本研究は, 近年, 増加傾向にある2週間以内の短期入院を経験している小児が, アンカーポイントとしているものは何かを明らかにすることと, 入院から退院後の生活への環境移行において小児の内面の変化がどのような様相を呈しているのかを包括的に捉えることを目的とし, 記述・描画法を用いて行なった. 研究方法としては, 心理的距離地図, 自己像と病院または家屋画の作成, 参加観察法を用い, 患児の状態に応じて, 入院中から退院後2週間から2ヵ月までの調査を4回から5回行なった. また, 対象となったのは, 事前に説明し同意を得た総合病院の小児病棟または混合病棟に入院した2例の手術を経験した学童とその保護者たちであった. 調査により得られた結果を事例ごとに包括的に分析した結果, 次のことが明らかになった.
1. 環境移行の様相を個別的に把握していくことの必要性
2. 各自が馴染みのある物をアンカーポイントとして, 環境との相互交渉を行ないながら体制化 (統合) を目指していること
3. 小児看護の場における情動の言語化を補う手段としての記述や描画法の有用性
以上の結論により, 入院から退院への環境移行を経験している小児が, 主体的に闘病していくことを支える看護介入を計画していく上での一助としたいと考える.
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