日本看護科学会誌
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22 巻, 3 号
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  • 福井 小紀子
    2002 年 22 巻 3 号 p. 1-9
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究ではがん患者の家族の初期および末期における情報ニーズおよび情報伝達に関する認識とその関連要因について検討した. 対象は総合病院一般病棟および緩和ケア病棟へ入院したがん患者の家族であり, 質問紙を用いた面接調査を行い, 疾患, 治療, 予後, 患者および家族へのケアに関する情報ニーズおよび隋報伝達状況について尋ね, さらに各情報の伝達の有無への関連要因を検討した. 各期66名が対象となり, 情報ニーズを持つ家族のうち, 初期に疾患, 治療, 予後の情報伝達のあった家族は6-7割, 患者および家族へのケアに関する情報伝達のあった家族は1-3割であった. 末期は疾患, 治療, 予後および患者へのケアに関する情報伝達のあった家族は7-9割, 家族ケアに関する情報伝達のあった家族は約5割であった. また, 高齢, 患者への病名告知なし, および患者が治療を受けていない家族は情報ニーズがあるにもかかわらず有意に情報が伝達されていないと認識していた.
  • 薬師神 裕子
    2002 年 22 巻 3 号 p. 10-19
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 小児心身症に伴う行動障害を持つ子どもとその家族が, 子どもの行動障害が引き起こした家族の危機的場面を乗り超え, 家族機能の回復に伴う家族の再生過程と, 親子の相互作用から生まれた家族の耐久力 (family hardiness) の特徴を明らかにした. 行動障害を持つ子どもとその家族16例を対象に, 面接治療場面での親子の相互作用の観察と親への半構成面接を同意を得て行い, 記述されたデータを質的帰納的に分析した. 家族内葛藤に対応する中で家族は子どもの症状の進展に合わせた安定と不安定, 親子の関係性の前進, 停滞, 後退を繰り返し, 混沌とした状況の不確かさの中で粘り揺れながら, 子どもとの精神的な分離と結合を繰り返し, 情緒的絆と信頼に基づいた柔軟な心理的距離を構築する子どもと「ともに揺れる」家族の再生過程が明らかになった. この過程は「修羅場」「停滞」「渦からの脱出」という3つのサブプロセスから構成され,「衝突と放棄」「手探りのかかわりと巻き込まれ」「距離の確認と信頼の再構築」という, 行動障害児とその家族が最も快適な心の距離の構築に特徴的な相互作用を含んでいた. また, ストレスや困難を緩和し内的強さを育む家族の耐久力は, 家族の再生の促進と安定した親子の心理的距離を構築する重要な力であった.
  • 国府 浩子, 井上 智子
    2002 年 22 巻 3 号 p. 20-28
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,乳がん患者の術式選択のプロセスを明らかにし, 手術を受ける乳がん患者のよりよい術式選択に対する看護援助への示唆を得ることを目的とした. 乳がんのIまたはII期と診断され, 医師から術式選択を任された患者18名を対象として, 術式に対する気持ちや考えに関する半構成的面接調査と参加観察を実施し, 質的帰納的に分析した.
    その結果, 乳がん患者の術式選択は, 希望貫徹型, 段階的納得型, 動揺型, 振り回され型の4タイプに分類された. この4タイプを包括する乳がん患者の術式選択のプロセスは, 初期の反応, 当初の術式への疑問, 希望する術式への思い, 術式選択の葛藤, 術式決定の5局面で構成されていたことが明らかになった.
    乳がん患者の術式選択を促進するための看護支援として, 早期からの情報提供と修正, 人生観と乳房に対する価値観の明確化への支援, 困難な術式選択の道のりへの支援二が示唆された.
  • 比嘉 勇人
    2002 年 22 巻 3 号 p. 29-38
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究ではspirituality評定尺度を開発し, その信頼性と妥当性を検討することを目的とした. spiritualityについては,“何かを求めそれに関係しようとする積極的な心の持ち様と自分自身やある事柄に対する感じまたは思い (「意気・観念」)”と規定した. この構成概念に基づいて作成された20項目5件法の質問紙を大学生385名に実施し, 382名 (女性,20.12±1.10歳) から有効回答が得られた. 統計的に不適切な項目を除外後, 最尤法-プロマックス回転による因子分析を行った. その結果, 最終的に15項目5因子が得られ, 第1因子より順に『自覚』『意味感』『意欲』『深心』『価値観』と命名された. これをspirituality評定尺度(SRS)とした. 因子抽出後の累積寄与率は52.80%であった. 信頼性については, クロンバックのα係数0.82と再検査法-信頼性係数0.72で確認された. また妥当性については, 内容的妥当性は2因子モデルで, 収束的妥当性は抑制・成長不安尺度, 無力感尺度, 充実感尺度で, 弁別的妥当性は宗教観尺度で, 併存的妥当性は気分プロフィール検査 (日本版POMS) の抑うつ-落込み尺度で確認された. 以上の結果から, SRSは実用可能な尺度であると判断した.
  • 手術を受けた学童への記述・描画法による調査の試み
    松森 直美
    2002 年 22 巻 3 号 p. 39-49
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 近年, 増加傾向にある2週間以内の短期入院を経験している小児が, アンカーポイントとしているものは何かを明らかにすることと, 入院から退院後の生活への環境移行において小児の内面の変化がどのような様相を呈しているのかを包括的に捉えることを目的とし, 記述・描画法を用いて行なった. 研究方法としては, 心理的距離地図, 自己像と病院または家屋画の作成, 参加観察法を用い, 患児の状態に応じて, 入院中から退院後2週間から2ヵ月までの調査を4回から5回行なった. また, 対象となったのは, 事前に説明し同意を得た総合病院の小児病棟または混合病棟に入院した2例の手術を経験した学童とその保護者たちであった. 調査により得られた結果を事例ごとに包括的に分析した結果, 次のことが明らかになった.
    1. 環境移行の様相を個別的に把握していくことの必要性
    2. 各自が馴染みのある物をアンカーポイントとして, 環境との相互交渉を行ないながら体制化 (統合) を目指していること
    3. 小児看護の場における情動の言語化を補う手段としての記述や描画法の有用性
    以上の結論により, 入院から退院への環境移行を経験している小児が, 主体的に闘病していくことを支える看護介入を計画していく上での一助としたいと考える.
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