WOODARD and BITTERMAN (11, 12) が, 「キンギョのシャトルボックスにおける “回避反応” は実は古典的条件づけによって形成・維持されている反応である。」という主張をして以来, その反応の形成・維持過程を明らかにしようとする研究が行われてきた (1, 7, 9, 13, 14, 15) 。
同一の反応が, 古典的条件づけによってもオペラント条件づけによっても形成・維持されるようにみえる他の例として, イヌの脚の屈曲反応やハトのキーペッキング反応がある。これらに共通する問題は, その反応の形成・維持に刺激-強化随伴性と反応-強化随伴性のいずれが関与しているか, あるいは両者が共に関わっているとすればそのいずれが優位であるかということである。
本研究の目的は, キンギョのシャトルボックスにおける移動反応が, どちらの随伴性によって形成・維持されているかをヨークトコントロールを設け, 異なる事態への移行を行うことによって検討することである。
シャトルボックスにおけるキンギョの移動反応が, 古典的条件づけ (刺激-強化随伴性) とオペラント条件づけ (反応-強化随伴性) のいずれによって形成・維持されているかを明らかにするために, ヨークトコントロール群を設けて回避事態から古典的条件づけ事態への移行 (実験I) 及び罰事態への移行 (実験II) を行った。
実験Iの結果は, 反応-強化随伴性が有効ではあるが, 刺激-強化随伴性のみでも反応が形成・維持されることを示した。実験IIの結果は, 罰事態においても移動反応が維持されうること, すなわち刺激-強化随伴性が反応を維持することを示した。しかし, 同時に回避学習事態から罰事態へ移行したとき反応が減少することもあること, すなわち回避学習において反応-強化随伴性が重要な役割を果していることも示された。
これらの結果から, シャトルボックスにおけるキンギョの移動反応は2つの随伴性の両者による統制を受けている反応であると考えられた。ハトの自動形成, イヌの脚の屈曲反応との比較を行いながら, 2つの随伴性によって規定されている成分を分離する可能性について論じた。
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