日本看護科学会誌
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18 巻, 3 号
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  • -CPS-M97の妥当性・信頼性の検証-
    内藤 直子, 橋本 有理子, 杉下 知子
    1998 年 18 巻 3 号 p. 1-9
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 著者が専業母親用の子育て観尺度を開発するにあたり, その子育て観尺度の妥当性・信頼性を検討するために, 乳幼児を持つ専業母親303名を対象に調査を行った.
    ところで,「子育て観尺度 (以下, 「CPS-M 97」と略す)」とは, 質問項目が18項目からなる5段階リカート型選択肢から構成されてい.
    CPS-M97の内容妥当性については, 家族社会学を研究している後期博士課程の大学院生3名と, 助産所を開業し地域で子育て教室を7年間主催している経験20年以上の助産婦4名が検討したが, 質問項目26項目から3項目を削除後は, 特に問題は認められず, 内容妥当性は支持されたといえる. 次に, 表面妥当性においては, 2回の予備調査を行った際に, 0~3歳の乳幼児を持つ10名の母親と18名の母親が検討したが, 特に問題はなく, 表面妥当性は支持されたといえる. また, 構成概念妥当性については, まず, 主成分分析結果から4つの因子が抽出されたが, 尺度作成段階に構成された5つの下位概念と一部差異が認められる箇所があり, 一部を除いて構成概念妥当性はほぼ支持できたといえる. さらに, 理論的に導かれた仮説の検討も行ない, 主成分分析にみる構成概念妥当性の結果より一部除外された以外の各因子とSelf-Esteem Scaleとの間に有意な相関関係が認められ, 構成概念妥当性は支持されたといえる.
    一方, CPS-M97の信頼性は, 主成分分析にみる構成概念妥当性の結果より一部除外された以外の下位尺度では, 概ね高い値が得られており, ほぼ高い内的整合性をもつといえる.
    以上の結果より, CPS-M 97の下位尺度は, 一部を除いて妥当性・信頼性がほぼあると判断された.
  • 朝倉 京子
    1998 年 18 巻 3 号 p. 10-20
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 心筋梗塞の病者の生きられた身体体験を探究することを目的に, 現象学的アプローチを用いた質的帰納的研究を行った. 研究対象者は急性心筋梗塞を発症した男性病者5名であった. データ収集は, 心筋梗塞を発症した直後から約3ヶ月間のあいだに, 公式面接法と非公式面接法によって行った.
    分析の結果, 心筋梗塞の病者の生きられた身体体験は,〈身体に注意を向けること〉に特徴づけられた. この〈身体に注意を向けること〉は, 病者それぞれの〈内在的な身体体験〉を導いていた. これは, 病者の意識のはたらきによって生じ, 病者の意識のなかでのみ内在的に感じられるものであった. また, 生きられた身体体験には, 〈発症時の意識の有無〉,〈情報を自分の知識とすること〉,〈関係世界と関係すること〉が大きく関わっていることが明らかになった.
    本研究の結果より, 心筋梗塞の病者の体験の原初的部分とその主観的意味が示された. そして, 看護婦が心筋梗塞の病者のとる様々な行動や反応を理解するための示唆を得た.
  • 岩田 裕子, 森 恵美, 前原 澄子
    1998 年 18 巻 3 号 p. 21-36
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 父親役割への適応における父親のストレスとその関連要因を明らかにすることである.2~5ヶ月児の父親183名を対象として質問紙調査を行い、以下の結果を得た. 1) 児出生後2~5ヶ月において, 父親役割に関連して経験するストレスは決して高いとは言えず, 父親であることに喜びを感じている. 2) 父親になったという事実について肯定的に捉えている者はストレスが低く, 社会的支持に対する満足度が高い者ほどストレスが低い. また対処については, 前向きに努力していたり肯定的に考えていたりする者はストレスが低く, 父親役割遂行に対して消極的な態度をとっている者はストレスが高い傾向にある. 3) 子ども1人の父親では, 夫婦関係が良く, 出産体験についての満足度が高く, 妻が就業しておらず, 出産準備クラスへ参加した者の方が, よりストレスが低い. 子ども2人以上の父親では, 夫婦関係が良く, 育児の手伝いがいない者の方が, よりストレスが低い.
    以上の結果より, 父親役割への適応を促すためには, まず父親が子どもの誕生や父親役割をどのように捉えているか, 必要な社会的支持があるのか, 生活や役割の変化に対してどのように対処しているのか, これら3点をアセスメントすることが重要なことが明らかとなり, いくつかの看護援助の有効性が示唆された.
  • 柴山 健三, 盛田 麻己子, 天野 瑞枝, 伊藤 小百合, 足立 はるゑ, 渡辺 トシ子
    1998 年 18 巻 3 号 p. 37-44
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    気管内挿管中に発生する肺感染症は,上気道分泌物が気管内チューブのカブを介して下気道への吸引をおもな原因としている. その予防に間欠的上気道洗浄 (上気道洗浄) は有効な方法である. だが, 上気道洗浄する上気道の知覚は, 迷走神経 (上喉頭神経) と舌咽神経に支配されているため, 上気道洗浄による刺激によって循環系への影響が大きいことが考えられる. したがって, 上気道洗浄が安全な看護技術であるかどうかを確認するため, 上気道洗浄による循環系への影響を検証する研究を試みた.
    意識障害の患者群は, 上気道洗浄20秒後よりRPP値が増加した.さらに, 意識清明で塩酸ドーパミン多量使用の患者群は, 5日間に20回上気道洗浄を実施すると, RPP値増加が抑制されていった. これらの結果より上気道洗浄は意識障害の有る患者へは洗浄直後より循環系へ注意する必要があり, 意識清明な患者は頻回の吸引刺激によって気道粘膜の閾値が上昇したことにより循環系への影響が減少することが示唆された.
  • 青木 きよ子
    1998 年 18 巻 3 号 p. 45-55
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, HOT患者のリハビリテーションプログラム開発のための第一段階としてHOT患者のQOL尺度の信頼性・妥当性を検討し, QOLの関連要因を明らかにする. さらに, これらの関連要因をもとに看護介入のためのアセスメント試案を作成しその有効性を検討することにある.
    (1) 本研究で使用したQOL尺度の内容的妥当性は研究者10名の一致率から, 構成概念的妥当性はHOT患者のQOL尺度の因子分析結果において, 信頼性はCronbach α係数から確認された.
    (2) HOT患者のQOLの関連要因としては, 「呼吸困難の程度」,「生活動作の自立度」,「ストレス認知」,「重要他者の心理的サポート」の4要因が抽出された. これらの関連要因とQOL尺度得点の高群と低群の2群問で有意差が認められ, 看護介入の必要性が示唆された.
    (3) HOT患者における関連要因をもとにしたアセスメント指標(NIA for HOTP)案の弁別力は, NIA for HOTP案得点とQOL尺度得点±1 SDとなった患者との人数比較から支持された. また, NIA for HOTP案を使用した看護介入への有効性は事例から確認できた. しかし, 個別の詳細なアセスメント能力には限界があると予想される.
  • -健常児との比較-
    田辺 恵子
    1998 年 18 巻 3 号 p. 56-66
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    小児用HLC尺度を小学4年から中学3年までの健常児と小児慢性疾患児に適用した. その結果, 内的統制と他者統制においては, 小学4年から6年までは慢性疾患児と健常児とに差異はなかった. 一方, 内的統制では中学1年から3年では慢性疾患児が健常児より低い得点であった. 他者統制では慢性疾患児が中学3年で健常児より高い得点であった.
    この健常児と慢性疾患児の差異, 特に中学1年から3年までの差異から, 慢性疾患児は病気体験によって内的統制を低下させていることが示唆された.
    小児慢性疾患児に関わる医療関係者は, 小児慢性疾患児の健康に関連する意思決定における依存傾向や自律性の阻害を認識する必要があろう.
  • 江藤 宏美
    1998 年 18 巻 3 号 p. 67-75
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    産褥期の養育者, 特に母親にとっては, 子どもとの生活リズムの調整が大きな課題となる. 本研究の目的は, 生後6週間の正常児の睡眠・覚醒状態を明らかにし, 入眠潜時の生理的な変化として足底皮膚温の変化を捉えることである. 対象は16名の正常児で, 生後2, 4, 6週目の3時点に家庭訪問をして, 児の生理的・行動状態を連続して観察し, 以下の結果が得られた.
    1. 授乳サイクル (授乳開始から次の授乳を開始する前までの時間) を概観し, ひじょうにぐっすり眠る型から, 眠らない型の4つのパターンに分類できた. 授乳サイクルの平均時間は, ぐっすり眠るパターンの方が次の授乳までの間隔は有意に長くなっていた.
    2. 睡眠パターンと入眠潜時における皮膚温の変化は, ぐっすり眠ったパターンを示す群では, 眠りにつくまでに皮膚温が有意に上昇し, 眠らなかったパターンでは皮膚温が下降していた.
    母親にとって, この皮膚温の上昇が, 新生児の授乳に関連した行動の予測の一助となりうるのではないかと示唆された.
  • 山崎 あけみ
    1998 年 18 巻 3 号 p. 76-86
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 助産婦学生が妊娠期の女性をどのように理解しているか記述し, それをもとにして, 臨床実習において対象理解の手がかりとなる学生の体験を抽出することである. データ収集は, 16人の助産婦学生に対して半構成面接により実施し, 分析は, 質的因子探索型の手法をとった.
    助産婦学生による妊娠期の女性に対する対象理解は, (1)「母親としての自己」を中心に展開している対象理解, (2)「2つの自己のバランス」を中心に展開している対象理解, (3)「生活周辺の他者との相互関係」を中心に展開している対象理解, の3つのタイプに分類された. 学生の対象理解の手がかりとなる体験は, 女性の自己概念の変容のプロセスに, 学生がケアの行為者として『巻き込まれ体験』と, 学生の観察が, 女性の生活周辺の他者との相互関係について『広がり体験』があった. この2つの体験が, 助産婦学生にとって, 妊娠期の女性を理解する手がかりであるという示唆を得た.
  • -女性介護者による介護行為に注目して-
    西村 ユミ
    1998 年 18 巻 3 号 p. 87-95
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    在宅介護者に関する従来の報告には, 介護者の疲労感や拘束感などの主観的な観点, あるいは介護者の健康問題の有無といった身体的な観点などについて検討したものがみられる. しかしながら, 介護行為に伴う生理機能変化を直接測定, 評価した研究は殆どみられず, 介護による身体負荷の実態は未だ明らかにされていない. 本研究は, 高齢女性介護者による介護行為に伴う身体負荷の実態を把握する目的で, 臨床生理学的な検査方法を用い循環器機能について評価, 検討した.
    その結果, 女性高齢者の行う介護行為は運動負荷の強度としては中等度の範囲に位置づけられるが, 介護のタイプや精神的要因等の影響を受け, 単純な運動強度で評価される以上の負荷がかかっていることが明らかとなった. また, 一部の高齢介護者にとって, 介護行為は個人の循環器能力を超える負荷となっていた. 従って, 過剰な負荷を負っている介護者は, 今後心疾患の発作や慢性疾患の増悪といった健康問題を発症する可能性を有していることが示された.
  • 佐藤 冨美子
    1998 年 18 巻 3 号 p. 96-105
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 在宅療養者の自己決定を支える訪問看護婦の認識と方略を, 訪問看護場面の参加観察と, 訪問看護婦との面接によって明らかにすることである. 対象は訪問看護婦20名と在宅療養者20名であった.
    分析の結果, 訪問看護婦の認識の特徴は『選択・決定は在宅療養者自身がする』『気持ちに添う』『在宅療養者に問題を自分のこととして考えてもらいたい』『自分の役割を言葉で伝える』『気持ちに添うことと看護婦の役割意識とのズレの調整』の5カテゴリーが抽出された. さらに方略の特徴は『意志や希望をきく』『動機づけをする』『情報提供する』『一・緒に考える』『同意をえる』『認める』『意欲を引き出す』の7カテゴリーが抽出された. 訪問看護婦が療養者の自己決定を支えるためには, 短い関わりの中で対象の意志を確認する技術と, 対象の意志を優先していい状況なのか見極める能力が求められる.
  • 荻野 雅
    1998 年 18 巻 3 号 p. 106-117
    発行日: 1998/12/07
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
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