北ヨーロッパ研究
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最新号
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特集論文
  • 日本との比較を通して
    古市 憲寿
    2019 年 15 巻 p. 1-11
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、ノルウェーと日本の育児政策の変遷を概観することで、その背後にある両国の「男女平等」を理解することである。ノルウェーと日本は共に「母親」の役割を強調しながら、女性に対する権利拡充が進んできた国であった。そのため公的保育サービスの普及は遅れたものの、ノルウェーでは1960 年代の福祉国家拡大による労働力不足、日本では1990 年代の少子化に対する危機から、育児の社会化が意識された。共通するのは、労働力不足や少子化という、「男女平等」とは直接的には関係のない外在的な社会変化によって、公的保育サービスの必要性が認識されたという点である。しかし、市場や家族にとってすぐ保育園を整備することが合理的である労働力不足と違い、少子化という直ちに社会に大きな影響を与えない問題から育児政策を充実しようとした日本では、高齢化対応が優先され、未だに待機児童問題さえ解決の目処が立っていない。
論文
  • 徳丸 宜穂, 柴山 由理子
    2019 年 15 巻 p. 13-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ベーシックインカムは、個人を対象にした無条件の現金給付によって一定程度の生活を保障する構想である。フィンランドでは2017 年1月より世界初の国単位での社会実験が行われており、国際的な注目を集めている。本稿は、フィンランドにおけるベーシックインカム構想とその社会実験の歴史的・政治的・経済的コンテキストを明らかにすることと、ベーシックインカムとその社会実験が、フィンランドの福祉国家の刷新にとってどのような意味を持ちうるのかを検討することを目的とする。結論は以下の通りである。(1)ベーシックインカムはフィンランドに特徴的な普遍主義の自然な帰結であり、ラディカルな手段とは言えない。(2)ベーシックインカムは短期的および長期的な問題解決策として広範に支持されるが、前者へと換骨奪胎される傾向がある。(3)北欧福祉国家の刷新手段としては限界があるが、議論の起爆剤としての可能性を持っている。
  • 福島 淑彦
    2019 年 15 巻 p. 25-34
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文の目的は、高い水準での障害者の労働参加がスウェーデンで実現している要因を探ることである。スウェーデンの障害者の労働参加率と就業率は世界で最も高い水準にある。多くのOECD 諸国では、ある一定数の障害者の雇用を各企業や組織に義務付ける「障害者割当雇用制度」を採用して、障害者の雇用促進が図られてきた。これに対して、スウェーデンでは障害者の雇用が法律で義務付けられておらず、障害者を雇用する際に障害者を差別してはいけないという「差別禁止法」が存在するのみである。それにもかかわらず、スウェーデンではOECD 諸国の中で最も高い水準で障害者が雇用されている。スウェーデンにおいて障害者の高い水準での労働参加の実現に寄与している要因として、スウェーデン社会の差別禁止に対する姿勢、所謂インクルージョン(Inclusion)という理念が社会に浸透していることが障害者の活発な労働参加が実現している大きな要因であることを本論文で示す。
  • 藤田 菜々子
    2019 年 15 巻 p. 35-46
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、1930 年代という大恐慌期におけるイギリスとスウェーデンでの新たな経済理論・経済政策の生成について、若手経済学者集団「ストックホルム学派」が果たした役割を考察する。ケインズ経済学とストックホルム学派の関係については、先行性がいずれにあるかが主に理論比較から議論されてきたが、人物交流面からの検討も有効である。経済学クラブにおける世代間対立、失業委員会における学派認識と政策提言を経て、ストックホルム学派は形成された。その過程 は初期にケインズから影響を受けたが、また逆に「ケインズ革命」の理解・受容を後押しする影響をイギリスに与えた。
研究ノート
  • 石田 祥代, 是永 かな子
    2019 年 15 巻 p. 47-56
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    デンマークにおける地方自治構造改革は、2004年1 月の「特別委員会による地方自治構造改革についての提案書」ならびに同年6 月の「与野党間における合意書」の締結を経て、2007 年1 月にアムト(amt;県に相当)の廃止をもたらした。同時に、5 つの広域自治体レギオン(region)が創設され、コムーネ(kommune;市町村に相当)は3 万人以上の人口を目安に271 から98 に再編された(Indenrigs-og Sundhedsministeriet, 2005)。教育に関しては、ギムナシウム(gymnasium;高等学校に相当)と高等職業訓練コース(VET;職業専門学校に相当)等の後期中等教育、加えて、高等教育試験課程(HF;大検に相当)はアムトから国へと管轄が移行した。義務教育では、責任を負う管轄はコムーネであり改革前後に大きな変化はなかったものの、特別教育への影響は大きかった。すなわち、従来の特別教育では、コムーネがその責任で対応する場合と、国やアムトが特別な予算を用意して対応する拡大特別教育(vidtgående specialundervisning)があった。拡大特別教育は、比較的重度の障害児を対象としていたので、2007 年以降、重度の障害児も含め全ての子どもを対象とする義務教育の責任はコムーネが負うこととなった。インクルーシヴ教育の目 標値が設定されるに至り、全国のコムーネはインクルーシヴ教育計画を練り、それに基づき実践を行ってきたが、その中で新たな課題に直面するコムーネも少なくなかった。例えばそれらは、特別学校が移管されなかったコムーネにおける特別学校・学級の新設、対象となる子どもの範囲の拡大、移民の増加であり、全国各地で特別教育の費用が急増した。そのため、デンマーク政府は各コムーネに特別教育予算の適正化を図ることを要請し、インクルージョンセンターの設置による通常学校での対応の具体的支援や16 コムーネのパイロットスタディを開始したものの、現在も各コム ーネの固有の条件をふまえた様々なインクルーシヴ教育への取組が模索されている。本研究ノートでは、とくにインクルーシヴ教育推進の中心機関となるPPR が地域性と資源を活用し試行を繰り返している2 つのコムーネに注目し、地方自治構造改革後にインクルーシヴ教育をどのように進めてきたのかに関して、他コムーネとの共通性と2 コムーネの多様性を明確にしながら、浮き彫りにすることを第一の目的とする。改革以降、インクルーシヴ教育はコムーネの責任で行われ、その実践はコムーネごとに独自性をもった取組となっているからである。そして、デンマークが経験した大規模自治体再編後の急激な地方分権制度の進展に伴うインクルーシヴ教育における混乱とその収束を明らかにするために、2 コムーネの調査に筆者らの一連の研究とこれまでに遂行したフィールド調査の分析を検討に加え、その 取組の特徴を示すことを第二の目的とする。
  • 是永 かな子, 石田 祥代
    2019 年 15 巻 p. 57-66
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、スウェーデンにおける子ども健康チームの取り組みを、資源の少ない小規模自治体に注目して、フィールド調査及び関連文献の検討から分析することを目的とした。スウェーデンにおいては、いじめや精神的不安定等子どもの多様な問題に対応する子ども健康チームの設置が求められている。しかし小規模自治体であるトッメリラコミューンは各学校の規模も小さく、自校での子ども健康チーム設置が困難であった。そのためコミューンとして中央子ども健康チームを整備して、コミューンが雇用した専門家の巡回訪問で各学校における支援を提供していた。具体的には、コミューンとして学校心理士や学校福祉士等、必要な専門家を雇用して学校兼任配置したり、支援の申請や分析・介入方法を自治体で共有 したり、重篤な課題に関しては医療や福祉局、警察などと連携したりすることで、多方面からの子どもの支援体制を構築していた。
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