動物心理学研究
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42 巻, 1 号
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  • 富原 一哉, 牧野 順四郎
    1992 年 42 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究はJcl : ICRのメスを被験体とし, 発情期及び非発情期におけるメスマウスの性的選好性が, 様々な経験によってどのように影響されるかを検討することを目的として行われた!実験1では, まず性的にナイーブなメス15匹に対して選好テストを行い, 次に交尾, 出産, 育児などを含んだ性的経験の後に同一の被験体に再び同様のテストを行なった。その結果, オスに対する接近率は頻度と総時間ともに性的経験後の方が上昇した。また, 頻度, 総時間ともに性的経験後でのみ発情期に特異的にオスへの接近率が上昇するという強い傾向が見られた。実験2では, 成育初期の異性の影響を検討するために, オスの兄弟と出生直後に分離される群, 20日齢の離乳時に分離される群, 平均63日齢の実験開始時に分離される群の3群で選好テストを行なった。その結果, 接近頻度には影響が認めらなかったが, 総接近時間では発情期か否かに関わらず実験開始時分離群のオスへの接近率が上昇する事が明らかとなった。従って, 交尾, 出産, 育児などを含む性的経験や性成熟に達するまでのオスの兄弟との同居は, 発情周期に関わらずメスマウスのオスへの接近を上昇させるが, 発情期において特にオスを選好するためには性的経験の方が重要であることが明らかとなった。
  • 森山 哲美
    1992 年 42 巻 1 号 p. 9-34
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
    ニワトリヒナやアヒルヒナは, 発達初期に遭遇した刺激対象に向かって回転車走行反応を自発する。本研究は, この反応が刻印反応として妥当であるか否かを3つの実験によって検討した。
    これを研究する意義は, 以下のとおりである。この反応指標が刻印反応であることを認めることができれば, これを用いることによって, 刻印づけにおける随伴性機構を将来解明することができる。すなわち, 弁別刺激である刻印刺激が, 刻印反応に対してどのように刺激性制御を獲得するのか, また, 刻印刺激が強化刺激としてどのように機能するのかなどを検討することができる。刻印づけを随伴性で解釈する必然性は, 自然界で行われている早成性鳥類の刻印づけにある。
    本研究は, 従来の研究で主として用いられてきた2つの種, ニワトリヒナとアヒルヒナで, 回転車走行反応が刻印刺激の刺激性制御を受けるか否かを調べ, この反応が刻印反応指標として妥当であるかどうかを検討した。このために, 以下の3つの問題を検討した。
    (1) 従来の研究で用いられてきた代表的な刻印刺激であった2種類の異なる刺激, 赤色回転灯と移動する赤箱刺激, が回転車走行反応に対し同様の刺激性制御を獲得するかどうかを検討する。
    (2) 刺激呈示を発達初期 (敏感期に相当する時期) に受けたヒナと, この時期に刺激呈示を受けなかったヒナを比較したとき, 前者のヒナで刻印刺激による刺激性制御が生じ, それに対し, 後者のヒナで刺激性制御が生じないかどうかを検討する。
    (3) 刺激の呈示と除去を繰り返し行った場合, 刻印づけを成立させたヒナにおいて刺激呈示期に回転車走行反応が頻繁に自発され, 刺激除去期に反応が抑制されるかいなかを検討する。
    (4) 複合刺激である刻印刺激のいかなる刺激次元が, 刺激性制御を獲得するのかを調べることができるかどうかを検討する。
    結果は, 以下のとおりであった。
    実験1で, 赤色回転灯を用いて, ニワトリヒナに対し, 上記の (2) と (3) の問題を検討した。 結果, 発達の極く初期にこの刺激呈示を受けたニワトリヒナは, 同時期にこれを受けなかったニワトリヒナに比べ, 刺激が呈示されたときに, より多くの反応を自発した。さらに, 発達初期に刺激呈示を受けたニワトリヒナは, 刺激呈示期に頻繁に反応を自発し, 刺激除去期に反応の自発を抑えた。しかし, 同時期にこれを受けなかったニワトリヒナは, 刺激呈示期と除去期の間で, このような反応分化を起こさなかった。以上の結果は, 発達初期に赤色回転灯の呈示を受けたニワトリヒナにおいて, この刺激が回転車走行反応に刺激性制御を獲得したのに対し, 同時期にこの刺激の呈示を受けなかったニワトリヒナにおいては, このような刺激性制御が獲得されなかったことを示す。この結果から, 発達初期に呈示された赤色回転灯に対しニワトリヒナが自発した回転車走行反応は, 刺激に対する刻印経験に基づいた反応であることを確めることができた。
    実験2で, 音を伴って移動する赤箱刺激を用いて, ニワトリヒナに対し, 実験1と同じく (2) と (3) の問題を検討し, これによって (1) の問題を調べた。また, 用いた刺激次元が多様であったため, 刺激のいかなる次元が反応を制御しているのかを調べるために, (4) の問題も検討した。さらに, 従来の刻印づけ研究で頻繁に用いられてきた追従反応と回転車走行反応がいかなる関係にあるのかを調べた。結果, 追従反応と回転車走行反応との間に対応を認めた。また, 音刺激を伴って移動する赤箱刺激は, 実験1で用いた赤色回転灯と同様の刺激性制御を, 回転車走行反応に対して獲得することが確認された。 これによって, 発達初期に呈示された音刺激を伴う移動赤箱刺激に対し, ニワトリヒナが自発した回転車走行反応は, 刺激に対する刻印経験に基づいた反応であることを確かめることができた。さらに, このニワトリヒナの回転車走行反応は, 刻印刺激の音刺激次元によって刺激性制御を受けていたことが明らかになった。この結果は, レスポンデント条件づけの遮蔽効果 (overshadowing) に類似した現象を, 回転車走行反応を指標に用いることで, 刻印づけにおいても認めることができたことを示す。
    実験3で, アヒルヒナを用いて, 実験2と同様の方法によって, (2) と (3), ならびに (4) の問題を検討し, さらに追従反応と回転車走行反応との関係も調べた。結果, 追従反応と回転車走行反応との間に対応を認めた。また, 移動する赤箱刺激は, 実験2でニワトリヒナに対して用いた刺激と同様の刺激性制御を, 回転車走行反応に対して獲得することが確認された。これによって, 発達初期に呈示された移動赤箱刺激に対し, アヒルヒナが自発した回転車走行反応は, 刺激に対する刻印経験に基づいた反応であることを確かめることができた。
  • 1992 年 42 巻 1 号 p. 38-65
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/10/13
    ジャーナル フリー
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