日本看護学教育学会誌
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30 巻, 3 号
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総説
原著
  • 山田 恵子, 中島 美津子
    原稿種別: 原著
    2021 年 30 巻 3 号 p. 13-25
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕看護職が認識する社会的責任を構成する要素を明らかにする。

    〔方法〕無記名自記式質問紙調査法によって得た質的データをKHCoder(樋口,2014)で分析した。

    〔結果〕58協力施設6,471名に調査票を配布、2,314名の回答を得た。看護職が認識する社会的責任として、〈安全な医療と看護〉、〈命に関わる専門職としての自覚と行動〉、〈心身が安らぐ環境の調整〉、〈守秘義務〉、〈尊厳・倫理〉、〈看護の質の追求〉、〈サービス提供者としての対応〉、〈多様な人々への健康支援〉、〈地域・社会への貢献〉の9カテゴリーが得られた。

    〔考察〕看護職が認識する社会的責任は、〈安全な医療と看護〉、〈命に関わる専門職としての自覚と行動〉、〈自然環境と社会環境の調整〉、〈個人情報の守秘〉の法的責任に特徴づけられた。さらに〈尊厳・倫理〉の倫理的責任、〈看護の質の追求〉、〈サービス提供者としての対応〉、〈多様な人々への健康支援〉、〈地域・社会への貢献〉の裁量的責任を認識していた。

研究報告
  • 廣川 恵子, 細川 京子
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 30 巻 3 号 p. 27-38
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕看護系大学の新人教員が実習指導教員として、どのような出来事や体験を重ねているのか、そのプロセスを明らかにする。

    〔方法〕看護系大学で初めて実習指導を担当して6ヶ月以上2年未満の者10名に半構成的面接を行った。質的記述的研究デザインを採用しM-GTAで分析を行った。

    〔結果〕新人教員が実習指導教員として歩き始めるプロセスは、【異次元で何もわからない】に始まり、実習の状況が見えていない中で失敗しないよう慎重になりながら【真っ暗闇の中を手探りで歩く】、実習指導の経験を重ねていろいろなことが少しずつ見えてくる【目が慣れて薄暗い中を歩く】、実習指導教員の役割、やり方や自分の課題がわかり、自分の進むべき道へ一歩踏み出すようになる【少しずつ見えてきた道を歩き始める】へと進んでいた。

    〔考察〕プロセスを踏まえて、自己効力感を高める支援、効果的な支援のタイミングの重要性が示唆された。

  • -1年生と3年生の学年間の相違-
    青木 郁子, 足立 久子
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 30 巻 3 号 p. 39-51
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕看護短期大学生のストレスとストレス・コーピングについて、1年生と3年生の相違を検討した。

    〔方法〕A短期大学看護学科の1年生と3年生163名に、大学生用日常生活ストレッサー尺度とGCQ 特性版を用いて無記名自記式質問紙法を実施した。

    〔結果〕1年生のストレス尺度の平均値が最も高かったのは、【大学・学業】、3年生では【実存的】であった。1年生のストレス尺度の【対人】と【大学・学業】は、ともにコーピング尺度の【感情表出】と【情緒的サポート希求】の間に有意な正の相関があった。3年生のストレス尺度の【対人】についても1年生と同様の結果であったが、【認知的再解釈】との間には有意な負の相関があった。

    〔考察〕1年生は、【対人】と【大学・学業】のストレスに主観的で情緒的な対処を行い、3年生も【対人】ストレスに主観的で情緒的な対処を行っていたが、対人関係における自己の客観視の困難性も示された。

  • 白蓋 真弥
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 30 巻 3 号 p. 53-61
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕本研究では、新卒看護職の看護実践能力および社会的スキルと、入職後3か月時の職業的アイデンティティとの関連性を明らかにすることを目的とした。

    〔方法〕新卒看護職31名に質問紙調査を実施し、入職時の看護実践能力および社会的スキルと、入職後3か月時の看護師の職業的アイデンティティとの関連を検討した。

    〔結果〕入職時の看護実践能力と入職後3か月時の看護師の職業的アイデンティティとの間には相関関係を認めなかった。一方で、入職時の社会的スキルと入職後3か月時の看護師の職業的アイデンティティとの間に、有意な正の相関関係が認められた。その中でも特に、高度のスキル、感情処理のスキルと計画のスキルが看護師の職業的アイデンティティと相関していた。

    〔考察〕看護基礎教育において社会的スキルを入職時までに高めておくことが、新卒看護職の職業的アイデンティティの早期確立に繋がる可能性がある。

  • 廣川 恵子
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 30 巻 3 号 p. 63-74
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕がん看護学実習を履修した学生のがん患者に対するイメージが変化していくプロセスを明らかにし、教育的支援について示唆を得る。

    〔方法〕がん看護学実習を履修した看護学生11名に面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を用いて分析した。

    〔結果〕がん患者に対するイメージが変化していくプロセスは、「がん患者の言動のキャッチ」から始まり、「実習前のイメージの揺さぶり」を生じ、他者から「咀嚼の促進剤」となる刺激を受けて「言動の意味や思いの発見」、「実感を伴った理解の深まり」といった【体験の咀嚼と産物】を得ていた。

    その結果、【イメージ反応】として「イメージの解凍」、「イメージの拡がり」を示し、「新たな看護の方向性の気づき」ができていた。また、「複雑化したイメージへの違和感」を生じたり、これまでの「イメージの強化」という【イメージ反応】を示したりしていた。

    〔考察〕教育的支援として、キャッチした言動の言語化と体験の共有、相互作用によって思考を刺激することが示唆された。

  • 山住 康恵, 櫻井 美奈, 中村 昌子, 竹安 晶子, 中原 るり子
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 30 巻 3 号 p. 75-87
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕本研究の目的は、ベッドメイキング時のボディメカニクスの活用状況について、対象者が模範動画と比較した自己評価の内容と対象者の動画を分析し、ボディメカニクスの習得に関する教育的な示唆を得ることである。

    〔方法〕対象者が練習7回後(T1)と最終提出(T2)に実施した動画と模範動画とを比較した自己評価シートと対象者の動画からボディメカニクスの活用状況の変化を分析した。動画解析ソフトを用いて前傾角度、膝関節角度、脊柱の後彎の有無を分析した。

    〔結果〕T1−T2と模範動画の比較では対象者の自己評価はボディメカニクスの活用状況が1%水準で有意に改善された。前傾角度の平均はT1の43.11°からT2は34.06°に改善し、5%水準で有意差が認められた。

    〔考察〕対象者の前傾角度はT2では腰部負担の少ない30°に近づいた。動画を視聴し模範動画と自身の姿勢を比較し振り返りをすることにより、ボディメカニクス習得について一定の学習効果が得られた。

  • 関根 由紀, 長谷川 智之, 脇坂 浩, 玉田 章
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 30 巻 3 号 p. 89-100
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕成人急性看護総合実習に導入したルーブリック評価表の利点と課題を明らかすることである。

    〔方法〕成人急性看護総合実習を履修した看護学部4年生12名を対象に質的記述的研究を行った。

    〔結果〕成人急性看護総合実習においてルーブリック評価表導入の利点は、【到達目標を把握し実習に臨む】、【ルーブリックを活用し学びを深める】、【明確な評価指標により自己評価がしやすい】、【目標達成と自己の課題が明確になる】。ルーブリック評価表の課題については、【ルーブリックに意識が向かない】、【文字数の多さに圧倒される】、【評価内容の分かり難さがある】が抽出された。

    〔考察〕成人急性看護総合実習にルーブリック評価表の導入は、看護総合実習における到達度を理解し、学びの視点を定め実習に取り組むことができ、主体的な学習を促し学びと経験の幅を広げる一助となると考えられる。その一方で、ルーブリック評価表を使用し、その評価を基に改善していく必要があると考える。

  • −看護師のリサーチマインドを育む教育プログラムの開発に向けて−
    佐藤 冨美子, 酒井 敬子, 神 裕子, 片倉 睦, 山内 泰子
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 30 巻 3 号 p. 101-113
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕大学病院看護師の看護研究への取り組みと関連要因を明らかにする。

    〔方法〕看護研究への取り組み、リサーチマインドを育むための方略、看護研究を行うために組織に求める支援で構成した自記式質問紙をA大学病院の看護師および助産師1,139名に配布し、無記名個別投函により回収したデータを統計学的に分析した。

    〔結果〕有効回答908名分を分析した結果、臨床における看護研究経験「あり」が73.7%、専門看護分野「あり」が11.2%、継続・発展させて取り組んでいる研究テーマ「あり」が11.8%、看護研究に関する研修・学会などの参加「あり」が63.6%、看護研究成果を臨床看護に「非常に」、「時々」活用しているが27.3%であった。これらの取り組みは看護専門資格者、5年以上の臨床経験者、修士課程修了者、学会所属者に有意に多かった。

    〔考察〕次世代型ケアを創出できる大学病院人材の育成には、看護師の研究体制および組織の支援体制の必要性が示唆された。

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