日本看護学教育学会誌
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32 巻, 3-2 号
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原著
  • −看護師の定着支援に向けて−
    島村 美香, 幸 史子, 小山 記代子
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 3-2 号 p. 65-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    〔目的〕看護師のノンテクニカルスキルの実態を明らかにした上で、就業状態に及ぼす影響を検討する。

    〔方法〕全国の看護師を対象に、ノンテクニカルスキルおよび就業状態に関するインターネット調査を実施した。

    〔結果〕看護師のスキルタイプは、「全低型」が実務経験9年以下では多いが、それ以降は減少し、20年以上で「万能型」が多くなるという推移が確認された。次に、スキルタイプと就業状態の関係に関して、仕事充実感は下位のスキルタイプほど悪かった。この傾向に加え、仕事適量感は過労を特徴とするタイプが低くなる傾向を示した。最後に、実務経験はノンテクニカルスキルを媒介して就業状態に影響することが確証された。

    〔考察〕実務経験9年以下の看護師は「全低型」が多い。そのため、着任後10年間はスキルタイプに合わせたスキル研修を行い、就業状態の向上を図る必要がある。

  • 副島 理沙, 村田 尚恵, 分島 るり子
    原稿種別: 原著
    2023 年 32 巻 3-2 号 p. 77-88
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    〔目的〕看護大学生のリスク感性の関連要因を明らかにし医療安全教育への示唆を得る。

    〔方法〕領域実習をすべて終えている看護大学生756名に配布し、有効回答393名(51.9%)を分析対象とした。無記名自記式質問紙調査を実施し、調査項目は、看護学生のリスク感性、他者意識、リスク受容度、年齢、性別、受け持ち患者数とした。関連性は、重回帰分析(ステップワイズ法)で検討した。

    〔結果〕看護大学生のリスク感性には、他者意識尺度の内的他者意識β=.259(p<.001)、リスク受容尺度の慎重β=.375(p<.001)とチャレンジングβ=.230(p<.001)が関連し、分散の40%を説明していた。

    〔考察〕看護大学生のリスク感性を高めるためには、学生がルールを守って慎重に行動できる支援が求められる。また、シミュレーション教育という安全を保証した環境下でのトレーニングは、学生の自信を育み、積極的な行動に繋がる可能性がある。さらに、患者の内面に意識が向くようなシナリオ設計も有用と考えられる。

研究報告
  • 髙橋 正子, 臼井 美帆子, 杉田 和代, 中原 美穂
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 32 巻 3-2 号 p. 89-101
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    〔目的〕成人看護学実習(慢性期)において学生が受持ち対象者の理解が深まる契機となった体験と理解が深まるプロセスを学習者の視点から明らかにする。

    〔方法〕成人看護学実習(慢性期)を履修した看護学生10名に半構造的面接を行い、質的記述的に分析した。

    〔結果〕学生の理解のプロセスとして、最初に受持ち対象者を身体的側面から理解していた。受持ち対象者の理解が深まる契機となった体験は、【同じ時間を共有し、対象者の関心や疑問に対して関わることで関係構築】、【対象者の認識や本音を知る】、【対象者を一人の生活者として捉える】、【対象者の状況や背景に合わせたケアと対象者の反応による評価と発見の繰り返し】であり、学生は、対象者の理解をその時々で更新していた。

    〔考察〕理解のプロセスにおいて、対象者の認識や本音を知ること、ケア提供後の対象者の反応から評価・省察することが、対象者の理解の深化に影響していたと考えられる。

  • −ディプロマ・ポリシー、教養教育のカリキュラムの比較・検討を通して−
    中釜 英里佳, 吉村 匠平
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 32 巻 3-2 号 p. 103-114
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    〔目的〕ディプロマ・ポリシー(DP)及び教養教育カリキュラムに着目し、看護系大学における教養教育の違いを検討した。

    〔方法〕大学設置基準大綱化以前設立の2学部以上ある(以下、前複)10大学と大綱化以後設立の単科(以下、後単)13大学のDP及び教養教育科目の内容を分析し検討した。

    〔結果〕DP内で前複大学が多かった語は、『解決』、『多様』、『情報』、後単大学が多かった語は、『看護』、『身につける』、『地域』、『態度』だった。教養教育科目の内容は、前複大学が『情報』科目や「外国語」科目で選択の機会が保証されており、後単大学は「英語」科目において専門教育の教養教育への侵入性が高かった。

    〔考察〕前複大学では、言語能力や情報活用能力など学習の基盤となる資質・能力育成のための科目を含む教養教育カリキュラムが編成されていた。一方後単大学では、教養教育を専門教育である看護学の学習の基礎として位置づけている傾向が見られた。

  • −拡張的学習論を基軸とする事例検討からの考察−
    尾﨑 優子
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 32 巻 3-2 号 p. 115-127
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    〔目的〕病院等医療施設から地域への職域移動に伴う看護師の学びの様態を、拡張的学習論の概念および分析モデルを用いて明らかにし、その学びの性質を考察する。

    〔方法〕病院を離職し在宅支援サービスの仕事に再就職した看護師の属する専門職集団と、地域住民ボランティア集団による協働実践事例を対象に、参与観察法による観察場面の記述およびインタビュー調査により得たデータを分析した。

    〔結果〕看護師は、医療と生活の場で必要とされる支援の違いや、生活の場で必要とされる支援に対する専門職集団の限界を矛盾として意識化した。これらが原動力となり、地域住民ボランティア集団と協働し、新しい活動システムの創造に至っていた。

    〔考察〕活動システムの変化に随伴して、看護師に「アンラーン」とよばれる学びが生起していたと考えられた。比較的自由な社会空間の中での、看護に近接する異分野の小集団との持続的な相互作用の意義が仮説的に示唆された。

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