本研究はPM理論を活用して、看護専門学校の教育主事のリーダーシップ尺度を開発し、教育主事のリーダーシップと専任教員のモラールとの関連を明らかにすることを目的とした。2003年2月から3月の間に関東・東海地区の看護専門学校30校で調査を行った結果、次のことが明らかになった。
1.教育主事34人(100%)、専任教員241人(98.8%)から有効回答があった。教育主事の平均年齢は52.3±4.9歳、専任教員の平均年齢は40.7±6.1歳であった。
2.因子分析の結果をもとに教育主事のリーダーシップ尺度が作成された。下位尺度は7項目の「組織運営尺度」と3項目の「人間関係重視尺度」の2つで、妥当性、信頼性共に高かった。
3.PM理論を用いて教育主事のリーダーシップが4つのタイプに分類された。教育主事のリーダーシプのタイプ1、2では、タイプ3、4に比べて専任教員のモラール得点が有意に高かった。
4.教育主事が短大卒業以上では高等学校卒業に比べて、教育主事のリーダーシップ得点と専任教員のモラール得点が有意に高かった。
5.組織運営尺度は他の変数に比べて有意に強く専任教員のモラールと相関していた。また、重回帰分析でも組織運営尺度は他の変数に比べて有意に強く専任教員のモラールに影響を与えていた。
PM理論の活用により、看護専門学校の教育主事のリーダーシップは専任教員のモラールに影響していることが示唆された。
近年の看護学生は、子どもとの接触経験が少ないため、成長発達や生活状況などを具体的にイメージできない傾向がある。対象である子どものイメージ化が不十分な状況では、小児看護学における知識の理解や記憶が促進されず、学習効果があがらない。
そこで、先行オーガナイザーとアナロジとして、アニメキャラクターをモチーフにしたキャラクター事例を作成し、基礎的知識と関連づけながら講義をすすめる学習方略を試みた。その結果、キャラクター使用群は非使用群に比べ、対象のイメージ化や事例の想起が有意に高値であったことから、小児看護学においてキャラクター事例は、対象である子どものイメージ化や後続学習を促進する効果があることが明らかとなった。
看護記録に関する教育の実態を明らかにする目的で、テキストの分析と看護教員への質問紙調査を行った。分析したテキストは看護師養成向け37冊と准看護師養成向け6冊であった。看護記録は基礎看護学で主に扱われ、「看護過程」に位置づけられることが多かった。看護記録の定義や構成要素、分類等は様々であった。看護記録の教育に関する質問紙調査は全国看護師養成3年課程2,604名、准看護師養成所136名の専任教員を対象とした。記録に関する授業科目は基礎看護学(管理含む)、基礎看護技術が多く、授業内容は目的・意義・重要性・記録方法・留意点等が多く、法的規定や記録の運用管理等は少なかった。臨地実習では実際の記録記載が行われず、記録閲覧は許可を得て行われていた。以上から、看護記録の概念規定や教育内容の多様性、臨地実習における制約等が把握された。今後は基本的学習内容の精選、臨床で活用される指針等との整合、看護実践に即した実習内容等の教育改善が必要である。
本研究の目的は、高度専門看護師における、臨床看護研究に関する教育ニーズの特徴を把握することである。認定看護師180人、専門看護師164人、病院の教育担当看護師125人に質問紙調査を実施した。調査内容は、臨床看護研究に関する知識・スキルの達成度や重要性の認識、研究の取りくみ状況などである。その結果、対象者の90.2%は業務上研究に取りくむ必要があるとし、研究実施上の困難の内容として、認定看護師や教育担当看護師は研究方法の知識やスキルの問題、専門看護師は体制上の問題を挙げていた。対象者の82.6%は研究指導経験があり、その困難の内容として研究に関する知識・能力の不足などを挙げていた。また、大部分の対象者は臨床看護研究に関する知識やスキルを重要と考えていたが、これらの達成度の自己評価は低かった。以上の結果から、実践の場で働く看護師は、教育背景によるニーズの違いが若干あるものの、臨床看護研究に関する知識やスキルの教育ニーズが高く、これらのリテラシー活動を強化する必要性が示された。