日本看護学教育学会誌
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31 巻, 1 号
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総説
原著
  • 宮村 啓子, 林 智子, 井村 香積
    原稿種別: 原著
    2021 年 31 巻 1 号 p. 15-28
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕「新人看護師の学習ニーズ」に対する新人看護師(新人)と指導看護師(指導者)の捉え方の相違を「必要」と「要求」から明らかにする。

    〔方法〕「必要」と「要求」の学習ニーズに対する新人132名と指導者146人の自由記述を併せて内容分析し、カイ二乗検定、バブル分析を行った。

    〔結果〕「新人看護師の学習ニーズ」として10のコアカテゴリが生成された。「必要」では、指導者に【Ⅳ倫理的実践】、新人に【Ⅱ治療と処置】が有意に多かった。「要求」では4つのコアカテゴリで新人が有意に多かった。また、両者のバブルは離れていたが、新人の「必要」と指導者の「要求」のバブルは隣接していた。

    〔考察〕指導者は自分が新人にとって必要な学習と考える学習内容を新人も必要と捉えていると認識していると同時に、新人の求める学習を認識できていないことが示唆された。また、新人の「必要」を「要求」と捉え違えていることも示唆された。

  • 野崎 由希子
    原稿種別: 原著
    2021 年 31 巻 1 号 p. 29-41
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕看護学生が臨地実習で教員に求める支援(以下、求める支援)と発達障害の傾向に起因する学校生活における困り感(以下、困り感)との関連を明らかにする。

    〔方法〕領域別の臨地実習を経験した看護学生を対象に留め置き法で無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は、対象者の属性、求める支援(27項目)、困り感(ADHD・自閉的・対人的困り感の下位尺度からなる統合版困り感質問紙)とした。困り感を高群と中・低群の2群に分け、求める支援との関連を検討した。

    〔結果〕377人から回答を得た(有効回答率79.7%)。求める支援27項目のうち、ADHD困り感16項目,自閉的困り感10項目、対人的困り感11項目で困り感高群が中・低群より有意に支援を求めていた。困り感高群は、共に優先順位リストを作成する、一度に複数の指示をしないことなどを教員に求めた。

    〔考察〕困り感の特性に応じ学生を支援する必要性が示唆された。

  • 中岡 亜希子, 内海 桃絵, 井上 満代, 矢山 壮, 上杉 裕子
    原稿種別: 原著
    2021 年 31 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

     〔目的〕Mentors’ Competence Instrument in Clinical Mentoring of Nursing Students (以下、MCI)の日本語版を作成し、その信頼性と妥当性を検討する。

     〔方法〕MCIを翻訳し、実習指導経験が5年以上ある指導者を対象に内容妥当性を確認した日本語版MCIと教育ニードアセスメントツール-実習指導者用-を用いて、実習指導者を対象に、基準関連妥当性、内的整合性の確認、確証的因子分析および再テストを実施した。

     〔結果〕CVIは.88であった。分析対象者は254名、再テストは29名であった。クロンバックのα係数は.97、再テストの結果は、r=.46~.86(p<0.01)で、基準関連妥当性の結果は、rs=.34~.52(p<.01)、確証的因子分析の結果は、CFI=.817、RMSEA=.062であった。

     〔考察〕日本語版MCIの信頼性と妥当性は得られ、国内の実習指導者のメンタリング能力の測定と今後の国際比較にも活用可能である。

  • 鈴木 幹子, 大日向 輝美, 山崎 公美子
    原稿種別: 原著
    2021 年 31 巻 1 号 p. 55-67
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕救命救急領域の新人看護師が臨床実践において自己の成長につながったと捉えた指導看護師の関わりを明らかにする。

    〔方法〕研究対象者は、1年間新人看護師として救命救急領域で勤務を行い、現在勤務経験2年目の11名だった。データ算出には半構造化インタビューを実施し、質的記述的分析を行った。

    〔結果〕10カテゴリー、45サブカテゴリーが抽出された。

    〔考察〕今回明らかになった指導看護師の関わりの多くは、一般病棟の新人看護師教育と共通性のある関わりであった。しかし、生命の危機的状況にある患者の状態悪化への対応や、救命救急領域に特有の看護技術や医療行為の習得、そして家族への関わりなど、救命救急領域の特徴を踏まえた指導が行われており、これらは救命救急領域特有の指導看護師の関わりであった。また、【日々の看護活動をみせる】は、救命救急領域の環境特徴を活かした救命救急領域特有の指導看護師の関わりであった。

  • 水引 智央, 細田 泰子, 紙野 雪香
    原稿種別: 原著
    2021 年 31 巻 1 号 p. 69-82
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕新人期看護師の多重課題遂行におけるセルフモニタリングの変容を明らかにする。

    〔方法〕卒後3年目の看護師15名に対し半構成的面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析を行った。

    〔結果〕新人期看護師は多重課題に直面し《自分の現状に目を向ける余裕がない》が、看護実践の省察や他者との相互作用を通して自分の力量を認識し、《後輩と関わることで自分の未熟さに気づく》ことにより《自分の看護実践への理解が深まる》。そして、《できることが増えていき気持ちにゆとりが生まれる》ことや、《困った時には援助を求められるようになる》ことで、《周囲の状況を察知しながらその場に合わせた行動を考える》ようになる。

    〔考察〕新人期看護師は実践の省察や他者との対話、比較を通してセルフモニタリングし、自己の看護実践への理解を深めていた。指導者が新人期看護師のセルフモニタリングの変容を理解し、それぞれの変容に合わせた教育支援が重要であることが示唆された。

  • 松本 赳史, 細田 泰子, 紙野 雪香
    原稿種別: 原著
    2021 年 31 巻 1 号 p. 83-95
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕臨床学習環境における実習指導者のアーティファクトの活用を明らかにする。

    〔方法〕一般病床数 300 床以上の病院に勤務しており、実習指導者講習会を受講し、実習指導経験が

    3年以上の現任の実習指導者16名に半構造化面接を実施した。実習指導者のアーティファクトの活用について、質的記述的に分析した。

    〔結果〕臨床学習環境における実習指導者のアーティファクトの活用として、【病棟にあるものを教材として用いる】、【言葉や知見を指導メソッドに取り入れる】、【指導時間や場所を確保する】、【ツールを用いる】という4つの大カテゴリーが生成された。

    〔考察〕実習指導者は、物理的実体のあるものと物理的実体のないものの両方を実習指導で活用していた。また、臨床学習環境において、看護学実習での学生の主体的な学びを支援するために、アーティファクトを活用することの重要性が示唆された。

  • 赤崎 芙美, 細田 泰子, 紙野 雪香
    原稿種別: 原著
    2021 年 31 巻 1 号 p. 97-110
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕根拠に基づく実践を促進する看護師のナレッジブローカリングの過程を明らかにする。

    〔方法〕臨床経験5年以上を有し、修士課程を修了した看護師15名に対して半構成的面接を実施し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。

    〔結果〕看護師は《患者に最善のケアを提供する信念を持つ》ことを根本とし《ひたむきに看護実践の質向上に向き合う》。そして《スタッフを取り巻く実状を直視する》ことにより、《対象の課題を明確にする》。さらに、課題解決に必要な《共有するエビデンスを見極める》。次に《手を尽くしてエビデンスを導入する》ことで、《エビデンスが根付くまで試行錯誤を重ねる》。このようにして、【エビデンスの浸透】の過程を円滑に進めるために《スタッフの絆を深める》とともに、《スタッフの能力に磨きをかける》。

    〔考察〕ナレッジブローカリングの過程は、看護師がスタッフの関係性を深め、教育的に関わることが重要であると示唆された。

研究報告
  • 山下 智美, 大池 美也子, 能登 裕子, 橋口 暢子
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 31 巻 1 号 p. 111-122
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

     〔目的〕看護専門学校の教育活動における看護教員の臨床経験の意味を明らかにする。

     〔方法〕ナラティヴ研究法。看護教員14名にナラティヴ・インタビューを実施、テーマ分析を行った。

     〔結果〕看護教員の臨床経験の意味には【教育活動を支える源になる】、【教育内容として伝える材料にする】、【学生にとっての学びのチャンスを見抜く】、【対象に対する考え方を教育実践に転用する】、【拠り所となる看護の考えをもつ】、【学び・考え続ける姿勢をもつ】という6つのテーマが見出された。

     〔考察〕6つのテーマを通して、看護教員の臨床経験には、自己の教育活動を判断したり方向づけたりする信念あるいは未解決課題を探求する学び続ける姿勢に関わっていること、また、臨床経験は、実習における臨床状況の中で学生が学ぶ事柄を判断する機会として貢献し、教育活動に活用されていることが考えられた。

  • 古川 亮子, 遠山 紗矢香
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 31 巻 1 号 p. 123-132
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕看護教育に携わる看護教員のICT利用状況を把握し、その課題について検討する。

    〔方法〕全国の看護専任教員を対象にインターネットアンケートを行った。

    〔結果〕有効回答数は849人、研究参加者の平均年齢46.7歳、勤務場所は専門学校62.9%、最終学歴は大学院41.7%だった。ICTへの興味は「まあ興味がある」(54.2%)、ICTの利用程度は「まあ利用できる」(44.3%)が最も多く、ICTを利用する内容では電子メールが85.0%と最も多く、診療情報の開示が6.7%と最も少なかった。ICTへの興味と利用程度に有意な相関があり、ICTへの興味・利用状況と3つの属性間(勤務場所、最終学歴、性別)に有意差があった。

    〔考察〕ICTや情報を看護教育・研究・臨床で有効に利活用するため、看護教員自らがICTに興味を持ち、ICTに関するコンペテンシーや情報リテラシーを獲得していく必要がある。

  • 勝山 愛, 細田 泰子
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 31 巻 1 号 p. 133-144
    発行日: 2021/07/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨:

    〔目的〕一般病床数200床以上の医療施設に所属している新人看護師の学習活動におけるエンゲージメントを明らかにする。

    〔方法〕新人看護師に学習活動におけるエンゲージメントについて半構成的面接法を実施し、質的記述的に分析した。

    〔結果〕新人看護師16名へのインタビューにより427のコードが抽出され、これらを分類した結果、62のサブカテゴリー、21のカテゴリー、【行動的側面】、【感情的側面】、【認知的側面】、【能動的側面】という4つの大カテゴリーが生成された。新人看護師の学習活動におけるエンゲージメントには、看護実践の省察、学習課題への関心、看護実践の達成感、看護師としての責任感、学習環境の調整、周囲への働きかけが含まれていた。

    〔考察〕新人看護師がエンゲージメントの状態で学習活動に取り組めるように、指導者は、新人看護 師の選択を支持すること、同僚に働きかけやすい環境を整えること、関心をもち彼らの問いに答える ことが有効な支援であるといえる。

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