北ヨーロッパ研究
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12 巻
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特集 スウェーデン企業の特質と成果
  • 岸田 未来
    2016 年 12 巻 p. 1-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、スウェーデン企業のコーポレート・ガバナンス体制における従業員代表制の役割を、先行研究のアンケート調査の内容をもちいて明らかとした。取締役会における従業員代表は、労働組合によって選出されており、取締役会から職場への速やかな意思決定の伝達を行うとともに、限定された範囲ながら、職場の意向や情報を取締役会へ直接伝えるという、双方向の情報伝達機能を担っていたと考えられる。このような機能をもつ従業員代表制と、それを含むステークホルダー型コーポレート・ガバナンス体制は、労使協調体制の下で20年以上にわたり安定して継続し、スウェーデン企業の特質を形成してきた。ただし近年では、ステークホルダー型コーポレート・ガバナンスの機能が近い将来に低下しうる兆候もみられる。
  • 丸山 佐和子
    2016 年 12 巻 p. 23-35
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論ではスウェーデンの欧州単一市場への統合に伴う経済制度の変更を以下の二つの側面から分析する。第一に、欧州単一市場への統合、すなわち4つの移動の自由の導入のために直接的に生じた制度変更である。第二に、欧州単一市場への統合を前提に実施した国内制度の調和のための制度変更である。続いて制度変更がスウェーデン企業や経済に及ぼした影響を考察した結果、次の三点が明らかになった。第一に、モノ・サービス・資本の移動の自由化はスウェーデン企業の海外展開の障壁を引き下げ、多国籍的活動を後押しするものであった。第二に資本規制が緩和されたことで外資の流入が増加し、スウェーデン企業の資本関係が大きく変化した。第三に、制度の調和のための各種改革はスウェーデンの市場をより開放的で効率的なものに変え、スウェーデン企業を取り巻く経済環境や競争条件も大きく変えた。
論文
  • 田中 里美
    2016 年 12 巻 p. 37-45
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    フィンランドでは2015年、経済的な持続可能性の保障、行政運営方法の改良とともに、 民主主義の強化を目的として、自治体法が改正された。ここでは、民主主義の強化と関連して、自治体が設置可能な機関として、地域の委員会が取り上げられた。本稿では、これに先行して地区委員会を運営してきたロヴァニエミ市を取り上げ、自治体が、住民の参加と影響力行使の権利を保障するしくみの具体と課題を、現地調査、文献調査によって明らかにする。地区委員会設立後まもなく、ロヴァニエミ市によって行われた調査では、地区委員会の理念、意義について、肯定的な評価が多くみられたが、試行終了を翌年に控えた2015年現在、市の地区委員会担当者は、経費の大きさ、決定にかかる時間の長さから、現状での存続を危ぶむ見方を示している。ロヴァニエミ市地区委員会の例からは、近隣民主主義を実行に移す際の難しさがあらためて明らかになった。
  • 深見 佳代
    2016 年 12 巻 p. 47-56
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    スウェーデンの医療制度は、医療にアクセスするまでの待ち時間の長さが指摘されてきた。しかしその傾向は近年改善しつつあるようである。最初に国レベルで対策が行われたのは1987年で、3種類の手術について追加的資金が分配された。1992年には10手術について3か月を待ち時間の上限とする最大待ち時間保証が開始された。1997年にはより普遍的な利益のため、医師に会うまでの時間について、2005年には手術や治療を受けるまでの時間についてそれぞれ保証が拡大された。この保証により実行力をもたせる目的で、2009年には経済的インセンティブを付与する計画が開始され、2010年には保証が「患者の権利」として法制化された。これらは、待ち時間の改善という一定の成果を上げているものとして評価できるものの、根本的な解決につながるものではないため、現場に負担がかかっていることが予想される。今後は待ち時 間の原因についてより詳細な分析が必要である。
研究ノート
  • 玉川 朝恵
    2016 年 12 巻 p. 57-65
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ワークラインを規範とするスウェーデン社会において、移民が労働市場に参加していることは非常に重要な意味を持つ。それゆえ、移民・難民に対して寛容な政策がとられ、失業を防ぐため充実した労働プログラムが提供されている。しかし、充実した制度を提供している一方で、労働市場に参加できない人たちがいる。スウェーデンで生まれ育った移民第二世代の中でも、とりわけ非ヨーロッパ諸国出身の親を持つ移民第二世代の失業率が、他の地域出身の親を持つ第二世代およびスウェーデン人と比較して高いことが明らかとなっている。本稿では、第一にスウェーデンへの移民の変遷および政策を概観し、第二に先行研究の紹介および失業率の格差の要因について分類を行った。第三に先行研究を踏まえた上で、Portes&Rumbaut (2001=2014)の研究を参考に、非ヨーロッパ諸国出身の親を持つ移民第二世代の失業率が高い要因の考察を行った。その結果、移民第一世代の歴史と編入様式を考慮しなければならないということ、そして、人種に基づく差別が要因の一つであるとする研究がほとんどないため、その点を考慮した調査が求められるということが明らかになった。
  • 長谷川 紀子
    2016 年 12 巻 p. 67-76
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ノルウェー、ヌーラン県ハットフェルダル・コムーネ(kommune)に、少数先住民族サーメ児童・生徒のための基礎学校がある。1951年、国立の寄宿制サーメ学校として創立され、特に1980年以降、南サーメ言語・文化教育をノルウェーの普通教育に取り組んだ独自の教育を展開してきた。しかし、2000年以降、徐々に児童・生徒数が減少し、現在は通年の学校として機能していない。本稿の目的は、スウェーデンにあるサーメ学校と比較の観点から、学校の教育的特徴を分析し、児童・生徒数減少の要因と実情について明らかにすることである。学校は、現在、短期セミナーや遠隔教育を駆使して南サーメ言語・文化を伝承する役割を果たしている。しかし、通年で 通う児童・生徒を確保できないがために新たな課題に直面している。この学校は、今後どのような教育機関として位置づけられていくのだろうか。
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