動物心理学年報
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37 巻, 1 号
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  • 児玉 典子, 佐藤 比登美, 関口 茂久
    1987 年 37 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1987/09/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    遺伝的にてんかん性のけいれん発作を起こすElマウスは情動的特徴を持っているとされているが, その行動的特徴はこれまでほとんど知られていない。本研究では, このけいれん発作が発達的に変化するとされているところから, Elマウスの行動発達特性 (特に情動的反応の発達), その遺伝的優性度, それらに及ぼす母親環境の効果, 行動発達とけいれん発作との関係を, Elマウス, その祖先系統であるddNマウス, これらの間の正逆交雑によって得られた雑種第一代 (F1) を用いて検討した。その結果, ElマウスはddNマウスに比較して情動的反応の発達が早いことが明らかになった。また, 行動発達の遺伝的優性度は, 完全優性, 部分優性, 超優性と, 様々であった。これらのことは, 行動発達への遺伝要因の規定は強いが複雑であることを示している。正逆交雑による母親効果は情動的反応に顕著に認められ, 受精から出生後にかけての母親環境の影響が大であることが明らかとなった。けいれん発作の発現率はElマウスでは100%であったが, ddNマウスでは18.8%, F1では15.6%であり, F1はddNマウスに類似した。この結果は, Elマウスの発作の発現が優性であるとされていることと矛盾している。情動的反応の発達とけいれん発作の発現との遺伝的対応を認めることは困難であった。
  • 2, 3才の行動発達の分析から
    吉田 浩子, 乗越 皓司, 北原 隆
    1987 年 37 巻 1 号 p. 15-27
    発行日: 1987/09/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    ヒトの母子関係と乳幼児期の発達を理解する目的への第一歩として飼育チンパンジーの母子関係の研究が行われた。すなわち, 生後一年までの発達初期の母子の観察結果からチンパンジーではまだ言及されていない愛着理論の検討を既に試みた (21) 。生後1年までの初期の母子関係については多くの報告があるが (3, 4, 5, 6, 7, 11, 15, 16, 17, 19), 2, 3才以後の研究は少ない。此の時期の子供は, 母親への依存がまだ強く残っているが, 子守り行動などにおいて, 主に血縁個体との関わりが観察されている (6, 13) 。また他個体との活発な遊び等を通して.母親から離れて群れのメンバーと社会関係を作りはじめる時期でもある。そのため, この時期の母子関係は母子の相互関係のみを変数としたのでは不十分であり, 母親の社会関係や子供の身体的, 認知的発達からも影響をうけると考えられる。また, チンパンジーの母子関係については, 野生状況下での研究が多いこともあって行動の詳細な観察に基づく分析は少ない。
    そこで, 本研究は, 愛着形成後と考えられる2才及び3才の個体の発達に焦点をあてて社会関係の中で見られる母子関係の観察を試みた。疑似的な野生状態にある動物園飼育下における母子を対象に, 自然観察法を用いて母子関係および血縁個体との関係を詳細に記載し, 出現したあらゆる行動パターンを細分化し, 各パターンを数量化することによる分析を試みた。
    また, 母子関係に影響を与えると思われる子供の身体的発達の分析については, GOODALLらの野生集団の自然観察結果に基づく報告に見られるような, 身体的運動機能の発達を手掛かりとして記載した。認知発達については, 野生チンパンジーの道具使用行動を参考にして放飼場に設置された遊具である「あり塚」, 「知恵の木」および「ハンマーと叩き台」の使用状況を手掛かりとした。これは, チンパンジーの認知能力の指標として, KOEHLERの実験 (10) 以来, 道具使用行動が多く用いられていること, また野生状況でも道具使用行動は観察・研究されており (2), チンパンジーの認知能力を知る為に, この行動が重要なものであると考えられること (14, 16) による。
  • 星野 聖
    1987 年 37 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 1987/09/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
    学習のメカニズムを解明するため, 神経科学の分野で多くの研究が行なわれてきた。それらの諸研究の中で近年, 比較的下等な動物の単一神経節細胞や数個の神経細胞を用いた実験が大きな成果を上げている (6, 10, 12, 13) 。被験体としては, アメフラシ, イカ, ウミウシ, ショウジョウバエ, バッタ, そしてザリガニなどが良く用いられている (3, 5, 12, 14, 15) 。学習の神経メカニズム研究を遂行するうえで, どの種の動物の, どのような学習のパラダイムを採択するかは, 非常に重要である。
    心理学においてザリガニを被験体として用いた研究では, 古くはYERKESら (21) やAGAR (1) のものがある。その後の実験例は, それほど多くない。しかもそれらの多くは, 系統発生段階と学習能力とを比較することに重点が置かれていた (4, 7) 。しかし, 久田 (8), 久田・山口 (9), 横井・斉藤 (22) が言うように, ザリガニは神経生理学的アプローチによる学習メカニズムの解明のために, 非常に好適な被験体である。
    本研究では, 学習に伴う神経系レベルでの変容メカニズムを調べるための前段階として, 次のような研究戦略を採択し, 実験を試みた。すなわち, 少数ニューロン系であり, 多くの神経細胞がすでに同定されているザリガニを被験体に選んだ。そして被験体を固定しても条件づけの手続きが遂行でき, かつ少数の筋肉の活動に依存する反応を強化する学習パラダイムを選んだ。これにより今後, その学習を可能にしている神経回路を追跡し, その結果をもとに神経系レベルでの学習メカニズムを解明する緒を得ることができる。
  • 1987 年 37 巻 1 号 p. 39
    発行日: 1987/09/25
    公開日: 2009/10/14
    ジャーナル フリー
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