日本看護学教育学会誌
Online ISSN : 2436-6595
Print ISSN : 0916-7536
ISSN-L : 0916-7536
16 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • ─行動コーディングシステムを用いた分析─
    岩脇 陽子, 滝下 幸栄
    原稿種別: 原著
    2007 年 16 巻 3 号 p. 1-11
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、看護師の言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの関係から、コミュニケーション技術の特徴を患者と看護師の相互作用場面の分析から明らかにすることである。看護師27名による実際の81の臨床場面を撮影した。非言語的コミュニケーション(アイコンタクト、うなずき、微笑、身を乗り出す、感情的タッチ、手段的タッチ)とRoter’s Interaction Analysis System に基づいた言語的コミュニケーション(人間関係形成スキル、協力関係づくりスキル、情報収集スキル、教育カウンセリングスキルの4つの機能的スキルからなる25項目)を観察し、行動コーディングシステムを用いて分析した。その結果、看護師は主に非言語的コミュニケーションのアイコンタクトとうなずき、言語的コミュニケーションの受容・一般的リードと治療に関連した情報提供を用いていた。非言語的コミュニケーションと言語的コミュニケーションとの関連では、うなずき、微笑と人間関係形成スキルに有意な相関があった。アイコンタクトの前後に情報収集スキル、教育カウンセリングスキルが、微笑の前後に人間関係形成スキルが有意に多く出現していた。

     以上から、看護師のコミュニケーション技術は、非言語的コミュニケーションと言語的コミュニケーションが相互に補足、促進し合いながら成り立っていた。言語的コミュニケーションだけでなく、非言語的コミュニケーションに着目したコミュニケーション技術の教育方法の必要性が示唆された。

  • ─臨床経験5年以上の看護師へのアンケート調査─
    竹村 節子
    原稿種別: 原著
    2007 年 16 巻 3 号 p. 13-28
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究は、看護が行うアドボカシーに関して、臨床で働いている看護師がアドボカシーと患者の権利についてどのように考え実践しているのかを明らかにすることを目的とした。それによりadvocacyの言葉の意味するもの、構成している要素を見出し、アドボカシーの概念化を試みた。調査対象は、近畿圏内の緩和ケア病棟を持っている300床以上の病院で働いている臨床経験5年以上の看護師365名である。調査方法は、Davisらが開発し、看護師24名にパイロットスタディーを行った質問票を一部改変および追加した質問票を用いたアンケート調査である。

     アドボカシー実践は、「患者が苦しんでいるとき」「患者や家族への病状説明が不十分」な時に、[医師に再説明の依頼][不明点/疑問点の医師への確認]などを7割の看護師が行っていた。アドボカシー実践を行うためには、「ゆとりある業務」「医師はあくまで同僚」という職場環境が実践の場で欠如していた。患者の権利については、看護師の意識は高いが、現実に看護師が係わっている状況とは差があった。患者・看護師・医師との係わりのなかで様々な矛盾を感じながら看護師はアドボカシー活動を行っているようだが、その活動を日常の看護業務のなかの一部であると考えている。

研究報告
  • 清水 裕子
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 16 巻 3 号 p. 29-36
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究は、在宅看護論実習における実習指導者の指導実施度と実習生の習得度の実態を調査し、その関連を検討することを目的とする。

     研究方法は、質問紙調査であった。対象は、22名の実習指導者と86名の実習生であった。質問紙は、いずれも5件法で、実習指導者には指導実施度評価用質問紙、実習生には習得度評価用質問紙を実施した。質問項目は訪問看護ステーション16項目、デイ・ケア・サービス7項目、在宅介護支援センター6項目であった。分析方法は、記述統計、相関係数、t検定であった。

     その結果、指導実施度は平均得点が3.82(±.95)で、概ね「時々指導した」以上の頻度で指導がなされていた。デイ・ケア・サービスでは、調査施設間で平均得点に有意な差があった。実習指導者の指導には、実習場所毎の特徴や指導者自身の個別的特徴の影響があると考えられる。習得度は平均得点が3.33(±.72)であり、全体的に「普通」の回答に偏っていた。実習生の実習での習得は、講義や前後の実習場所での知識の関連づけや循環的な活用によって深まっていると考えられる。また3種類の実習場所の指導実施度と習得度は、いずれも関連がなかった。実習指導者の指導の頻度は、実習生の習得の程度に影響しなかった。

  • 田中 広美, 岡崎 寿美子
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 16 巻 3 号 p. 37-48
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、日常生活の中の清潔の援助場面で看護師の倫理的配慮としての判断や行為を明確にすることである。研究デザインは質的帰納的デザインであり、A大学病院に勤務する看護師6名と患者12名に対し参加観察法と半構成的面接法を実施し、得られた12場面を分析した結果、161のサブカテゴリー、14のカテゴリー、4つのコアカテゴリーが抽出された。本研究で抽出された4つのコアカテゴリーは【患者を尊重し自立を促す】【患者の安全を確保し円滑に行う】【援助による快感をもたらし不快感や害を除去する】【患者の気持ちを大切にし信頼関係を築く】である。これらは「看護者の倫理綱領」として規定されている看護師の態度領域に該当するものであって、看護師がケア行動の中で倫理綱領を遵守し実行することがより質の高い看護につながると考える。

  • 内村 美子
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 16 巻 3 号 p. 49-56
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究は、臨床現場で新人看護師が、人(患者、プリセプター)、物との相互交渉を通して熟達する過程を明らかにすることを目的にした。研究方法には、研究の主旨を説明し、了解の得られた12名の新人看護師を対象に、11ヶ月のフィールドワークを用いた。分析はL. S. Vygotskyの理論を発展させた関係論的アプローチをとるWertschの社会文化的行為論を援用し、新人看護師の周辺の人、物、からだの動きを分析した。

     分析の結果、新人看護師はその状況に埋め込まれているものを独自の道具にして、その状況から患者の見方を収奪(appropriation)していた。そして、新人看護師は自分なりのわかり方で媒介物を増やし、熟達していることが明らかになった。また、新人看護師とプリセプターとが同じ場所から患者を見るという視線結合(joint attention)によって学ぶ、学校的な学び方とは異なる臨床現場での学び方がみられた。

  • 松下 由美子, 中川 泉
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 16 巻 3 号 p. 57-68
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、震災体験をした看護学生が自発的に災害支援ボランティア参加に至るまでの情緒的反応を災害発生直後から検証し、彼らがどのような動機づけによって災害支援ボランティア参加を決心するのかグループインタビューを通して明らかにすることである。1グループ5名、15名のインタビューの結果、学生たちは被災者に共感しながらも、一方で「看護学生としての責任と立場」の狭間でボランティア参加への肯定的感情と否定的感情を持ち合わせていたことが明らかとなった。そして、この段階を払拭し、自発的なボランティア参加の決心に至るには援助行動に対する「利己的動機の認識と受容」「参加意義の置き換え」「仲間との思いの共有」「代理経験」が重要な動機づけとなっていることがわかった。震災体験を持った学生が自らの考えで災害支援ボランティアを決心するまでには、彼ら自身も震災被害による情緒的反応を繰り返し体験しながら震源地の被災者に共感し、その過程の中で援助の意味を考え、自己受容を深めていくプロセスのあることが示唆された。

  • ─ 老年看護学実習の新たな教育方法をめざして ─
    新木 真理子, 梶原 江美, 坂本 久代
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 16 巻 3 号 p. 69-77
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、老年看護学実習時の「高齢者の自発性を高めるアプローチ」における学生の認識と学びを明らかにすることにある。大学3年次の看護学生を対象とし、実習時における学生の記録を分析した結果、学生の認識と学びとして、4つのカテゴリーおよび11のサブカテゴリーが抽出された。学生はアプローチを通して、何らかのひっかかりをもったり、立ち止まりを行なうことで、患者の意思の所在への問いをもったり、本質的な問いを生じさせている。また学生は患者の関心のありかをみつけたり、学生自身が前向きな姿勢をとることで、アプローチの手がかりをつかみ、アプローチという直接的な体験は、患者の全体像に迫る突破口を見出すことを可能としている。その結果から、老年看護学実習における「高齢者の自発性を高めるアプローチ」は、患者理解を深める手段として有意義なものであると考えることができる。

実践報告
  • ─ 実習レポートの分析より ─
    田中 小百合, 太田 節子
    原稿種別: 実践報告
    2007 年 16 巻 3 号 p. 79-84
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、介護老人福祉施設の実習(1週間)における看護学生の学びの内容を明確化して、今後の効果的な実習指導の方向性を得ることである。研究の趣旨を説明して了解が得られた35名の学生の実習レポートを対象とし、学習内容を1文1意味のラベルとして取り出し、質的・帰納的に分析した。

     取り出された学生の学びは、総数340ラベルであり、学びの内容は、【高齢者・環境特性の理解】【高齢者の特性を活かした援助の必要性・重要性】【高齢者に適した援助方法】【自己の振り返り】の4カテゴリーに分類された。学生は高齢者の特性や環境を理解して、高齢者への適切な日常生活援助に活かす方法を学んだことが明らかになった。

feedback
Top