要旨:
〔目的〕看護学を学ぶ人をとらえる新たな視座を開発するために「看護職として生涯発達しているひとりの人」として看護学の学士課程修了時の学生をとらえ、「看護職としての『私』」として記述する。その上で宮澤賢治の「わたくしといふ現象」を参考に考察する。
〔方法〕学士課程4年次で卒業を間近にした学生Aさんを協力者とした。インタビューにより、語りを対話によって生成し、語り全体を俯瞰し「看護職としての『私』」のテーマを形成するタイトルごとに解釈を記述した。B大学倫理委員会において承認を受けて実施した。
〔結果〕Aさんのテーマは《祖父が内臓破裂で亡くなった日に支えてくれた看護師の姿を胸に刻み、つらかった講義や実習、合わない教員をも克服しながら、将来は在宅看護を目指す》であり、6つのタイトルからなった。
〔考察〕Aさんは人生の部分と全体が必然的な有機的な関係の中で相互に作用しあい、生きて未来にまなざしを向けている。刻印された出来事や出会いの中で、「看護職としての『私』」を編み直している。
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