正常分娩経過中の産婦の体温変動を明らかにすることを目的に本研究を行った. 正期産で経膣分娩した33例の産婦の体温を継続測定したところ, 以下の結果が得られた. なお, 測定開始時間は6:00~14:00とし, 子宮口開大5cm以内から測定を開始した. 本研究における“体温”は皮膚温を指標にし, 測定には深部温モニター, コアテンプ
®CTM-205を使用した.
1. 正常分娩時の体温の範囲
中枢深部温の測定値は, 34.2~37.9℃の範囲で, 個人内の変動幅の平均は1.3±0.6℃だった. 末梢深部温は25.7~36.7℃の範囲で, 個人内の変動幅の平均は4.1±2.3℃だった. いずれも従来の報告より範囲が広がっていた. 腋窩では児娩出時平均が37.1℃で, 38℃以上の者が5例あった. しかし分娩12時間後には自然に下降し新生児にも感染徴候を認めなかったことから, 分娩時のみの体温の上昇は感染などの異常を生じるものではなかった.
2.個人内温度変化
分娩進行の時間経過にそって有意に温度変化が認められたのは中枢深部温26例で, そのうち上昇15例, 下降11例であった. 末梢深部温では28例に有意な温度変化が認められ, 上昇6例, 下降22例であった.
以上より, 正常分娩経過において体温は38℃以上になることがあるのを確認した. また, 体温変動の傾向としては中枢・末梢ともに上昇・下降・著変なしのいずれも認められた. 分娩時には通常の日内変動を越える体温変動が生じることがあり, 体温の変動は感染などの異常をアセスメントするだけでなく, 分娩進行状況を判断する指標となりうることが示唆された.
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