日本看護管理学会誌
Online ISSN : 2189-6852
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22 巻, 1 号
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論点
原著
  • ─職務経験10年のプロセスに焦点をあてて─
    中本 明世, 矢田 眞美子, 三谷 理恵, 片山 恵, 細名 水生
    原稿種別: 原著
    2018 年 22 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は離転職経験がなく役職をもたない臨床看護師の職務経験10年のキャリア発達過程を明らかにすることを目的とし,職務経験10~15年未満の臨床看護師7名を対象に,半構造化面接を行い質的に分析した.その結果,職務経験10年のキャリア発達過程は5フェーズで成り立っていた.研究参加者は,入職して数年間の1【看護師として懸命に看護行為を身につけていく】という必死な時期を過ぎ,2【看護行為に自信は持てるがマンネリ感を抱く】という看護師としての成長を実感できないキャリア継続の危機的状況を迎えていた.この危機的状況を大きな環境の変化によって脱するが,環境の変化により3【看護師としての存在価値が揺らぐ】という新たな危機的状況を迎えていた.その後,危機的状況を乗り越え,4【培ってきた自分の看護を発展させ(る)】,5【自分の看護を展開しながら将来像を描く】ようになっていた.これら3.4の時期は,内的なキャリア発達が大きく促される時であると捉えられた.従って,臨床看護師のキャリア発達には,危機的状況を乗り越え【培ってきた自分の看護を発展させる】ことが大切であると示唆された.組織での継続教育の場における支援者は,キャリア継続の危機的状況が生じる可能性を認識し,臨床看護師がどの時期にいるのかを見定め危機的状況を乗り越えられるよう支援し,自分の培ってきた看護に価値を見出して,自分の看護に対峙できるよう支援することが望ましい.

  • 平野 美樹子
    原稿種別: 原著
    2018 年 22 巻 1 号 p. 30-41
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究の目的は,災害時救援に携わった被災地外からの救援者を対象とし,派遣時の個人のストレス認知,ストレス対処および組織的支援の特徴と精神的健康度との関連を明らかにすることである.

    【方法】東日本大震災への派遣経験のある看護職804人を対象に,質問紙調査を実施した.質問紙は,ストレスフルイベント項目,セルフケア項目,コーピング尺度,組織的ストレス緩和策尺度,GHQ-12にて構成した.分析には,因子分析,t検定,重回帰分析を用いた.

    【結果】質問票の回収数は402通,回収率50.0%(有効回答率100%).高ストレスフルイベントは,高い順に,「何もしてあげられない無力感」,「災害による大きな被害を目にしたこと」,「悲惨な怪我等を目にしたこと」などであった.効果の高いセルフケア項目は順に,「瞑想」,「誘導イメージ法」,「チームメンバーと話すこと」,「家族の写真をみること」,「ユーモアを用いること」などであった.重回帰分析の結果,全体では,高ストレスフルイベント(β=.435,p<.000),〈チーム内における相互支援〉(β=-.148,p<.01),〈派遣終了後の支援〉(β=-.110,p<.05)が精神的健康度に影響していた.

    【結論】被災地外救援者の精神健康度には,高ストレスフルイベント数,組織的支援策が関連していた.被災地外救援者の精神的健康を保持するためには,派遣におけるすべての過程を通した効果的な組織的支援が重要である.

報告
  • 青木 美香
    原稿種別: 報告
    2018 年 22 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:中堅看護師に組織内の活動に関する役割を付与し,役割遂行を通して成長することを支援するために看護師長がどのように関わっているのかを明らかにする.

    方法:看護師長14名に対し,半構造化面接法を用いた質的記述研究デザインであり,グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考とし分析した.

    結果:【時機を逃さない対話】という中核カテゴリと【能力の評価】【役割付与のねらい】【役割発揮への方向づけ】【役割を達成しやすい環境提供】【あらゆる情報源や方法を活用した遂行状況の多角的な把握】【主体性を伸ばすための手助け】【前進できるための承認】【短所を克服するための促し】【もう一段高い成果への促し】の9カテゴリを生成した.看護師長は,中堅看護師が今後の役割発揮へと進めるよう【時機を逃さない対話】をすることを基盤にしていた.

    考察:看護師長の関わりは,中堅看護師が初めて組織内の活動のその役割に臨むことを考慮して,大きな道筋を示し,実践の状況を把握し,時機を逃さない対話を行うことであった.その関わりは内発的動機づけを高め,承認をする,省察を促す意味があった.また中堅看護師への役割付与とは,新しい挑戦の機会を提供する意味があり,中堅看護師は,新たな挑戦を通して,困難を乗り越え,周囲から信頼を受けて,自己の内面をひと回り成長させ,飛躍を遂げることができていた.

  • 上田 貴子
    原稿種別: 報告
    2018 年 22 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,役割移行を経験した看護職者が認識する役割移行支援について質的に探究することである.

    質的記述的研究デザインにより,看護職者13名に半構造化インタビューを行い.得られたデータはKrippendorff(1989)の内容分析法を用いて質的帰納的に分析した.研究対象者は過去2年以内に上司あるいは組織から新たな役割を付与され現在も職業を継続している看護職者であり,データ収集期間は平成26年6月から9月であった.面接内容は研究協力者の同意を得てICレコーダに録音し逐語録を作成した.分析過程では内容分析の経験を有する研究者のスーパービジョンを受け,信頼性を確保した.研究は聖路加国際大学倫理審査委員会の承認(承認番号:14-007)を得て実施した.

    対象者13名の陳述は,役割移行支援に関する内容195記録単位,役割移行経験に関する内容110記録単位,13文脈単位に分割できた.分析の結果,役割移行を経験した看護職者が認識する役割移行支援には,前任者が保有する有益な情報,着任した部署とそこの状況に精通する職員の配置,同僚や上司からの精神的サポート,などがあった.なかでも上司の支援は円滑な役割移行に不可欠の要素であり,役割遂行の促進要因と阻害要因の両方として機能することを認識していた.さらに,看護職者が役割移行に適応するためには,定期的な情緒的支援が必要であることが示唆された.

資料
  • 廣島 のぶ子, 荒木田 由美子, 久保 真紀子
    原稿種別: 資料
    2018 年 22 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は看護師のキャリア選択への支援に関する基礎資料を得るために,病院に勤務する看護師のキャリア成熟とそれに関係する要因を明らかにすることを目的とした.対象はA県内の500床以上の病院に勤務する看護師940名とし,2013年に質問紙による横断調査を行った.質問項目は,成人キャリア成熟尺度(職業キャリア成熟,人生キャリア成熟,余暇キャリア成熟の3系列より構成)および個人の環境,職場の環境に関係する内容であった.438名から回答を得て重回帰分析を行った.その結果,「職業キャリア成熟」に関係する要因として,個人の環境では看護師の年齢,性別,看護部への配属,保健師免許の有無があり,職場の環境では外部研修の経験,役割モデルの有無に関係がみられた(R2=0.20).「余暇キャリア成熟」では,個人の環境では外科系病棟への配属,看護師長・係長の役職,職場の環境でクリニカルラダーなどの有無に関係がみられた(R2=0.32).「人生キャリア成熟」とは関係のあるものはなかった.「職業キャリア成熟」「余暇キャリア成熟」に関係する要因は部分的には明らかとなった.しかし,看護師は職業人として自らの豊かな人生キャリアを育てていく必要があるため,関係する要因を今後さらに検討していく必要がある.

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