動物心理学年報
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29 巻, 2 号
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  • 高橋 晃
    1979 年 29 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    ラットの情動行動に関する幾つかの指標において, 次のような性差が見出されている。オープンフィールドでは雄は雌より脱糞量が多く, 移動量は少ない (9) 。出現潜時テストでは雌は雄よりも短い潜時で見慣れた場所から新奇な領域へ出て来る (1) 。シャトル箱での能動的回避反応の習得は雌の方が雄より速く (2), 条件性抑制実験の抑制率は雌の方が雄より低い (10, 14) 。また, 受動的回避行動にも性差が認められている。BEATTY, GREGOIRE & PARMITER (3) は, 走路を走行し目標箱でバーを押す反応を訓練したのちにこの反応に電撃を与えたところ, 餌のみが与えられ電撃が与えられない把持テスト試行において雌は雄よりも短い所要時間でバーに到達した。DENTI & EPSTEIN (5) は, ラットが明るい場所より暗い場所を好むことを利用し, 暗い場所への移動反応に電撃を与え, その後の一連の把持試行において5分の制限時間内に暗い場所に移動した試行数は雄より雌の方が多いことを見出した。いずれの研究も, 雌は雄よりも罰による反応の抑制が弱いことを示している。
    本研究は受動的回避行動における性差と性ホルモンとの関連を明らかにしようとするものである。性ホルモンは, 行動の性的分化に対して2種類の重要な影響を及ぼす。第一は, 行動をテストする時点で体内に存在する性ホルモンの効果であり, 第二は, 脳の発達の初期に性ホルモンが与える影響である。すなわち, 周産期におけるアンドロジェンの有無は中枢神経系及び内分泌系の性分化の方向を決定する。しかし, 全ての性的に分化した行動が, テスト時と出生直後の両方のホルモン条件の統制下にあるわけではない。ホルモンの作用機序は対象とする行動の種類により異なっている (6) 。
    本研究では同一の装置, 手続により, 成体の雄と雌の生殖腺の摘出 (実験1), 出生直後の雄の去勢 (実験II) 及び出生直後の雄と雌へのテストステロン・プロピオネートの注射 (実験III) が受動的回避行動の性差に及ぼす影響を調べる。
    ラットの雌は受動的回避の把持が雄より劣ることが知られている。この受動的回避行動の性差と性ホルモンとの関係を検討するために3実験を行った。第1日と第2日は, ラットを黒部屋と白部屋を連結した装置の白部屋に置き, 黒部屋へ移動することを許す。第3日は, ラットが黒部屋に入ると同時に電撃を与える。第4日から第10日は把持テスト試行である。電撃は与えず, 5分の制限時間内に黒部屋へ移動した試行数を測定する。いずれの実験においても, 統制群では雌の制限時間内に移動した把持試行数は雄より多かった。成体時の両性の生殖腺摘出によってこの性差は消失した (実験I) 。出生直後に去勢された雄の制限時間内に移動した把持試行数は統制群の雌の水準にまで増大し (実験II), 出生直後にテストステロンを注射された雌の試行数は統制群の雄の水準まで減少した (実験III) 。
  • 乗越 皓司, 北原 隆
    1979 年 29 巻 2 号 p. 85-94
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    道具製作・使用行動は, 人類がその進化の過程で新しい環境に適応し, 生存してゆく為重要な意味をもっていたと考えられており (渡辺, 1978), 飼育下および野生のチンパンジーでなされた道具行動の多くの研究は, その面から注目されている (GOODALL, 1964) 。しかし, チンパンジーのみではなく, 他の近縁種, 霊長類との比較研究にもとずく位置付けはまだ試みられてないので, 類人猿, ヒヒやニホンザルなどのサル類を用いて, 同一方法による道具行動の比較研究を行なうことにした。
    今回は, その第1段階として, チンパンジーで行なった結果を得たのでその報告をする。また, チンパンジーの道具行動は, その知覚と認知過程が言語の問題, 言語獲得との関連で注目されているので (HEWES, 1973), この面からも考えてみたい。
  • 赤瀬 英介, 三谷 恵一
    1979 年 29 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    Catecholamine (CA) が情動行動の生理的構成因子であることが, stereotypy や ragereaction 等の研究を通して示唆されて来た。CAの増加は興奮を生じ, CAの減少は鎮静を生じる場合が多い (5, 7) 。
    しかし, 生体の活性アミン系に変化を起こす実験操作は, 観察しようとする特定の行動以外に, 他の各種の行動にも同時に影響を及ぼすものである (4) 。実際に, 自発的移動活動から学習性の回避行動に至るまで, 多くの行動がCAと関与することが報告されている (2, 4, 5) 。また, 行動研究における既存の情動性テストは, 情動性以外の要因によって影響を受けていることが多い (3) 。そこで, CAの実験操作と共に数種の情動性テストを行ない, それぞれのテストから情動性因子を抽出し, CAと情動性の関連を検討することが必要であると思われる。本実験はその一つとして, CA系作動薬を用いて, CA の変動が条件性情動反応 (conditioned emotional response : CER) における条件性抑制に及ぼす効果を検討した。
    34匹の雄のWister系シロネズミを用いて, Catecholamine (CA) 系作動薬によるCAの変動が, 動物の条件性情動反応 (CER) に及ぼす効果を検討した。CAの前駆物質であるL-DOPA (50,100mg/kg, i.p.) は, CERにおける条件性抑制を有意に増加した。CA合成阻害剤のα-methyl-p-tyrosine (α-MT, 75mg/kg, i.p.) は, それ自体ではCERにおける条件性抑制に影響しなかったが, α-MTの前拠置はL-DOPAによる条件性抑制の増加を有意に抑制した。
    以上の結果から, L-DOPAによるCAの増加は, 情動性を高めCERを増加するが, それに対しα-MTは, L-DOPAによる情動性の上昇を抑制することが推測される。また, CERテストの測度は, 低量のL-DOPAによるCAのわずかな増加にも反応することが示唆された。
  • 長谷川 芳典
    1979 年 29 巻 2 号 p. 101-104
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    熟知化された味覚刺激に対する taste aversion 条件づけが困難であることは, 多くの研究により知られている (6, 7) 。KALAT と ROZIN (5) によれば, これは, 熟知化の操作として味覚刺激を前提示 (preexposure) する際その刺激への “安全学習” がなされ, のちの条件づけを妨げるためと考えられている。しかしその後の研究で, 前提示の効果は, “安全であることの学習” というよりむしろ, 潜在制止 (latent inhibition) に近い特徴をもつことが明らかになってきた (1, 4) 。
    一般には, 潜在制止は, 非連合的な特徴, すなわち当該の刺激がのちに条件刺激や弁別刺激となるようないかなる学習をも妨げる効果のあることで知られている (3) 。よって, もし味覚刺激前提示が同じ効果を持つならば, それはtaste aversion のように嫌悪をもたらす学習ばかりでなく, 味覚刺激への嗜好性を高めるような学習をも妨げると予想される。本論文では, 嗜好性を高める学習の1つとして知られる “薬の効果 (medicinal effect)” (2) に対して, 前提示がどのような影響を及ぼすか検討した。
    “薬の効果” は, ラットに塩酸アポモルヒネを注射し一定時間後に味覚刺激を与える操作により生ずる。この操作を数回くり返されたラットは, のちのテストで味覚刺激への嗜好性増加を示すのである°しかし, これを確認したGreenとGarcia (2) の実験では, 味覚刺激としてミルクやジュースが用いられているので, それらに含まれている栄養分や嗅覚刺激により嗜好性の増加がもたらされた可能性がある。そこでまず, その影響を避けるためサッカリン液を用いて “薬の効果” の存在を確認し (実験I), しかるのちに前提示の影響を検討した (実験II) 。
  • Elsevire/North-Holland Biomedical Press 1979, pp. 453
    M. SUDA, O. HAYAISHI, H. NAKAGAWA, 井深 信男
    1979 年 29 巻 2 号 p. 105-106
    発行日: 1980/03/25
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
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