ノンプロフィット・レビュー
Print ISSN : 1346-4116
5 巻, 2 号
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会長講演
  • 今田 忠
    2005 年 5 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/15
    ジャーナル フリー
    阪神・淡路大震災の被災地ではNPOが「新しい市民社会」に向けて政策提言活動を行っている.その原点には震災ユートピアと呼ばれた「市民同士の共助」および「市民と行政の協働」の体験がある.「新しい市民社会」の思想はコミュニタリアニズム,討議的民主主義,サステイナブル・コミュニティである.
    現在の日本においては市民とか市民社会という用語はあまり評判が良くないが,一人ひとりのQOLを向上させ,Social Inclusionを実現させ,持続可能な国をつくっていくには市民社会が必要であり,それを担うのは市民である.自立・自律の精神をもった市民には強靭な精神,論理的思考力と倫理観が求められる.
研究論文
  • ―アカウンタビリティとのミスマッチ解消に向けて―
    馬場 英朗
    2005 年 5 巻 2 号 p. 81-92
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/15
    ジャーナル フリー
    NPOは市民社会との関わりの中で活動を行っており,そのアカウンタビリティは法的なディスクロージャーに止まらず,広く社会に対して情報を公開することで果たされる.したがって,財務情報の公開が義務付けられていない現行の非営利法人制度では,アカウンタビリティが十分に果たされているとは言えないが,NPO法人制度の成立に伴い,NPOによる情報開示の重要性が明確化されたことは画期的である.その一方で,愛知県におけるNPO法人の財務データを分析した結果,NPO法人は社会からの資金的サポートを十分に受けておらず,実際には社会に対して大きな責任を負っているわけではないことが判明した.むしろ,補助金や委託事業を通じて行政から資金を得ている社会福祉法人や学校法人に対して,納税者に対する受託責任の観点から情報公開を義務付けるべきであり,アカウンタビリティとディスクロージャーとの間にあるミスマッチを解消する必要がある.
  • 荒木 徹也
    2005 年 5 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/15
    ジャーナル フリー
    インドネシアにおけるNGOネットワークの可能性と限界を検討した.NGOネットワーキングに関する意識調査の結果から,相互行為的ネットワークの一つとしての性格を有するNGOネットワークにおいて,戦略的ネットワーキングが相互行為的ネットワーキングよりも優位に考えられていることが分かった.他方,参加型開発手法の実践はジョグジャカルタおよびヌサトゥンガラ州で広がりを見せており,またその研修機関は主にジャカルタと西ジャワ州に位置していた.参加型開発手法の実践者のネットワーク構造は結節点であると考えられる数名に集中していた.以上の結果から,NGO間のネットワーキング・プロセスは3つの相互矛盾要因,すなわち1)資源(時間・資金・人材),2)多様な価値観の共存,3)合意形成プロセスの必要性により本質的な制約を受けるものであることが明らかとなった.
  • 桜井 政成
    2005 年 5 巻 2 号 p. 103-113
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/15
    ジャーナル フリー
    ボランティアは地域生活者として,生活環境上の異なるバックグラウンドを持って,活動に参加している.このため,人々のライフサイクルによって,ボランティア活動の継続要因は異なっていると考えることができる.本研究ではボランティア活動の継続要因を明らかにする目的で,287人のボランティアを対象に調査を行った.サンプルを若年層(30歳未満),壮年層(30歳以上60歳未満),高齢層(60歳以上)の3つの年齢層別クラスタに区分した上で,個人的要因変数,参加動機要因変数,状況への態度要因変数の3種類の変数を用いて,重回帰分析を行った.その結果,年齢層毎に,活動継続要因は異なっていた.調査から明らかになった継続要因の差異について,ライフサイクル別に生じる地域生活上のニーズの観点から考察した.
  • ―「マーケティング・ネットワーク」構築の視角から―
    矢吹 雄平
    2005 年 5 巻 2 号 p. 115-126
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/15
    ジャーナル フリー
    本稿は,「地縁性」が鍵を握る地縁型住民組織と対比するため,NPOを(認証/非認証を問わず)「専門性」を有する非営利/非地縁型の市民活動団体と位置づけた上で,理論的にも実践的にも重要な検討課題になる一方,議論が抽象的段階に留まっている両組織の媒介について,両主体によるマーケティングの「ネットワーク化」の視角から議論する.
    具体的には,地域運営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)に着目し,まず1)個人における「地域運営主体に関する水平構造の曖昧性」という概念の重要性を確認する.次に2)両組織の媒介役を果たす組織としては自治体が相応しいことを明らかにし,その条件を整理する.しかし,共に現状では十全な機能の発揮を期待できない状況下にあって,3)最も身近な「意思(ニーズ)表明手段」としての貯金を梃子に地域の運営資源を総動員して公共的な財を供給する,“地域コミュニティ協働事業推進貯金”を提案する.
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