本研究の目的は,橋渡し型ソーシャル・キャピタル(以下,SC)の「NPO」などを地域の持続的発展を支えるソーシャルセクターとしてとらえ,介護保険法改正や社会福祉法改正との関連や近年の国の政策動向である「地域共生社会」と「包括的支援」をSCに着目して論じた上で,持続可能な地域社会について社会福祉の視座から論考することにある.
まず,地域共生社会と包括的支援をめぐる政策動向について踏襲した.次に,地域共生社会下の包括的支援における介護予防と子育て支援において有効なSCを「NPO」などのつながりに代表される橋渡し型SCと「町内会自治会」などの地縁に代表される結合型SCとに着目して,量的調査によって実証的に検証した結果について述べている.次に,多くの中山間地域をかかえる島根県で,持続可能な地域経営に成功している2つの事例を橋渡し型SCとしてのIターン者や「NPO」の活動,および結合型SCの地縁などの結合SCに着目して論じた.
また,新しい展開として,人口減少が著しく人的資源や社会資源が乏しくて地域のボランティアさえ高齢化している中山間地域で,行政業務や地域のボランティアの役割の一部をAIに代行してもらう際のAIパーセプション(AIの受けいれやすさ)をSCの視座から分析した結果についても述べている.最後に,コロナ禍においても持続可能な地域を支えるソーシャルセクターとして橋渡し型SCの「NPO」をとらえ,SCの地域差に着目した考察を加えた.
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