これまで痙性の電気生理学的治療評価法として,H波が用いられてきた。しかし,痙性の治療法の一つであるバクロフェン髄腔内投与療法(intrathecal baclofen therapy;ITB療法)前にH波が出現せず治療前後で比較できない症例やITB療法後にH波が消失し定量的な評価ができない症例を経験した。そこで治療程度の効果判定のための指標としてF波が利用可能か否かを検討した。さらに,F波所見と臨床所見との関連性も検討した。対象は当院脳神経小児科を受診し,ITBトライアルを行った痙性麻痺患者7人11脚(3~11歳)。F波は出現率,F/M,最大振幅-最小振幅,変曲点数,面積,面積変動係数について検討した。臨床所見は膝関節伸展,膝関節屈曲,足関節背屈の平均アシュワースケールスコア(Ashworth score; AS)を用いた。治療により,F/M,面積は有意に減少した(p < 0.01, p < 0.05)。また,治療前では,ASと変曲点との間に正の相関(r = 0.618, p < 0.05),面積との間に強い負の相関(r = −0.763, p < 0.01)が認められた。以上からF/Mと面積が治療効果判定に有用と思われた。
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