日本看護科学会誌
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24 巻, 4 号
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  • 吉村 雅世, 内藤 直子
    2004 年 24 巻 4 号 p. 3-12
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究では, 老年患者の語る物語の変化からナラティブ・アプローチを看護に導入する有用性を考察する. 67歳から80歳の5名の老年患者にテーマを設定した3回のナラティブ・アプローチを行い, 語られた物語の変化を分析した. 結果は「物語にはネガティブな反応が揺れ動く変動として常に表出されている. 転院や手術日の決定といった療養生活の転機, 抜糸といった回復を実感する出来事によって, 物語はより具体的な生活の方法や生きることへの意欲というポジティブな物語へ変化していた」というものであった.
    そして, 老年者は繰り返し語ることで病や老いへの顕在的・潜在的な反応を揺れ動く気持ちとして表出し老化による認知・表現能力の低下を補う, 老年患者へのナラティブ・アプローチは生き方を語る機会を作り解決の手がかりを見つける支援になる, テーマに特徴をもたせ何度か語る機会を設けたナラテイブ・アプローチは老年患者が問題解決の具体的方法に気付き心理的変化への障害を取り除く働きをする看護ケアである, と考察した.
  • 相良-ローゼマイヤー みはる
    2004 年 24 巻 4 号 p. 13-21
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本稿では, 子どもの死の概念研究領域で偏重されているピアジェの認知アプローチを用いずに, 解釈学的現象学 (interpretive phenomenology) の見地から日本の学童がどのように生と死を把握しているのかを明らかにすることを目的として実施された研究の結果のうち, 特に子どもたちの死と死後の世界観に焦点を絞って報告する. 健康な16人の7歳から12歳までの日本の学童 (女子7名・男子9名, 平均年齢8.9歳, 公立小学校生1名・キリスト教系小学校生15名) にお絵かきを含むインタビューを3回実施した. その結果, 子どもたちは日本社会の汎神論信仰を反映して, さまざまな宗教観を融合させたユニークな死と死後の世界観をもっていることが判明した. 子どもたちは生から死後までの包括的な考えを抱いているが, 子どもたちはこの流れを2タイプ, すなわち直線的あるいは循環性のもの, に分けて把握していた. またそのどちらの場合でもキリスト教の神の存在が鍵となっていることが判明した.
  • 子どもの力を引き出す関わりと具体的な看護の技術について
    松森 直美, 二宮 啓子, 蝦名 美智子, 片田 範子, 勝田 仁美, 小迫 幸恵, 笹木 忍, 松林 知美, 中野 綾美, 筒井 真優美, ...
    2004 年 24 巻 4 号 p. 22-35
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    過去の調査から子どもたちや親が主体となり尊厳が守られている「よいケア場面」を検討して抽出し「検査・処置を受ける子どもへの説明と納得に関するケアモデル」(以後ケアモデル)を作成した. 次に, 関東と関西地区の5病院8病棟で「ケアモデル」の活用を試みてもらった結果, 調査の協力者となった看護師たちにより82件の事例が提出された. 本報告は, この82件の内容を分析4つのカテゴリーに分類されたもののうち,「子どもの力を引き出す: 子どもの力を引き出そうとして看護獅たちが試みた関わりや具体的な看護の技術としてとらえられたもの」という2番目のカテゴリーを中心に述べる. このカテゴリーはさらに8つのサブカテゴリーに分けられた. その中の5つのサブカテゴリーは,【説明を受けることでがんばれた】【子どもが自分で選択することでがんばれた】【予測的実況中継的説明でがんばれた】【子どものタイミングに合わせることでがんばれた】【気をそらすことでがんばれた】で, ケアモデルの内容を反映していた. 3つのサブカテゴリーは,【子どもとの交渉】【母親や家族の協力を得てがんばれた】【最初の対応が影響する】で, ケアモデルの実践によって新たに見出されたものであった. 看護師たちはこれらの技術を組み合わせたり, 継続させたりしながら, 子どもの力を引き出し, 尊厳を守る姿勢で関わっていることがわかった.
  • 褥瘡の形状と車椅子接地形状の関係から
    藤本 由美子, 真田 弘美, 須釜 淳子
    2004 年 24 巻 4 号 p. 36-45
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    座位時に発生する褥瘡研究は脊髄損傷の患者に関するものが多く, 発生要因や褥瘡の管理方法, および予防方法が報告されている. しかし, 痩せていて顕著な骨突起があり, 拘縮や変形およびしわやたるみが多い高齢者にはこれらの先行研究とは異なる原因が考えられるが, 高齢者の座位における褥瘡の研究は少なく, 車椅子を中心にした姿勢保持や圧管理についての報告にとどまっている。
    今回, 高齢者の座位姿勢における殿部の褥瘡を予防することを目的に殿部の皮膚の状態を観察し, 高齢者の座位時における特徴的な皮膚の形状とその原因を検討した. 方法は, 座位になる患者59名, 寝たきりの患者31名, 歩行する患者23名の殿部の皮膚の状態を比較して, 座位特有の褥瘡の形状を抽出した. さらに, 座位になる患者に対しては, 座布と背布の部分が透明の塩化ビニールで作られた車椅子に, 下着をはずした状態で座位になり座位での接地形状を観察し,圧迫が加わらない側臥位での褥瘡の形状と座位での接地形状の関係から原因を追求した.
    その結果, 座位特有の褥瘡の形状は円, 輪, 馬蹄, 蝶, 不整があった. この形状と座位での接地形状の関係をみたところ, 円と輪は圧力が関与し, 馬蹄と蝶と不整はずれ力が関与していた。
    以上より, 褥瘡の形状を観察することで外力の方向性を予測する指標を得ることができ, 早期治癒に向けたケア方法の検討が可能になった.
  • 福井 小紀子, 猫田 泰敏
    2004 年 24 巻 4 号 p. 46-54
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究では, 一般病棟に入院する末期がん患者の家族に対するケア提供の実態とその関連要因を明らかにすることを目的に, 都内4総合病院の看護師を対象に, 家族への4つのケア((1) インフォームドコンセント, (2) 患者へのケア教育, (3) 死の受け止めに関するケア, (4) 精神的ケア) の実施程度, 学習経験などの看護師の個人要因, および病棟管理体制などの病棟のシステム要因について尋ねる無記名質問紙調査を, 配布は対象機関ごと, 回収は個別に行った. 質問紙の回収をもって調査参加への同意とみなすことを明記し, 367名 (回収率72%) より回答が得られた. 4つのケア実施程度はいずれも6~7割であり, 重回帰分析により各ケアの実施程度と有意な関連が認められた要因は, (1)~(3)の患者の疾患に関連するケアは, 研修会参加や手引書の活用といった均質化した集団教育が可能な学習経験であった. 一方, (4) の家族への精神的ケアは, 熟練看護師による個別のケア指導の経験が関連を示した. 本研究により, 末期患者を抱える家族へのケア提供に有用な要因として看護師教育があげられ, その方法はケアの特徴別に異なること, およびその具体策が示唆された.
  • 加藤 隆子, 影山 セツ子
    2004 年 24 巻 4 号 p. 55-64
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 子どもを亡くした父親がどのような悲嘆を体験し, かつどのように子どもの死を受け入れ自己を変化させていくのか, その悲嘆過程を明らかにすることを目的とした. 小児がんで子どもを亡くし, 死別後3年から10年を経た父親5名を対象に悲嘆過程に関する半構成面接を実施し, 質的帰納的に分析した.
    分析の結果,【死別の悲しみ】,【子どもを亡くした悲しみとの対峙】,【子どもの死を認める作業】,【子どもの死の受容】,【価値観の変容】,【悲しみの受け止め方の変容】,【子どもとの絆の維持】という7つのカテゴリーが抽出された.
    本研究で確認された父親の悲嘆の特徴は, 子どもの死は父親にとっても深い悲しみであり, 母親とは異なる質の罪責感や後悔を体験していたこと, 父親の悲嘆過程において仕事が重要な役割を果たしていたこと, 父親の多くは悲嘆過程の中で泣くことを体験しており, 必ずしも男性の役割期待が感情表現を妨げるとは限らないことなどであった.
  • 佐藤 栄子, 宮下 光令, 数間 恵子
    2004 年 24 巻 4 号 p. 65-73
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の食事に関連した QOL (以下, 食事関連 QOL) の関連要因探索を目的とし, 外来通院中の壮年期患者を対象に自記式質問紙調査を実施した. 238 名から調査同意を得て, 231 名より有効回答を得た (有効回答率97.1%). 食事関連 QOL の測定には糖尿病用食事関連 QOL 尺度を使用し, 各下位尺度得点を目的変数とした重回帰分析を実施した. QOL が高いことに対する主な関連要因は,「食事全般の主観的満足感」では食事療法の実施方法を理解している,「食事療法の負担」は HbA1c が低い,「食事療法からの受益感」は自己管理行動を実施している, 家族や友人のサポートがある,「全般的食事感」は自己管理行動を実施している, 家族や友人のサポートがある, HbA1c が低いであった. さらに「社会的機能の制限」は調理担当者に該当しない, 家族や友人のサポートがない,「活力」「心の健康」ではHealth Locus of Control の Internal 傾向が強いだった.
    以上より, 食事関連 QOL 向上の視点から, 食事療法の実施方法に対する理解の向上や自己管理促進を目指した援助の重要性, 家族や友人を含めた援助の必要性が示唆された.
  • 山本 直美, 横内 光子, 登喜 和江, 川西 千恵美, 吉永 喜久恵
    2004 年 24 巻 4 号 p. 74-82
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は手術患者の術前認知的評価尺度 (以下, POCAS とする) の洗練を目的とし, その妥当性・信頼性の検討を行った. 本研究は Lazarus & Folkman の「心理的ストレスと認知的評価と対処に関する理論」を基盤としている. 本研究では開腹術・開胸術を受ける手術患者203名 (年齢 23~83 歳) からの回答を得て, 4下位尺度29項目の尺度に再構成された. 構成概念妥当性は因子分析と理論的予測に基づく妥当性から支持され, 信頼性は内的整合性の視点から支持された. 第 I 因子は「好機的認知」, 第 II 因子は「楽観的自己防衛的認知」, 第 III 因子は「覚悟を決めようとする対処選択への認知」, 第 IV 因子「抑圧的脅威的認知」である.「好機的認知」「楽観的自己防衛的認知」「抑圧的脅威的認知」は一次的評価と考えられ,「覚悟を決めようとする対処選択への認知」は二次的評価と考えられた. POCAS 全体の信頼性は Cronbach's α 係数で. 86, 下位尺度は. 81~.85 と高い値を示した. 再構成された POCAS は術前患者の心理的ストレスをアセスメントするためにツールとして有用である.
  • 相原 優子, 佐藤 栄子, 橋本 秀和, 恵美 宣彦, 松下 正
    2004 年 24 巻 4 号 p. 83-91
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 造血器腫瘍のために通院しながら社会生活を送っている病名告知を受けた20代・30代の人々の希望と希望の維持に関連する要因について明らかにすることである. 希望を「生きる力をもたらす未来に対する可能性の感覚」と定義し, 大学病院の血液内科外来に通院中の4名の患者に対し, 半構成的面接調査を実施した. 得られたデータは質的帰納的に分析をした. その結果, 対象者の希望として,【生命の存続に関する希望】,【病気からの解放に関する希望】,【自分の将来の生活や夢が思い描ける状態】,【自分というものの維持に関する希望】,【他者を通して感じる希望】の5つが, 希望の維持に関連する要因として,《未来についての望みの存在》,《希望の障壁》,《性格特性・価値観》,《希望の障壁を乗り越えるための方略》,《希望を支える環境要因》の5つが導き出された. これらの結果は, 看護職をはじめ患者の周りにいる人々が, 患者の希望を支えるための関わりを考えるうえで参考にできる一視点となると考える.
  • Yoko Nakayama
    2004 年 24 巻 4 号 p. 92-95
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    1. The Japanese higher education system in nursing has developed greatly over the last 15 years. Much research is conducted by university nursing faculty members and graduate students in nursing, but it does not affect in clinical practice.
    2. Most nursing research projects were descriptive studies which cannot he applied to the practice of nursing. We need to challenge ourselves to discover the methodologies and strategies for utilization and application.
    3. The nurse researcher cannot conduct research continuously, so the research is limited to early stages of development. We need to develop methodologies and strategies to complete the research and develop theories for nursing practice.
    4. The clinical situation is changing rapidly. We need to develop various methodologies with new perspectives. We must develop each methodology according to the current nursing situation.
  • From Nurse's Concern to Researchable Question
    Pamela J. Brink
    2004 年 24 巻 4 号 p. 96-106
    発行日: 2004/12/30
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
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