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山口 真裕子, 小山 郁子, 西田 祐子, 笠井 隆之, 菅原 拓也, 小石 かおり, 小栗 豊子, 佐藤 真由美
原稿種別: 原著
2019 年68 巻4 号 p.
619-625
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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当院での血液培養の精度管理を行ったところ,汚染率が高いことが判明したため,汚染率を下げ,信頼性の高い検査を実施することを目的に,院内の血液培養検査マニュアルを改訂し,臨床現場での周知徹底に取り組んだ。調査期間は2016年4月から2017年9月までとし,改善前(2016年4月から9月)と改善後(2017年4月から9月)との比較を,過渡期を除いた同一期間について行った。当院のマニュアルは,改善前の消毒薬は「10%ポビドンヨードまたは消毒用アルコール」と記載していたが,改善後は「消毒用アルコールで消毒後,1%クロルヘキシジンアルコールで再度消毒すること」に変更し,これに伴い作用時間も変更した。また,適切な採血量も5 mLから10 mLに改訂した。改善前の汚染率は17.4%であったが,改善後は4.8%に減少した。陽性率も改善前は22.4%であったが,改善後は15.1%に減少した。また,改善前の分離菌株数は466株であったが,改善後は266株となり,検出菌株で比較すると汚染菌の代表であるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci; CNS)は44.8%から21.8%へと著明に低下した。採血部位の皮膚消毒法の変更とこれらの操作を徹底させたことが採血時の汚染菌混入の著減に効を奏したと考えられた。
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上山 由香理, 恒光 千恵, 加藤 佐代, 佐野 成雄, 宮子 博, 手嶋 泰之, 中川 幹子, 髙橋 尚彦
原稿種別: 原著
2019 年68 巻4 号 p.
626-636
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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神経性やせ症では,摂食障害により全身にさまざまな合併症を引き起こし,重篤化すると死亡に至る場合がある。心血管系の合併症としては,洞徐脈,心嚢液貯留,僧帽弁逸脱症などが見られる。特に心嚢液貯留は22~71%の患者で存在すると報告されており,神経性やせ症患者に対する心エコー図検査では心機能評価と共に心嚢液貯留の程度やその変化を観察する必要がある。また心嚢液貯留は急激な体重減少,低BMI値,低T3値との関連性が指摘されている。今回我々は神経性やせ症患者の心エコー図検査において観察された心嚢液と,各種血液および生理検査データとの関連性,また心嚢液貯留量の変化に伴う各種データの変化を解析し,神経性やせ症患者の心嚢液貯留の原因について検討した。心嚢液貯留量と各種データとの相関では,甲状腺ホルモンであるFT3,FT4で負の相関を認めた。治療前に比し心嚢液貯留量が減少した群と減少がみられなかった群における各種検査データの治療前後の比較でも,心嚢液貯留減少群では治療後に甲状腺ホルモンが改善しており,神経性やせ症の心嚢液貯留は甲状腺ホルモンと関係していることが示唆された。今回の検討より,心エコー図検査での神経性やせ症の心嚢液貯留の観察は,心血管機能への影響を含め,甲状腺ホルモンの低下や全身状態を推測する一助になるのではないかと考えられた。
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片山 雅史, 髙野 吉朗
原稿種別: 原著
2019 年68 巻4 号 p.
637-643
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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近年,主に加齢による筋委縮が原因となって,日常生活に支障が生ずるサルコペニアと呼ばれる症状が問題になっている。本研究では簡易な測定項目でのスクリーニングを目的として,大腿直筋の表面筋電図と筋の超音波像による計測の精度を検証した後,膝伸展時に一定の負荷をかけた時の変化を観察した。大腿直筋のほか,比較対象として外側広筋および内側広筋についても観察した。3筋の筋腹皮膚上にて,安静時,弱負荷時および強負荷時に筋電図を記録した。記録した筋電図は,整流後に積分してその面積を求め,筋放電量として評価に用いた。形状の観察は超音波検査装置を用いて,筋の径と断面積・周囲長および羽状角を計測した。等尺性収縮により,筋放電量は,弱負荷から強負荷と有意に増加した。超音波像による筋の評価では,短軸で断面の観察において,プローブの触圧で変動する項目があり,筋の周囲長を用いることが適切であると考えた。周囲長と羽状角は自重の負荷で上昇したが,さらに追加の負荷をかけても値はほぼ一定で変化は見られなかった。何らかの補正が必要となる可能性はあるが,本法によって筋の評価が可能であることが示唆された。
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髙野 佳美, 棚橋 洋子, 千葉 千恵子, 木村 孝司, 難波 真砂美, 津浦 幸夫
原稿種別: 原著
2019 年68 巻4 号 p.
644-649
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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卵巣癌の腫瘍マーカーとして2017年4月より保険適用となったヒト精巣上体タンパク4(human epididymis protein 4; HE4)は婦人科良性疾患や月経・妊娠の影響を受けにくいといわれている。日本人における実際の月経周期間の測定値変動や妊娠の影響の有無などを知るべく2つの検討を実施した。①CA125とHE4測定値について閉経前女性と閉経後女性の計62例で比較した。CA125で閉経前女性4名が参考基準値を超えた。1名は妊婦,3名は別日には参考基準値内に入ったことから,月経や妊娠の影響があったことが推測された。一方HE4は全員が参考基準値内であり妊娠や月経の影響を受けにくいことが示唆された。また閉経前女性と閉経後女性ではCA125,HE4ともに有意差があり,参考基準値を閉経の有無で分ける意義が確認された。②約1か月間2–3日ごとにCA125,HE4を測定した。閉経前女性は月経期間中CA125の上昇傾向が確認された(平均CV;21.47%)がHE4は月経の影響を受けず安定しており,(平均CV;8.90%)参考基準値を超える例は無かった。その生理的変動幅はHE4閉経前女性:2.7 pmol/L,閉経後女性:3.0 mol/L,男性:3.1 pmol/Lと小さく,HE4は月経や妊娠の影響を受けずCA125に比べ安定した腫瘍マーカーであることがわかった。
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中村 一人, 小川 由紀, 新保 茉理子, 服部 初美, 町田 邦光, 坪井 五三美
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
650-655
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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現在,当社で抗ヒトT細胞白血病ウイルスI型(human T-cell leukemia virus type I; HTLV-I)抗体検査法は,ウエスタンブロティング法(Western blotting assay; WB)を測定原理とした「プロブロットHTLV-I」を用いて確定診断しているが,判定保留率が高い問題点があった。そこで,我々は,ラインブロット法(line blotting assay; LIA)を測定原理とした抗HTLV-I抗体測定試薬「イノリアHTLV」を用いて,血清中のヒトT細胞白血病ウイルス抗体判定の基礎的検討を行った。同時再現性および日差再現性は ±1管差以内で良好な結果であった。「プロブロットHTLV-I」と「イノリアHTLV」の陽性一致率は100.0%と良好な結果であった。また,陰性一致率は66.7%であった。「プロブロットHTLV-I」の判定保留率の高い問題点に関して,本検討では「プロブロットHTLV-I」が78検体中20検体の判定保留だったのに対し,「イノリアHTLV」の判定保留は78検体中12検体であり判定保留率が減少した。本試薬「イノリアHTLV」は,日常の臨床検査に十分適応可能な試薬性能を有していた。
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黄江 泰晴, 有高 進悟, 梶岡 宜子, 中川 小百合, 平田 喜裕, 鶴﨑 辰也, 玉木 俊治, 大原 美奈子
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
656-662
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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近年,心筋トロポニン(cardiac troponin; cTn)試薬は高感度化し,急性冠症候群(acute coronary syndrome; ACS)における発症早期の診断感度は向上した。しかし,それに伴いACS以外の心筋傷害による偽陽性も増加した。心臓由来脂肪酸結合蛋白(heart type fatty acid-binding protein; H-FABP)はACS発症超早期の感度に優れている。しかし,cTnに比べ腎機能等の影響を受けやすくACSに対する特異度は低いとされている。今回,H-FABPの臨床的有用性を明らかにすることを目的とし,2社の試薬間の相関性や診断精度の比較検討を行うとともに,cTnIとのACSに対する感度・特異度についても比較検討した。さらに,腎機能低下群において,H-FABPの診断精度の向上を目的とした腎マーカーおよび脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)による補正効果について検討した。H-FABPは試薬間で診断精度に差がみられたが,診断感度の高い試薬では,非ST上昇型心筋梗塞患者でH-FABPのみ陽性を示した症例が認められ,cTnIに比べても診断感度が優れていた。また,腎機能低下症例においては,H-FABP/BNP比を用いることにより,H-FABP単独より診断精度が改善される可能性が示唆された。
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宮元 祥平, 谷内 亮水, 青地 千亜紀, 上田 彩未, 東條 真依, 清遠 由美
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
663-670
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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大動脈弁狭窄症に対する,経カテーテル的大動脈弁置換術(transcatheter aortic valve implantation; TAVI)の治療前後における,心機能の変化について,心筋ストレインを用いて検討した。対象はTAVIを施行した20例で,TAVI術前,術後急性期,および術後慢性期に心エコー図検査を施行し,左室心筋全体の長軸方向の収縮指標であるglobal longitudinal strain(GLS)を解析した。解析した結果,TAVI術前の20例平均のGLSは−11.5%,術後急性期のGLSは−12.0%,術前と術後急性期のGLSに有意差を認めなかった(p = 0.09)。一方,術後慢性期のGLSは−14.4%で,術前とのGLSに有意差を認めた(p < 0.01)。また,治療前後において,左室駆出率(left ventricular ejection fraction; LVEF)に著変はなかった。今回の検討により,TAVI術前と術後慢性期とのGLSに有意差を認め,大動脈弁の治療を行うことで,継続的に左室長軸方向の心筋機能は改善するものと思われた。また,TAVI前後ではLVEFに著変はなかったが,GLSでは改善した。GLSはLVEFではわからない収縮異常を検出することが可能であり,心臓弁膜症においても心機能の評価には,心筋ストレインが有用であると思われた。
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中村 一人, 町田 邦光, 坪井 五三美
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
671-676
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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厚生労働省は,風疹の定期予防接種の機会がなかった1962~1979年生まれの男性を対象に,2019年から2021年度末までの約3年間,国内で原則無料でワクチン接種を実施する方針を発表した。現在,風疹の検査は主に赤血球凝集抑制試験(hemaggulutination inhibition; HI)が,用いられている。このHI法は煩雑な工程で時間を要する用手検査である。そこで,自動分析機適応可能なラテックス凝集比濁法を測定原理とした風疹ウイルス抗体測定試薬「ランピア ラテックスRUBELLA」の基礎的検討を実施した。同時再現性と日差再現性はCV 7.0%以内,希釈直線性は良好で(相関係数:r ≤ 0.998),共存物質の影響はなく,検出限界は3.5 IU/mLであった。本試薬は,HI法と良好な相関性を示した(Spearman順位相関係数,r = 0.952,n = 150)。風疹抗体価2,300 IU/mLの試料は測定範囲の上限値以下にはならなかった。「ランピアラテックスRUBELLA」は,HI法による抗体価との読み替え可能で自動分析機による日常の臨床検査に十分適応可能な試薬性能を有していた。
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石田 奈美, 中村 竜也, 西田 全子, 小林 沙織, 楠木 まり, 大沼 健一郎, 中町 祐司, 三枝 淳
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
677-682
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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感染症の治療において,適切かつ迅速な抗菌薬投与が患者の予後の改善さらには薬剤耐性菌の発生抑制に重要である。今回我々は,感染症患者から高頻度に分離される菌の一つであるStaphylococcus属菌を用いて,全自動迅速同定・感受性測定装置ライサスS4およびライサスプレートRSMP3(ともに日水製薬)の有用性を評価した。対象は当院で血液培養から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌18株,メチシリン感性黄色ブドウ球菌21株,メチシリン耐性表皮ブドウ球菌18株の計57株とした。ドライプレートパネル(栄研化学)を対照法とした最小発育阻止濃度一致性の評価では,1管差一致率86.0%~100%,カテゴリー一致率 91.2%~100%と良好であった。また,15分ごとに最小発育阻止濃度値をモニタリングすることにより,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌ではoxacillinが平均7.2時間,Cefoxitinが平均6.9時間,メチシリン耐性表皮ブドウ球菌ではoxacillinで平均9.6時間で耐性の確認が可能であった。また,Clindamycin誘導耐性の検出精度も良好であった。以上より,ライサスS4を用いた薬剤感受性試験は日常検査に導入可能で,メチシリン耐性菌の迅速報告による適切な抗菌薬の選択をはじめとする感染症診療に有用であることが示唆された。
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小林 葉子, 石田 恵梨, 友田 雅己, 三浦 ひとみ, 佐藤 麻子
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
683-690
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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Dimensionシリーズを用いたタクロリムス測定は,ACMIA法を測定原理とし,その特徴は前処理の除蛋白操作が自動化されていることである。今回我々は,抗体や磁性粒子へのタクロリムス結合法の変更,代謝産物との反応性の改良などが成された試薬が開発されたため,試薬の性能を評価する目的で検討を行った。基本性能として再現性(併行精度,室内再現精度),希釈直線性試験,共存物質の影響,ブランク上限(limit of blank; LoB),検出限界(limit of detection; LoD),定量限界(limit of quantification; LoQ),相関性について検討した結果,室内再現精度において低濃度で若干ばらつきが認められた。相関性ではARCHITECTとの相関はy = 1.146x − 0.951相関係数r = 0.988,Cobas8000との相関はy = 1.094x − 0.947相関係数r = 0.986とDimensionが10%程度高め傾向であった。その他は概ね良好な結果であった。また,採血容器に抗凝固剤として含まれるEDTA-2K濃度が測定値に与える影響についても検討した。その結果,規定量採血されていない場合,EDTA-2K濃度の上昇により測定値が低くなる傾向が認められたが,さらなる試薬の改良によりその影響は軽減された。しかしまだ改善の余地が残されており,現状では規定量採血することが必要である。
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高嶋 浩一, 中山 泰政, 小堀 哲雄, 黒川 暢, 福田 信, 齊藤 寛浩
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
691-698
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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術中神経モニタリング(intraoperative neurophysiological monitorring; IOM)に用いる記録電極に必要な条件は安定した波形が得られること,迅速な装着が可能なこと,そして手術中に絶対に外れないことである。われわれはそれらの条件を満たし,刺激と記録の両方の使用が薬事承認されているコークスクリュー(cork screw; CS)電極を,経頭蓋運動誘発電位(motor evoked potential; MEP)の刺激と正中神経刺激による体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential;上肢SEP)の記録電極に両用することが可能であるかを検討した。その結果,CS電極を両用したIOMはMEPの複合筋活動電位(compound muscle action potential; CMAP)の振幅低下,および上肢SEP波形の振幅低下や増大する現象が,術中の血流遮断による虚血や血栓除去による血流再開通の時期と一致して鋭敏に反応し,また,その波形変化が術後の臨床症状とも合致したことで,臨床応用が可能であることが示唆された。
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林 真也, 畔上 公子, 川崎 隆, 佐藤 雄一郎, 本間 慶一, 岩渕 三哉
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
699-706
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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【はじめに】ATAガイドライン2015,ベセスダシステム第2版では,細胞診判定後の臨床的対応に分子生物学的検索が記載された。甲状腺腫瘍の診断過程において遺伝子検査を行うことは診断精度の向上や術前の診断確定に寄与するものと考える。今回,甲状腺腫瘍における遺伝子検査の有用性について検討したので報告する。【対象および方法】2013~2017年に当院にて甲状腺の手術が施行され,組織学的診断の確定した乳頭癌(通常型):15例,濾胞癌(好酸性細胞型を除く):15例,濾胞腺腫(好酸性細胞型を除く):5例,腺腫様甲状腺腫:5例を対象とした。FFPE切片からDNAおよびRNAを抽出し,遺伝子異常を検索した。【結果】乳頭癌では15例中13例(86.7%)に遺伝子異常(BRAF変異:12例,RET/PTC再構成:1例)を認めた。濾胞癌では15例中10例(66.7%)に遺伝子異常(RAS変異:9例,PAX8/PPARγ再構成:1例)を認めた。濾胞腺腫,腺腫様甲状腺腫では遺伝子異常は検出されなかった。【考察】甲状腺腫瘍において,BRAF変異,RAS変異,RET再構成,PAX8/PPARγ再構成は組織型に特異性の高い遺伝子異常である。甲状腺腫瘍においてこれらの遺伝子検査を行うことは形態診断の困難な症例において有用な情報をもたらし,診断精度の向上に寄与すると考える。
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仲田 佑未, 田仲 祐子, 室田 博美, 森下 奨太, 寺岡 千織, 野上 智, 福田 哲也, 千酌 浩樹
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
707-711
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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当院で2018年4月から8月の期間にClostridioides difficile関連下痢症/腸炎(CDAD)を疑われ,C. difficile迅速検査または嫌気培養検査依頼のあった糞便検体のうち,イムノクロマトグラフィー(IC)法でC. difficile抗原(glutamate dehydrogenase; GDH)陽性となった46検体を対象としXpert C. difficile「セフィエド」(ベックマンコールター社,以下Xpert法)の性能評価を実施した。対照としてIC法であるGEテスト イムノクロマト-CD GDH/TOX「ニッスイ」(日水製薬)および培養陽性分離株のC. difficile toxin検出(toxigenic culture; TC)を実施した。toxin A/B陽性はTC法19検体,IC法9検体(うち2検体はTC法,Xpert法陰性,IC法のみ陽性,TC法ではClostridium clostridioforme,toxin A/B陰性C. difficileの発育を認めた),toxin B陽性はXpert法では19検体であった。Xpert法,IC法それぞれTC法を対照とした場合,陽性的中率は,100%,77.8%,陰性的中率は100%,67.6%,TC法との一致率は100%,69.6%であった。IC法toxin A/B陽性,Xpert法toxin B陰性,TC法toxin A/B陰性の検体はTC法でtoxin A/B陽性のC. difficileとは異なる菌の発育を認めたため,IC法のtoxin A/Bの偽陽性であると考えられた。Xpert法は,検体提出から診断までの時間を短縮し,より迅速かつ適切な感染予防策や治療に繋がる可能性が示唆された。
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西岡 麻衣, 三好 雅士, 中尾 隆之, 長井 幸二郎
原稿種別: 技術論文
2019 年68 巻4 号 p.
712-716
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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アンバウンドビリルビン(unbound bilirubin; UB-Bil)はビリルビン脳症発症の予測指標であるが,他のビリルビンと同様,光の影響により測定値が変動すると考えられる。今回我々は,環境光曝露下におけるUB-Bilの変動について評価し,それを回避する運用構築を試みたので報告する。800 lx,400 lxの環境光下におけるUB-Bil標準液の変動を確認した結果,経時的な変動を認め,1時間経過時にはともに30%以上低下した。その後は上昇傾向を示し,7時間経過時には初回測定値に比し,800 lxでは+31.2%,400 lxでは−1.6%の変動を認めた。アルミホイル遮光下においては,3時間経過時まで一定の変動傾向を認めず,安定していた。遮光微量採血管を使用した場合,0.5時間経過時までは経時的な変動を認めなかったが,0.5時間経過以降からは経時的に変動し,5時間経過時には初回測定値に比し,18.5%低下した。患者検体でも同様の傾向であったが,UB-Bil標準液に比し,速やかな変動を認めた。UB-Bilは環境光曝露の影響により経時的に低下し,さらに長時間の光曝露により上昇に転じるといった複雑な挙動を呈した。測定前段階における変動回避のため,検体の遮光と迅速な測定を可能とする運用の構築が求められ,遮光微量採血管の使用や許容時間の設定が有用であると考えられた。
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黄江 泰晴, 有高 進悟, 梶岡 宜子, 中川 小百合, 平田 喜裕, 鶴﨑 辰也, 玉木 俊治, 大原 美奈子
原稿種別: 資料
2019 年68 巻4 号 p.
717-723
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(heart type fatty acid-binding protein; H-FABP)は心筋トロポニンやクレアチンキナーゼMBアイソザイム(creatinekinase-MB; CK-MB)と比べ早期にピークアウトする変動の速さが報告されており,今回この特徴を用い冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)後のバイオマーカー検査としての有用性を検討した。対象はPCIを行った緊急58例,待機448例とした。緊急PCI症例ではPCI直後から4時間毎に,待機PCI症例ではPCI直後・6時間後・翌朝にクレアチンキナーゼ(creatinekinase; CK),CK-MB,H-FABPを測定した。待機PCI症例においてCKやCK-MBはPCI直後・6時間後・翌朝と有意に上昇を続け残存狭窄の評価が困難であった。一方,H-FABPではPCI後残存狭窄無し群で6時間後から翌朝にかけ有意に低下したが,PCI後残存狭窄有り群では有意な低下は見られなかった。緊急PCI症例ではH-FABPは早期にピークアウトする変動の速さを示した。一方,早期にピークアウトせず増加率が高い症例では緊急性の高い狭窄が見つかった。H-FABPはその増加率や上昇持続時間から残存狭窄や再狭窄を早期に検出できるバイオマーカーであると考えられた。
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簑田 直樹, 住ノ江 功夫, 綿貫 裕, 大﨑 博之, 真田 浩一
原稿種別: 資料
2019 年68 巻4 号 p.
724-727
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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筆頭著者は,熊本地震の災害支援のために日本臨床衛生検査技師会が実施した深部静脈血栓症(deep vein thrombosis; DVT)検診に参加する機会を得た。それにより,災害支援としてのDVT検診の重要性のみならず,災害支援に対する事前準備の必要性を実感した。そこで我々は,災害支援に対する事前準備として「西播地区DVT検診実施可能者名簿」の作成を企画し,様々な方々の協力のもとに完成させた。今後は兵庫県全域の臨床検査技師を対象とした名簿作成や他組織との連携についても検討していく予定である。
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新井 菜津子, 田中 伸久
原稿種別: 資料
2019 年68 巻4 号 p.
728-730
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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現在当院では,多項目自動血球分析装置XE-5000(シスメックス,以下XE5000)を用いて,髄液中の細胞数を測定している。通常の基準値は目視法をベースとしたものであるため,XE5000を使用した際の小児における参考基準値の設定を試みた。2009~2018年に当院でXE5000を用いて測定した髄液検査データを対象とし,異常値につながる脳脊髄の疾患や血流感染,白血病などが確認できた例は除外した。年齢区分を生後0~27日,28日~1歳未満,1~5歳,6~15歳とし,基準範囲計算プログラムMCP-STAT Ver. 6(シスメックス)を用いて参考基準値を計算した。得られた値は,生後0~27日が30/μL,28日~1歳未満が13/μL,1~5歳が8/μL,6~15歳が3/μLであった。得られた値を目視法による基準値と比較すると,6~15歳を除きやや高値であった。目視法での基準値が基本であるとしても,自施設の実態に合った基準値の検討も必要と思われる。
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魚住 佑樹, 尾崎 隆男, 西村 直子, 宮澤 翔吾, 及川 加奈, 野田 由美子, 河内 誠, 舟橋 恵二
原稿種別: 資料
2019 年68 巻4 号 p.
731-736
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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2013年に結合型肺炎球菌ワクチン(pneumococcal conjugate vaccine; PCV)が定期接種化され,PCV普及による分離菌の肺炎球菌莢膜血清型置換が注目されている。今回,小児から分離された肺炎球菌の莢膜血清型を調査し,同じ方法で行った過去2回の調査成績(2002年,2008年)と比較した。2016年8月から2017年7月の1年間に,当院小児科を受診した184例から分離された肺炎球菌184株を対象菌株とした。肺炎球菌莢膜型別用免疫血清「生研」(デンカ生研)を用いたスライド凝集法にて39種の血清型を判定し,凝集を示さない株を型別不能株(non-typable; NT)とした。本検査法はPCV13に関連する血清型の全てを判定できるが,亜型は判定できない。判定された莢膜血清型は,NT 92株(50.0%),15型25株(13.6%),35型18株(9.8%),11型11株(6.0%),22型8株(4.3%),その他の型が30株(16.3%)で,PCV13関連血清型は14株(7.6%)であった。NTの分離率は2002年では3.1%,2008年では5.1%であり,今回大幅な増加を認めた。PCV13関連血清型の分離率が,2002年の83.9%,2008年の85.5%から7.6%に低下したことは,PCV13の普及による肺炎球菌の血清型置換を示唆するものである。
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高森 稔弘, 足立 良行, 大栗 聖由, 今井 智登世, 佐藤 明美, 野上 智, 福田 哲也, 本倉 徹
原稿種別: 資料
2019 年68 巻4 号 p.
737-742
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
ジャーナル
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M波後期にF波以外の活動電位を認めることがあり,その一つに刺激誘発性反復性放電(stimulus-induced repetitive discharge; SIRD)が存在する。SIRDの臨床的意義,発生機序に関しては統一見解がなく,疾患特異性がないと考えられている。そこで,今回われわれは,F波以外の活動電位を認めた症例を集積して,SIRDの臨床的意義について再検討を行った。全調査対象284例中80例(28.1%)において非F波を認めた。その内,均一な波形の症例は30例(10.6%)であった。さらに,非F波の出現様式について周期的・非周期的に分類すると,均一で周期的な非F波が認められたのは,糖尿病5例,筋萎縮性側索硬化症2例,Isaac症候群1例,そしてパーキンソン病1例であった。均一で周期的な非F波の検出部位は,非周期的なものと比較して運動神経伝導検査の異常部位との一致率が有意に高かった。一方,不均一な非F波は,不随運動を伴う疾患で多く認められ,随意収縮により人為的に導出することができたため,SIRDとするには慎重でなければならない。均一で,特に周期的な非F波がSIRDに該当し,何らかの神経障害を反映しており,今後の検討により臨床応用が可能と考えられた。しかし,M波の後期成分には,アーチファクトが混入する可能性があるため,非F波を判読するには注意する必要がある。
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藪下 亮, 江尻 いずみ, 坊池 義浩
原稿種別: 資料
2019 年68 巻4 号 p.
743-750
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
ジャーナル
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臨床検査技師等に関する法律の一部が改正・施行され,2015年4月より臨床検査技師も検体採取が実施可能となった。法律施行前の鼻腔・咽頭の検体採取率が17.0%であるのに対して,法律施行から約2年後の2017年7月は30.4%であり,伸び率13.4%であった。本研究では臨床検査技師が外来看護師に代わって,外来患者のインフルエンザ検体採取を実施することで,効率的で精度の高いインフルエンザ検査体制を構築することを目的とした。インフルエンザ検査体制の構築により,外来看護師の負担は減少し本来の看護業務に専念できるようになった。また,臨床検査技師は,検体採取に大きな業務負担がないことに加え,検査依頼から実施までの所要時間が延長することなく,チーム医療の中で大きな役割を果たすことができた。検体採取手技の精度管理に関しては,看護師は実施していなかったが,臨床検査技師は検体採取のマニュアル作成・研修・マニュアル遵守率調査・フォロー対策の流れで最終的に正しい検体採取の遵守率は100%となった。今回,臨床検査技師がインフルエンザ検体採取を実施することで,効率的で精度の高いインフルエンザ検査体制を構築することができた。今後は,病棟患者や救急患者の検体採取を実施している看護師に対しても,臨床検査技師が正しい検体採取手技を教育訓練することで,さらなる精度向上を目指していきたい。
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永田 勝宏, 田中 佳, 松本 正美, 橋本 綾, 山口 文苗, 中川 静代, 柳田 善為, 飯沼 由嗣
原稿種別: 症例報告
2019 年68 巻4 号 p.
751-757
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
ジャーナル
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トスフロキサシン(Tosufloxacin; TFLX)は,小児への適用を取得しているニューキノロン系抗菌薬である。我々は形態的にTFLX結晶と考えられた針状結晶について,その特徴を検討した。研究期間中,10例の小児例を経験し,その尿沈渣像は,褐色の細い針状結晶がウニ様または束状であった。また,針状結晶が入り込んだ結晶円柱を8例に認め,結晶円柱の多くは上皮円柱でもあった。円柱の多くは基質が緩く,平行部分が少ないという特徴があり,ネフロン再疎通までの時間が短かったものと考えられた。推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR)はほぼ基準範囲内であり,顆粒円柱の数も少なかった。しかし,過去に腎機能低下を伴う小児例も報告されており,TFLX投与中は慎重な経過観察が必要と考えられる。また,金沢医科大学病院で過去に針状結晶が検出された小児のうち81%(52/64件)がTFLXを内服していたことから,小児針状結晶形成とTFLX投与との関連が疑われた。
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河原 菜摘, 入村 健児, 内村 智香子, 緒方 昌倫
原稿種別: 症例報告
2019 年68 巻4 号 p.
758-762
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
ジャーナル
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20歳代,男性。バイク転倒時の右膝擦過傷から毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome; TSS)を発症した。主訴は発熱,嘔吐,下痢であった。検査データ,消化器症状,結膜充血,皮膚紅潮からTSSが疑われた。右膝擦過傷の培養検査で黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus; S. aureus)を分離した。分離株のスーパー抗原検査は,SEA(staphylococcal enterotoxin A)および,TSST-1(toxic shock syndrome toxin-1)が陽性であった。血液培養は2セット(4本)すべて陰性であった。不適切な右膝擦過傷の処置に加えて,患者の右膝皮膚にTSST-1産生遺伝子保有S. aureusが常在していた可能性があったことも,TSSを発症した原因であると考えられた。
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大沼 健一郎, 小林 沙織, 直本 拓己, 矢野 美由紀, 山﨑 美佳, 東口 佳苗, 中町 祐司, 三枝 淳
原稿種別: 症例報告
2019 年68 巻4 号 p.
763-768
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
ジャーナル
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腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome; TLS)は,化学療法により大量の腫瘍細胞が崩壊した結果起こる代謝異常で,高カリウム血症,高尿酸血症,高リン酸血症などを呈する。特に,尿酸塩やリン酸塩の腎尿細管腔での析出・沈着は閉塞性腎障害から急性腎不全を引き起こすため早急な対応を要する。我々は,化学療法開始後に尿中にキサンチン結晶の析出をおこし,尿沈渣検査による結晶の形態と溶解性の報告により閉塞性腎障害を防ぎ得た症例を経験した。症例は63歳,男性。頸部リンパ節腫脹を主訴に当院受診し,成人T細胞白血病/リンパ腫と診断された。TLS対策としてラスブリカーゼおよびアロプリノール投与下でCHOP療法を開始し,3日後に尿中に析出物を認めた。尿pH 8.0,尿沈渣で褐色の板状結晶と顆粒を多量に認めた。結晶は水酸化カリウムに溶解,酢酸及び塩酸に不溶であった。補液増量,利尿剤投与,さらにアロプリノール中止により結晶は陰性化した。結石成分分析で98%がキサンチン結晶と同定され,アロプリノール投与が原因となり尿酸の前駆体であるキサンチンが蓄積したと考えられた。すなわち,キサンチン結晶はアロプリノール投与を中止すべきことを示唆する重要な尿沈渣成分であると考えられる。キサンチン結石の症例報告はなされているものの,尿沈渣中のキサンチン結晶を形態学的に報告した例はなく,本症例が初めての報告である。
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吉永 治代, 山口 悠樹, 水本 安岐子, 奥口 斉仙, 竹中 清悟
原稿種別: 症例報告
2019 年68 巻4 号 p.
769-775
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
ジャーナル
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乳び尿は,尿路とリンパ管の交通を疑う主な所見である。しかし,乳び尿を呈さない場合には,尿路とリンパ管の交通を疑うことは難しい。今回,尿路とリンパ管の交通が確認された患者の継続的な検尿から,いくつかの知見を得たので報告する。症例は,腎生検のため入院となった70代男性。入院時の尿検査では,尿蛋白(3+),尿中白血球数10–19個/HPFのうちリンパ球を約9割認めた。尿の外観は,遠心前後共に淡黄色混濁を呈し,エタノール・エーテル添加により混濁が透明化したため,乳び尿と判断した。その後の膀胱鏡検査においても乳び尿の流出を認め,乳び血尿症と診断された。入院中の早朝空腹時尿は淡黄色透明を呈していたが,食後尿では乳び尿となり,この乳び尿は食事の影響を受けることを確認した。また,尿蛋白/Cr比は,尿中リンパ球数が1–4個/HPF以下では0.41 g/gCr~0.82 g/gCrに,尿中リンパ球数が5–9個/HPF以上では1.63 g/gCr~5.25 g/gCrとなり,尿中リンパ球数に連動した尿蛋白/Cr比の増減がみられ,リンパ液の混入量による影響を推測した。乳び尿は,食事の影響を受けその外観が変化する。そのため,尿の外観に左右されない尿中リンパ球の増多や尿中リンパ球数と尿蛋白/Cr比の連動も,尿路とリンパ管の交通を疑う重要な所見になると考える。
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田渕 佐和子, 入村 健児, 河原 菜摘, 浦 和也
原稿種別: 症例報告
2019 年68 巻4 号 p.
776-780
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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20歳代,男性。40℃の発熱と咽頭痛があり,当院救急外来を受診。胸部CT(computed tomography)検査で両肺に浸潤影,斑状影があり,また一部には敗血症性肺塞栓を疑う所見が認められた。血液培養からはFusobacterium necrophorumが分離された。患者は若年健常者で基礎疾患はなく,当院受診の2日前から38.6℃の発熱と咽頭痛の症状,続いて数回の嘔吐があった。頸部血管エコー検査で右内頸静脈内に血栓が認められ,総合的にLemierre症候群と診断された。
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木村 充, 亀谷 真実, 梶丸 弘幸, 園山 裕靖
原稿種別: 症例報告
2019 年68 巻4 号 p.
781-785
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
ジャーナル
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術後感染症予防の為セフェム系抗生物質を投与した患者において,ビタミンK欠乏による血液凝固障害が見られた症例を経験した。術後よりセフォペラゾンとスルバクタムの合剤の投与を開始し,5日目にプロトロンビン時間(prothronbintime; PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastintime; APTT)の異常延長を認めた。クロスミキシング試験,凝固第VIII因子,第IX因子等の検査結果より,ビタミンK欠乏症が疑われた。凝固障害判明後ただちに,ビタミンKの投与,抗生物質の変更が行われ,翌日にはPT,APTTは改善し出血症状は確認されなかった。ビタミンK欠乏の原因としては,食事由来のビタミンK不足,一部のセフェム系抗生物質に含まれるN-methyl tetrazole thiol基(NMTT基)によるビタミンK代謝障害などが考えられた。重症患者,特に経口摂取不良の患者には,凝固異常の可能性を考慮して定期的な凝固検査の実施や,ビタミンKの予防投与も視野に入れる必要がある。
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小堺 智文, 高木 洋行, 原 美紀子, 岩本 拓朗, 下平 美智子, 大月 利香, 櫻井 伸子, 太田 浩良
原稿種別: 症例報告
2019 年68 巻4 号 p.
786-793
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
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背景:炎症性乳癌(inflammatory breast cancer; IBC)は稀で予後不良な疾患である。浸潤性小葉癌組織球様細胞亜型(histiocytoid lobular carcinoma; HLC)は腫瘍細胞が組織球に類似した形態を示す稀な浸潤性小葉癌の亜型である。IBCの臨床像を示したHLCの1例を報告する。症例:70歳代女性。一カ月前から左乳房の発赤を自覚し当院を受診。左乳房超音波では皮膚の肥厚と低エコー域を認め,左腋窩部では腫大したリンパ節が観察された。血液検査では炎症反応を認めず,IBCが疑われた。左乳腺穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration cytology; FNAC)では,偏在性核と豊富な泡沫状~顆粒状胞体を有し,組織球に類似した円形~類円形の異型細胞が孤在性出現~結合の低下した小集塊を形成しており,HLCと診断された。左乳腺針生検ではFNAC同様の異型細胞を認め,E-cadherinが陰性,GCDFP15が陽性であり,HLCと診断された。以上の経過よりIBCと診断された。2年後に左乳房全摘除術が施行され,組織診ではHLCと診断され,皮膚と大胸筋への浸潤に加え,真皮に高度のリンパ管侵襲像が観察された。結論:IBCの推定には臨床所見や画像所見を加味した総合判断を要する。また,本例ではFNACがIBCの診断と組織型の推定に有用であった。
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小川 帆貴, 東海林 睦, 土佐岡 奈未, 安達 保輝, 向山 健一, 筒井 自子, 石崎 千惠子, 高桑 康成
原稿種別: 症例報告
2019 年68 巻4 号 p.
794-799
発行日: 2019/10/25
公開日: 2019/10/25
ジャーナル
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症例は,82歳女性。2015年4月に前医にてIgG-κ型多発性骨髄腫と診断された。2017年10月,胃痛により前医受診したところ膵管内乳頭粘液腫瘍が疑われ当院紹介となった。患者血清は低温(4℃)のみならず,室温(22℃)でもクリオグロブリンを形成し,低温静置検体は顕微鏡下で,室温静置検体は顕微鏡下および目視で針状の結晶を認めた。クリオグロブリンは37℃で再溶解したが,結晶は42℃で再溶解した。種々の検討により,クリオグロブリンおよび結晶は,モノクローナルIgG-κ型で構成されていることがわかり,結晶はクリスタルクリオグロブリンと同定された。本症例では,現時点で明らかな症状は見られないが,今後寒冷暴露により呈する様々な症状に注意が必要と思われた。
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