動物心理学年報
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20 巻, 2 号
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  • 松田 伯彦
    1970 年 20 巻 2 号 p. 67-76
    発行日: 1970/12/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    中脳中心灰白質の刺激により, いわゆる逃走反応や怒り反応を含む種々の情動反応がおこることは, 多くの研究によって知られている (3, 4, 8, 10, 17, 18, 19, 30, 31) 。そして, 中脳中心灰白質におけるそのような情動反応の条件づけに関する研究 (28), 中脳中心灰白質の刺激による学習行動 (17, 18, 19, 25) および学習行動におよぼす中脳中心灰白質の破壊効果をみた研究 (6, 11, 15) 等がある。
    さて, 視床下部刺激による逃走反応を動因としたスイッチ切り行動 (16) と行動観察上区別がつかない同じ行動が中脳中心灰白質の刺激により生ずることが報告されている (17, 18, 19) 。HUNSPERGERら (4, 9) は, 組織学的に逃走反応やその他種々の情動反応をおこす部位は視床下部から中脳へと連続しているという。しかし, NAKAO (17, 18) によると, それらの刺激による逃走反応を動因としたスイッチ切り行動という学習行動による “ふるい” にかけると, 逃走反応をおこす部位は組織学的に不連続であり, また彼は中脳中心灰白質刺激によるスイッチ切り行動は海馬あるいは扁桃核後放電の抑制効果を視床下部刺激によるスイッチ切り行動より大きく受けることを明らかにしている。脳電気活動の面から差異のあることを示している研究もみられる (7) 。また, 薬物投与の影響を中脳中心灰白質刺激によるスイッチ切り行動と視床下部刺激によるスイッチ切り行動についてみると, 前者がより大きな影響をうけることを見出している。
    ところで, われわれはすでに視床下部刺激によるスイッチ切り行動の音あるいは光への条件づけについて研究したが, その結果は, 光に対して条件反応は全く生ぜず, 音に対してはかなりの条件反応が生ずるか, あるいは全く生じないかであった (13, 32) 。
    この研究の目的は, 視床下部刺激によるスイッチ切り行動と行動上区別のつかない中脳中心灰白質刺激によるスイッチ切り行動における音への条件づけについてみることである。その結果は, 視床下部と中脳中心灰白質の神経機構の類似点や差異を明らかにすることに役立つであろう。
    本研究の目的は中脳中心灰白質の刺激による逃走反応をもとにしたスイッチ切り行動が音に条件づけられるかどうかをみることである。
    中脳刺激により逃走反応をおこすネコ7匹が用いられた。まず中脳刺激を中断するスイッチ切り行動の学習が十分なされ, その後条件づけがおこなわれた。条件刺激 (CS) はベル音 (5V, 100db), 無条件刺激 (UCS) は中脳刺激 (50cps, 1.0V~2.0V), そして条件反応 (CR) はスイッチ切り行動である。条件づけの前にCSへの慣れをおこない, 遅延条件づけがなされ, 続いて消去, 再条件づけ, さらに消去がおこなわれた。
    結果は次の通りである。
    1. 7匹のうち4匹は条件づけが形成され, さらに消去, 再条件づけ, 消去が可能であった。これらの刺激部位はperiaqueductal greymatterのmid-paramedianで, NAKAO et al.ら (19) のスイッチ切り行動が可能なものと一致した。
    2. 2匹はほんの少し, あるいは多少CRを示すが, 300試行以内でCRは80%水準に達しなかった。また残りの1匹はCRを全く示さなかった。これらの刺激部位はoculomotorius核に近いところと, 中脳reticular formationに近いところであった。
    中脳刺激による条件反応形成における特質について述べ, そして, 自己刺激による学習の特質との比較を試み, 脳内刺激 (intracranial stimulation) による学習と末梢 (餌, 電気, ショック等) 強化の学習のちがいを考察し, 最後に視床下部刺激によるスイッチ切り行動の条件づけとの差異を述べた.
  • 三谷 恵一, 浦田 晴雄
    1970 年 20 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 1970/12/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    U迷路, T迷路またはY迷路においても潜在消去 (latent extinction) または無反応消去 (non-response extinction) の効果が見られることは, DEESE (1), MOLTZ (5), THOMAS (8), DYAL (3), 木村 (4) 等の研究より明らかである。しかし, その潜在消去が反応消去に匹敵する効果を持つか否かに関しては, 木村 (4) の研究のみがあるが, 両消去法の効果に有意差を見出さず, むしろ, 潜在消去が反応消去よりも大きな消去効果を示す傾向を見出している。いま仮に, 潜在消去は, 認知図の変化と刺激禁止 (IS) を生み, 反応消去は, 更に反応禁止 (IR) を生むとすれば, 後者の方が消去効果は大きいことが予想される。従って, われわれの仮説は, 例えばU迷路に潜在消去効果は存在するであろうが, それは反応消去効果に劣るであろうとする。その際, 過剰訓練が, 潜在消去と反応消去に及ぼす効果も検討する。
    次に, DEESE (1) は, U迷路の反応消去には自発的回復が存在するが, 無反応消去には自発的回復が存在しないということを, 検査における4試行の平均正反応率を用いて結論した。一方, ROBINSON and CAPALDI (6) は, 直走路における走行時を用いて, 無反応消去に自発的回復を見出している。THOMAS (8) は, 検査第1試行の走行時により, T迷路の潜在消去に自発的回復を見出し, DYAL (2) は, 検査第1試行の走行時と正反応率の両者により, Y迷路の無反応消去に自発的回復を見出している。従って, DEESE (1) の追試的検討を行ない, 検査試行をまとめた平均正反応率と共に, 検査そのものによる反応禁止の影響を受けない第1試行のみの正反応率の両者を検討すれば, U迷路の潜在消去にも自発的回復を見出しうるのではないかと思われる。以上の二点を, シロネズミのU迷路学習により検討することが, 本論文の目的である。
    U迷路におけるシロネズミの潜在消去 (無反応消去) と反応消去の消去におよぼす効果に関して, 2実験が実施された。
    1.実験Iでは, 潜在消去と自由選択による反応消去を比較したところ, 検査の最初の4試行の平均正反応率と第1試行の正反応率の両者において, 両消去法に有意差はなかった。
    2.潜在消去に自発的回復の傾向が見られ, DEESE (1) の結果と異なった。
    3.単なる潜在消去の効果も見出された。
    4.実験IIでは, 潜在消去と強制試行による反応消去を比較したところ, 反応消去が潜在消去よりも有意に大きな消去を生ぜしめた。
    5.過剰訓練によっても, 反応消去が潜在消去よりも効果的である傾向はあるが, その差は少し縮少し, 両消去法とも消去効果は減少の傾向を示した。
    6.DEESE (1), 実験I, 実験IIの結果を総合して, U迷路に潜在消去効果が存在するが, それは反応消去効果に劣ると結論される。
  • (1) バラタナゴ, タナゴおよびヨシノボリ
    植松 辰美
    1970 年 20 巻 2 号 p. 87-95
    発行日: 1970/12/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    魚類における摂食行動の社会的促進については, これまでにWELTY (6) によるキンギョ Carassius auratusおよび小野 (2) のメダカOryzias latipesを材料とした報告がある。筆者 (5) は, グッピーPoecilia reticulataを用いて社会的促進の機構と機能を分析した。そうして, 仲間グッピーが摂食行動を示さない場合にも促進効果の認められることを報告し, “存在認知効果” による過程とよんだ。
    ここでは, この現象の比較行動学的解析を発展させるため, 2, 3の琵琶湖産淡水魚について得た社会的促進の事実と “存在認知効果” による過程例の追加を記載する。
    琵琶湖産のバラタナゴ幼魚, タナゴ成魚およびヨシノボリ未成魚について, 摂食行動の社会的促進現象を実験的に確認した。ヨシノボリについては, 仲間個体数認知の限界と, “存在認知効果” の過程を確めた。
    得られた結果はつぎの通りである。
    1) バラタナゴ幼魚で明らかな摂食行動の社会的促進が認められた。
    2) タナゴ成魚でも, 社会的促進が存在することは, ほぼ確かとなった。
    3) ヨシノボリは, グッピーと比較して, 社会的促進率は低いけれども明らかな促進が認められた。
    4) ヨシノボリの摂食量は刺激個体数4に対してまでは増加し, それ以上の刺激個体数に対しては一定した価を示した。
    5) “存在認知効果” による過程の重要性がヨシノボリの実験においても明らかにされた。
  • 小嶋 祥三, 田中 道子, 山中 祥男
    1970 年 20 巻 2 号 p. 97-108
    発行日: 1970/12/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    強化の遅延の研究では, ある反応の生起と強化が与えられるまでの時間が, その反応の学習にどのような影響をもつかが検討されている。そのような実験では, 強化が与えられるまでの時間が大になるに従って, 反応の獲得が困難になり, そこに強化遅延の勾配が存在することが示されてきた。
    強化遅延の実験には2つのタイプがあるように思われる。その一つは, 反応の生起後一定期間被験体を遅延箱などに閉じ込めることにより, 強化の遅延をつくるものであり, もう一つは, 種々の空間的な距離の相異をもとに, 強化の遅延をつくるものである。
    本研究では前者のタイプの実験が行なわれた。そこで餌などの末梢強化による前者のタイプの研究をみると, それらの研究では, 遅延によるギャップをうめるものとして二次性強化の重要性が考えられ, そしてこの二次性強化を除去する一連の実験がなされてきた (9) 。このような二次性強化を除く試みの最終点に位置するものとして, GRICE (4) の研究がある。その研究では, 僅か数秒の強化の遅延が, ネズミの白黒弁別学習を困難にしている。
    一方, 脳内刺激 (intracranial stimulation, ICS) による強化事態では研究は少なく, 本格的なものとしてはKEESEY (8) の研究があるのみである。この研究は末梢強化のGRICEの実験に対応するものであり, その結果もGRICEの結果と極めて類似している。そこで本研究では, より二次性強化の含まれる事態で, ICSを強化者として, 強化遅延の実験を行ない, どのような強化遅延の勾配がみられるかを検討する。これは中枢強化による二次性強化の成立 (12, 18) 或いは不成立 (13) の問題を間接的に検討することになると思われる。
    本研究はシロネズミのY迷路学習に及ぼす0, 5, 15, 45秒の中枢強化の遅延の効果を検討した。この弁別事態は中枢強化を用いたKEESEYの弁別よりも, 二次性強化刺激が多い。従って, 中枢強化による二次性強化成立の問題にも関連する。その結果, 45秒群ではY迷路の弁別が獲得できず, また5, 15秒の遅延では同様な手続を用いた末梢強化のPERKINSやWOLFEの結果よりも弁別が悪かった。そのために, 末梢強化よりも急激な強化遅延の勾配がみられた。しかしながらこの勾配は, 二次性強化の少ないKEESEYの結果よりもゆるやかである。したがって, 中枢強化によっても二次性強化は成立するが, その力は末梢強化と比較すると弱いように思われる。そしてこのような末梢, 中枢の相異をもたらした要因として, 強化の遅延によって生ずるフラストレーションと, それに基づく妨害反応の重要性が強調された。
  • 森井 節子
    1970 年 20 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 1970/12/25
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル フリー
    動物のしめる場が生理学的機能, 生殖学的機能におよぼす影響についてはいろいろな動物について調べられている。特に鳥類ではそれらの実験は多い。しかしメダカ, とくにそのたたかい行動についての実験はなされていない。そこでたたかい行動とメダカを収容する容積との関係について調べてみた。
    4種類 (20×20×10, 15×15×10, 10×10×10, 5×5×10cm3) の容積について10対の野生メダカを用いて実験を行ない次の結果が得られた。
    ・容積の大小がたたかい行動に影響を及ぼすことは明らかである。
    ・〓〓とも15×15×10cm3の容積のときたたかい行動が最も盛んである。
    ・容積が5×5×10cm3ではたたかい行動は最も低い。
  • 1970 年 20 巻 2 号 p. 115-116
    発行日: 1970/12/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
  • 1970 年 20 巻 2 号 p. 117-127
    発行日: 1970/12/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
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