本研究の目的は, 先天性障害をもつ児に続く妊娠・出産を選んだ女性が, 妊娠中から出産を迎えるまでにどのような体験をし, その体験をどのように意味づけているかを記述し理解することである. ダウン症候群の児に続く妊娠・出産を終えた5名の女性に, 非構成的面接を実施し, 現象学的アプローチを参考に質的記述的に分析した. 5名の体験の類型化から以下の点が示された.
女性たちは, ダウン症候群の子どもの出産によって,〈普通の子どもの喪失〉とともに〈自分自身の価値の喪失〉を体験していた.
女性たちは, 次回妊娠を〈本来の自分の価値を取り戻す〉,〈普通の育児を体験する〉,〈ダウン症の子どものためにきょうだいをつくる〉機会として意味づけていた.
女性たちは, 妊娠する以前にそれぞれに次回の妊娠を意味づけ,〈羊水検査を受けるか否かの構え〉を持っていた.しかし, 羊水検査を選択するか否かにかかわらず, 実際に妊娠を遂げ, 検査に直面することにより, 新たに〈葛藤〉や〈揺らぎ〉が体験されていた. 女性たちは出産に向けて,“障害児であっても引き受ける”,“神に委ねる”“夫の存在”といった新たな〈拠りどころ〉をそれぞれが見出していた.
ダウン症児に続く出産後, 女性たちが得たものとは〈普通の育児を経験できる喜び〉,〈ダウン症の子どもの見方の変化〉,〈自分の価値観の転換〉であった.
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