動物心理学年報
Online ISSN : 1883-6283
Print ISSN : 0003-5130
ISSN-L : 0003-5130
28 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 関口 茂久, 牧野 順四郎
    1979 年 28 巻 2 号 p. 99-111
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, C57BL/6, DBA/2と交雑第1代 (F1) を用いて回転活動における遺伝的ヘテローシス効果を検討することと回転活動に現われる約24時間リズムが恒常明 (実験A) と恒常暗 (実験B) において系統間にいかなる差異が現われるかを検討することである。動物は, 5日間の実験前期 (明暗条件) に続いて10日間の実験期 (恒常条件) と再び5日間の実験後期 (明暗条件) の計20日間にわたって回転活動を測定した。記録は15分ごとの回転数に基づき, 個体別データは1日当りの総回転活動, 夜間活動比 (8 : 30p.m.~8 : 30a.m.期の活動と24時間の活動との比) とパワースペクトルによる周期性について分析された。
    主な結果は以下の通りである。 (1) 実験AとBの全期間を通じて, 1日当りの総回転活動では, DBAマウスがC57BLマウスよりも高い水準で活動しているが, F1マウスは一貫して最も高い水準で活動していることが見い出された。これはBRUELLの結果と一致するものである。 (2) Table 1と3に示したように実験前期の夜間活動比にはマウスの回転活動が夜行性であることを示している。またこの夜間活動比が恒常条件に移行すると次第に減少し, 実験期中の5日から10日以内に昼夜の比率が逆転するのが認められる。このような減少傾向には恒常明と恒常暗の両条件においていずれも系統と日間との交互作用が有意であった。 (3) Table 2に示した回転活動の周期性には, 全体として実験前期では24時間より短い周期性が見られ, 恒常明では24時問よりも延長している。恒常暗では実験前期の周期よりも短縮している。他方, Fig.1と2において個体の自記記録図を見ても明らかのように, 活動開始の時刻が明暗周期の切替時刻に対応している。恒常明に現われるFRRの平均周期を比較すると, C57BLマウスでは25.11時間, DBAマウスでは25.63時間, F1マウスでは25.26時間であったが統計的には有意差が認められない。しかし恒常暗では各系統の平均周期がそれぞれ23.96時間, 23.38時間, 23.27時間で統計的に有意差が認められた。このような回転活動のFRRが恒常暗において系統差が認められたことは, 神経化学系のリズムが恒常暗では持続して現われ, 恒常明では消失する機構と関連しているのではないかと考えられる。
  • SATOKO OHINATA
    1979 年 28 巻 2 号 p. 113-122
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    Fifteen common goldfish, divided among five groups, were trained to strike a key in response to a 555-nm wavelength. Four of the groups were given discrimination training with S either 501, 538, 576, or 606 nm (one group being assigned to each value). A control group was given single-stimulus training. Generalization tests with wavelengths in the range 501-606 nm yielded gradients with the mode at S+ for the control Ss. The postdiscrimination gradients of the four experimental groups showed a shift in the mode of responding from S+ in a direction away from S-, with the exception of one S. Also, mode shifts were inversely related to S+, S- separations, i. e., shifts were greater when S+ and S were closely separated on a continuum than when they were more widely separated. The majority of Ss in the discrimination groups showed positive behavioral contrast during their discrimination training phase.
  • 池田 行伸
    1979 年 28 巻 2 号 p. 123-132
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/01/28
    ジャーナル フリー
    ラットが不完全な回避訓練を受けた後, 種々の時間間隔を経て再び同じ回避訓練を受けると, 回避回数が時間の関数として, V字型の曲線を描くことが知られている (4, 5) 。KAMIN (6) は原学習後数時間で回避反応数が減少するのは, その時点で不安が少なくなったからだと言い, DENNEY ら (4) は逆に高い不安によって引き起こされる freezing等の反応が能動的な回避反応と拮抗するのだと考えた。BRUSHら (2) は, 恐怖条件づけを原学習として用いたときにもV字曲線が得られたことから, 説明概念として「Parasymp-athetic overreaction」を提唱している。ラットは恐怖条件づけ中にかなりの電撃を受け交感神経系が過度に働き, 訓練後はその反動として, 副交感神経系がoverreactし, その頂点が数時間後に現れると考えた。最近では, 電気ショックのみの試行を先行条件として用いても後の回避学習の成績にV字型の結果が得られたことから, KAMIN効果は, 先行の電撃適用によって引き起こされた (shock-induced) 反応であると考える研究者が現われている (1, 7, 8) 。
    本実験は, 後続訓練として, 学習の比較的容易な一方向回避事態を用いたとき, (1) 先行経験としての恐怖条件づけと電撃のみの試行とが後続の回避学習にほぼ同じ効果 (KAMIN効果) をもたらすかどうかを検証すること, (2) 自律神経系の指標として, 心拍を合わせて記録することにより被験体の外部反応と内部反応との関係を調べ, KAMIN効果のより適切な説明を得ることを目的としてなされた。
    KAMIN 効果を引き起こす原因は何かという疑問が初期の研究者から引き継がれている。現在では, 電撃によって引き起こされる反応であると考える説が主流となっている。しかし, KAMIN 効果の成立に, 電撃のみで十分であろうかという疑問もまだ残されている。本実験の目的の第一は, この疑問に答えることであり, 第二は, 回避反応という外部行動の結果と, 心拍を指標とした内部反応の把持の結果とを比較し, KAMIN効果により新たな説明を加える試みを行なうことである。先行経験として恐怖条件づけと電撃試行が用いられた。把持時間は0, 1, 3, 24時間の4条件であり, 回避訓練は一方向で行なわれた。結果は, 恐怖条件づけ群の回避反応数が時間の関数として典型的なV字曲縦を描き, KAMIN効果が認められたが, 電撃条件では, 恐怖条件づけ群の結果と比較して, 0時間での回避反応に促進効果が見られず, 尻上がりの変形したV字曲線が得られたにすぎなかった。完全な形のV字曲線を得るには, 先行訓練で, CS-UCS 関係を学習する必要があることが分った。CSや回避箱事態に対するHR変化からは, 1時間群に特異な反応は見られず, 本実験の結果を記憶説, 動因説で説明することができなかった。CSに対するHRの把持は, Incubation と考えられた。PINEL ら の主張のように, KAMIN効果は再び電撃を受けたことによって生じる現象であると思われるが, 効果の前半と, 中間部及び後半では, その生起要因が異なるように思える。すなわち, 前半は, 先行経験におけるCS-UCS 関係の学習による回避反応の促進効果, 中間部以降は単に電撃による効果である。さらにKAMIN効果をすすめるために, 中枢神経系や内分泌系の解明が大きな課題となっている。
  • 浜村 良久
    1979 年 28 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 1979/03/25
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    生体がストレス状況に単独で直面した場合よりも, 仲間と一緒の時の方が胃壁の損傷は少ない, と言われている (2, 4) 。最近, WEISSら (8) は, ショックを与えた時に互いに相手を攻撃した群では胃壁の損傷が比較的少ないが, 互いに相手が見えず, 攻撃反応も出現しない群では胃壁の損傷の程度が比較的大きいことを見出した。この実験結果から, 彼らは攻撃はショックに対して緩衝効果をもたらすと主張した。そして, 1) ショックを与えると, 大部分のネズミでは攻撃反応が生じるので, 攻撃とショック停止との間に随伴性が保たれる;2) 攻撃はショックの不決さから注意を逸らす;3) 生体にとって危険かつ嫌悪的な状況で多発する〈攻撃〉のような反応は, ストレスの緩衝を導く適切なフィードバック径路を遺伝的に備えている;という3つの説明可能性をあげている (8) 。
    ところで, 彼らは上記の研究で, 「同じ部屋に2匹のネズミがいた」ことによるショック緩衝効果 (仲間効果) と攻撃による緩衝効果とを分離できたと主張している。また, 津田ら (5, 6) は, 「学習性絶望」の事態で攻撃の緩衝効果を見ている。しかし, これらの研究ではいずれも仲間効果に対する適切な統制群を欠いている。
    本研究の目的は, 条件性抑制の事態で仲間の存在によるショック緩衝効果と攻撃による緩衝効果を分離し, 攻撃による緩衝効果をより適確に検討することである。
    攻撃のショック緩衝効果を検討するために2つの実験を行なった。実験1において, 「音-ショック」対提示の際, ショックに対し互いに攻撃反応をしたネズミは, 間に透明の隔壁があって攻撃しなかったネズミや, 単独で「音-ショック」対提示の訓練を受けたネズミに比べ, 音による条件性抑制の程度が少なかった。この結果は, 攻撃にショック緩衝効果があることを示している。また, ショックは断続的に与えられたので, この効果は攻撃とショック停止との随伴性に基づくショック緩衝効果からは説明できないことが明らかになった。実験2において, 「音-ショック」対提示の際に金属標的を与えた群と与えなかった群で, 音による条件性抑制効果に差はなかった。すなわち, 攻撃のショック緩衝効果は金属標的では見られなかった。これらの結果から, 攻撃のショック緩衝効果に関しては攻撃の対象である相手の反応 (反撃・逃避・服従など) がその要因の1つに挙げられる。
feedback
Top