Catecholamine (CA) が情動行動の生理的構成因子であることが, stereotypy や ragereaction 等の研究を通して示唆されて来た。CAの増加は興奮を生じ, CAの減少は鎮静を生じる場合が多い (5, 7) 。
しかし, 生体の活性アミン系に変化を起こす実験操作は, 観察しようとする特定の行動以外に, 他の各種の行動にも同時に影響を及ぼすものである (4) 。実際に, 自発的移動活動から学習性の回避行動に至るまで, 多くの行動がCAと関与することが報告されている (2, 4, 5) 。また, 行動研究における既存の情動性テストは, 情動性以外の要因によって影響を受けていることが多い (3) 。そこで, CAの実験操作と共に数種の情動性テストを行ない, それぞれのテストから情動性因子を抽出し, CAと情動性の関連を検討することが必要であると思われる。本実験はその一つとして, CA系作動薬を用いて, CA の変動が条件性情動反応 (conditioned emotional response : CER) における条件性抑制に及ぼす効果を検討した。
34匹の雄のWister系シロネズミを用いて, Catecholamine (CA) 系作動薬によるCAの変動が, 動物の条件性情動反応 (CER) に及ぼす効果を検討した。CAの前駆物質であるL-DOPA (50,100mg/kg,
i.p.) は, CERにおける条件性抑制を有意に増加した。CA合成阻害剤のα-methyl-p-tyrosine (α-MT, 75mg/kg,
i.p.) は, それ自体ではCERにおける条件性抑制に影響しなかったが, α-MTの前拠置はL-DOPAによる条件性抑制の増加を有意に抑制した。
以上の結果から, L-DOPAによるCAの増加は, 情動性を高めCERを増加するが, それに対しα-MTは, L-DOPAによる情動性の上昇を抑制することが推測される。また, CERテストの測度は, 低量のL-DOPAによるCAのわずかな増加にも反応することが示唆された。
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