医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
65 巻, 5 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
原著
  • 角屋 勇気, 梅沢 政功, 山崎 恒, 金子 孝昌
    原稿種別: 原著
    2016 年 65 巻 5 号 p. 493-499
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    様々なセフェム系抗菌薬を用いて,AmpC産生性が検出されるか基礎的評価を実施した。AmpC産生菌の検出感度成績は,評価したセフェム系抗菌薬のうちCFDN,CDTR,CFPN,CPDXが優れていることが確認された。また薬剤によっては,ディスク拡散法による判定成績に影響を及ぼすほどの二重阻止円が形成され,セファマイシン系,オキサセフェム系抗菌薬で高い傾向(10.3~20.7%)が,第3世代セファロスポリン系抗菌薬においても0~13.8%に認められた。そのなかでもAmpC産生菌を検出するための検査にも利用されているCPDXは比較的安定(3.4%)していた。二重阻止円を形成した菌株について,その阻止円辺縁より得られたコロニーを用いて,ディスク拡散法による感受性試験を実施したところ,多くの菌株で阻止円径は小さくなり,かつ二重阻止円は形成されなくなったことからAmpC産生の増強が推察された。

  • 田中 伸久, 長井 綾子
    原稿種別: 原著
    2016 年 65 巻 5 号 p. 500-504
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    新生児における生化学的検査項目の基準範囲は未だ確立されたものがない。一因に個体差が著しいことが挙げられるが,個体差は在胎週数によるところが大きいと思われる。そこで在胎週数から「22~27週」,「28~36週」,「37~41週」の3群に分けて,生化学的検査15項目の参考基準範囲を求めた。当院における新生児の検査データを材料とし,原因が明確な異常値は除外した。年齢は「生後6日まで」と「生後7~27日」とに区分した。在胎週数により区分した3群間には有意な差が認められ,群分けせずに求めた参考基準範囲との比較でも差異がみられた。総蛋白は代表的な例であり,生後0~6日の参考基準範囲は,在胎週数22~27週の群で3.0~5.3 g/dLに対し,36~41週の群で4.2~6.5 g/dLであった。新生児の基準範囲を検討する際に,在胎週数を考慮することは有用と考えられた。

  • 星 雅人, 宇佐美 真奈, 井上 亜耶, 蛯原 仁鈴, 福田 智帆
    原稿種別: 原著
    2016 年 65 巻 5 号 p. 505-512
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    尿沈渣標本は,長期間の保存が困難であり,数時間で鏡検不可能となる。現在までに尿沈渣検体に固定液を添加する方法や,特定の成分のみを標本として保存可能な方法は報告されているが,多くの尿沈渣成分を標本として保存する方法は確立されていない。本研究では,尿沈渣標本を長期間保存する新規尿沈渣封入液として,水飴加緩衝液を開発した。本封入液は多くの尿沈渣成分を室温で少なくとも1年間以上は保存可能であった。本封入液を用いることにより,臨床現場や教育施設における教育的効果あるいは同一標本を用いた精度管理等に極めて貢献できることが期待される。

技術論文
  • 原田 美香, 則松 良明, 香田 浩美, 内野 かおり
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 5 号 p. 513-520
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    我々は,従来法で疑陽性と判定され,組織診を実施した52症例について,液状化検体細胞診(liquid-based cytology; LBC)であるBDシュアパス標本とOSG式判定法(OSG判定)を用いて評価し,子宮内膜細胞診の精度向上を目指した。組織診断で良性29症例(増殖症を含む)と悪性23症例(異型増殖症以上を含む)に分け,OSG判定と比較した。OSG判定は「陰性」,「内膜異型細胞(ATEC)の意義不明(US):ATEC-US」,「異型増殖症以上を除外できない(A):ATEC-A」,「増殖症」,「悪性」に分類され,それぞれの診断結果について,良性29例では5例(17.2%),14例(48.3%),4例(13.8%),6例(20.7%),0例であり,悪性23例は1例(4.3%),2例(8.7%),14例(60.9%),0例,6例(26.1%)であった。加えて,組織診断で良性例の多くがATEC-US(14/18例;77.8%)に属し,悪性例の多くはATEC-A(14/16例;87.5%)であったことより,判定による分類は適正に組織学的診断を反映していることが証明された。化生変化には十分に注意を払い観察する必要があることが今後の課題ではあるが,本方法の普及は子宮内膜細胞診の診断精度向上に大いに期待できる。

  • 野内 恒男, 岡嶋 麗子, 松崎 麻美, 佐藤 由美, 大槻 歩美
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 5 号 p. 521-525
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    頸動脈エコーで総頸動脈左右拡張末期血流速度比(以下,ED ratio)を計測することは,内頸動脈遠位部狭窄・閉塞を示唆する重要な手段である。今回我々は,スクリーニング検査の測定条件として分岐部から2 cm以上中枢側で測定し,超音波ドプラ血流速度は超音波入射角60度 ≥ で左右一定にして正確に計測することにより,頸部血管超音波検査ガイドラインのED ratio ≥ 1.4より低値のED ratio ≥ 1.2で内頸動脈遠位部病変を認め,さらに,ED ratio 1.2‍~1.6の狭い範囲で病変の有無と病変部位を推測できる可能性が示唆されたので報告する。

  • 持田 志穂, 齋藤 裕美, 赤津 哲, 山﨑 哲
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 5 号 p. 526-532
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    血液ガス分析で抗凝固剤として使用されているヘパリンはイオン化カルシウム(Ca2+)の測定に影響を与えることが知られている。IFCCのガイドラインでは,ヘパリン濃度を低濃度ヘパリン15 IU/mL以下,カルシウム調整済みヘパリン50 IU/mL以下での測定が推奨されている。今回,健常職員10名の静脈血を対象とし,低濃度ヘパリン(LH:テルモ),カルシウム調整済みヘパリン(BH:日本ベクトン・ディッキンソン)の2種類の血液ガス分析用採血キットを用いて,抗凝固剤を含まない血液を対照としてCa2+測定におけるヘパリンの種類や測定時のヘパリン濃度,また測定までの時間経過による影響を検討した。LHは今回検討したヘパリン濃度(2.8, 4.7, 14.0 IU/mL)のいずれでも臨床的許容範囲下限(−0.05 mmol/L)程度の低下を認め,また時間経過によってヘパリン濃度に依存した低下を認めた。BHは推奨ヘパリン濃度を大きく上回る濃度(160.0 IU/mL)で臨床的許容範囲を超える低下を認めた。今回の検討結果より,BHはLHと比べCa2+の低下は軽度であったため,Ca2+測定時はBHの使用が有用であると考えられた。ヘパリン濃度および時間経過によるCa2+値への影響を最小限にするためには,推奨採血量を採取し推奨ヘパリン濃度で,加えて特にLH使用時は採取後速やかに測定することが重要である。

  • 田島 桂子, 宮澤 義
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 5 号 p. 533-539
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)は極めて進行が速く,発症後2~5年で半数ほどが呼吸筋麻痺による呼吸不全で死に至る。呼吸管理をするうえでスパイロメトリーは必要不可欠な検査であるが,筋力障害のためスパイロメトリーが困難で,病態に即した値を導きだすことが難しく,努力呼出の誘導や妥当性の基準は不明である。我々は11症例のALSの病期進行に伴う肺気量変化とFV曲線のパターンの変化の関係を解析し,最大努力呼出の誘導や妥当性の確認の目安となる指標を調べた。ALS患者の病期進行に伴うFV曲線のパターンの変化は,呼出の持続ができず呼気終末が止まる腹式呼出障害パターン,スムーズな胸・腹式共同呼出ができず下降脚が乱れる胸・腹式共同呼出障害パターン,速い呼出ができずピークの低い波形となる胸式呼出障害パターンの順に現れた。また,この呼出障害パターンが現れる肺気量(%FVC)は,腹式呼出障害パターンで100%,胸・腹式共同呼出障害パターンは80%,胸式呼出障害パターンは50%程度で出現しはじめた。肺気量とFV曲線の呼出障害パターンを参考にすることで,病態に合致した最大努力呼出の誘導および妥当性の確認が可能となることが示唆された。

  • 又賀 史織, 矢野 加代子, 黒瀬 美枝, 中島 静, 森田 益子
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 5 号 p. 540-545
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    自動血球分析装置CELL-DYN Sapphire(アボット社)では,白血球測定時にリンパ球領域の下方や右側面に溶血抵抗性赤血球(RRBC)の出現を経験する。今回我々は,RRBCのスキャッタグラムパターンとその赤血球形態異常との関連性について検討した。RRBCを認めた156検体をRRBC(+)群とし,そのうちスキャッタグラム上,リンパ球領域の下方に出現したものをI群,リンパ球領域の右側面に出現したものをII群,リンパ球領域の下方+リンパ球領域の右側面に出現したものをIII群とした。各群とRRBCを認めない300検体の間に赤血球形態異常の出現率に有意差があるか確認したところ,RRBC(+)群では赤血球形態異常が高頻度に認められた(カイ2乗検定,p < 0.01)。その内容は,リンパ球領域の下方に出現するI,III群では標的赤血球が高率であり,リンパ球領域の右側面に出現するII,III群はHowell-Jolly bodyが高率であった。また,Howell-Jolly body出現時には有棘赤血球が高頻度で認められた。RRBCの出現は赤血球形態異常を示唆しており,スキャッタグラムパターンから赤血球形態異常の推測も可能であった。赤血球形態は顕微鏡下でしか捉えることができないため,我々は使用する装置の性能や特徴を十分に理解し必要に応じて目視検査を進めていく必要性を感じた。

  • 三好 雅士, 西岡 麻衣, 中尾 隆之, 土井 俊夫
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 5 号 p. 546-550
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    タクロリムスは主に各種臓器移植の治療を対象に使用される免疫抑制剤であり,吸収・代謝における個人差が大きく,薬物血中濃度モニタリングが必須である。今回我々は,ラテックス凝集比濁法を測定原理とした新規測定試薬であるナノピアTDMタクロリムス(積水メディカル)について,性能評価を行った。同時再現性のC.V.(%)は1.42~5.40%,前処理担当者を日々変更した日差再現性のC.V.(%)は2.86~7.00%と良好であった。再現性は満足できる結果であったが,従来試薬と同様に前処理操作が測定値へ影響を与えるため,手技の統一化と習熟が精度の高い報告に繋がると考えられた。直線性上限は26.5 ng/mL,定量限界は1.59 ng/mLであり,十分な測定範囲を有し,低濃度域でのモニタリングを必要とする患者においても,信頼性の高い報告が可能である。試薬開封後10日までは安定していたが,それ以降は経時的に上昇し,30日経過時においては0.1~21.5%の高値傾向が認められた。この高値傾向は低濃度域においてより顕著であり,開封後の時間経過に伴う,試薬中の抗体あるいは感作ラテックスの劣化による影響が推測された。汎用自動分析装置に搭載可能となったことで,測定時間が大幅に短縮し,迅速化,運用の効率化,コストの軽減も期待できた。本試薬は,従来試薬に比し,日常検査において有用性が高いと考えられた。

  • 西森 まどか, 永友 利津子, 下坂 浩則, 大久保 滋夫, 池田 均, 矢冨 裕
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 5 号 p. 551-556
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    抗Sm抗体は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus; SLE)に対する疾患特異抗体である。対応するSm抗原は,複数のポリペプチドにより複合体を形成しているが,なかでもSmD抗原は,その対応抗体が高い疾患特異性を示すことから,国内外の臨床診断薬の固相化抗原として採用されている。しかし,精製抗原の性質上,目的タンパク以外の共存物質の完全な除去は困難であり,SmBB’抗原が残存する。そのSmBB’抗原がRNP-A抗原,RNP-C抗原と共通のアミノ酸配列をもつため抗U1-RNP抗体と交差反応を起こし,抗Sm抗体が偽陽性になることが報告されている。そこでSmD抗原の中でも,さらにSLEに特異度が高いSmD3のエピトープのペプチド化により作製されたSmD3合成ペプチド抗原を用いた試薬「エリア SmDp」(サーモフィッシャーダイアグノスティックス株式会社)が開発された。本試薬の基礎検討を行ったところ,特異性と感度が向上し,より正確な診断が可能になると考えられた。

  • 中島 あつ子, 柴崎 光衛, 本多 なつ絵, 日谷 明裕, 党 雅子, 春木 宏介
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 65 巻 5 号 p. 557-564
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    血中特異的IgE抗体の測定は,アレルギー疾患の補助診断および治療方針の決定に重要な検査の一つである。同時多項目のスクリーニング検査としては,従来,マストイムノシステムズIII(MAST III,日立化成(株))が利用されているが,精査のイムノキャップキットと結果が合致しないことなどが問題となっている。近年,Viewアレルギーがサーモフィッシャーダイアグノスティックス(株)から開発された。今回,両法の基礎的性能を比較検討し評価した。再現性,検出限界,高濃度IgE抗体の影響については,Viewアレルギーの方が良好な結果が得られた。クラス相関性については,食物系の陽性一致率が50%以下と低かったが,バラツキの検討などからViewアレルギーの方がMAST IIIよりも精密性に優れていることが確認された。Viewアレルギーは,多項目の特異的IgE抗体のスクリーニング検査に適していると思われた。

資料
  • 馬場 ひさみ, 徳竹 孝好, 北谷 陽平, 常田 こずえ, 松岡 桃子, 野崎 美智江, 中田 昭平, 小林 光
    原稿種別: 資料
    2016 年 65 巻 5 号 p. 565-569
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    平均赤血球容積(mean corpuscular volume; MCV)は,赤血球恒数の中で個人内変動が小さく患者取り違えの指標としても利用されている項目である。今回,EDTA-2K加3 mL用採血管(3 mL用採血管)への規定量以下の少量採血が,自動血球計数装置XN-9000のMCV測定に与える影響について検討を行った。健常者5名について,血液1 mLに対するEDTA-2K濃度を,3 mL用採血管で0.3~4.5 mL採血した場合と同等となるように調整したサンプルをXN-9000で測定したところ,全例でEDTA-2K濃度が高いほどMCVが高くなる傾向を認めた。また,血算測定後のサンプルを遠心分離して得た血漿の浸透圧は,EDTA-2Kの濃度が高いほど高値であった。この結果より規定量以下の少量採血では,EDTA-2K濃度の増加に伴う血漿浸透圧の上昇がMCV に影響を与えている可能性が示唆された。3 mL用採血管は,2 mL用採血管よりもEDTA-2Kの添加量が多いため,より採血量の影響を受け易いことが推測される。

  • 芝 直哉, 橋本 大祐, 中谷 祥子, 岡村 ひろ子, 木下 肇, 大塩 稔, 青山 早苗, 柳澤 昭夫
    原稿種別: 資料
    2016 年 65 巻 5 号 p. 570-575
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    我が国の悪性新生物による死亡は増加傾向にあり,中でも大腸がんは2015年部位別罹患数予測の第1位である。そこで現状把握のため2014年4月から2015年9月の間に当センターで下部消化管内視鏡的に採取した248例・645病変の結果をレトロスペクティブに分析した。今回は特に部位別の検討を行ったが,良性悪性ともに分散しており偏在を認めなかった。年代別では,60代・4.1%,70代・5.8%,80代・19.3%と年代が上がるにつれて悪性率が上昇した。また,大きさ別にみると,5 mm未満では悪性病変を認めず,5 mm以上10 mm未満では1.8%,10 mm以上20 mm未満では13.9%,20 mm以上では62.5%と,大きくなるにつれて明らかに悪性率が上昇していた。型別にみると,病変数はIs型が圧倒的に多いが,悪性率は1.4%と高くなかった。1型以上の場合は78.6%と悪性率が高く,特に上行結腸での率は高く注意を要すると考えられた。鋸歯状病変については,過形成性ポリープ(HP),高基性鋸歯状腺腫/ポリープ(SSA/P),古典的鋸歯状腺腫(TSA)の3者に大別し検討した。大きさや型については有意差を認めなかったが,部位についてSSA/Pは右側結腸にしか存在せず,明らかな局在を認めた。同時性大腸がん合併の有無についても検討したが,TSAおよびSSA/PのみならずHPにも合併を認めた。

  • 加賀山 朋枝, 菅野 恵未, 宇賀神 和久, 家泉 桂一, 望月 照次
    原稿種別: 資料
    2016 年 65 巻 5 号 p. 576-581
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    前回,人事考課と日常業務に係る行動特性から二次元複合解析図を作成し,その座標位置から5つのグループに分類し,インシデントに係る行動特性を解析し報告した。今回は,慣れない検査業務を行う新入職員のインシデント発生と,指導に当たる職員のインシデント発生について二次元複合解析を行った。新入職員は,経験を積むだけではなく学術的な知識や手順の重要性を含めた指導を必要とし,また,指導に当たる職員には,他者からの作業中断や意識が散漫している状態はインシデントが発生しやすい場面と自覚し,一度立ち止まり,振返りの確認作業から業務を再開するよう指導することで,インシデントの発生は減少させられると考えられた。

症例報告
  • 谷渕 将規, 松岡 亮仁, 久保 博之, 山岡 源治, 田岡 輝久
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 65 巻 5 号 p. 582-588
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    混合表現型急性白血病(mixed phenotype acute leukemia; MPAL)の診断はフローサイトメトリー(FCM)にて比較的容易だが,その形態学的特徴は不明な点が多い。今回われわれは2系列型フィラデルフィア染色体(Ph)陽性MPALを経験した。症例は60歳女性,高熱と紫斑を主訴に当院血液内科入院となった。末梢血にて貧血,血小板減少,芽球の出現を認めた。骨髄穿刺では小型リンパ芽球様細胞とFAB分類にて急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia; AML)-M1の特徴を示すアズール顆粒に乏しく,ミエロペルオキシダーゼ(MPO)染色弱陽性(6%)の中型から大型の芽球様細胞がみられた。FCMでは骨髄性(CD13, MPO: 47.9%)マーカー陽性とBリンパ球(CD10, CD19, CD79a)マーカー陽性の領域に分かれ,さらにPCR法にてminor BCR/ABL融合遺伝子を認めたことから2系列型Ph + MPALと診断した。形態学的にMPOに乏しい大型芽球様細胞と小型リンパ芽球様細胞の混在が観察された場合,Ph + MPALを想起する必要があると考えられる。

  • 藤田 朋浩, 小澤 幸江, 秦 夏紀, 立身 侑子, 吉井 智子, 荻 真里子, 廣瀬 米志, 髙橋 孝
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 65 巻 5 号 p. 589-594
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/10
    ジャーナル フリー

    Cryptococcus neoformansによる播種性クリプトコッカス症を一例経験したので報告する。症例81歳男性,水疱性類天疱瘡に対してステロイド内服加療中,潰瘍を伴う紅色結節性病巣が出現し,病巣部組織検体グラム染色により莢膜様染色像を伴った酵母様真菌を認め,同組織を培養しC. neoformansを検出した。既報皮膚クリプトコッカス症症例報告において,グラム染色にて菌体確認困難であった一因として,C. neoformansは皮膚組織中の真皮層で増殖することに起因すると推察し,標本作成時にスライドガラスを用いたすり合わせ塗抹法を実施した。簡便な手法により組織を破砕し作製した標本において,グラム染色により菌体及び莢膜を明瞭に染色可能であった。グラム染色では加温による莢膜熱変性と推察されるハロー状染色性減衰現象を検証実験により確認した。本症例は病理組織及び微生物学的所見にて菌体を証明し,血清クリプトコッカス抗原が陽性であったので,播種性クリプトコッカス症と診断した。播種性クリプトコッカス症は比較的稀な症例であるが,予後不良であるため原発病巣の確認,向中枢神経傾向が強く髄液及び血液の微生物検査,全身播種病巣の検索を積極的に行う必要がある。

feedback
Top