日本看護管理学会誌
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17 巻, 2 号
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論説
資料
  • 大木 裕子, 飯島 佐知子
    原稿種別: 資料
    2013 年 17 巻 2 号 p. 116-125
    発行日: 2013/12/28
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:文献検討により,患者の転倒リスクと予防対策の関連,および転倒リスク要因と予防対策の対応を調べ,それらの転倒予防効果を確認すること.

    方法:PubMed,CINAHL,医中誌Webを用い,2002~2011年の期間について,病院の入院患者を対象に複合的な転倒予防対策を実施した論文を検索し,28文献を抽出した.

    結果:患者の転倒リスクと予防対策の組み合わせ方には次の4種類があった.A)リスクスコア算出により転倒危険度を評価し,危険度別に対策を実施する方法,B)危険度の評価に加え特定のリスク要因に対して対策を実施する方法,C)転倒の原因となるリスク要因を識別するアセスメントにより対策を実施する方法,D)あらかじめ特定した転倒リスク要因に対応した対策を実施する方法である.これらの組み合わせ方の違いによる転倒予防効果の大きな相違はなかった.また,リスク要因として挙げられたものは,①認知,②移動,③①と②の組み合わせ,④薬剤,⑤その他の5分類であった.リスク要因に対する予防対策の組み合わせは多様であった.移動のリスク要因に対する,運動関連の対策で転倒予防の効果が期待されたが,その他の効果は決定的でなかった.

    結論:今後は,患者の転倒リスクと予防対策を結びつける最善の方法を,コスト面の評価を含めて検討すること,転倒リスク要因に対する予防対策の効果を明確にしていくことが必要である.

  • 關本 翌子, 亀岡 正二, 冨樫 千秋
    原稿種別: 資料
    2013 年 17 巻 2 号 p. 126-135
    発行日: 2013/12/28
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス

    過去に行われた看護師を対象にしたレジリエンスについての研究を調査し,今後のわが国での看護師を対象としたレジリエンスの研究方法についての資料を得ることを目的とした.PUB-MEDと医学中央雑誌で検索を行い,合計24論文を対象論文とした.国内の看護師対象のレジリエンス研究は8件であった.①レジリエンスを構成する因子に関する研究,②看護師のレジリエンスを促進させる因子に関する研究,③看護師のレジリエンスに関連する要因の研究,④患者・家族のレジリエンス支援に関わる看護師の要因に関する研究に分類された.看護師のレジリエンスに影響を与える要因や,レジリエンスのポジティブな影響については,これまでの研究で明らかになっている.今後は,看護師のレジリエンスに何が一番強い影響を与えるのかを明らかにして,レジリエンスを高める方法を検討する必要性が示唆される.

  • ─看護管理への関心度,自己効力感,キャリア志向の研修前中後比較─
    南谷 志野, 梶原 智代美, 高木 仁美
    原稿種別: 資料
    2013 年 17 巻 2 号 p. 136-145
    発行日: 2013/12/28
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス

    A県立病院合同看護管理研修の効果を明らかにするため,研修前中後に受講者(基礎編33名,応用編28名のスタッフ看護師)を対象に自作の調査票による質問紙調査を実施した.調査項目は,「看護管理への関心度」「自己効力感」「キャリア(管理者・スペシャリスト)志向」で,10cmVASによって測定した.また,それぞれの回答理由と「看護管理に対する認識」は自由記述で回答を求めた.分析方法は,量的データの前中後比較は一元配置分散分析を用い,質的データは記述の内容から意味あるセンテンスを抽出し,内容の類似性を比較検討することでカテゴリー化した.

    その結果,基礎編では,「看護管理への関心度」で研修中・後の間(p < .05)に,「自己効力感」では研修前・中の間(p < .05)と研修前・後の間(p < .01)に有意差がみられ,それぞれ研修後の方が平均値は高かった.研修前は,6割の人が看護管理は管理者が行うものと認識していたが,研修を通して全体の7割の人が,看護管理はスタッフ全員がそれぞれの立場で行うものであると認識するようになった.また,【今の自分の能力を考えると自信がない】との思いが8割を占めていたが,講義やグループワークでの気づきや実務研修での成功体験を通して【自分にもできることがある】という思いに至った.応用編では有意差はみとめられなかった.

    本研究によって,単なる講義にとどまらず実務研修へつなげた研修の構造の効果を確認できた.また,受講者の看護管理に関するレディネスの把握をした上で研修テーマを決定する重要性,看護管理を自分たちの問題として捉えられるような工夫の必要性,受講生の支援体制強化の必要性が示唆された.

  • 吉田 祐子, 良村 貞子, 岩本 幹子
    原稿種別: 資料
    2013 年 17 巻 2 号 p. 146-156
    発行日: 2013/12/28
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス

    キャリア試行期とは,キャリア発達の中でその方向性が確立していく重要な時期である.本研究の目的は,キャリア発達の方法の一つと考えられている病院内異動がキャリア試行期にある看護師にとって,どのような経験となっているのかを明らかとすることである.3つの異なる病院に勤務している6人の看護師に半構成的面接を実施し,データを質的帰納的に分析した.キャリア試行期の看護師は,異動前,【将来のキャリアの模索】と【成長を望む気持ちから生じた他部署への興味】を持っていた.そして異動後,【異動後3~4ヶ月から生じる慣れの感覚】を持ちながらも【前部署と現部署の価値観の違いに葛藤】,【環境の変化に対する戸惑い】,【立場の変化】を自覚し,【前部署と同様の能力が発揮できない】経験をしていた.しかし,その一方で【経験者であるための現部署からの役割期待】を感じていた.また,キャリア試行期の看護師にとって異動は,【自分の好みや適性の発見】と【看護専門能力の得失】を経験し,【職業人としての成長】をする実感や【異動経験が力になる実感】を持ち,キャリア発達にとって意味ある出来事となっていた.そして,これらは,【今後のキャリアの再検討】をする経験となっていた.

  • 栗原 サキ子, 湯沢 八江
    原稿種別: 資料
    2013 年 17 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 2013/12/28
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス

    看護師の業務拡大が検討されている.そこから患者家族へ病状その他の補足説明を行うことが看護師の重要な役割となってくることが予測される.それに備えるためには,医師が行っているインフォームド・コンセントの内容等を十分に把握しておく必要がある.そこで,本研究では,医師によって患者とその家族に行われたインフォームド・コンセントの内容を分析し,看護師が説明を行う場合の基礎資料とすることを目的とした.研究対象は,A病院の現場録音システムに保存された医師から患者・家族へのインフォームド・コンセントの記録であった.データの分析にはテキストマイニングを用いた.さらに説明内容を項目別に分析した.項目はA病院のインフォームド・コンセントの基準に基づく9項目であった.

    結果,重要度キーワードランキングでは,<手術><麻酔><輸血>といった言葉が上位にあり,出現頻度も多かった.説明内容の分析から,医師が行ったインフォームド・コンセントは,病状とその経過に関する説明が中心であったことがわかった.患者の具体的希望についての出現割合は低く,検査や治療の同意を撤回する場合については全く説明されていなかった.また,説明では専門用語が多く使われており,今回の研究から医師の説明を患者が理解できたかどうか疑問が残った.この結果から,看護師が医師と討議し,患者や家族に対してわかりやすい言葉で補足説明していく必要があることが明らかとなった.

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