日本看護科学会誌
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23 巻, 1 号
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  • シェリフ多田野 亮子, 大田 明英
    2003 年 23 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の心理的適応に影響する要因を明らかにすること, また透析スタッフへの満足度や導入時のインフォームドコンセントが心理的適応に影響するかについて検討した. 透析歴1~5年の196名の外来血液透析患者を対象に, 種々の要因についてのスケールを用いて面接式のアンケート調査を行い, ステップワイズ重回帰分析にて検討した.
    心理的適応には,「ストレスの認知状態」(β=- 0.389),「友人からの手段的支援」(β=0. 236),「年齢」(β=- 0.230),「精神健康状態」,「導入時どの程度納得していたか」が影響しており, これらの変数で分散の46.8%が説明された. また, 有職者の心理的適応は無職の患者より有意によかった.
    血液透析患者の心理的適応を高めるためには, 医療提供者は患者の心理状態を十分に把握してストレスの対処に努めること, 社会復帰を促して友人や周囲からの支援を受けやすくすること, 導入時に患者が十分納得するように必要な医療情報を与えることが重要であると思われた.
  • 伊藤 祐紀子
    2003 年 23 巻 1 号 p. 14-25
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 臨床の日常場面で交わされる患者-看護者の相互理解, 相互行為の場面に焦点をあて, そこで生じる共感のプロセスを明らかにすることを目的とした質的帰納的な研究である. S市内の総合病院消化器内科病棟に勤務する看護者5名とその患者9名を対象に, 患者一看護者の相互作用場面を参加観察法と半構成的質問紙による面接法を実施した.
    その結果, 患者-看護者関係における共感のプロセスとして3つの位相が明らかになった. 第1の位相は,「共感の生じる前提条件」で各々が抱いている気がかりがあった. 第2の位相は,「相互の関わりが段階的に発展して共感になっていくプロセス」で次の5つの段階からなっていた; 1) 関わりに専念するための準備, 2) 気がかりを探り合う, 3) 気がかりの焦点化, 4) 気がかりの内容理解に向けた相互の取り組み, 5) 各々が理解した内容の確認とその提示. 第3の位相は,「プロセスの成果」で確かめ合った理解に動機づけられた援助と, 効果の共有の2つの構成要素からなっていた.
    以上の結果から, 臨床において共感のプロセスを1つ1つたどることに意味があり, 共感のプロセスをたどるそれ自体, 患者にとって必要な援助になることが示唆された.
  • -照明条件が色の弁別に及ぼす影響について-
    上村 美智留
    2003 年 23 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, リスクマネジメントの視点から療養の場における物理的環境特性の一つである照明条件が, 色の弁別に及ぼす影響を明らかにすることである. 対象は, 視力が0.8以上の女性で平均年齢24.2歳(標準偏差3.2歳)の25名である. 実験条件は, 光源に色比較・検査用D65蛍光ランプと白熱灯を使用し, 照度を 1,000, 500, 200, 100, 50, 30, 10 lxに設定した. 提示色表の「ランドルト環色-背景色」の組み合わせは,「赤-しろ」,「赤-だいだい」,「赤-あお」, 規準色の「黒-しろ」とした. 赤は血液の色, 背景色は臨床で使用するリネン類の色である. その結果, 照度基準の1,000 lx と比較した場合,「赤-だいだい」で白熱灯照明下および100, 50, 30, 10 lxで正答数が有意に低下した (p<0.05,p<0.001, p<0.001,p<0.001). 従って, 観察をする時には, 200~1,000 lx の照度が確保できる移動可能な補助ライトや相関色温度が高く色の弁別の誤りが少ない光源を使用することで, 色の弁別をしやすくすることが示唆された.
  • 森下 晶代
    2003 年 23 巻 1 号 p. 36-45
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    この研究は, ストレスを伴う処置や検査を受ける患者を想定し, 約1時間30分の安静臥床を強いられる健康な女子学生にクラシック音楽を聴かせることが, ストレスの緩和に効果があるかどうかを, 心理学的指標 (STAI, POMS), 生理学的指標(心拍R-R変動), およびストレスの指標とされている生化学的指標 (血中アドレナリン濃度) を用いることによって, 検証, 評価することを目的として行った実験的研究である. 対象者は, 本研究の参加に同意したもので, 標準の聴力を有する平均年齢23.25±0.68歳の女子大学生及び女子大学院生20名であった. 前後にそれぞれ15分のインターバルを置き, 実験群 (N=10) は1時間の音楽を聞きながら安静臥床を, 対照群 (N=10) は音楽のない状態で安静臥床を強い, 実験群と対照群の各指標を比較した. 心理学的指標では, POMSの「抑うつ-落ち込み」項目,「疲労」項目,「混乱」項目において, ウィルコクソン符号付順位和検定で統計的有意差を認めた. 生化学的指標では, 血液中アドレナリン濃度に関して, 対応のあるt検定で統計的有意差を認めなかったが, 繰り返しのある二元配置分散分析で交互作用 (相殺作用) を認めた. その他の指標に関しては, 統計的有意差を認めなかった. この研究から, 心理学的指標および生化学的指標において, 対照群よりも実験群のストレス反応が有意に軽減したことを示す結果を得た. これらのことは, 臨床における患者のストレス緩和に対して, クラシック音楽の簡便な利用方法としての可能性を示唆するものである.
  • 辻 恵子
    2003 年 23 巻 1 号 p. 46-56
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 先天性障害をもつ児に続く妊娠・出産を選んだ女性が, 妊娠中から出産を迎えるまでにどのような体験をし, その体験をどのように意味づけているかを記述し理解することである. ダウン症候群の児に続く妊娠・出産を終えた5名の女性に, 非構成的面接を実施し, 現象学的アプローチを参考に質的記述的に分析した. 5名の体験の類型化から以下の点が示された.
    女性たちは, ダウン症候群の子どもの出産によって,〈普通の子どもの喪失〉とともに〈自分自身の価値の喪失〉を体験していた.
    女性たちは, 次回妊娠を〈本来の自分の価値を取り戻す〉,〈普通の育児を体験する〉,〈ダウン症の子どものためにきょうだいをつくる〉機会として意味づけていた.
    女性たちは, 妊娠する以前にそれぞれに次回の妊娠を意味づけ,〈羊水検査を受けるか否かの構え〉を持っていた.しかし, 羊水検査を選択するか否かにかかわらず, 実際に妊娠を遂げ, 検査に直面することにより, 新たに〈葛藤〉や〈揺らぎ〉が体験されていた. 女性たちは出産に向けて,“障害児であっても引き受ける”,“神に委ねる”“夫の存在”といった新たな〈拠りどころ〉をそれぞれが見出していた.
    ダウン症児に続く出産後, 女性たちが得たものとは〈普通の育児を経験できる喜び〉,〈ダウン症の子どもの見方の変化〉,〈自分の価値観の転換〉であった.
  • -造血幹細胞移植事例を通して-
    野村 佳代, 村田 惠子
    2003 年 23 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    ハイリスク治療としての造血幹細胞移植の意思決定への子どもの参加は, 子どもの権利の尊重と治療への協力の必要性から重要である. しかし子どもの認知能力の限界とその選択権が親にあるために実現は困難となっている. そこで本研究はその実現に深く関与している親の, ハイリスク治療計画の意思決定への子どもの参加に対する関わりの過程を明らかにすることを目的として, 過去2年以内に造血幹細胞移植を受けた14人の小児患者の親を対象に半構成的面接を行い, その内容を質的に分析した.
    その結果, 造血幹細胞移植の意思決定への子どもの参加を巡る親の関わりの過程は, 親の決意に基づいて行われる「参加への働きかけ-“親の思いの伝達”“誘い込む”“承諾への誘導”“任せる”」から,「結果の確かめ-“納得の確かめ”“受け入れの確かめ”」を経ていた. これらの過程を看護職が理解し支援することは親の対応力を高め,子どもの治療への協力を促すことにつながる.
  • 菱沼 典子
    2003 年 23 巻 1 号 p. 67-73
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
  • William L. Holzemer
    2003 年 23 巻 1 号 p. 74-82
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
  • 日本看護科学学会が成してきたこと, 成そうとしていること
    村嶋 幸代
    2003 年 23 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 2003/03/28
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
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