日本看護学教育学会誌
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17 巻, 3 号
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原著
  • ─6事例へのアクションリサーチを通して─
    岡本 玲子, 中山 貴美子, 塩見 美抄, 鳩野 洋子, 岩本 里織
    原稿種別: 原著
    2008 年 17 巻 3 号 p. 1-13
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、実践現場の課題解決に取り組むアクションリサーチにおいて、研究者が判断した望まれる保健師の変化に向けた「保健師への研究者の働きかけ」と「生じた変化」を分析することである。対象は6地区の保健所保健師であり、用いたデータは保健師の活動記録、振り返り面接の逐語録、参加観察時のメモである。

     分析の結果、研究者の働きかけは、保健師が専門職としての使命を果たす最善の実践を定着・波及するために「専門職として自律」「実践方法を改善」「知と技を創出・獲得」することをめざして行われていた。研究者の「寄り添い強化する」「手引きし強化する」「仕掛けて強化する」働きかけは、保健師の「よい実践の前提に対する認識の向上」「よりよい実践への転換と進化」「専門職としての自信と発展」や、保健師による「関係者間協同の活動推進」「新たな活動とその手段の開発」「成果の他への波及」という変化を生んでいた。今後この結果をもとに効果的な教育方法論を確立していく必要がある。

研究報告
  • ─周手術期臨地実習場面のVTRを視聴して─
    島田 悦子, 高島 尚美
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 17 巻 3 号 p. 15-23
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    この質的研究では、看護学臨地実習のあるVTR場面を提示し教材化としての対応やそれらを方向づける基盤を問うことで、臨床実習指導者と教員の教材化を比較分析した。その結果、教材化としての現象のとらえ方として【学生の態度】【学生の技術】など6カテゴリー、その場における対応として5カテゴリーが抽出され、両者とも学生を主体とした指導を重視していた。またそれらを方向づける基盤としては、伝えたい看護として【患者-看護師関係】【対象理解】などの7カテゴリー、普段の実習でのねがいとして【対象理解に基づいた人間関係能力】【自己の看護観の育成】【問題解決能力の習得】などの8カテゴリーが抽出された。臨床実習指導者は患者-看護師関係を、教員は問題解決思考を含めた看護実践や気づきからの成長への働きかけを重視していることが明らかとなり、両者の視点の相違を活かした協働的な指導体制を整えることが有効であることが示唆された。

  • 松永 保子, 宮腰 由紀子, 内海 滉
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 17 巻 3 号 p. 25-35
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、専門知識・技術提示後の知識の想起や技術の再現における経時的変化と、それらに影響する心理的要因を明らかにすることである。

     被験者60名の達成動機、自己効力感、自尊感情、手先の動作を測定後、「無菌操作」技術の中の「鑷子の扱い方」についての実験を行った。まず無菌操作についての専門知識を提示し、次に被験者を2群に分け、1群には教員による実際のデモンストレーション(以下、実デモ)を、もう1群にはビデオを視聴することによるデモンストレーション(以下、ビデオデモ)を提示し、その直後、1週間後、1ヵ月後に筆記テスト・技術テストを行い評価することで、デモ提示方法の違いによる提示後の知識の想起や技術の再現の経時的変化を調べた。

     その結果、知識の想起や技術の再現がビデオデモ群では1週間後には低下したが、実デモ群では低下しなかったことから、デモ提示方法の違いによる知識の想起や技術の再現の経時的な差を確認できた。また、知識の想起には達成動機と自己効力感などの心理的要因が関係すると考えられた。

  • 内田 陽子
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 17 巻 3 号 p. 37-44
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、老年看護学実習のなかの学内実習で高齢者アクターを導入することによる学生の学習効果を明らかにすることである。対象は2006年1月から4月まで本学で老年看護学実習を行った看護学専攻3、4年生の学生30人とした。また、実習期間中、最初の2日間の学内実習で高齢者アクターに技術を行う群(アクター群)、学生に行う群(学生群)に分けた。学習効果は学生に質問紙による調査を行い、学内実習前後、臨地実習後の学習効果の程度をビジュアルアナログスケールで測定した。その結果、アクター群のほうが学生群に比べて以下の面で高い学習効果がみられた。学内実習後では1.高齢者のイメージがつかめた、2.自分の技術に自信をもった、3.技術を実践することに興味がわいた、であった。臨地実習では、5.技術を何回も体験できた、6.技術をうまく実践できた、7.職員や教員とうまく連携できた、であった。また、「最終的に自分の技術に自信をもった」の項目と相関がみられた項目は、「臨地実習で技術を実践することに興味がわいた」、「臨地実習において最終的に高齢者との関係が深まり、受け入れられた」等の臨地実習に関する項目が多かった。学内実習で高齢者アクターを導入することで学生の学習効果は高まるが、臨地実習での工夫も重要といえる。

  • ─夜勤における困難な体験─
    平田 香織, 松谷 美和子
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 17 巻 3 号 p. 45-53
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、新人看護師の夜勤における困難な体験を記述し明らかにすることを目的とした。研究協力者である新人看護師8名に半構成的面接を3回ずつ合計24回行い、解釈的現象学的分析(Interpretative Phenomenological Analysis)を参考として分析を実施した。新人看護師の語りは、①業務の全体像が見えていないことによる困難、②看護に対して準備不足であることによる困難、③先輩看護師と共に働くうえでの困難、④仕事と生活を両立させるうえでの困難、⑤患者にケアを提供するうえでの困難の5つに大別された。その結果から、交代制勤務に関する一般知識を学び、他者と体験を共有し助言を得る機会を提供すること、看護師と協働するチームワークを学ぶ機会を提供すること、患者との関わりに対する自己評価とセルフコントロールの方法を習得する機会を提供することは、看護基礎教育・新人看護師教育にとって有用であることが示唆された。

実践報告
資料
  • 小山 満子
    原稿種別: 資料
    2008 年 17 巻 3 号 p. 61-67
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、実習評価の妥当性を高めるための基礎的な情報を得る1つの方法として、教員・臨床指導者が行う看護学実習評価に対する卒業生の学生時代の見解を明らかにすることを目的とした。研究対象者は3年課程看護専門学校の卒業生22名であった。研究方法は、半構成的面接によりデータを収集し、帰納的記述的分析方法を用いた質的研究である。また、実習評価は、自尊感情や自己評価に密接に関係するため、研究対象者の自尊感情・自己評価の傾向を把握するために、Self–Esteem尺度を用いて、質問紙調査を併用した。その結果、6つのカテゴリー【評価の意義】【評価に対する肯定的な受けとめ】【評価に対する否定的な受けとめ】【評価の限界】【評価に影響する実習環境】【評価に関する要望】が抽出された。また、Self–Esteemは、研究協力者全員が青年期の適応範囲内にあった。学生は、実習評価の最終責任者である教員に、形成的・総括的評価のさらなる充実を求めている。今後、学生の見解を加味した評価方法の検討が望まれる。

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