日本看護科学会誌
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17 巻, 4 号
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  • 母親としての自己・母親として以外の自己の分析
    山崎 あけみ
    1997 年 17 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,育児期の家族の中で生活している女性の自己概念を記述することを目的とした.中でも,自己概念を「母親としての自己」と「母親として以外の自己」にわけて注目し,その二つの自己の存在状況を明らかにした.3歳児を育児中の女性7名を対象として,半構成面接を実施し,帰納法的・質的因子探索型の分析を行った.
    育児期の女性の自己概念は,他者から必要とされる自己の獲得により充実が得られるという結果を得た.さらに,わが子に必要とされることは,「母親としての自己」を,社会(職場)で必要とされることは,「母親として以外の自己」を充実させ,現代の育児期の女性はその二つの自己の充実を望んでいた.そしてそのことを受容する家族と生活している女性の自己概念は「調和」しており,「母親として以外の自己」の充実を受容しない家族と生活している女性は,「葛藤」していた.
  • -介護時間による分析-
    山田 紀代美, 鈴木 みずえ, 佐藤 和佳子, 宮崎 徳子
    1997 年 17 巻 4 号 p. 11-19
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    静岡県西部に位置するH市の在宅要介護高齢者の女性介護者49人を対象に,ライフスタイルと疲労感に対する介護時間の影響を検討した.ライフスタイルの把握にはBreslowの生活習慣に関する7項目を,疲労感には蓄積的疲労徴候調査票(CFSI)を用いた.解析は介護時間により「24時間群」13人,「中時間群」12人,「4時間未満群」24人の3群に分け以下の結果を得た.
    1.介護者のHPI得点(7点満点)は平均5.0±1.2点であり,介護時間による統計学的有意差は見られなかった.しかし,「24時間群」の介護者の得点が最も低く,特に睡眠および栄養のバラソスに関して望ましい習慣の介護者が他の群に比べ少ない傾向であった.
    2.介護者のCFSIは「24時間群」の介護者が「4時間未満群」の介護者に比べ,「身体不調」「慢性疲労」「抑うつ感」特性で有意に疲労感が高かった(p<0.05).
    3.介護者のHPIとCFSIとの関連は,「4時間未満群」の介護者のみ,HPI得点と「慢性疲労」特性に有意に負の相関が見られた(p<0.05).
  • 川原 由佳里
    1997 年 17 巻 4 号 p. 20-28
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    現在わが国の保健医療施設において看護婦が難病患者に対して行っている看護ケアとそのプロセスを明らかにすることを目的に,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた質的帰納的研究を行った.
    分析の結果,難病患者の看護ケアは「患者の感情を受けとめる」,「患者の存在を大切にする」,「患者の可能性を実現する」及び「患者の自律を支援する」の4つのカテゴリーに分類され,これら4つの看護ケアを積み重ねられながら実施されるプロセスであることが明らかになった.日本赤十字看護大学大学院博士後期課程
    またこれらの4つの看護ケアが,難病患者が病気の慢性的不可逆的進行にともない体験している心理的な葛藤や社会的な疎外感を軽減すること,及び患者が難病と付き合いながらの生活を再構築していけるよう働きかけることを目的として行われていることが明らかになった.
  • 福島 道子, 島内 節, 亀井 智子, 高階 恵美子, 星野 ゆう子, 杉山 郁子
    1997 年 17 巻 4 号 p. 29-36
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 地域看護実践における家族のセルフケア力の拡大をねらいとした「家族の健康課題に対する生活力量アセスメント指標」を開発することである. 研究対象は, われわれが看護援助や研究対象として把握してきた156例の家族であった. 研究方法は, 各事例から帰納的に指標を構成し, さらに, これを健康問題をもつ家族事例に適用させるなどを行って指標を修正した.
    その結果,「家族の健康課題に対する生活力量アセスメント指標」として,「家族の生活力量」9項目と「家族の生活力量に影響する条件」3項目を構成した.
  • 石井 邦子, 森 恵美, 前原 澄子
    1997 年 17 巻 4 号 p. 37-45
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は妊娠期の母親役割獲得プロセスと共感性の関連を明らかにすることであった. 67名の妊婦の共感性を多次元共感測定尺度を用いて測定し, 抽出された高共感性群13名と低共感性群9名を対象に, 妊娠12週から30週にわたり, Rubinの概念に沿った内容の半構成的面接を行なった. 得られた結果から以下のことが明らかになった.(1)“取り込み-投影-拒絶”まで進んだものが高共感性群は13名中8名, 低共感性群は9名中2名であった.(2) 高共感性群は低共感性群に比べ,“模倣”をより多く行い,“ロールプレイ”のパートナーが身近に存在し,“空想”を早くから開始し,“悲嘆作業”によって新しい自己を思い描いている傾向があった.(3) 高共感性群は低共感性群に比べ, 妊娠前の母親役割のレディネスが高く, 妊娠中に役割モデルと接触するチャンスが多く, より早い時期により強い“ビンディングイン”を形成していた.
  • -開発の初期の段階-
    本庄 恵子
    1997 年 17 巻 4 号 p. 46-55
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 日本人の壮年期の慢性病者のセルフケア能力を査定する質問紙を開発し, その信頼性と妥当性を検討することを目的として行なった.
    はじめに, 5段階のリッカートスケールを持つ5下位尺度56項目からなる質問紙原案を開発した. 質問紙原案は, Orem (1991) の理論と, 壮年期の慢性病者からの質的なデータを基盤として作成した.
    2番目に, 質問紙原案の信頼性と妥当性を検討した. 臨床経験が5年以上の正看護婦5人と看護研究者16人を対象に内容妥当性を, 19人の慢性病者を対象として表面妥当性を検討した. これらの結果から, 質問紙原案を5下位尺度48項目からなる質問紙に修正した. 次に修正した質問紙を用いて, 内的整合性, 安定性, 構成概念妥当性を検討した. 200人の慢性病者を対象とした, Cronbach'sαは0.90であり, 内的整合性は保持されていた. 104名の慢性病者を対象として行なった再テスト法による安定性を示す信頼性係数は, 0.86であった. 因子分析の結果5つの下位尺度が得られ, これらの下位尺度と因子分析前の下位尺度にはある程度の一致が見られた. したがって, 構成概念妥当性はある程度保持されていると考えられた. また, 日本の文化背景を反映していると思われる <有効な支援の獲得> という下位尺度が抽出された.
    本質問紙は, 初期の尺度として, ある程度の信頼性・妥当性を得ている. 本研究結果を踏まえ, さらに本質問紙を洗練していく必要がある.
  • 吉田 みつ子
    1997 年 17 巻 4 号 p. 56-63
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は痛みのある癌患者の日常生活の安寧感と痛みのコントロールについて明らかにすることである. 一般総合病院に入院中の痛みをもつ癌患者49名を対象に質問紙を用いた面接調査を行った.
    その結果, 対象者の約15%の者が痛みのコントロールに対して「やや~とても不満」と評価しており, 痛みの強さは, コントロールに対する不満や, 医療者に何もしてもらえないので痛みを訴えても無駄という怒りとの間に有意な相関がみられた. 対象者のうち半数以上が痛みの増強は病気の悪化を意味するものであると捉えていた. 鎮痛薬の使用に関しては, 半数以上が鎮痛薬への依存性や, 鎮痛薬耐性が生じることを懸念しており, 懸念の強さと日常生活の安寧感との間に有意な負の相関がみられた. また, 痛みの強さの増強と, 疲れやすさ, 体力・気力の低下, 心理的な苦痛の増強との間には有意な相関が示された.
  • -2年間の追跡調査-
    山下 一也
    1997 年 17 巻 4 号 p. 64-68
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    近年看護業務の増加に伴い, 看護婦の精神的負担度は増加している. 2年間の看護婦の精神的健康に関して追跡調査をした.
    対象者は当院 (満床110床) で3年以上の勤務歴のある看護婦で精神的健康状態を追跡調査のできた40名 (25~57歳) である. 精神的健康状態は質問紙法GHQ (GeneralHealth Questionnaire) 60項目を用い自己評価してもらった.
    初年度, 2年後のGHQ全得点の相関はy=0.78x+4.75, r=0.744, P=0.0001と非常によい再現性が認められた. 初年度, 2年後のGHQ全得点および4因子 (身体的症状, 不安と不眠, 社会的活動障害, うつ状態) の比較では各部署ともに有意の変化はみられなかった. また, 初年度のGHQ全得点の平均では有意差が認められなかったものの, 2年後のGHQ全得点の平均の比較では, 外科系勤務看護婦では, 内科系及び老人病棟勤務看護婦よりも有意に得点が高かった (p<0.05). さらに, 外科系勤務看護婦では, 内科系及び老人病棟勤務看護婦よりも初年度の社会的活動障害, 2年後の不安と不眠, 社会的活動障害, うつ状態が有意に得点が高かった (p<0.05).
    外科系勤務看護婦では精神的健康が障害されている傾向にあり, 今後看護業務などとの関連について検討していく必要がある.
  • 堀井 理司, 高谷 嘉枝, 森 恵美, 安藤 広子, 太田 喜久子, 岡谷 恵子, 片田 範子, 勝田 仁美, 川村 佐和子, 土居 洋子, ...
    1997 年 17 巻 4 号 p. 69-75
    発行日: 1997/12/10
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
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