厚生労働省(2007)は,医療安全管理者の業務指針及び養成のための研修プログラム作成指針において医療安全管理者の業務として安全文化の醸成を掲げた.
そこで,専従医療安全管理者の組織における安全文化醸成行動を明らかにすることを目的に研究した.研究方法は,専従医療安全管理者が組織の安全文化醸成につなげることが出来たと確信しているインシデント報告を一つ選び,そのインシデント報告を受け取ってから評価までの一連の安全文化醸成行動について専従医療安全管理者に半構成的面接を実施し,質的記述的分析を行った.研究協力者は,医療安全加算1を取得している病院に勤務する専従医療安全管理者である看護師10名.結果は, 6つのカテゴリーと,13のサブカテゴリー,28のコードが抽出された.専従医療安全管理者がインシデント報告を受け取ってから,組織に安全文化を醸成させていくために,【組織活動への意思決定】,【当該部署の安全に関するアセスメント】,【組織活動に向けた段取り】,【組織活動への踏み出し】,【新たな安全対策に関する価値観の吹きこみ】,【安全に関する新たな価値観の醸成】という6つの段階を経ていた.
専従医療安全管理者は,医療安全の専門家としての方策を駆使しながら,組織の安全文化醸成に取り組んでいることが示唆された.
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