日本看護科学会誌
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24 巻, 2 号
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  • 乳幼児健診で熟練保健師が用いた看護技術
    都筑 千景
    2004 年 24 巻 2 号 p. 3-12
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    保健師が乳幼児健診で用いている技術と実践活動内容を明確にすることを目的として, グラウンデッドセオリー法による質的帰納的研究を行った. 本稿では, 保健師が対象を捉え見極めていくプロセスに焦点を当てた.
    5府県11の市町村に勤務する経験年数5年以上の17人の熟練した保健師を対象とし, 半構造的面接と参与観察によりデータを収集し, 継続的に比較分析した.
    本研究では, 保健師が健診において対象者に援助を行う前に《援二助の必要性の見極め》を行っていることが見出された. このプロセスは,〈センシティブな視点で見る〉,〈思いの根を引き出す〉,〈問題を明確にする〉,〈受けとめを予測する〉という4つのカテゴリで説明された. これらは, 保健師が母親とのやり取りを進めていく中で同時的, 複合的, また繰り返し行われているものであった.
    これらの結果は, 保健師が健診において用いている, 対象への援助を意図した看護技術を示すものであり, 今後の保健師活動の質の向上に寄与できるものと考える.
  • 一般看護職者と遺伝専門看護職者の比較
    有森 直子, 中込 さと子, 溝口 満子, 守田 美奈子, 安藤 広子, 森 明子, 堀内 成子, William L. Holzemer
    2004 年 24 巻 2 号 p. 13-23
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 遺伝医療において「遺伝専門看護職者を含む一般看護職者」「遺伝専門看護職者」にどのような実践能力が求められているのかを明らかにすることである. 方法は, コンセンサスメソッドのひとつであるデルファイ法を参考にして4段階からなる調査を行った. 第1次調査として遺伝医療に携わっている看護職を対象に聞き取り調査および文献の検討を行い, 7領域89項目からなる遺伝看護の能力の事項を抽出し, 第2次調査では質問紙郵送調査を遺伝医療の有識者20名を対象に実施した. 第3・4次調査では, 40都道府県, 113施設から承諾の得られた遺伝医療に携わっている看護職者, 医師等, 491名に質問紙郵送調査を行った. 質問紙法においては, 著者らが作成した遺伝看護の能力89項目について, A: 一般看護職者, B: 遺伝学を専門に学んだ看護職者, C: 看護職者の能力として適切でないから,いずれかを選択してもらった. データ収集期間は, 2000年8月から2001年3月. 最終的には調査対象者は295名, 回収率は60%であった.
    一般看護職者には,『生活支援』,『精神的支援』,『クライエントの希望の明確化』能力が選ばれた. また, 遺伝専門看護職者には, 『正しい遺伝情報の提供と交換』,『他機関への照会と連携』,『クライエントの理解の支援』が選ばれた. 以上の結果より, 遺伝看護における「遺伝専門看護職を含む一般看護職者」と「遺伝専門看護職者」に求められる実践能力が明らかとなった.
  • 当目 雅代
    2004 年 24 巻 2 号 p. 24-32
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    目的: 初回人工股関節全置換術 (THA) を受ける患者の準備性を高めるために入院前患者教育を実施し, 評価することである.
    研究方法: 介入群は研究者による入院前患者教育を受け, 対照群は看護スタッフによる従来教育を受けた評価研究デザインをとった. 対象施設は, 近畿圏内に位置する2つの大学病院であった. THA予定患者は, 入院1~4週前に担当医から紹介を受けた. 評価尺度は, POMS気分尺度, SF-36健康関連QOL尺度, 入院前の情報に対する満足度尺度を使用した. 介入群にはTHAについてのビデオテープの視聴とパンフレットを提供した. 評価は, 入院前, 入院後1~3日以内, 退院前1~3日以内に実施した.
    結果および考察: 対象者は, すべて女性であり, 介入群17名, 対照群18名であった. 分析には, 繰り返しのある分散分析を用いた. 情報満足度において, グループと時間の有意な交互作用 (p<0.001), SF-36尺度では, 日常役割機能 (身体) と日常役割機能 (精神) においてグループと時間の交互作用に有意な傾向性 (p<0.10) がみられた. POMS尺度では, 有意な交互作用は認められなかった. 入院前に患者に情報を提供することは, 患者の準備性を高める効果が示唆された.
  • 糖尿病性腎症による向老期透析導入患者を焦点に
    仲沢 富枝
    2004 年 24 巻 2 号 p. 33-41
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 糖尿病とともに生活してきて, 向老期に至るまでの生活史が形作られている透析導入患者の, 生活史の編みなおしに影響する心理的様相について検討することを目的とした. 5名の対象に対して, 半構成的面接法を用いた. その結果, 次のような3つの相反する様相が見出せた. (1)「透析生活は楽しみややりがいを縮小させる・新たな楽しみを見出す」, (2)「透析生活は, 発達する自己の停滞感を抱かせた・新たな役割によって透析を受け入れた」, (3)「無力感, 罪責感による諦め・現実を受け入れ自己一貫性の維持」であった. 患者が生活史の編みなおしをするには, 過去の体験と現在おかれている状況を患者自身がどのように意味づけ, 将来を見通しているかという, 自己の気持ちに気づくことが重要となる. したがって, 生活の編みなおしの視点には, 対象のこれまでの生活史での体験の様相と, これからの見通しへの心理的特性を見極めた看護が求められ, その必要性が示唆された.
  • 社会的接触と援助的接触の差異
    森田 惠子
    2004 年 24 巻 2 号 p. 42-51
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    統合保育が推奨されながらも, その中核的課題である幼児の相互作用に関する研究はきわめて少ない. そこで先行研究として, 健康児と健康障害児の社会的相互作用を検討した結果, 顕著な差異が身体的接触を伴う社会的行動特性で認められた. その結果をもとに本研究は, 統合保育の遊び場面における身体的接触の意味を明らかにすることを目的として, 23名の健康障害児を含む200名の保育園児の遊びをビデオテープに記録し, 身体的接触の観察された29場面を質的に分析した.
    その結果, 健康児同士の身体的接触は, 仲間関係や興味・関心・役割に変化を導く「仲間としてのつながりと遊びへの誘い」「仲間の関心・注目・役割の導き」の意味があり, 健康児と健康障害児の身体的接触は仲間遊びへ誘い込む「仲間という確かな存在と遊びへの誘い」であり,「からだが伝える言動の支配や制御」として, 健康児が健康障害児に触れることで言動を制御する一方で, 健康障害児の「ありのままのからだの引き受け」の意味が認められた.
  • 面接による情報分析をもとに
    片岡 秋子
    2004 年 24 巻 2 号 p. 52-61
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は足部マッサージと腹式呼吸の介入による不眠と随伴症状に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした. 対象者は不眠と随伴症状のある外来患者11名で, ベットに仰臥位にさせ, 15分間の足部マッサージを実施, 最初の5分間は, 腹式呼吸を実施するよう指示した. また, この前後に面接を行い, 主な症状の変化について聴取した. これを1週ごとに3回行った. 研究期間を通して, 対象者には就寝時に腹式呼吸を行うよう依頼した. その結果, 入眠困難および「熟眠感がない」がそれぞれ全員, 8人で改善された. 随伴症状に関しては, 頭痛で7人,「表情が固い」で7人, 活動性低下で全員改善された. 本研究の結果から, 不眠と随伴症状に対する足部マッサージと腹式呼吸の介入効果が示唆された.
  • 草柳 浩子
    2004 年 24 巻 2 号 p. 62-70
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 子どもと大人の混合病棟で働く看護師が, 子どもと大人への看護実践をどのような困難さを抱えながら行っているのか明らかにすることを目的に, 民族看護学の方法に準じて行った. データ収集には, 主要情報提供者である混合病棟で働く看護師7名への参加観察と面接, 一般情報提供者14名に対する面接を用いた.
    得られたデータを分析した結果, 5つのテーマと1つの大テーマが抽出された. それらより, 混合病棟で働く看護師は子どもへは看護師のペースでの看護を行い, 大人へはその人のペースに合わせた看護をしていると感じていること, また, 混合病棟を子どもの病棟と感じ, 了どもと一緒の病棟に入院してもらっている大人に対し非常に気を遣っていること. さらに, 混合病棟で行っている看護を深められず中途半端感をもったり, 看護の専門性について模索したりしていることが明らかになった.
    以上のことから, 子どもを受け持つ看護師と大人を受け持つ看護師を一定期間ずつ分けることの検討や, 子どもの看護や大人の看護に豊富な経験をもつ看護師の存在の必要性が示唆された. また, 診療科を3つ程度に絞ることの検討や, 混合病棟で働く看護師自身が, どのようなキャリアを目指しているのかを知る機会をもつことも必要であると示唆された.
  • 小楠 範子
    2004 年 24 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 人生の回想を含む自由な語りの中から見出された入院中の高齢者のスピリチュアルニーズを記述することである. スピリチュアルニーズはその個人の生と密接に関連している. そのため, 個別事例を質的に記述する研究方法を選択した. 本稿では5名の研究参加者のうち, 93歳の女性Aさんの語りに焦点を当てた. Aさんとは約5カ月関わり, その間, 非槁成的面接を16回行った. 面接で語られた内容を繰り返し読み, スピリチュアルニーズを表していると思われる文脈を抽出し, ストーリーを構成した.
    語りからは,<生きる意味を見出したい><今, 生きている実感を味わいたい><来世での再会のためにゆるしを願いたい>がスピリチュアルニーズとして見出された. 加齢とともに失うものが多い高齢者にとって, 食や排泄といった日常の当たり前ともいえる生活場面で味わう“生きている実感”は, たとえ一瞬でもその人の生を生き生きと支えるものであった. 見出されたスピリチュアルニーズをもとに, 高齢者看護においては, 回想を含む語りを傾聴することの重要性とともに, 日常生活ケアの重要性が示唆された.
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