日本看護学教育学会誌
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20 巻, 3 号
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研究報告
  • ─ 状況の把握に焦点をあてて ─
    尾形 裕子
    原稿種別: 研究報告
    2011 年 20 巻 3 号 p. 1-14
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    〔目的〕本研究は、臨床判断の構成要素の中の“状況の把握”に焦点をあて、臨床経験3年以上の看護師が患者ケアについて決定を下す過程を明らかにすることを目的としている。〔方法〕本研究は半構成的面接法を用いた帰納的記述的研究法によって行った。〔結果〕12名の看護師の34場面からデータを収集し分析した結果、“状況の把握”に関して5カテゴリーが明らかとなった。1場面において状況の把握は、【その場に入って対象者の力や変化に注目する】ことから始まり、【注目することに対策を講じる】、【その場に合わせた手段を用いる】が関連して存在した。【その場で注目することの指標となる観点を捉える】と【場面で講じた対策を再び吟味して対象者の意図に合わせる】は、【注目することに対策を講じる】に関連しており、関連の方向性は双方に向かうパターンが抽出できた。【その場で注目することの指標となる観点を捉える】と【場面で講じた対策を再び吟味して対象者の意図に合わせる】は、1場面に存在しない場合もあった。【その場に合わせた手段を用いる】は、1場面で他のカテゴリーに関連し1つ以上のコードが存在しており、同じコードが幾度もみられる場合もあった。〔考察〕“状況の把握”は何を対象としているかに関する見解や“状況の把握”のパターンと用いた手段の特徴から、臨床判断育成のためには、経験に対して振り返る機会を意図的に持つことや、多様な場面に速やかに入ることを支援するための人的資源と環境の確保によって既存の知識を再構築し新たな知識を得ることが重要であると示唆された。

  • ─ ペーパーペイシェントを用いたグループワーキングをとおして ─
    眞壁 幸子, 伊藤 登茂子
    原稿種別: 研究報告
    2011 年 20 巻 3 号 p. 15-26
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    〔目的〕看護大学生の授業としてグループ学習を活用し、学生の主体性、目的志向性を促し、学習課題である事例の系統的な分析、推論、判断による課題解決を意図した教育を行い、学生のクリティカルシンキング(CT)における効果を検討する。

    〔方法〕6週間に及ぶ意図的教育的介入を、ペーパーペイシェントを用いたグループワークをとおして行った。その前後でCT気質とCT能力を測定し分析した。

    〔結果〕CT気質には有意な変化はみられなかった。一方、看護におけるCT能力では、問題解決能力、コミュニケーション能力、根拠づけへの自信などの15項目が介入後に有意に高まり、他者とのかかわりにおけるCT能力では、要点理解、多様性理解などの7つすべてのサブスケールにおいて有意に高まった。CT気質のうち系統性は、CT能力の変化量と正の相関のあった項目数が最も多かった。

    〔考察〕CT気質は容易に変化するものではない。本介入により懐疑的姿勢を身につけて問題解決能力やコミュニケーション能力、判断力、学習力、根拠づけへの自信を習得できる。CT気質の系統性はCT能力の改善のために重要な気質である。

  • 伊藤 千晴, 太田 勝正
    原稿種別: 研究報告
    2011 年 20 巻 3 号 p. 27-36
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

     目的:卒業直後の新人看護師に必要だと思われる看護倫理に関する教育項目とその到達度について明らかにし、新人看護職員研修のプログラム作成のための資料を得ることである。

     方法:全国の特定機能病院82箇所において院内教育を担当している看護師たちを対象とし、1回目29施設、2回目19施設の協力を得て、同じ質問紙を用いて2回の繰り返し調査を行った。

     結果と考察:提示した4つの枠組みの合計63の教育項目において36項目の合意を得ることが出来た。看護倫理の概念に関するものが18項目、倫理規定に関するものが8項目、倫理的な課題と解決に向けた方法に関するものが8項目、実践や教育の場における取り組みと課題に関するものが2項目であった。到達度においては、理解までを求めたものが25項目、説明できるまでを求めたものが1項目、概念に基づいて行動できるまでを求めたものが5項目の計31項目の合意を得ることができた。同意が得られなかった教育項目については、今後、教育現場の意見をふまえて再検討していく必要があると考える。

  • 工藤 うみ, 北島 麻衣子, 倉内 静香, 井瀧 千恵子, 冨澤 登志子
    原稿種別: 研究報告
    2011 年 20 巻 3 号 p. 37-45
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は、外来通院中の糖尿病患者のセルフマネジメントをサポートする目的で行われている健康教室にボランティアとして参加した看護学生が、患者教育をどのように捉えたのかを明らかにすることである。【方法】半構成的インタビューを行った。内容分析の手法を用いて、患者教育に関する内容を抽出した。【結果】2つのカテゴリーが抽出された。ひとつは、生活面および心理面における患者の実態に関する内容で、『生活しながら治療を続ける患者をありのままに理解する』と命名した。もうひとつは、糖尿病の患者と関わる時の看護師のあり方や患者同士での支えあい等に関する内容で『生活しながら治療を続ける患者を支える』と命名した。【考察】学生は、患者の気持ちや生活の実際をリアルに捉えながら、患者教育のあり方を患者とその人の生活に寄り添う形に方向付けていた。これは、実際に日々試行錯誤しながら自己管理を続けている患者と関わったこと、健康教室の目的が知識の獲得のみではなく患者の自己管理能力の向上や治療の継続を支援するといった視点で展開されていたことが影響していると考えられた。

実践報告
資料
  • 北村 妙子, 綿巻 徹
    原稿種別: 資料
    2011 年 20 巻 3 号 p. 57-62
    発行日: 2011/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    【目的】看護学生の学習態度と臨地実習成績との関係を明らかにする。

    【方法】看護師2年課程学校(定時制)の3年生28名を対象に調査した。学習態度は、4段階リッカート尺度20項目からなる自作の授業態度質問紙と実習態度質問紙を使い、学生に自己評価させた得点を用いた。臨地実習成績は、実習評価表に記載された成績を、認知、情意、精神運動の3領域に区分して、その成績得点をz得点に変換したものを認知領域成績、情意領域成績、精神運動領域成績とした。学習態度得点と臨地実習3領域成績との関係はSpearmanの順位相関係数及び多重比較によって、また臨地実習成績3領域間の関係は偏相関及び多重比較によって検証した。さらに社会経験や年齢と実習成績や学習態度との関係も調べた。

    【結果】臨地実習の成績は、情意領域と認知領域の間、情意領域と精神運動領域の間、認知領域と精神運動領域の間にそれぞれ有意な偏相関があった。学習態度得点と臨地実習成績の関係は、授業態度得点が精神運動領域成績や情意領域成績と有意に相関していた。また、年齢と臨地実習成績との間には有意な負の相関があった。

    【考察】授業に積極的な態度で取り組む学生は臨地実習成績が高いことが示唆された。さらに、年齢が高い学生も受け入れている看護師2年課程学校では、年長の学生に対して、若年の学生より細かい教育的配慮の必要性が示唆された。

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