医学検査
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66 巻 , 1 号
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原著
  • 佐伯 勇輔, 大﨑 博之, 此上 武典, 藤田 泰吏, 北澤 荘平
    原稿種別: 原著
    2017 年 66 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    尿細胞診は,尿路系悪性腫瘍のスクリーニングや経過観察に欠かすことのできない検査であるが,他領域の細胞診に比べ誤陽性の比率が高いという問題がある。特に,尿路結石患者の尿中に出現する反応性尿路上皮細胞は,形態学的に尿路上皮癌細胞に類似するため,誤陽性の原因となっている。そこで今回は,反応性尿路上皮細胞と尿路上皮癌細胞を客観的に鑑別することを目的として,vimentinを用いた免疫細胞化学的検討を行った。反応性尿路上皮細胞群18症例,尿路上皮癌細胞群17症例,正常尿路上皮細胞群21症例を対象とした。上記症例にvimentinを用いた免疫細胞化学を行い,1)各群における症例別のvimentin陽性率,2)各群における全細胞集団別のvimentin陽性率,3)反応性尿路上皮細胞群における結石の存在部位とvimentin陽性率の3項目について比較検討を行った。症例別と全細胞集団別のvimentin陽性率においては,反応性尿路上皮細胞群が尿路上皮癌細胞群・正常尿路上皮細胞群よりも有意に高い結果を示した。結石の存在部位とvimentin陽性率では,腎盂の方が尿管よりも有意に高いvimentin陽性率を呈した。今回の検討で,尿路結石症例に出現する反応性尿路上皮細胞のvimentin陽性率は,尿路上皮癌細胞よりも有意に高いことが明らかになった。以上よりvimentinを用いた免疫細胞化学は両者の客観的な鑑別に有用である。

  • 榊原 健夫, 滝野 寿, 榊原 英一, 坂本 祐真, 濱嶋 由紀, 正木 彩子, 村瀬 貴幸, 稲垣 宏
    原稿種別: 原著
    2017 年 66 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    病理解剖で遺体から摘出された臓器は通常,ホルムアルデヒド溶液によって固定された後,ホルムアルデヒド溶液を新しく交換して保存される。固定後に病理診断用の組織ブロック作製に際し,臓器に含まれるホルムアルデヒド溶液を除去するために長時間の水洗が必要とされる。ホルムアルデヒド溶液を新しくする際や水洗不十分なホルムアルデヒド固定臓器をトリミングする際に,病理医や臨床検査技師へのホルムアルデヒド暴露の危険性がある。本研究では,ホルムアルデヒド溶液にて解剖材料を1週間固定後,2-プロパノール溶液で臓器を3ヶ月間保存した場合(AL法)と,ホルムアルデヒド溶液にて3ヶ月保存した従来法(FA法)と比較した。AL法は切出し室および臓器周辺の空気中ホルムアルデヒド濃度を有意に低減させ,ヘマトキシリン・エオジン染色標本の組織形態を維持させることが可能であった。また,AL法では免疫染色における抗原性の保持がFA法よりも一部の抗体においては良好であった。さらに,AL法は核酸保存性においてもFA法に比べ良好であった。以上から2-プロパノールを用いた臓器保存法(AL法)は,解剖臓器の保存に有用である。

  • 盛田 和治, 金子 誠, 曽根 伸治, 矢冨 裕
    原稿種別: 原著
    2017 年 66 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    ISO15189は,患者診療にとって不可欠である臨床検査室のサービスの重要性を掲げている。そのため,ISO15189認定検査室ではその顧客である患者や臨床医に対して有益で必要不可欠な検査実施機関になるためには,患者サービスによる奉仕も重視すべきであると考えられる。それに加え,昨今,医療に対する患者の要望が多様化しており,臨床検査室でもその要望に的確に応え,その満足度を向上することは容易ではない。そこで,我々の検査部では検査部を利用する患者の満足度を高めるために患者アメニティ(快適さ)に着目し,2006年4月には患者アメニティ改善委員会を設置して,それ以降日々サービスの向上に努めることとした。その一環として,2014年10月,採血室を利用している全ての患者に対して,「採血・採尿検査待合所および採血室に関するアンケート」を実施し,その意見を参考にスタッフの接遇向上,施設や設備などの快適さについて,さらなる改善を目指した。2006年にも同様なアンケート調査を実施したが,本報告では今回のデータと比較検討して検証したものを述べる。また,2013年に実施した検査室のリニューアルによる採血台の増設や採血システム・機器の更新,および患者混雑状況に合わせた人員配置の工夫の効果も併せて報告する。アンケート調査は,これまでの業務評価,かつフィードバックできる有用な方法である。今後もアンケート調査を実施し,サービスの良い検査部運営を心掛けたい。

  • 市村 直也, 糸井 彩子, 甲田 祐樹, 大久保 有希, 萩原 三千男, 東田 修二
    原稿種別: 原著
    2017 年 66 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    顆粒球系幼若細胞分類(骨髄芽球,前骨髄球,骨髄球,後骨髄球)の標準化と技師間差の是正を目的に,日本検査血液学会(JSLH)から公開された細胞画像(基準画像)を利用した内部精度管理(IQC)アプリケーションを開発した。これは検査担当者に基準画像をコンピュータモニタ上で分類させ,JSLHとの一致の程度を定量評価するものである。検査担当者3名を対象とし,細胞分類の結果をIQC実施前後半で比較した。さらに顆粒球系幼若細胞を目視分類した臨床検体を陽性検体と定義し,陽性検体数の検査担当者の違いによる変動(技師間差)をIQC開始前後で比較した。JSLHと担当者の全細胞種を含めた一致度を定量化したCohenのκ係数は,IQC実施後半で有意に上昇した。また細胞別分類一致率は,中央値が100%に近接し,分散は縮小した。さらにIQC開始後,後骨髄球(p < 0.01)を除き,陽性検体数に技師間差を認めなかった。JSLH基準画像を利用したIQCの実施により,細胞分類の正確度と精密度が向上し,顆粒球系幼若細胞分類における技師間差を是正した。本研究は顆粒球系幼若細胞分類の標準化に寄与し,臨床検査値の品質の向上を期待できると結論する。

技術論文
  • 大西 雅人, 李 相太, 宇井 孝爾, 小泉 章, 問本 佳予子, 藪内 博史, 田中 忍, 梅木 弥生
    原稿種別: 技術論文
    2017 年 66 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    B群連鎖球菌(GBS)は新生児における髄膜炎および敗血症の起因菌の一つで,新生児のGBS感染を予防するため妊婦GBSスクリーニング検査が推奨されている。しかしGBS以外の菌種がその培養過程で増殖し,その選択性に影響を及ぼす可能性がある。そこで,今回我々は国内3社の選択増菌培地および選択分離培地を用いてEscherichia coliE. coli),Candida albicansC. albicans),Enterococcus faecalisE. faecalis),Streptococcus pyogenesS. pyogenes)と種々の濃度のGBSを共培養し,その選択性を評価した。その結果,3社とも1)選択分離培地ではGBSと他の菌種と選別は容易であり,2)選択増菌培地と選択分離培地の併用では,E. coliS. pyogenesおよびC. albicansとの共培養ではGBSは3 × 101 CFU/mL以上の濃度において検出可能であった。一方で3)E. faecalisとの共培養においてGBSは3 × 105 CFU/mL未満では検出できなかった。以上より3社の選択増菌培地・選択分離培地の組み合わせはGBSを選択的かつ高感度に検出できることが示されたが,E. faecalisが増菌された検体においては追加培養を要する可能性が示唆された。

  • 紙田 晃, 島林 健太, 上田 直幸, 佐藤 研吾, 福田 千佐子, 廣岡 保明, 前垣 義弘
    原稿種別: 技術論文
    2017 年 66 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    これまで痙性の電気生理学的治療評価法として,H波が用いられてきた。しかし,痙性の治療法の一つであるバクロフェン髄腔内投与療法(intrathecal baclofen therapy;ITB療法)前にH波が出現せず治療前後で比較できない症例やITB療法後にH波が消失し定量的な評価ができない症例を経験した。そこで治療程度の効果判定のための指標としてF波が利用可能か否かを検討した。さらに,F波所見と臨床所見との関連性も検討した。対象は当院脳神経小児科を受診し,ITBトライアルを行った痙性麻痺患者7人11脚(3~11歳)。F波は出現率,F/M,最大振幅-最小振幅,変曲点数,面積,面積変動係数について検討した。臨床所見は膝関節伸展,膝関節屈曲,足関節背屈の平均アシュワースケールスコア(Ashworth score; AS)を用いた。治療により,F/M,面積は有意に減少した(p < 0.01, p < 0.05)。また,治療前では,ASと変曲点との間に正の相関(r = 0.618, p < 0.05),面積との間に強い負の相関(r = −0.763, p < 0.01)が認められた。以上からF/Mと面積が治療効果判定に有用と思われた。

  • 菊地 雅寛, 田中 敏典, 石澤 春美, 山田 さおり, 高橋 純子, 山本 修, 羽角 安夫
    原稿種別: 技術論文
    2017 年 66 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    新規の抗KL-6抗体を用いたラテックス凝集免疫比濁法を測定原理とするLZテスト ‘栄研’ KL-6について基礎性能と臨床的有用性について評価を行った。LZテスト ‘栄研’ KL-6は精密性,直線性など基礎性能試験はいずれも良好な成績を示し,従来法との相関性も回帰式y = 0.987x − 15.8,相関係数r = 0.975と良好であった。参考基準範囲は118~397 U/mLとなり従来法と近似しており,間質性肺炎の診断および他の疾患との鑑別性能も従来法と同等の性能を示していた。以上より,本試薬は日常診療において有用と考えられた。

資料
  • 手塚 裕子, 長田 希美, 高久 みどり
    原稿種別: 資料
    2017 年 66 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    糖尿病腎症の早期発見・治療のための検査として実施されているのが尿中微量アルブミンであり,随時尿での検査値でも糖尿病腎症病期評価が可能となった。近年尿中微量アルブミン定性半定量検査が行われている。この検査法は診療所規模でも院内の迅速検査が可能であり,保険点数も定量検査に比して安価である利点を有している。定性半定量検査は定量検査と相関において好成績を示すという報告が多く,当院においても両検査法の検査結果の一致率がどの程度であるか実試料を使用して検討を実施したので報告する。

  • 香川 昭博, 則松 良明, 寺本 典弘, 前田 智治
    原稿種別: 資料
    2017 年 66 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    本邦において主に用いられている液状化検体細胞診(LBC)法はThinPrep(TP)法,SurePath(SP)法,TACAS(TAC)法であるが,標本作製原理や試薬などが異なっているため,各標本での細胞の塗抹量や形態における差異が予測される。そのため,各々のLBC法について7つの細胞材料(肺,甲状腺,乳腺,子宮頸部,子宮内膜,尿,体腔液)を使用し,細胞学的所見を比較した。その結果,細胞の採取量と診断に値する目的細胞の出現量について,肺,甲状腺,子宮頸部,子宮内膜ではSPはTACおよびTPよりも,TACはTPよりも,有意に高値であった。乳腺,体腔液ではSPおよびTACはTPよりも有意に高値であった。尿ではSPはTACおよびTPよりも有意に高値であった。核クロマチンの状態と細胞質の保持について,尿では3法間で有意差を認めなかったが,他の材料ではSPおよびTACはTPよりも有意に保持されていた。背景の炎症所見について,尿ではSPはTACおよびTPよりも,他の材料ではSPおよびTACはTPよりも,有意に軽減していた。判定の可否について,尿では3法間で有意差を認めなかったが,他材料でTPはSPおよびTACよりも判定不可が有意に高率であり,全材料の比較においても同様の結果であった。以上のことより,同じLBC法でも標本作製原理や固定液等が異なると,細胞の塗抹量や形態に差異が生じることが明らかになった。

症例報告
  • 紙田 晃, 島林 健太, 上田 直幸, 佐藤 研吾, 福田 千佐子, 廣岡 保明, 杉原 進, 前垣 義弘
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 66 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
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    末梢神経の高頻度刺激にて異常な後期成分の出現を認めたニューロパチー症例を経験した。症例は16歳5ヶ月男性で,右手の筋力低下,筋萎縮を主訴に来院した。軽度振動覚低下を除き,他覚的感覚障害は認められなかった。初診時検査で,右尺骨神経の複合筋活動電位(compound muscle action potential; CMAP)振幅低下,左右正中・右尺骨神経のF波出現率低下,高頻度刺激F波検査において右正中・右尺骨神経に異常な後期成分,運動負荷試験直後のF波検査において右尺骨神経の後期成分が出現した。針筋電図では,右短母指外転筋での長持続,多相性,高振幅の運動単位電位が出現した。我々はこの後期成分を振幅により反復電位,小反復電位,fasciculation様波形に分類し,治療経過による変化を検討した。免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin; IVIg療法)後,反復電位の出現や振幅が減少した。治療による握力の改善に伴い,右正中神経での反復電位の減少,右尺骨神経での小反復電位の減少が認められた。右尺骨神経のCMAP振幅低下,F波出現率の低下から,本症例は軸索型ニューロパチーであることが示唆された。また本症例において,治療による後期成分の変化により,臨床症状の改善を評価できた。

  • 永川 翔吾, 八戸 雅孝, 尾形 智子, 南部 雅美, 関 律子, 中村 剛之, 長藤 宏司, 松尾 邦浩
    原稿種別: 症例報告
    2017 年 66 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/31
    ジャーナル フリー HTML

    T-リンパ芽球性リンパ腫(T-lymphoblastic lymphoma; T-LBL)はTリンパ球前駆細胞由来の悪性腫瘍である。リンパ節ないし節外性臓器に腫瘤を形成することが多く,腫瘤の圧排により呼吸障害を合併することがあるため,早期に診断し治療を開始することが重要である。T-LBL症例の90~95%以上で,細胞内抗原の一つであるterminal deoxynucleotidyl transferase(TdT)が陽性となる。そのため,TdTはT-LBLの診断確定上,重要なマーカーである。しかし,今回我々はTdT陰性のT-LBL症例を経験した。発症頻度の低いLBLの中でも,TdT陰性という非典型例であり,稀な症例であった。非典型的な症例の診断の場合は,臨床情報や他のマーカー検索も合わせ総合的に診断することが重要である。

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