医学検査
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原著
  • 前島 理恵子, 藤原 孝記, 大曽根 和子, 難波 宏美, 永友 ひとみ, 成田 圭吾, 田代 晴子, 白藤 尚毅
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    ABO血液型には多くの亜型が存在し,血清学的性状によって分類されている。ABO遺伝子解析において,多くの亜型ではエキソン6と7に変異を認めるが,日本人に多いBm型はエキソン6と7に変異を認めないため,従来の遺伝子解析ではB/Oと判定される。近年,Bm型にはイントロン1内のエンハンサー領域を含む5.8 kb,3.0 kbの欠失や転写因子結合モチーフの変異があることが解明され,この変異によりB抗原の発現量が減少することが報告されている。当院にて血清学的性状により,Bm型およびABm型と判定された17症例について,PCR-SSP法によりエンハンサー領域を含む欠失を認めるBm遺伝子の検出について検討した。血清学的検査ではすべての症例で吸着解離試験にてB抗原が証明され,PCR-rSSO法による遺伝子タイピングでは,16例がB/OもしくはA/Bと判定され,1例がA/Oと判定された。Bm遺伝子を検出するPCR-SSP法では,16例に5.8 kbの欠失が認められ,1例は,3.0 kb,5.8 kbどちらの欠失も認められなかった。Bm遺伝子が検出されなかった症例は,遺伝子タイピングでA/Oと判定されており,血液型キメラが疑われた。血清学的検査によりBm型またはABm型と判定された場合,ABO遺伝子解析にてBm型に特有な欠失を調べることは,血液型を決定する上で有用であった。また,血清学的検査と遺伝子解析に相違が認められた場合,フローサイトメトリーによる赤血球の抗原量解析の必要性が示唆された。

  • 三島 千穂, 金重 里沙, 長谷川 真梨, 清水 直人, 本木 由香里, 野島 順三
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome; CFS)は,これまで健康に生活していた人が,ある日突然,関節痛・筋肉痛・発熱を伴う極度の疲労状態に陥り,半年以上も健常な社会生活が送れなくなる原因不明の難病である。従来の臨床検査では,特異的な異常や病因を確定できず,治療法も確立されていない。本研究では,臨床徴候により診断が確定した慢性疲労患者28症例と一般人27名を対象に,相対的酸化ストレス度(oxidative stress index; OSI)評価および単核球細胞表面抗原解析を実施し,CFS患者の鑑別診断に有用なバイオマーカーを探索した。その結果,OSIは一般人に比較して慢性疲労患者で有意に上昇していた。一方,リンパ球分画解析では,一般人と比較して慢性疲労患者ではB細胞の有意な増加,NK細胞の減少傾向が認められた。また,単球の表面抗原解析において一般人と比較して慢性疲労患者ではCD14+/CD16単球の割合が有意に減少し,CD14+/CD16+単球の割合が有意に増加していた。さらに,慢性疲労患者におけるB細胞およびCD14+/CD16+単球の増加は,OSIの上昇と関連していた。これらの結果から,酸化ストレス亢進によって引き起こされる慢性炎症がCFSの病態形成に関与している可能性が示唆された。

  • 丹野 大樹, 庄司 龍弥, 坂本 有子, 髙野 由喜子, 大橋 一孝, 豊川 真弘, 山寺 幸雄, 志村 浩己
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    Streptococcus agalactiae(Group B Streptococcus; GBS)は,母子垂直感染により新生児に重症GBS感染症を引き起こすことが知られている。本邦ではすべての妊婦に対してGBSスクリーニング検査が推奨されているが,従来の直接法では偽陰性がしばしばみられることから,より高感度な検査法が望まれている。今回,色調変化によりGBSの有無を推定できる新しいGBS増菌培地を用いた増菌法の有用性を,直接法と比較検討した。また,増菌法のサブカルチャーを行わずに増菌培養液からラテックス凝集法を併用し,直接GBSの検出が可能かどうかを検討した。GBS検出率は,直接法が13%(13/100),増菌法が18%(18/100)であった。増菌法ではGBSが検出された検体はすべて24時間後に黄色を呈し,陽性的中率は25.7%(18/70),陰性的中率は100%(30/30)であった。また,ラテックス凝集法は,サブカルチャー法で検出されたすべてのGBSを検出した。本増菌法は,直接法と比較してGBS検出率を5%増加させ,培養24時間後の色調変化によりGBS陰性を判定できる点で有用と考えられた。さらに,ラテックス凝集法は,サブカルチャー法と同等の精度でより短時間にGBSを検出でき,サブカルチャー法で判定困難なGBSの有無を客観的に判定できる点で,より有用な検査法であることが示唆された。

  • 高橋 一人, 齋藤 泰智, 小笠原 愛美, 中河 知里, 森川 知世, 佐藤 多嘉之, 下山 則彦
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    背景:抗がん剤治療は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの開発により選択肢が増えてきているが,その効果には個人差がある。今回我々は,大腸がんの予後および治療効果予測を目的として,CD-DSTによる抗がん剤感受性試験の有用性を検証した。方法:術後化学療法を実施した大腸がん症例71例を対象にCD-DSTを行い,病期分類別に高感受性群と低感受性群の全生存期間,生存期間中央値,2年生存率,5年生存率を比較した。また,6種類の大腸がん細胞株を対象にCD-DSTによるセツキシマブの薬剤感受性評価を行った。結果:II/III期の高感受性群の全生存期間は低感受性群より延長する傾向がみられた(p = 0.162)。さらにII/III期の高感受性群と低感受性群の生存期間中央値は8.6年と2.8年,5年生存率は63.6%と28.6%となり,他の病期よりも高感受性群の予後が良好となる傾向が強かった。大腸がん細胞株を用いたセツキシマブの効果予測の検証では,KRASやBRAFの変異がないcaco-2のみが高い感受性を示した。また,FOLFOXやFOLFIRIとセツキシマブの併用によって相加的な抗腫瘍効果が認められた。結論:CD-DSTはII/III期の大腸がん症例の予後およびセツキシマブ併用化学療法の治療効果予測に有用と考えられた。

  • 刈田 綾美, 眞野 容子, 神作 一実, 古谷 信彦
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    洗口剤を使用した口腔ケアにより,肺炎の発症リスクが低下したとの報告が海外で為されている。しかし,洗口剤は主に口腔疾患予防を目的としており,肺炎予防を目的としていないため,洗口剤の一部有効成分は既報の有効濃度よりも,日本における上限濃度は低くなっている。本研究では,洗口剤で使用されるさまざまな有効成分が肺炎を引き起こす病原体に対して十分な殺菌効果を提供できるかどうかを調査した。実験は欧州標準規格EN 1040に軽微な変更を加えて実施した。グルコン酸クロルヘキシジン(CHG),塩化セチルピリジニウム(CPC),及び1,8-シネオールを用い洗口剤で一般的に用いられる濃度を中心に調整した。各菌を18時間培養後,菌懸濁液を収集,PBSで洗浄し,細菌濃度を108 CFU/mLに調整,OD 660 nmで標準化した。菌懸濁液を洗口剤有効成分と10,20,30,および60秒間反応させた後,中和および希釈した各混合物を寒天プレートに広げ,35℃で18時間培養し,菌数算定を実施した。本研究の結果,洗口剤に用いられる濃度では,CPCは肺炎起炎菌に効果的であり,洗口剤で用いられるよりも低濃度で十分な殺菌効果を発揮することが明らかとなった。CHGは,いくつかの肺炎起炎菌に対して効果的であり,既報濃度(0.12–0.20%)よりも低濃度において有効であることが判明した。

  • 久野 豊
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 40-52
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    尿沈渣検査において,採尿量が非常に少ない検体を経験する。標準法では10 mLの尿を使用するが,10 mL未満の検体も「できる限り検査を実施し,その旨を記載する」となっている。そこで問題となるのは,尿量の少ない検体は,どのように検査して報告すべきかが明確でないことである。また尿量が少ないため再検査となり,患者の負担が増えることもあった。これらの問題を解決するため,尿量が少ない場合の尿沈渣検査法の構築を試みた。患者尿161検体を用い,標準法と尿量や沈渣量を調整した検体の尿沈渣成績を比較し,標準法と同等の成績が得られる検査法を検索した。161検体で検出された926の有形成分をすべて比較した結果,5 mL~9 mLの尿は,尿量5 mL,沈渣量0.1 mL(標準法と同じ濃縮率)で測定すれば,臨床的意義の高い有形成分の見落としは少なく,標準法と同等の結果が得られることが判明した。また5 mL未満の尿は,全量を使用して沈渣量0.1 mLで測定すれば,沈渣量0.2 mLで測定するよりも見落としを少なくできることも判明した。10 mL未満の尿検体は,この方法を用いることで腎・尿路系疾患の診断に貢献でき,患者の負担も軽減できると思われた。

  • 高森 稔弘, 足立 良行, 今井 智登世, 佐藤 明美, 野上 智, 福田 哲也, 本倉 徹
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    聴覚障害において早期発見の意義は高く,難聴児のquality of lifeを高めることが期待される。当院ではAABRを新生児に対して行い,聴覚障害が疑われた場合にconventional ABRが実施される。両者の結果が乖離する症例が散見されたため,AABRの有用性を検証した。対象は,2007年4月1日~2018年3月31日にAABRを施行した4,359例であり,両者の検査結果を比較した。また,AABR検査時のステータスと患児の難聴ハイリスク因子の有無を調査した。AABRでReferとなったのは65例で,その内49例にconventional ABRが実施された。偽陰性は16.0%,偽陽性は17.8%であった。結果が不一致になった症例のconventional ABRの閾値は20 dB~60 dBであった。難聴ハイリスク因子を検討したところ,頭頸部奇形では偽陽性例を認めず,例外なくconventional ABRの結果と一致した。さらに,新生児仮死では,偽陰性率が有意に高く,偽陰性4耳全例が新生児仮死であった。結果の不一致な症例が存在するものの,高度・重度難聴では不一致は生じず,AABRは新生児スクリーニングにおいて有用であることが再確認できた。しかし,AABRがPassであっても後に聴覚障害を認める症例も存在し,特に新生児仮死では偽陰性が生じやすく注意が必要である。

  • 佐々木 潤平, 石垣 しのぶ, 松村 充, 浅原 美和, 厚川 喜子, 米谷 正太, 斧 康雄, 古川 泰司
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症の治療においてlinezolid(LZD)は重要な抗MRSA薬の1つである。当院ではWalkAway 96 Plus(ベックマン・コールター)によるプロンプト法を用いた薬剤感受性測定を実施しているが,MRSAでLZDのMIC値がブレイクポイントの感性の上限である4 μg/mLを示す株が散見されるようになった。そこで,LZDのMIC値が4 μg/mLを示したMRSAを対象として分離率の年次推移を調査したところ,2010年の1.4%(8/568株)から2014年には24.4%(75/307株),以降10~15%程度で推移していた。また,他法との比較のため,対象株のうち103株を基準濁度法および寒天平板希釈法で再測定した結果,全ての株が ≤ 2 μg/mLであった。そのうち40株を,DPS192iX(栄研化学),BDフェニックスM50(日本BD),VITEK2(ビオメリュー・ジャパン)で再測定した結果,DPS192iX,BDフェニックスM50は40株全て,VITEK2は39株が ≤ 2 μg/mLであった。これらの結果から,プロンプト法による薬剤感受性測定では,MRSAに対するLZDのMIC値が他法・他機器より1管程度高値となることが明らかとなった。±1管差は許容範囲内とされるが,他の要因が加わることで2管差以上となり得るリスクがあり,臨床に与える影響も考慮する必要がある。また,自施設の薬剤感受性測定法・測定機器の特徴を把握するために検証を行うことは重要である。

  • 竹渕 真由, 宇佐美 陽子, 荻野 結加, 遠藤 里紗, 松本 剛, 石嶺 南生, 菅野 光俊, 本田 孝行
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 66-73
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    【背景】プロカルシトニン(PCT)は敗血症マーカーとして利用されており,ブラームス社の抗体を使用した測定試薬が発売されている。新たに富士フイルム和光純薬株式会社から独自の抗PCT抗体を用いた定量試薬「ミュータスワコー PCT」(μTAS)と「アキュラシードPCT」(Accuraseed),イムノクロマト法を原理とする半定量試薬「スムーズチェックワコーPCT」(Smooth Check)が発売されたので,性能評価と臨床的有用性の検証を行った。【方法】μTASとAccuraseedは,基礎的な性能と既存試薬との相関性について,Smooth Checkは技師間での判定一致率と定量試薬との一致率を検討した。臨床的有用性は,高度救命救急センターに入院した294症例を対象に,PCT値と感染症の有無,血液培養およびqSOFAとの関係性から評価した。【結果】3試薬の性能と既存試薬との相関性は良好だった。臨床的有用性の検討では,感染症症例でPCT値は陰性から高値陽性まで幅広く分布し,血液培養陽性やqSOFA 2点以上の症例でより高値になる傾向が認められた。感染症がない症例では,82%でPCT値が陰性となったが,一部の外科手術後,重症外傷症例で高値陽性となった。【まとめ】新たに発売された3試薬の性能は良好だった。PCTは感染症の重症度に伴って高値になる傾向があり,敗血症診断の補助的マーカーとして有用である。

  • 山田 暁, 梅森 祥央, 望月 真希, 淺沼 康一, 柳原 希美, 髙橋 聡
    原稿種別: 原著
    2021 年 70 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    栄養マーカーとしてアルブミンや,トランスサイレチン,レチノール結合蛋白,トランスフェリンが用いられるが,炎症の影響で血中濃度が低下する。近年,ApoC-II,ApoC-IIIが炎症の影響を受けにくい栄養マーカーになり得ると報告された。我々はApoC-II,ApoC-IIIを含むアポリポ蛋白が炎症の影響を受けにくい栄養マーカーとして有用か検討し,腎障害や高TG血症が測定値に与える影響も解析した。低栄養群51名,健常人群28名,腎障害群19名,高TG血症群24名を対象とし,低栄養群はCRP低値群19名とCRP高値群32名の2群に分け,アポリポ蛋白と各栄養マーカーの測定値を比較した。ApoA-Iは健常人群に比べ低栄養群で有意に低下したが,低栄養CRP高値群がCRP低値群より有意に低かった。ApoC-IIは健常人群と低栄養群の差が小さく,特にCRP高値群と健常人群で有意差はなかった。ApoC-IIIは健常人群に比べ低栄養群で有意に低かったが,低栄養CRP低値群とCRP高値群で有意差を認めなかった。また,ApoC-IIIは腎障害群と高TG血症群では健常人群と比べ有意に高値となった。以上の結果より,ApoC-IIIは炎症の影響を受けにくい栄養マーカーとなり得るが,腎障害および高TG血症で高値傾向となり,結果の解釈に注意を要する。

技術論文
  • 立石 亘, 受田 要, 町田 聡, 坪井 五三美
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    当社では亜鉛測定を原子吸光分光光度法にて行っているが,酢酸亜鉛製剤の適用拡大に伴い検体数が増え,対応法を検討する必要がある。そこで,検体の処理能力の高い汎用生化学自動分析機用の比色法を測定原理とした「エスパ・Zn II」の基礎的検討を行い,日常の検査に適用可能か確認した。その結果,再現性(同時再現性および日差再現性)は変動係数3.0%以内,検出限界は4.19 μg/dL,希釈直線性は約1,000 μg/dLまで良好であった。共存物質の影響では,ビリルビン抱合型および遊離型,乳び,アスコルビン酸による測定値への変動は認められなかったが,溶血ヘモグロビンは濃度依存的に測定値の減少が認められた。また,比色法は原子吸光分光光度法に対して回帰式y = 1.065x + 5.8,相関係数r = 0.971(n = 98)と良好な結果であった。以上の結果より,従来の分析機器1台あたり80検体/時間の処理能力に対して,汎用生化学自動分析機で「エスパ・Zn II」を用いることにより1,200検体/時間の処理効率にあげることができる。また,溶血検体に注意する必要はあるが本試薬を使用することにより検体の前処理の削減や検体量の少量化に貢献できる。

  • 菊地 良介, 松山 浩之, 度會 理佳, 横山 覚, 鈴木 敦夫, 安藤 善孝, 松下 正
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 1 号 p. 86-92
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    VITROS XT7600(XT7600)は無給水で分析が可能な自動分析装置であり,ビトロスマイクロスライド(ドライ)試薬に加え,汎用液状(ウェット)試薬をオープンチャンネルに搭載する運用での測定も可能である。本研究では,事業継続計画に基づく3日間の停電を想定し,試薬保管温度によるウェット試薬とドライ試薬の安定性への影響を検証した。測定機器はXT7600と対照機器としてLABOSPECT008(LST008)を使用した。試薬保管は,対照条件を各試薬の添付文書に応じた保管温度(冷蔵あるいは凍結)とし,検討条件を保冷ボックス,室温,37℃の3パターンで3日間保管した。ウェット試薬はLST008専用試薬を使用し,ウェット試薬をLST008あるいはXT7600のオープンチャンネルに搭載し測定を行った。ドライ試薬はXT7600専用試薬を使用した。測定試料は10例の患者残血清を用い,試薬保管温度による臨床化学検査10項目の測定値への影響を評価した。その結果,ウェット試薬とドライ試薬ともに,保冷ボックスによる試薬保管で検討10項目すべての測定値に影響を認めなかった。以上より,停電下では保冷ボックスによる試薬保管が有用であることが示唆され,ウェット試薬とドライ試薬によるハイブリット運用が可能なXT7600は被災後の検査体制再構築の一翼を担える分析装置になりえる可能性があると考えられた。

  • 小林 亮, 韮澤 慎也, 佐藤 勇樹, 淺沼 康一, 柳原 希美, 髙橋 聡
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    (1→3)β-Dグルカン(BG)は深在性真菌症の血清学的診断補助マーカーとして汎用されている。その測定において,従来用いられてきた比濁法は測定時間が長く,比色法はバッチ測定のため検体の追加測定が困難であることから,1日の測定回数に制限があった。近年,比色法のリアルタイム処理試薬である「ファンギテック® GテストES「ニッスイ」」(ニッスイBG)が開発されたことから,その有用性を評価した。併行精度,希釈直線性はともに良好な結果であった。患者血漿116例を用い,比濁法を測定原理とした「β-グルカン テスト ワコー」(ワコーBG)との相関性を解析したところ,ニッスイBGで測定値が約3倍となる結果が得られた。両試薬のカットオフ値から,陰陽性の判定一致率を検証したところ,ニッスイBGのみ陽性の判定不一致が8例認められた。このうち3例は真菌が検出されており,ニッスイBGが体内の真菌を鋭敏に反映していることが示唆されたが,偽高値を疑う症例も認められたことから,ニッスイBGが陽性となった場合は,臨床症状や偽高値を呈する患者背景の確認に加え,BGの経時的測定による経過観察および培養検査を実施する必要性が示唆された。ニッスイBGはBGへの反応性が高く,リアルタイム処理が可能で測定時間も短いことから,日常検査に有用と考えられた。

  • 安井 孝輔, 佐子 肇, 髙橋 秀一
    原稿種別: 技術論文
    2021 年 70 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    近年,糖尿病や造血器疾患などの基礎疾患を有する易感染患者の黒色菌糸症が増加傾向にある。原因菌種としては,Exophiala jeanselmei及びE. dermatitidisが多く,黒色真菌感染症は黒色真菌の組織内菌寄生形態からクロモブラストミコーシス,黒色菌糸症及び菌腫の3つに分類される。黒色真菌の同定の現状は,経験的知識と検査技術が必要なことから同定されないことが多い。今回,我々は実臨床に則した方法としてExophiala属の簡易同定法及び抗真菌薬感受性試験について検討した。その結果,菌種同定には選択培地,温度耐性及びスライド培養法による同定が比較的容易であり,感受性試験は目視判定が容易にできる酵母真菌薬剤感受性キット(ASTY)が有用であった。

資料
  • 中村 真紀, 坂田 裕介, 小林 秀行, 加藤 憲, 山上 潤一, 米本 倉基
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 1 号 p. 106-115
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    臨床検査部門のトップマネージャーが,どのような管理職行動をすれば,部下の職務満足度を向上させるかについての科学的な研究はこれまでなされておらず,その手段は他職種のプログラムに依存しているところが大きい。そこで本研究は現場の臨床検査技師長など部門のトップマネージャーの行動が部下の職場満足度に与える影響や,部下が求める優れた管理職行動の特性を科学的に明らかにすることでこれからのマネジメント教育の指標を得ることを目的とした。方法は難波らの先行研究を引用し,管理職行動24項目,職務満足度26項目,性別等の属性を含む計69項目を150名の臨床検査技師を対象にWEBで調査を行い,得られた回答から管理職行動と職務満足度のデータを得点化し分析を行った。その結果,トップマネージャーの管理職行動が部下の職務満足度に与える影響は極めて大きく,臨床検査技師におけるトップマネージャーへのマネジメント教育の必要性が確認できた。また,管理職行動には「キャリア重視」と「働きやすさ重視」の2つの重要な役割行動があり,そのどちらかが欠けると部下の職務不満足は改善されないことが示唆された。とりわけ,トップマネージャーにおいては,性差を問わず若年層が働きやすい職場環境の充実と,役職者に対して職場の良好な人間関係構築のための配慮を同時に遂行することが重要であり,この両者からの期待役割に対してバランスよく応えられるマネジメント教育が必要と考えられる。

  • 池内 絢香, 中西 加代子, 西山 有紀子, 長尾 美紀
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 1 号 p. 116-122
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    アークレイ株式会社より発売されている,ユーロピウム(以下Eu)蛍光ラテックスを用いたインフルエンザウイルス抗原検出キット「スポットケムFLORA FluAB」は,時間分解蛍光検出法(以下TRF法)という新しいシグナル検出法を採用した専用の自動判定免疫蛍光分析装置「スポットケムFLORA」を用いて測定を行う。今回,複数の測定スロットで3検体まで並列処理が可能なスポットケムFLORA SF-5520とスポットケムFLORA FluABを用いた,インフルエンザウイルス抗原迅速検査システムの性能評価を実施した。本検討より,同時再現性と日差再現性は良好であり,安定した結果判定が可能であることが確認された。また,血液混入が結果判定に与える影響も最小限に抑えられており,抗原量の少ない場合でも血液混入1%まで正確な判定が可能であった。さらに,他社目視判定キットに比較しB型に対して優れた検出感度を有しており,他社自動判定装置に比較し明らかに短時間での判定が可能であった。スポットケムFLORA SF-5520により自動判定された測定結果は,検査システムとの接続により診療科への自動報告が可能となる。本システムの導入は,測定者,患者,臨床現場それぞれに大きなメリットをもたらすと考えられた。

  • 星 紫織, 堀内 寿志, 橋本 賢勇, 松尾 龍志, 池田 光泰, 荻原 真二
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 1 号 p. 123-127
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    2020年2月下旬から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い,臨床検査分野の各種研修会,学会等は中止または延期となり,臨床検査に関する知識等の修得が難しい状況となった。そこで,この状況を改善する一方法として,Web会議システムとソーシャル・ネットワーキング・サービスを活用したオンライン研修会を2020年3月~5月に計3回開催し,参加者に対してアンケート調査する方法で効果を検証した。オンライン研修会のメリットとしては,自宅や職場から聴講できるため参加者の負担が減ること,遠方からでも参加できること,スライドが従来の研修会よりも見やすいこと等であった。また病院検査室からのリアルタイム配信も可能であり,デモンストレーション形式の研修会も容易に実施できる。デメリットとしては講師が参加者の反応を観察できないこと,Web会議システムで設定できる端末数の制限があること,参加者同士の交流ができないこと等が挙げられた。今後,COVID-19が終息し,通常の研修会が開催可能となった場合においても,オンライン研修会の有用性は高いと考えられる。また,今後の研修会は,従来の研修会とオンライン研修会を併用した新たな研修会方法を模索すべきである。

  • 田中 真輝人, 品川 雅明, 髙橋 聡
    原稿種別: 資料
    2021 年 70 巻 1 号 p. 128-131
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    血液培養陽性液から作製した菌濃縮液を試料とする直接extended-spectrum β-lactamase(ESBL)検出法について検討した。当院の血液培養検査にて検出されたEscherichia coliKlebsiella pneumoniaeKlebsiella oxytocaおよびProteus mirabilisの4菌種68株を対象とした。方法は,血液培養陽性液から作製した菌濃縮液を試料としシカベータテストを実施した(シカベータ直接法)。確認試験法として,サブカルチャーで得られたコロニーを用いて,Clinical and Laboratory Standards Instituteに準拠した薬剤感受性試験によるスクリーニングおよびディスク法による確認試験を実施し,シカベータ直接法の結果と比較した。シカベータ直接法において68株中17株がESBL産生,51株がESBL非産生菌と判定され確認試験法の結果と一致した。シカベータ直接法は,コロニーを用いた従来のシカベータテストとほぼ同等の性能を有しており,血液培養陽性ボトルから迅速に直接ESBLを検出できる方法である可能性が示されたが,今後更なる検討を要する。

症例報告
  • 菅﨑 幹樹, 徳永 尚樹, 池亀 彰茂, 中尾 隆之, 大浦 雅博, 三木 浩和, 長井 幸二郎, 高山 哲治
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 1 号 p. 132-137
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    プレカリクレイン(prekallikrein; PK)は肝臓で合成されるセリンプロテアーゼの一種であり,内因系凝固反応,血管拡張,線溶促進などに関与する分子である。先天性PK欠乏症は出血症状などの臨床症状に乏しく,偶然発見されるケースも少なくない。今回当院において先天性PK欠乏症と思われる症例を経験した。患者は50代の男性。前立腺癌の手術のため当院を受診し,スクリーニング検査で活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)178.7秒と著明な延長を認めた。患者には出血症状を認めず,出血傾向のある血縁者も認めなかった。APTT延長の原因検索のため,クロスミキシングテストを実施し,因子欠乏パターンを得たが,内因系凝固因子はすべて正常であった。そこで,接触因子であるPKおよび高分子キニノゲン(HMWK)の活性を凝固一段法にて測定したところPKが1.5%,HMWKが74.5%とPK活性の著明な低下を認め,本患者は先天性PK欠乏症と診断された。遺伝子解析では,exon 5,exon 9,exon 14の3カ所にヘテロ接合体のミスセンス変異を認めた。この変異のPK活性への影響についてはこれまでに報告がなく,不明である。今回の経験から,原因の特定できないAPTT延長では,本疾患も考えられ注意が必要であると感じた。また,クロスミキシングテストのパターンは非常に特徴的であり,診断に有用であった。

  • 奈良谷 俊, 山田 昇一, 木下 和久, 布廣 龍也, 福田 久信, 入江 準二, 栗山 一孝
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 1 号 p. 138-143
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    症例は40歳代女性。深部静脈血栓症(DVT)および肺動脈血栓塞栓症のため当院心臓血管内科で治療中であった。D-ダイマーが著明に上昇してきたため下肢静脈エコー(US)を実施した。USではDVTの増悪に加え,両側卵巣の腫大が認められた。卵巣の内部エコーは,充実成分と嚢胞成分が混在しており卵巣癌が疑われた。追加で行われた造影CT,造影MRIでは両側卵巣腫瘤の他,子宮体癌も疑われた。その後,子宮全摘術および両側付属器切除術が施行され,病理組織診では子宮体部,両側卵巣で同時多発した類内膜腺癌と診断された。悪性腫瘍では,血栓塞栓症を高率に合併することが知られている。今回,D-ダイマー高値を契機に行ったUSでDVTの増悪のみならず,原疾患と思われる卵巣癌も指摘できた。若年~壮年期や再発するようなDVTでは悪性腫瘍の存在を念頭に置いて検査にあたる必要がある。

  • 細田 優太, 田中 望美, 遠藤 香, 岡田 睦博, 森 将晏
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 1 号 p. 144-149
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    背景:形質芽細胞性リンパ腫(plasmablastic lymphoma; PBL)は,HIV感染による免疫不全患者や高齢者に発生する稀な悪性リンパ腫である。今回,我々は心嚢液検体のセルブロック標本による免疫組織化学的検討においてPBLと考えられた症例を経験したので報告する。症例:80歳代,男性。左背部痛により当院救急外来受診。CTにて両側胸水と多量の心嚢液貯留を認めた。エコーガイド下に心嚢腔穿刺が行われ,心嚢液の細胞診が施行された。細胞診において中型~大型の異型細胞の増殖を認めた。クロマチンは粗大顆粒状でN/C大,明瞭な核小体,核のくびれも見られた。セルブロック標本の免疫組織化学的染色結果から,原発性滲出液リンパ腫よりはPBLまたは骨髄腫が考えられた。その後行われた胸水細胞診は陰性であった。骨髄腫鑑別のため,骨髄穿刺実施も特記所見なし。Gaシンチ,PET-CTを実施するも腫瘍の局在は認められず。血清免疫電気泳動にて明らかなM蛋白は認められず。尿免疫電気泳動にてベンスジョーンズ蛋白は認められず。これらの結果から確定診断には至らなかったがPBLの可能性が最も考えられた。結論:心嚢液検体にてPBLと考えられた1例を経験した。画像診断にて腫瘍の局在を認めなかったため組織診は施行出来ず,細胞診とセルブロック標本における免疫組織化学的検討が診断に有用であった。体腔液細胞診でのセルブロック標本作成の重要性を再確認した。

  • 川満 紀子, 白濱 早紀, 上田 沙央理, 堀田 多恵子
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 1 号 p. 150-154
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    我々は,尿沈渣検査の細胞形態よりアデノウイルス(ADV)感染を疑い,咽頭用の迅速イムノクロマトキットを併用することで迅速に診断できた2症例を報告する。ADV性出血性膀胱炎は,一般的に血尿や頻尿,膀胱刺激症状が激しく,重症例では凝血塊による尿閉やADVが全身性に播種し致死的な経過をとる場合もあり迅速な診断が必要である。2症例の尿沈渣検査で確認された特徴的な細胞は,核が腫大しN/C比大,核の辺縁が不明瞭で核全体が一様にくすんだ変性した細胞形態を呈していた。文献報告よりこの細胞形態はADV感染細胞を疑い,咽頭用迅速診断キットを用いたところ陽性ラインを検出した。後日尿中ADV-PCR定量においても高値であることが判明した。尿沈渣では肉眼的血尿が出現する以前よりADV感染細胞が観察され,早期診断につながった。尿沈渣検査の形態だけでADV感染細胞を判断することは難しいが,迅速診断キットを併用することで,ADV感染細胞の出現の疑いを臨床に報告することが可能となる。

  • 笹岡 悠一, 大西 秀典, 細貝 智恵子, 島岡 愛, 亀田 咲来, 駒形 晴日, 関 美佐子
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 1 号 p. 155-159
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    症例は60代,女性。上腹部不快感と痛みのスクリーニングとして実施した腹部超音波検査で,肝区域S6の4.6 cmを最大とした嚢胞性病変が大小様々で肝臓全体に認められ肝嚢胞と診断された。その後,定期的な経過観察においてS6の嚢胞は2016年9月に3.9 cm,2017年9月に3.0 cm,2019年10月に2.0 cmというように明らかな径の縮小を認めた。同様な症例報告を医中誌で可能な限り検索したところ10例を検索し得た。その中で,肝嚢胞の自然縮小は原因不明な症例が多い中,縮小しながら嚢胞腺腫へと発展した症例があった。経年的に縮小していく肝嚢胞は嚢胞腺癌の発生母地である嚢胞腺腫へと発展しうる可能性を念頭に置き,注意深く経過観察を行う必要があると考えられた。

  • 宮元 祥平, 平井 裕加, 石田 真依, 上田 彩未, 青地 千亜紀, 清遠 由美, 谷内 亮水
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 1 号 p. 160-166
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    症例は70歳代,男性。ふらつきと頭重感を認め,近医を受診され,頸動脈エコーで右鎖骨下動脈に可動性プラークを指摘され,当院に紹介となった。心電図は洞調律で,ホルター心電図でも心房細動は指摘されず,経胸壁心エコー図検査でも心臓内に血栓や疣腫を疑う異常構造物は指摘できなかった。頸動脈エコーでは前医の指摘どおり,右鎖骨下動脈起始部に可動性プラークを認めたが,さらに中枢側を観察したところ,腕頭動脈にも可動性プラークを認めた。造影CTでは腕頭動脈から右鎖骨下動脈内に石灰化を認め,右鎖骨下動脈は狭小化していたが,可動性プラークは評価できなかった。可動性プラークはまれな病態であり,腕頭動脈や鎖骨下動脈内に可動性プラークを認めた報告はきわめてまれである。本症例は超音波検査にて注意深く観察したところ,腕頭動脈と右鎖骨下動脈内に可動性プラークを検出することができた。超音波検査は簡便で,非侵襲的に血管内プラークの有無や性状,可動性の評価が可能である。腕頭動脈や右鎖骨下動脈は超音波検査でも十分に観察できることが多く,これらの血管の評価に超音波検査が有用であった。一般的にCTやMRIでは可動性病変を検出することが困難であり,可動性プラークの評価にはリアルタイムでプラークの観察ができる超音波検査が最も有用であると思われた。

  • 近藤 好, 岡田 元, 鈴木 美穂, 杉浦 康行, 野村 杏奈, 桂川 陽平, 稲垣 幹人
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 1 号 p. 167-171
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    症例は70歳代,男性。肛門周囲と陰嚢の腫脹,疼痛で救急搬送。救急救命センターで搬送後直ちに陰嚢を切開排膿により,悪臭のあるガスが多量に排出された。検体提出時,担当医師よりフルニエ壊疽の疑いと連絡,嫌気性菌による混合感染を疑い,適切に嫌気培養を開始することが可能となった。さらには,至急のグラム染色依頼があり,染色所見よりBacteroides属が疑われることを医師に報告し,適切な抗菌薬投与に貢献できた。培養結果を待たず早急に会陰部デブリードマンが実施された。来院時に採取した血液培養よりBacteroides fragilisが検出され,さらに陰嚢排膿検体からも本菌を検出した。患者は敗血症性ショックでICU管理となったが,迅速かつ適切な抗菌薬投与,一時的人工肛門造設,2回目のデブリードマン後,皮膚欠損部の植皮術が施行され,治療開始3ヶ月で完治した。本疾患の診断と治療は,早い情報提供が必須であり,医師との親密な情報連携が重要である。さらには,グラム染色結果より嫌気性菌の有無が推定できれば,経験的治療に貢献できる。対応の遅れが予後を左右するフルニエ壊疽が疑われた場合,診療連携を密に行い,早い時点でグラム染色を実施し,起因菌を証明することが極めて重要である。

  • 長崎 雅春, 松岡 啓子, 井上 麻美, 長山 暢子
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 1 号 p. 172-175
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
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    気腫性膀胱炎の2症例を経験したので報告する。1例目は80歳代男性,当院にて維持透析中であった。低酸素血症等の精査治療のため入院中に,血尿および下腹部痛が出現。超音波検査にて膀胱壁の肥厚および膀胱内腔にガス像を認め,気腫性膀胱炎が疑われた。2例目は80歳代女性,肺炎の治療のため入院中に血尿および下腹部痛が出現。超音波検査にて膀胱壁内および膀胱内腔にガス像を認め,気腫性膀胱炎が疑われた。2例ともに引き続き実施されたCT検査でも同様の所見を認めた。尿培養にて2例ともにEscherichia coliが分離され,薬剤感受性試験の結果,extended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌と判定された。治療は,膀胱ドレナージおよび適正な抗菌薬治療が施行された。

  • 竹田 光, 山田 尚弘, 長谷川 毅, 鈴木 裕, 田中 喜和, 森谷 美香, 植木 哲也, 田嶋 克史
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 70 巻 1 号 p. 176-181
    発行日: 2021/01/25
    公開日: 2021/01/26
    ジャーナル フリー HTML

    発熱性疾患のツツガムシ病は,臨床上他の急性感染症との見分けがつかない場合がある。患者は75歳女性,めまいと寒気でibuprofenを内服した後,全身に紅斑様皮疹が出現した。翌日,皮疹は増悪傾向を示し,意識障害を伴ったため治療精査目的に当院に紹介となった。入院時,末梢血液像で異型リンパ球を認めたこと以外,リンパ節腫脹や明らかな痂皮形成は認めなかった。第4病日,播種性血管内凝固症候群(DIC)および血球貪食症候群(HPS)を発症した。ツツガムシ病接触歴を含んだ病歴を繰り返し聴取した結果,ツツガムシ病が疑われた。血清学的検査では,Orientia tsutsugamushiに最近暴露されたことが判明した。ミノサイクリン投与によって症状は速やかに改善した。検査所見では,異型リンパ球は第3病日に10%まで増加し,DICおよびHPSを発症する以前に減少した。発症時と回復時のリンパ球の性状解析を行い比較した。発症時,大多数の異型リンパ球はCD8陽性,リンパ球全体のCD4+/CD8+比は0.5であった。一方,回復時にその比は1.2であった。これらの所見は,本症例では伝染性単核症様症候群を発症したこと,特に刺し口や痂皮形成が全身の皮疹に紛れて容易に同定されない場合,異型リンパ球の存在がツツガムシ病診断予知因子になりうることを示唆する。

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