c-kit陽性でGISTと診断した。膵臓や消化管粘膜下腫瘍のEUS-FNA細胞診において,セルブロックによる免疫組織化学を併用することが診断に有用であると考えられた。
技術論文
  • 羽生 あい, 関 ふたみ, 川島 加誉, 本庄 茂登子, 上ノ宮 彰, 津田 祥子, 望月 照次, 小林 一女
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 564-568
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    Tympanometryは鼓膜のcomplianceと中耳圧を測定することで,中耳貯留液の有無を診断する方法である。一般的に226 Hzを用いたTympanometryが普及しているが,外耳道が柔らかい新生児では中耳貯留液があっても圧変化を起こし,A型のTympanogram(以下TG)を示すことがあるため1),プローブ音1,000 HzのTympanometryがより信頼性が高いとの報告がある2)。今回,プローブ音1,000 Hzと678 Hzを搭載したGSI Tympstar Version 2(以下GSI)と従来から当院で使用しているインピーダンスオージオメータRS-22(以下RS-22)を用いて,比較検討を行った。その結果,11耳において226 HzでA型を示したが,1,000 Hzと678 HzはB型を示した。11耳全てが0歳児の症例(2か月,3か月,6か月)であった。この結果から,6か月以下の乳児は,1,000 Hzと678 HzのTympanometryが有用であることが判明した。プローブ音1,000 Hzでは,アーチファクト様の波形を示し再検査が必要となることがある。GSIはシリンジ型のため機器作動に時間がかかり,体動の多い小児では測定困難な場合があった。以上のことから,プローブ音1,000 Hzを搭載したポンプ型で耳栓が固定可能な構造及び機能の機器が望まれる。
  • 河内 誠, 尾崎 隆男, 西村 直子, 大岩 加奈, 岩田 泰, 野田 由美子, 中根 一匡, 舟橋 恵二
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 569-575
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    2012年10月~2014年3月の1年6カ月間に,激しい咳や長引く咳などにより百日咳の鑑別を要した168例を対象に,百日咳の実験室診断法を後方視的に検討した。病原体診断法として全例から後鼻腔ぬぐい液を採取し,百日咳菌分離とloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法による百日咳菌DNA検出を行った。126例については,血清診断法としてPT-IgG抗体価を測定した(ペア血清67例,単血清59例)。実験室診断基準は,菌分離またはDNA検出または血清診断基準に該当したものとした。168例中34例(20%)が百日咳と実験室診断され,初診時年齢の中央値は0.9歳(日齢17~12.3歳)であった。DNA検出は16例(47%),菌分離は9例(26%)であり,菌分離例は全てDNA検出例であった。血清診断基準該当例は31例(91%)であり,18例(53%)が血清診断基準のみに該当した。その中の7例のワクチン未接種幼若乳児(日齢17~3カ月)では,6例がペア血清で抗体価の低下を認め,1例は幽門狭窄症による咳込み嘔吐であった。これら7例は母体の経胎盤移行抗体による血清診断基準偽該当例と考えられた。百日咳の実験室診断法として病原体診断がより確実であり,特に簡便・迅速で感度の高いLAMP法は有用と思われた。
  • 村上 麻里子, 浅田 高至, 小澤 かざみ, 野上 毅, 初田 和由, 佐野 道孝
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 576-582
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    尿中Cペプチド(以下,尿CPR)検査は,インスリン産生量の間接的な測定法として用いられている。検査材料として24時間蓄尿を用いるが,酸性下で不安定であることや,細菌の増殖に伴う分解を受けるため,国立循環器病研究センターでは炭酸ナトリウム(Na2CO3)を主成分とした安定化剤を使用している。しかし,蓄尿量に対する安定化剤の含有濃度が測定値にどのような影響を及ぼすのかは明らかにされていない。そこで今回,安定化剤含有濃度や,保存温度,細菌の存在が測定値に影響を及ぼすか否かについて検討を行った。その結果,室温下で安定化剤1包あたり尿量が4,000 mLを超えると安定化剤含有濃度が低下し,細菌増殖によるCPRの分解により,尿CPR値が低下した。冷蔵保存下では安定化剤含有濃度が低い場合でも安定していた。また,安定化剤1包あたり尿量300 mL未満の場合でも尿CPR値は低下した。その原因として,pH及び塩濃度の影響を検討した結果,Na2CO3濃度が高い場合,pHよりも塩濃度の影響をより強く受けると考えられた。これらの結果より,検査前におよその蓄尿量を把握し,適切な安定化剤含有濃度を確保することが求められる。
  • 徳永 尚樹, 西岡 麻衣, 井上 雄介, 吉田 裕子, 井上 千尋, 高松 典通, 中尾 隆之, 土井 俊夫
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 583-590
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    APTTクロスミキシングテスト(ミキシングテスト)は凝固因子欠乏や凝固因子インヒビター,またはループスアンチコアグラントなどのインヒビターを鑑別するスクリーニングとして有用な検査である。しかし検体を手作業で調整する必要があり,手技が煩雑であることなどから実施している施設が少ないのが現状である。今回我々は汎用機である全自動臨床検査システムSTACIA(LSIメディエンス社)を用いて,簡便に実施可能なミキシングテスト法(STACIA法)を考案し,当院の現法であるACL-TOP500(IL社)を用いた半自動ミキシングテスト法(TOP法)と比較してその有用性を検討した。TOP法は加温用希釈検体を手作業により作製するのに対し,STACIA法は機器による自動調整のため,分注操作が必要なく簡便であった。また,STACIA法の評価として上に凸,下に凸と視覚的に判定する方法(波形パターン法),ICAおよびCMT indexにおけるインヒビターを検出する感度を求めたところ,波形パターン法が75.0%,ICAが79.2%,CMT indexが91.7%とCMT indexが最も良好であった。STACIA法はTOP法の約半量で即時型と加温後の両方が測定可能であり,自動で濃度系列を作製するため,検体調整の手間や手技的な調製ミスが解消され,省力化と正確性が向上した。さらに数値判定法を用いることで感度の高い客観性のあるデータが得られ,STACIAを用いたミキシングテストはルーチン検査の一環として実施することが十分可能であると示唆された。
  • 今駒 憲裕, 西尾 美紀子
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 591-599
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    患者検体(血清および尿)を用い,4,6エチリデン-4-ニトロフェニル-α-D-マルトヘプタオシド(Et-G7-PNP)を基質とするアミラーゼ(AMY)のJSCC標準化対応法試薬“シカフィットAMY-G7”のJCCLS-SOPに対する反応性比較を行った結果,“シカフィットAMY-G7”は,膵型および唾液型アイソザイム構成比,あるいは検体種別(血清および尿)に関わらず,JCCLS-SOPとよく一致した。一方,α-(2-クロロ-4-ニトロフェニル)-β-D-ガラクトピラノシルマルトサイド(Gal-G2-CNP)および2-クロロ-4–ニトロフェニル-α-D-マルトトリオシド(G3-CNP)では,血清検体と尿検体の相関性試験で傾きの異なる回帰直線が得られ,本試薬と同じEt-G7-PNPを基質に用いた他社キットでは血清検体で高値傾向が認められた。外部精度管理試料の反応性試験では,“シカフィット AMY-G7”以外の市販キットは,ヒト遺伝子組換え体(リコンビナントAMY)の添加によりJCCLS-SOPとは反応性が変化することが確認された。具体的にはEt-G7-PNPを基質に用いた他社キットでやや高値,G3-CNPでやや低値(共に目標値±5%以内),Gal-G2-CNPで許容下限値を下回る結果となった。
  • 兵頭 直樹, 則松 良明, 大﨑 博之, 森田 渚, 高石 裕子, 木下 幸正, 森 いづみ, 前田 智治
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 600-604
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    種々のセルブロック(CB)作製方法の短所を改良したパラフィン・寒天サンドイッチ法を考案し,フィブリンクロット法および,寒天法,アルギン酸ナトリウム法と比較した。検討方法として,7症例の体腔液の残余検体を用いて,3種類の分量の沈渣(10 μL,50 μL,100 μL)を使用し,各々4種類のCB標本を作製し,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を施行後,細胞数および染色性を比較した。その結果,各CB作製方法における細胞数の比較において,沈査量10 μLおよび50 μLでは,パラフィン・寒天サンドイッチ法および寒天法は,フィブリンクロット法と比較してそれぞれ有意に高値であった。沈査量100 μLでは,パラフィン・寒天サンドイッチ法は,フィブリンクロット法およびアルギン酸ナトリウム法と比較して細胞数がそれぞれ有意に高値であった。各CB作製方法における染色性(背景)の比較では,フィブリンクロット法およびアルギン酸ナトリウム法では背景の共染を認めたが,その他の方法では背景の共染は見られなかった。したがって我々が考案したパラフィン・寒天サンドイッチ法は他のCB標本作製方法よりも細胞回収に優れており,背景の共染もないため様々な目的に応用可能であると思われる。
  • 岩瀬 友也, 大根 久美子, 小池 史泰, 可児 里美, 脇本 幸夫, 田中 靖人
    原稿種別: 技術論文
    2015 年 64 巻 5 号 p. 605-609
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    B型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化は,HBs抗原陰性でHBc抗体ないしHBs抗体が陽性となった既往感染例においても起こり得る。今回,化学発光免疫測定法(chemiluminescent immunoassay; CLIA法)あるいは化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay; CLEIA法)を原理とするHBc抗体測定試薬3法において,基準値1.0 C.O.I.付近の低力価試料を対象に特異性評価を行った。その結果,HBc抗原・抗ヒト(IgG)抗体の2ステップサンドイッチ法同士では判定一致率が96.1%であったのに対し,HBc抗原・HBc抗原の2ステップサンドイッチ法とHBc抗原・抗ヒト(IgG)抗体の2ステップサンドイッチ法との間では判定一致率が79.2%および80.5%と低い傾向が見られた。判定不一致例について精査したところ,いずれの測定法でも偽陰性・偽陽性が存在しており,カットオフ値付近の低力価検体に対してはどの方法も判定が困難であることが示唆された。HBV既往感染スクリーニング検査としてHBc抗体検査は有用であるが,既に免疫抑制・化学療法などが実施されて抗体価が低下している場合には,単独での判定に限界があるものと思われた。
資料
  • 福嶋 陽子, 小貫 明美, 大矢 幸子, 池澤 剛
    原稿種別: 資料
    2015 年 64 巻 5 号 p. 610-616
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    花粉症は,花粉によって引き起こされるI型アレルギー疾患である。特に日本では,スギ花粉症の罹患者数は年々増加傾向にあるが,今後も継続的な大量飛散等により,罹患者数の増加や低年齢化が予想されている。 花粉飛散はその地形や気候変動の影響を大きく受けるため,地域に密着した情報提供は抗原回避や花粉曝露への対策に活用でき,その意義は非常に大きいと考えられる。また,特異的IgE抗体検査の結果と共に花粉飛散情報を活用することは,罹患者のQOL向上にも役立つ。そこで我々は,当研究所におけるスギ花粉飛散状況を把握するため,2012年~2014年に花粉飛散数の計測を行い,当研究所におけるスギ特異的IgE抗体検査の受託件数及び陽性率との関連を検討した。花粉飛散数は受託件数及び陽性率に影響することが示唆された。前年の飛散状況や気候等の影響を大きく受けるため,地域に根ざした調査や情報提供の活用が重要である。
  • 岩田 泰, 中根 一匡, 河内 誠, 野田 由美子, 舟橋 恵二, 後藤 研誠, 西村 直子, 尾崎 隆男
    原稿種別: 資料
    2015 年 64 巻 5 号 p. 617-621
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    Mycoplasma pneumoniae(Mp)は小児肺炎の重要な起因病原体である。われわれは,肺炎患者からloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法を用いたMp DNA検出検査を実施しており,今回,最近5年間の成績を報告する。2009年4月~2014年3月に,肺炎の診断で当院に入院した小児2,215例から咽頭ぬぐい液を採取し,LAMP法によりMp DNAの検出を行った。2,215例中712例(32%)がMp DNA陽性であった。年齢は1ヶ月~15歳6ヶ月で中央値年齢が7歳2ヶ月であった。年度別のMp DNA検出例数は2009年37例,2010年161例,2011年308例,2012年147例,2013年59例であった。2011年に全国的なMp肺炎の流行があり,当院においても,2011年の9月に最も多い月間発生数をみた。検出例数の暦月別検討にて,春に少なく夏から初冬にかけて多いという季節集積性を認めた。712例全例でペア血清の抗体価を測定し,559例(79%)に抗体陽転または4倍以上の抗体価上昇を認めた。LAMP法によるMp DNA検出は簡便・迅速で感度が高く,小児Mp肺炎の有用な検査室診断法と考えられた。
  • 高見沢 将, 中田 昭平, 小嶋 俊介, 山崎 一也, 伯耆原 慎也, 丸山 紘明, 今井 真澄
    原稿種別: 資料
    2015 年 64 巻 5 号 p. 622-627
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    近年,職能団体としての技師会活動に参加する若手臨床検査技師の参加率の低下や,技師会役員の固定化が憂慮されている。この問題に対し,全国規模の学会でも若手参加型の技師会をつくるための議論の場が設けられた。長野県臨床検査技師会は日本医学検査学会のシンポジウム開催を契機に,若手臨床検査技師で構成する若手企画実行委員会を立ち上げた。この委員会は,若手検査技師が技師会に求めるニーズを調査し,そのニーズに対応するべく,「コミュニケーション特化型研修会」や「実習型研修会」等の企画を立案し,4年間にわたり活動してきた。これらの研修会を実施した結果,若手技師による複数の施設協同による学会発表や,施設間の垣根を越えた自主的な勉強会が開催されるなどの変化がみられた。また,学会発表における若手技師の意識の向上にも貢献したと考えられる。さらに,若手技師の技師会活動への参画が活発になったことで,各研究班における役員に若手技師の登用も進んだ。この委員会は,これらの業績を評価され,のちに青年局という名称で技師会内に再組織された。若手技師参加型の技師会になるためには,若手のニーズの変化を常に探る努力が必要であり,そこに技師会のシーズを合致させることが必要不可欠である。そのためにも,各都道府県技師会が若手技師を積極的に技師会組織に登用し,若手技師で構成される組織を技師会内に内包することが有用と考えられる。
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