本研究は, 日本人の壮年期の慢性病者のセルフケア能力を査定する質問紙を開発し, その信頼性と妥当性を検討することを目的として行なった.
はじめに, 5段階のリッカートスケールを持つ5下位尺度56項目からなる質問紙原案を開発した. 質問紙原案は, Orem (1991) の理論と, 壮年期の慢性病者からの質的なデータを基盤として作成した.
2番目に, 質問紙原案の信頼性と妥当性を検討した. 臨床経験が5年以上の正看護婦5人と看護研究者16人を対象に内容妥当性を, 19人の慢性病者を対象として表面妥当性を検討した. これらの結果から, 質問紙原案を5下位尺度48項目からなる質問紙に修正した. 次に修正した質問紙を用いて, 内的整合性, 安定性, 構成概念妥当性を検討した. 200人の慢性病者を対象とした, Cronbach'sαは0.90であり, 内的整合性は保持されていた. 104名の慢性病者を対象として行なった再テスト法による安定性を示す信頼性係数は, 0.86であった. 因子分析の結果5つの下位尺度が得られ, これらの下位尺度と因子分析前の下位尺度にはある程度の一致が見られた. したがって, 構成概念妥当性はある程度保持されていると考えられた. また, 日本の文化背景を反映していると思われる <有効な支援の獲得> という下位尺度が抽出された.
本質問紙は, 初期の尺度として, ある程度の信頼性・妥当性を得ている. 本研究結果を踏まえ, さらに本質問紙を洗練していく必要がある.
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