北ヨーロッパ研究
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14 巻
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論文
  • 2004年税制改革をめぐって
    倉地 真太郎
    2018 年 14 巻 p. 1-11
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    デンマークは高負担税制を維持する国の一つである。しかし、デンマークは1970年代初頭に反税政党・進歩党による所得税廃止運動を経験した国でもある。1980年代以降、反税政党の勢いは衰えたが、代わりに極右政党・デンマーク国民党が台頭し、2001年11月国政選挙で第三政党まで躍進した。本稿では、極右政党の台頭がデンマーク税制に与えた影響を明らかにするため、2004年税制改革の政治過程を分析した。2004年税制改革は、労働所得税減税だけでなく選別主義的な高齢者手当が導入されたが、これはデンマーク国民党にとって移民高齢者に恩恵が行き渡らないようにすることが狙いであった。
  • 分厚い「媒介的組織」とその意味
    徳丸 宜穂
    2018 年 14 巻 p. 13-25
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    技術変化やグローバル化などに対応すべく、先進諸国で新しいイノベーション政策が試行されている。本稿では、北欧諸国がフロントランナーである「イノベーションの公共調達」政策が、どのような制度的・組織的条件の下で施行されつつあるのかを検討するために、フィンランドで当該政策の施行に関与する諸組織の機能・配置と、そのミクロ的基礎である人材移動について、質的・定量的に分析・考察を行った。その結果、第1 に「触媒作用」と呼びうる機能を果たす諸組織が補完的に分厚く存在していることを、主に環境志向的な公共調達を促す諸組織への聞き取り調査に基づき明らかにした。第2 に、部門をまたがる人材移動が盛んであるという事実を、LinkenInから取得したデータの分析から見出した。これらの事実は、コーポラティズムや人材流動性といった、北欧モデルを構成する諸要素が、新しい政策の実施にとって有益に作用している可能性を示唆している。
研究ノート
  • ノルウェー・サーミ大学における言語教育実践を事例に
    田辺 陽子
    2018 年 14 巻 p. 27-36
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、ノルウェーの先住民高等教育機関・サーミ大学において成人向けに開講されている「北サーミ語初心者実践コース」に注目し、受講生の学習動機、言語復興に関する学習の成果や課題を提示することである。インタビュー調査の分析によって明らかになったのは、主に次の事項である。①学習動機に関しては、サーミ以外の受講生に「道具的志向」と「統合的志向」が目立ったのに対し、サーミの受講生には「連続的志向」がみられた。②学習成果としては、地域社会や自然・文化資源を学習環境の一部として取り入れたプログラムに対する生徒からの評価は高く、特に会話力の向上を指摘する声が多かった。その一方で、辞書や補助教材については課題が幾つくか残っている。次世代への言語継承には親世代の取組みが重要となるが、サーミ語を学ぶ成人向け教育プログラムが言語復興に果たす役割は大きく、今後の重要な研究課題の一つとなるだろう。
  • 声、宗教、民族
    田渕 宗孝
    2018 年 14 巻 p. 37-45
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    N.F.S. グロントヴィを「政治」から捉えなおす研究が近年増加している。しかしその検討にあって、グロントヴィのフォルクおよびナショナリズムはどのように捉えられているのだろうか。フランス革命を批判するグロントヴィは、「学問性」を取り戻すことを主張し、そのためにも宗教の「直観」や「感情」「声」に依拠した啓蒙を薦めようとした。そしてそれは母語や神話等に依拠するナショナリズムによって裏打ちされるものである。「人々の声」や「自由」というグロントヴィの基本概念が、政治という観点からの考察で言及される場合、それは安易にも彼を民族主義から「サルベージ」してしまうことにはならないのだろうか。グロントヴィの「直感」や「声」からfolkelighed という彼のキーワードへの流れにみられるのは、宗教と民族主義の融合したものでもある。
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