日本看護科学会誌
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16 巻, 3 号
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  • Roy適応看護モデルの適用
    桃井 雅子
    1996 年 16 巻 3 号 p. 1-9
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究はRoy適応看護モデルをもとに腰痛のある双胎妊婦への看護介入を計画し, 介入の効果を分析するために, 実験群と対照群に分けて不適応行動である“腰痛の訴え”の変化を適応様式の四側面から査定することを目的とした。対象は妊娠中期から後期の双胎妊婦で, 各群6例ずつ得られた。調査期間は1例に対して三週間以上四週間以内とし, 実験群への介入は研究者自身が二回の家庭訪問と随時不安・疑問への対応を行った。 訴えの査定は面接法および質問紙法を用いて両群とも調査初日と最終日の二時点で行った。
    研究の結果, 次の点が明らかになった。実験群の訴えの改善例数が対照群よりも多かった。介入の効果が認められたのは, 生理的ニード適応様式では『対処法の数・種類を増やすこと』, 自己概念では『腰痛に伴い変化した自己概念を好転すること』, 相互依存では『腰痛に伴い生じた医療者への依存ニードを充足すること』以上においてである。また, 訴えが増悪した事例が実験群には認められず, 一方対照群には認められた。よって介入は訴えを改善するのに効果が有ると判断した。さらに研究の結果, 当モデルの特性として, (1) 適応様式間で介入の効果が波及すること,(2) 残存刺激が関連刺激として捉え直されることで介入の焦点が明らかになること, 以上の点が示唆された。
  • 一般病棟と緩和ケア病棟の比較
    吉田 智美
    1996 年 16 巻 3 号 p. 10-20
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, がんの終末期で症状緩和のためのケアを受ける患者にかかわる家族のストレス・コーピングにはどのようなものがあるのか, また一般病棟の家族と緩和ケア病棟の家族とでは, どのような相違があるのかを明らかにすることを目的とした。
    医師より患者の病名・予後について知らされており, 患者の身の回りの世話などを行う家族員35名を対象とし, 面接法と参加観察を行い, 得られた質的データを分析した。
    その結果, 以下の知見が得られた。一般病棟の家族と緩和ケア病棟の家族の体験している困難・心配などは共通の要素を持ちながら内容において,(1) 患者の苦痛,(2) 今後の患者の病状,(3) 患者の症状緩和, (4) 患者の死期が近いこと,(5) 患者の近い死に対する受けとめ, (6) 患者の役割不遂行という6項目での相違と,(1) 面会 (付き添い) での困難,(2) 病名告知・予後という2項目での類似が見られた。体験に対するコーピングは, 内容において問題志向的タイプより感情志向的タイプにより多くの相違が見られた。
  • 荒川 唱子
    1996 年 16 巻 3 号 p. 21-29
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    癌化学療法患者が経験する副作用は, 広範囲にわたり, その程度にも差がある。化学療法だけでこの違いを説明することは不可能であり, 他の要因を検討しなげればならない。
    本研究の目的は, 化学療法による副作用と抗癌剤, 患者の疾患に対する認知, 不安, ヘルスローカスオブコントロールとの関係を明らかにすることである。対象は, がんセンターに入院し, 化学療法を受けた患者87名である。これらの対象者に, 副作用に対する独立変数の影響を調べるための質問紙に記入を求めた。
    分析の結果, 化学療法の副作用には, 受けた化学療法の回数, 疾患に対する認知, 不安と有意な正の相関が見られた。化学療法の回数が多く, 病気の否定的認知が高く, 不安が高い程, 副作用を経験していた。しかし, 副作用と抗癌剤数, ヘルスローカスオブコントロールとの有意な関係はみられなかった。
  • 信頼性・妥当性の検討
    堀内 成子, 太田 喜久子, 小山 眞理子, 森 明子, 小松 浩子, 岡谷 恵子, 高田 早苗, 井部 俊子, 岩澤 和子, 飯塚 京子, ...
    1996 年 16 巻 3 号 p. 30-39
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は看護ケアの質質問紙の信頼性・妥当性を検討するために, 看護婦742名, 患者626名を対象に調査を行った。
    「看護ケアの質質問紙一患者用」(QNCQ-PT) 39項目, 及び「看護ケアの質質問紙-看護婦用」(QNCQ-NS) 43項目であり, それぞれ11のサブスケールからなるリカート型尺度である。
    QNCQ-PTの構成概念妥当性は, 因子分析結果から, 11のサブスケールが分割されることなく抽出され, 理論構成は支持された。また, 患者信頼スケールとの間に高い相関関係が認められ, 併存妥当性が支持された。さらに, 患者のケアの質の評価は, 退院時の健康度を予測する事が可能であり, 予測妥当性は支持された。
    QNCQ-PTの信頼性は, 内的整合性の指標であるCrOnbach'sα係数が全体で0.98であり, サブスケール別でも0.7以上であった。安定性は再テスト法を行い, 全体で信頼性係数0.91であった。
    QNCQ-NSの構成概念妥当性は, 因子分析結果から, 11のサブスケールが1-3個まとまって抽出され, 理論構成は支持された。また, 理論的予測に基づく関係性として, 看護婦の仕事満足との間に相関関係が認められ, 構成概念の妥当性は支持された。
    QNCQ-NSの信頼性は, Cronbach'sα係数が全体で0.96であり, サブスケール別でも0.7以上であった。安定性は再テスト法を行い, 全体で信頼性係数0.73であった。
    以上の結果より, QNCQ-PTおよびQNCQ-NSともに, 質問紙全体としての妥当性・信頼性があると判断された。
  • 河原 加代子, 飯田 澄美子
    1996 年 16 巻 3 号 p. 40-47
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    在宅療養に移行した脳卒中後遺症をもつ障害者を対象に, 機能訓練やデイケアの場における「活動」(社会的相互作用)と, 参加者の生活全体における主観的満足感との関連を検証し, 主観的満足感に関連する要因について明らかにした。対象は, 44歳から94歳までの脳血管障害者87名(男55名,女性32名)で, 平均年齢は, 男67.6歳(SD=8.3), 女67.5歳(SD=12.7)であった。主観的満足感の測定用具は, PGCモラールスケールを使用した。結果として, 1)活動と主観的満足感との間には,0.26(p<.01)の正の弱い相関が認められた。44-65歳の若い年齢群に対し, 66~94歳の高齢群では, 0.34(p<.05)の高い値を示した。2) 年齢と主観的満足感との間には, 66~94歳の群にのみ, 0.40(p<.01)の比較的強い相関が認められた。3) 公的社会資源の利用の有無と主観的満足感との間には, 44-65歳の群に, 0.20(p<.05)のごく弱い相関が確認された。4) ADLと主観的満足感との間には,相関は認められなかった。
  • 野口 眞弓
    1996 年 16 巻 3 号 p. 48-57
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    多くの助産婦は現在の仕事に満足しておらず, その原因の一つとして助産婦が仕事を認められることが少ないのではないかと考えた。助産婦が仕事をする上で他の人から認められ, そして助産婦自身も肯定的に仕事をとらえることを「承認」とし, このことから助産婦が満足できる仕事のあり方を探ることができると考えた。本研究の目的は, 助産婦の仕事における「承認」という概念を明らかにし, 承認に関係する要因を特定することであり, 病院で勤務する助産婦460名を対象に調査研究を行った。
    その結果以下のことが明らかとなった。
    1)助産婦の仕事における承認は,次の5つの要素から成り立っていた。それには, 上司から信頼され権限を委譲され, 医師から尊重され, 同僚から保証され, 患者やその家族と親しい関係がもて, 誰からも脅かされないことがあった。特に, 上司から信頼され権限を委譲されることは, 助産婦にとって大きな承認になることが認められた。
    2) 承認に関係する変数には, 仕事の満足度, 自己尊重, 看護職の経験年数があった。高い承認を得るためには, 仕事に満足し自己尊重が高く, 看護職の経験年数が長いことが必要であることが明らかとなった。
    3) 助産婦の承認を高める仕事のあり方には, プライマリー・ナーシソグと助産婦主導の分娩介助があった。プライマリー・ナーシング群は, チーム・ナーシソグ群に比べ統計学的に有意に高い承認を受けていた。また, 助産婦主導の分娩介助群は, 医師主導群に比べ統計学的に有意に医師からの尊重を多く受けていた。
  • 鈴木 みずえ, 柏木 とき江, 山田 紀代美, 佐藤 和佳子
    1996 年 16 巻 3 号 p. 58-66
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    看護婦のライフスタイルと社会・心理的要因などの関係を明かにするために, 茨城県南部の100床以上の病院に勤務する看護婦1,150名を対象に調査を実施した。
    (1) ライフスタイル得点であるHPIの平均は4.8±1.29であり, 年齢毎に増加する傾向が認められた。
    (2) 全対象者においてライフスタイルに有意な相関関係があるのは,精神健康度, 働きがい度, 生活満足度であった。
    (3) 年齢階級別に検討すると, 20歳代, 30歳代のライフスタイルは働きがい度, 生活満足度と正の相関, 精神健康度と負の相関が有意(p<0.01)に認められた。40歳代では, ライフスタイルと精神健康度は有意な負の相関, 50歳代ではライフスタイルと社会的支援に正の相関が有意(p<0.05)に認められた。
  • 佐伯 和子, 嘉屋 優子, 皆川 美紀, 大柳 俊夫
    1996 年 16 巻 3 号 p. 67-74
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究では, 日本における看護系メーリソグリストの構築のために, インターネット上での既存の看護系メーリングリストを調査し, そのコミュニケーショソ構造を分析し,
    1.メーリソグリストの地域別加入者は, 英語圏の国からがほとんどで, 日本からの加入は1%未満であった,
    2. メールの種別では, 議題提起とそれへのコメントが約40%, 情報提供が約10%, 質問と応答が約40%であり, メーリソグリストは看護問題に対する意思表示および情報交換に活用されていた,
    3.ディスカッションの特徴は, 結論をだすよりもネットワークを通じての意見交換であり, 時間をおいてのテーマの繰り返しや発展がみられた, ということを明らかにした。
    これらの結果から, 看護における教育・研究・実践のネットワーク化のためには, 今後日本語の使用できる看護のメーリングリストが必要と考える。
  • 編入学教育に生かす学習者特性の課題
    平河 勝美
    1996 年 16 巻 3 号 p. 75-81
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 編入学教育の構想に資するための, 看護職者の学習要求を形成している体験や意識の明確化である。
    調査対象は編入学資格を有し, それを志望している看護職者22名であり, 調査方法は半構成的面接法である。調査内容は編入学を志向するに至った経緯, 印象的だった看護体験や生活体験などとし, その中から, 編入学志向の根底にあると解釈される意識と自己意識との関連性を分析点とした。
    対象者は3群に分類された。それらは, 日常の看護実践に関する課題意識が特徴である「外在」群, 他者との関係や相互理解に関心の強い「間主観」群, 自己陶冶や省察の要求が特徴的な「内在」群である。また, 編入学教育者が追認すべき要素として, 学習要求を形成する意識の中の“社会”と“自己”の比重とその変動, 看護実践能力の不足感が形成する能力観や自己能力評価などが確認できた。
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