日本在宅看護学会誌
Online ISSN : 2760-5019
Print ISSN : 2187-168X
10 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 平林 瑠美, 尾﨑 章子, 西崎 未和, 苛原 志保, 大橋 由基
    原稿種別: 原著
    2021 年10 巻1 号 p. 2-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:認知症発症が疑われる段階や適切な支援を受けずに孤立している状態にある一人暮らしの認知症高齢者に対する地域包括支援センター看護職のアウトリーチ・スキル、特に初期段階におけるかかわりを明らかにする。

    方法:認知症初期集中支援チームに所属する地域包括支援センターの看護職9名を対象に半構造化インタビューを行った。

    結果:【会ったことのない認知症(が疑われる)高齢者を具現化する】【接触するタイミングを自作する】【社会的信用を用いて支援の扉を開ける】【五感を用いてその人を感じ取る】【最初に着手すべきポイントを見極める】【相手が対話したいと思う人物を演出する】という高齢者に対する個別の支援技術と、【アウトリーチ中の危機に備える】【関係機関間の横断的連携を強化する】【地域住民・家族への架け橋となる】という組織として対応する技術が明らかになった。

    結論:認知症が疑われる独居高齢者や孤立している状態にある一人暮らしの認知症高齢者に対する地域包括支援センター看護職のアウトリーチ・スキルは、高齢者が認知している世界観や主観に沿った対応技術、職員のリスク管理と心理的負担を軽減する技術など、重層的かつ包括的な性質を有していた。

  • 青木 瞳, 冨安 眞理
    原稿種別: 原著
    2021 年10 巻1 号 p. 11-21
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:脳卒中後遺症のある独居高齢者を支える訪問看護師の判断プロセスを明らかにする。

    方法:訪問看護経験が5年以上あり、脳卒中後遺症のある独居高齢者の支援の経験がある訪問看護師9名に半構造化インタビューを行い、判断プロセスについてテーマ的コード化を行った。

    結果:脳卒中後遺症のある独居高齢者を支える訪問看護師の判断プロセスは7のテーマ、125のカテゴリー、1490のコードで構成されていた。訪問看護師は、【健康状態悪化のリスクを予測】し、【生活機能と環境・個人因子を把握する】ことで、【独居継続に向けた課題・ニーズを抽出】し、【バイタルサイン・体調・生活状況をモニタリング】しつつ【ケアプランをチームで協議】して【独居生活の中のセルフケア行動を支え】、【独居継続とセルフケア行動を評価】していた。

    結論:訪問看護師は脳卒中後遺症のある独居高齢者をチームで支え、新たなリスクの予測に繋げる判断プロセスを有することが示唆された。

  • 岩野 千尋, 塚本 康子
    原稿種別: 原著
    2021 年10 巻1 号 p. 22-31
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:熟練訪問看護師が対象者に「なんとなく変」と気づいた際、どのような事象を捉え、どのような臨床判断がなされていたのかを明らかにする。

    方法:熟練訪問看護師7名を対象に半構成化面接を行い、質的記述的方法により分析した。

    結果:「なんとなく変」の気づきは、【いつもと違う見た目】【反応・応答が鈍い、いつもより口数が少ない】など8つのカテゴリーが抽出され、臨床判断は【観察結果から直観的に判断する】【現在の状況について現病歴・既往歴から瞬時に分析的な推論をし行為に至る】などの9つのカテゴリーに集約された。

    結論:熟練訪問看護師の「なんとなく変」という気づきの大半は直観的な気づきであり、異変にいち早く気づくために看護師と対象者の関係性が重要であることが明らかとなった。熟練訪問看護師は瞬時に推論し、判断と同時に行為を行っていた。臨床判断を行うためには、看護師としての対象者に対する責任や知識の獲得への意欲が必要であり、臨床判断能力を高めるためには、行為への省察が重要であることが示唆された。

研究
  • 寺本 由美子, 堀井 直子, 小塩 泰代
    原稿種別: 研究
    2021 年10 巻1 号 p. 32-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:認知症の母親を介護する息子介護者の介護困難感を明らかにする。

    方法:同居の息子介護者13名を対象に半構造化面接法を用い、質的記述分析を行った。

    結果:介護困難感として、1.【認知症の母親を介護する自分自身の困難感】では、当り前のことができなくなる親の姿を見る苦悩や、親との関係性が失われていく悲しみなどの≪変貌する親を受け止めることの難しさ≫や、≪予測できない親の行動に振り回されるストレス≫などがあった。2.【認知症の母親への対応に関する介護困難感】では、≪異性の親の身体介護のやりにくさ≫や、仕事で自分が≪不在時の安全・安楽への心配≫などがあった。3.【社会的課題としての介護困難感】では、≪予測できない親の行動による仕事の制約≫や、親の年金で暮らしていることによる≪経済面への心配≫などがあった。

    結論:認知症の母親を介護する息子介護者の介護困難感として、3カテゴリーが見出された。

  • 作山 美智子
    原稿種別: 研究
    2021 年10 巻1 号 p. 43-56
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:訪問看護師、臨床看護師、介護職、リハビリ職の療養者に対するコミュニケーションが、職種間および経験年数による違いがあるのかを明らかにする。

    方法:質問紙による調査を行った。ふだんの療養者とのコミュニケーションにおいて、聞いていること15項目、伝えていること13項目、コミュニケーション時の態度24項目について、それぞれどの程度当てはまるかを5件法で回答を依頼した。

    結果: 「聞く内容」で抽出した因子は、「生きることに直結する情報」、「生活力量に関する情報」、「伝える内容」では「生きるために必要なケア」、「介護・生活情報」が抽出され、いずれの因子も経験年数にかかわらず訪問看護師が他の職種に比べてよく聞き、よく伝えていた。「コミュニケーションの態度」は4因子構造が抽出され、どの因子もおおむね訪問看護師の得点が高かった。

    結論:訪問看護師は全般的に臨床看護師、介護職、リハビリ職よりも療養者によく聞き、よく伝えている。

  • 若山 好美, 佐々木 雅彦
    原稿種別: 研究
    2021 年10 巻1 号 p. 57-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:過疎地域での訪問看護師の地域包括ケアシステムへの関わりの認識を明らかにする。

    方法:過疎地域の訪問看護管理者5名に半構造化面接を実施し質的帰納的分析を行った。

    結果:訪問看護師の地域包括ケアシステムへの関わりの認識は、【住み慣れた家で過ごすことを支えたいと地域を意識する】【事例から資源や仕組みを繋ぎできることを考える】【看護職同士の連携でケアの継続を担保する】【業務を超えた関係を個別ケアに活かす】【住民同士の見守りや制度の理解のため活動する】【満足した看取りを迎える覚悟をもち課題提起する】【活動体制を整えながら訪問看護としてできることを関係者に見せる】が、抽出された。

    結論:過疎地域で活動する訪問看護師は、個別事例から介入の糸口を捉え、意図的に各職種のケアの伸びしろを引き出し公助を拡大し、住民をケアに組み込むという、地域包括ケアシステムへの関りを認識していた。

  • 寺嶋 美帆, 柏木 聖代
    原稿種別: 研究
    2021 年10 巻1 号 p. 66-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:訪問看護に関連した有害事象を判断する際の課題と難しさ、訪問看護ステーションで報告対象となる有害事象の種類を明らかにした。


    方法:訪問看護ステーションの管理者4人に対し、フォーカス・グループインタビューを行い、質的記述的分析を行った。


    結果:ケア関連の有害事象ではどのような事故に該当するかの判断が異なり、訪問時間外に発生した事象は看護師に起因していたか否かで事故と判断していた。感染症に関しては、人から人への感染、針刺しによる感染を事故とし、病院や施設からの持ち込みの感染症、白癬、食中毒は事故として認識していなかった。有害事象の種類は、利用者、従事者、その他に分類され、医療事故や針刺し事故、利用者宅の器物破損や汚染などがあった。


    結論: 訪問看護に関連した有害事象の情報を国や地域レベルで集積・分析するためには、ケアに関連した有害事象の範囲や種類を示し、訪問看護に関連した有害事象の定義を明確にする必要があることが示唆された。


  • 日當 ひとみ, 木立 るり子, 北嶋 結, 山田 基矢
    原稿種別: 研究
    2021 年10 巻1 号 p. 75-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:退院支援の知識や技術を備えた看護師による支援の語りから、患者・家族における退院後の療養生活のイメージ形成を目指した実践内容を明らかにすることである。


    方法:退院支援に関する研修受講後に退院支援を実践している病棟看護師3名に、半構造的面接を実施した。


    結果:イメージ形成を目指した実践内容として、【経験や研修で得た知識から退院時の状態と生活を予測】、【家族員個々の隠れたニーズをそれぞれから確認】、【決めるのは患者家族であり意思決定を側面で支持】、【退院後の処置等に不安を持たずに退院できるための指導】、【患者個々にかかわる病棟チーム、退院調整部署、院外のケア担当者と密な情報交換】が抽出された。


    結論:看護師個々の経験や研修成果から得た実践知により形成されるイメージを、患者・家族の個別な事情と状況にあわせたイメージにし側面から意思決定を支援しながら多職種で連携することが、退院後の療養生活の現実的なイメージ形成を目指した実践内容であると示唆された。


  • 大月 真弓, 菊地 ひろみ
    原稿種別: 研究
    2021 年10 巻1 号 p. 85-94
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:訪問看護ステーション管理者による新卒看護師育成の視点から新卒看護師のコンピテンシーを明らかにする。

    方法:量的記述的研究デザインに基づき訪問看護ステーション数に応じた都道府県層化別に無作為抽出した全国650箇所のステーション管理者を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査用紙はSpencer & Spencer(1993/2011)のコンピテンシー・ディクショナリーを参考に作成し採用時と採用1年後の2時点について重視するコンピテンシーとその程度を質問した。

    結果:109名から回答が得られ(回収率16.8%)、管理者が重視する新卒看護師の主なコンピテンシーは【顧客サービス重視】【対人関係理解】【チームワークと協調】【関係の構築】であった。採用1年後では、採用時に加え【概念化思考】【柔軟性】【組織へのコミットメント】【セルフコントロール】が重視されていた。

    結論:管理者が重視したコンピテンシーは訪問看護師として成長するための基盤となる特性や現任教育に反映させる内容として示唆された。

  • 野口 麻衣子, 山本 則子, 稲垣 安沙, 沼田 華子, 山田 享介
    原稿種別: 研究
    2021 年10 巻1 号 p. 95-102
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:訪問看護事業所で看護実践に焦点をあてたケースカンファレンスを試行し、その効果を検討する。


    方法:一群事前事後テストデザイン。対象者は東京都内の訪問看護事業所の看護職14名で、1回1時間のケースカンファレンスを計6回実施した。ケースカンファレンスでは、言語化された看護実践と利用者及び家族の状態と関係を明示した。データ収集は介入前・後で、看護実践の言語化、看護実践の共有・事業所内メンバーとのコミュニケーション、訪問看護師としての自負、について尋ねた。


    結果:分析対象は10名で、平均年齢は52.1歳だった。訪問看護実践の言語化、看護実践の共有及び事業所内メンバーとのコミュニケーションが、介入後が有意に高かった(p = 0.003~0.04)。訪問看護師としての自負も介入後が有意に高かった(p = 0.009~0.018)。


    考察:本ケースカンファレンスを実施することで訪問看護師個人が有する実践知が共有され、多くの困難とリスクに直面する訪問看護師の教育にも有用である可能性が示唆された。


  • 和田 幸子
    原稿種別: 研究
    2021 年10 巻1 号 p. 103-110
    発行日: 2021年
    公開日: 2026/08/05
    ジャーナル フリー

    目的:在宅死を望む独居高齢者への訪問看護師の支援内容を明らかにする。


    方法:質的記述的研究を用い、独居高齢者の終末期に関わり在宅看取りの経験のある訪問看護師14名に半構造化面接を行った。


    結果:在宅死を望む独居高齢者への訪問看護師の支援として【独りで死ぬ覚悟を何度も確認する】、【本人と医療者間の病識のギャップを埋める】、【体や心の苦痛を和らげる】、【住み慣れた自宅において独りでの生活が継続できるように環境を整える】、【離れて暮らす家族や協力者が納得できるように関わる】、【本人の希望する在宅死にむけて多職種が力を合わせる】、【在宅死を可能にする地域のネットワークづくり】が抽出された。


    結論:在宅死を望む独居高齢者への訪問看護師の支援には、揺れる思いに寄り添いながら本人の意思を最優先に関わること、本人の死後の望みを関係者に伝える機会を意図的に設けることなどがされていた。このことは、独りで死ぬ覚悟を支え、心残りを軽くし本人が望む在宅死を可能にしていた。今後、独居高齢者が望む在宅死を可能にするためには、病期が進む中でのアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning;以下ACP)の支援と地域での在宅看取りのネットワーク作りが重要であると示唆された。


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