日本看護科学会誌
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25 巻, 2 号
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  • 長 佳代
    2005 年 25 巻 2 号 p. 3-11
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    小児腎移植後患者の思春期における療養行動の変化のプロセスと関連する条件を明らかにすることを目的に, シンボリック相互作用論を理論的前提に, グラウンデッドセオリーアプローチを用いた研究を行つた. 小児期に腎疾患を発症し, その後腎移植を受け, 現在病状が安定している高校生以上の25名の腎移植後患者に, 非構成的な面接を行つた. 対象者の年齢は, 17~36歳, 平均25歳であり, 腎移植後5~23年, 平均12年が経過していた.
    分析の結果, 【療養行動の変化】という中核カテゴリーと,【気遣いの過不足状態】,【ダメになる怖さ】,【自己肯定感の営繕】という副次的なカテゴリーが明らかになつた. これらは, 成長と発達, ならびに順調な経過という前提となる条件のもとで, 小児腎移植後患者の思春期における療養行動の変化を構成していた.
    小児腎移植後患者の思春期における【療養行動の変化】は, 従命から自律への変化であつた. この変化は,【気遣いの過不足状態】,【ダメになる怖さ】,[療養行動とやりたいことの対立による葛藤],[親による当事者化の啓蒙],[社会としての自覚],【自己肯定感の営繕】と相互に関連しながら起こつていた. 現在, 療養行動を逸脱しないようにふみとどまらせているものには,[危機的体験],[他者の逸脱の帰結],[親の献身の回顧的感受],[親の苦言] があつた. また, 療養行動の逸脱に関連する条件として[普通さの過信][場の流れの優先]が明らかとなつた.
  • 北野 綾
    2005 年 25 巻 2 号 p. 12-19
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ホスピス外来通院中の, 医学的に根治が困難と診断されたがん患者とともに生きる家族の体験の意味を, 家族の体験の記述を通して明らかにすることである. ホスピス外来通院中の患者の家族に非構成面接を行い, 得られたデータを現象学的アプローチを参考に質的記述的に分析した. 類型化により, 以下の結果が明らかになつた.
    ホスピス外来に通院するがん患者の家族は, 患者の病気がもたらした生活の変化に当惑しながら, 病気の症状に太刀打ちできない自らの無力感を抱いており,けられない運命への問いに対して答えを模索していた. また家族は, 患者の病状の急激な悪化に伴い自己判断しなければならないことへの困難性を痛感していた. 将来に見通しのつかない看病をする日々は, 家族に患者との関係性から生じる葛藤と自責の念をもたらすものであつたが, 患者の症状の変化から患者と共に過ごす時間の有限性を悟るとともに, 支えとなつているものの存在を感じることは, 患者を看病し看取るという果たすべき役割を自覚させるものであつた. 同時に, 食の意味は家族にとつて, 患者の命を長らえるものと食べさせる喜びを与えるものとして重要性を増していた. さらに家族は患者とともに生きる時の中で, 患者の看取りを引き受ける覚悟をしはじめていた.
  • 片山 由加里, 小笠原 知枝, 辻 ちえ, 井村 香積, 永山 弘子
    2005 年 25 巻 2 号 p. 20-27
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 看護師の感情労働測定尺度 (Emotional Labor Inventory for Nurses: ELIN) を開発することであつた. 本研究では, 看護師の感情労働を, 患者にとつて適切であるとみなす看護師の感情を表現する行為と定義した. 始めに, 文献とインタビューに基づいて57の質問項目を選定し, 看護師60名と学生66名が項目の適切性を評価した. さらに, 項目分析によつて削減した50項目のELIN原案を看護師436名に調査した. 因子分析の結果,「探索的理解」,「表層適応」,「表出抑制」,「ケアの表現」,「深層適応」の5因子から構成するELIN (26項目) が示された. 内的整合性はCronbach's α (0.92), 安定性は再テスト法 (r=0.72) によつて確保した. 基準関連妥当性は, ELINとEmotional Labor Scale との相関 (r=0.48)と, 看護師と学生のELINの比較によつて確認した. 構成概念妥当性は, 共有経験尺度と共有不全経験尺度によつて確認した. 以上により, ELINの信頼性と妥当性がおおむね支持された.
  • 困難な気持ちから肯定的な気持ちへと変化した対処行動
    安田 加代子, 松岡 緑, 藤田 君支, 古賀 明美, 佐藤 和子
    2005 年 25 巻 2 号 p. 28-36
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究は, 糖尿病の自己管理に関して対人関係に起因する困難な気持ちから肯定的な気持ちへと変化した対処行動を明らかにすることを目的とした. 外来通院中の成人糖尿病患者を対象に, 糖尿病の自己管理を行ううえでの困難な気持ちとその変化について半構成的面接を行い, 質的帰納的に分析した.
    【つき合いにおける食事療法の負担感】という困難な気持ちを抱いていた対象者において, <食事療法に対する負担感の減少>,<食事自己管理への自信>,<自己管理調整への満足感>といった【自己管理法の確信】へと肯定的な気持ちへの変化が見出された. 気持ちの変化につながる対処行動には,<糖尿病の告白>という【視座の転換】や,<自分なりの食事自己管理基準での実行>,<仕事上の責任回避>という【無理のない管理】が認められた.
    困難な気持ちから肯定的な気持ちへと変化した対処行動は, 糖尿病患者が社会生活において自己管理を継続する際に, 他者との良好な関係構築・維持のための重要な行動であると考える.
  • 同胞に障害のあるきょうだいの障害認識プロセス
    山本 美智代
    2005 年 25 巻 2 号 p. 37-46
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    身体・知的障害のある同胞をもち, 成人に達した29名のきょうだいに聞き取りを行い, きょうだいが同胞の障害をどうやって知り, どのように意味づけ, それに応じてどのように対応して成長してきたのかについてgrounded theory approach を使って分析した. その結果, きょうだいは両親のしつけの内容と, 他の子どもの状況とが異なることにより, 自分が障害者のきょうだいであるという認識をもち始める. また, 社会の偏見を向けられた時から, 同胞の障害を恥ずかしいと認識するようになり, 高校生頃より同胞の障害について納得のいく意味を探し始める. そして, 20歳前後で障害の意味づけや, その意味づけにより自分がとる行動「自分のシナリオ」を作成し, 同胞への介護を行い, 同胞とよい関係を築くようになる. しかし, 中には同胞の障害を恥ずかしいと認識しなかったきょうだいや, 納得のいく意味を探さなかったきょうだいもいた.
  • 上野 栄一
    2005 年 25 巻 2 号 p. 47-55
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究では, 看護師における患者とのコミュニケーションスキルを測定するための尺度を開発することを目的とした. 54の質問項目を作成後, 看護職 368 名を対象に調査を行い, 有効回答の得られた 355 名に対して分析を実施し, 質問紙の信頼性, 妥当性を検証した. その結果, 最初の質問項目数は 54 項目であったが, 内容妥当性, 相関係数, 共通性の値の検討により精選された質問紙原案 19 項目について因子分析を行った. その結果, 第1因子「情報収集」, 第2因子「話のスムーズさ」, 第3因子「積極的傾聴」, 第4因子「パーソナルスペース・視線交差」, 第5因子「アサーション」の5つの因子が抽出された. 信頼性の検討では, 全体での Cronbach のα係数は0.874と内的整合性の高い値を示し, 本尺度が信頼性の高いものであることが検証された. また, 併存妥当性の検討では, 本尺度と KiSS-18 との間には, 高い有意な相関を示し, 妥当性の高い尺度であることが証明された.
    以上の結果から, 本尺度は高い信頼性と妥当性のあることが示された.
  • 福田 和明
    2005 年 25 巻 2 号 p. 56-64
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 全身性エリテマトーデス女性病者の他者との関係性のおける病気の影響とそれに伴う体験を明らかにすることである. 外来通院している21名の女性に, 半構成的面接を実施し, グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて継続的に比較分析した.
    女性の他者との関係性における体験は,【病気を見せる】【病気を見せない】と【わかってもらえる】【わかってもらえない】が中心であり, これらは相互に関連していた. また, 発病から現在に至るまで, および将来の病気の見通しを含む病気体験が見出され, それらとの関連も見出された. 女性病者は他者との関係性への病気の影響を最小化するために,【病気を見せる】【病気を見せない】を意図的に行うようになっていた.
  • 情報提供を受ける小児がんの子どもに対する看護師の働きかけ
    辻 ゆきえ
    2005 年 25 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    病気や治療についての説明を受ける小児がんの子どもに対して, 看護師がどのような介入や援助を行っているかを明らかにすることを目的として研究を行った. 小児がん領域で4~11年の臨床経験をもつ看護師6名に半構成的面接による聞き取りを行い, 録音されたデータから逐語録を作成し, grounded theory approach を用いて分析した. その結果, 看護師は「状況の査定」「介入の基盤作り」「通常の指導」「情報の補足と整備」「介入の効果を捉える」という5つの働きかけをしていることが示された. これらの働きかけは, 単に子どもが闘病生活上適切な行動を取れるようになるためだけでなく, 理解力や関心に合わせた説明によって, 子どもが主体的な闘病生活を送れるようになることを目指したものであった. 働きかけを効果的に行うためには, 看護師が多くの情報を集めて子どもの視点から情報提供を評価することと, 働きかけの目的や効果を意識して取り組むことが必要だと考えられる.
  • 登喜 和江, 蓬莱 節子, 山下 裕紀, 高田 早苗, 柴田 しおり
    2005 年 25 巻 2 号 p. 75-84
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    脳卒中後遺症としてのしびれや痛みをもつ人の感覚や表現の特徴とその対処を明らかにすることを目的に, 25名の参加者に半構成的インタビューを行った. しびれや痛みは, (1) 個々の参加者によって多様に表現される一方, 表現しがたいとする人も少なくない. (2) 明確に区別されにくく, 人によってはしびれが強くなると痛みに近い感覚として体験される. (3) 気象の変化等による深部や内部のしびれ・痛みとして知覚される場合と雨風が直接当たることで誘発される皮膚表面のしびれ・痛みといった一見相反する感覚をあわせもつ. (4) 眠ると感じない, 他に意識が向いている時は忘れている, しびれ・痛みに意識が集中すると強く感じられる等の特徴が見出された. また, しびれや痛みは, それ自体として知覚されるだけでなく <感覚の不確かさ><温冷感覚の変化><感覚の違和感> といった特異な感覚を伴っている. この痛み・しびれは, 脳卒中者の生活に多様な影響をもたらしており, 参加者は<しびれ・痛みそのものへの対応><身体との折り合い><道具世界との協調><周囲との付き合い><自分自身と向き合う>といった対処で生活を維持しようと努めていた.
  • 中林 雅子
    2005 年 25 巻 2 号 p. 85-93
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 口蓋扁桃摘出術およびアデノイド切除術 (以下アデレクと略す) 後の疼痛に伴う学童がどのような体験をしているのかを明らかにし, アデレクを受けた学童の体験に即した看護師の関わり方への示唆を得ることである. 研究方法は, レイニンガーの民族看護学の研究方法を用いた. アデレクを受けた7~10歳の学童6名を主要情報提供者とし, 17名の小児病棟看護師, 手術室看護師1名, 学童の家族6名の計24名を一般情報提供者とした. 分析の結果, 6つのテーマが抽出され,【大テーマ】学童は自分の咽喉の痛みはなくなっていくのだろうかという思いを表現したり, 痛みに対処したりしながら手探りで回復への実感を探し続けている, が導き出された.
    本研究の結果から, 術前から子どもや家族と術後に痛みの程度や限界を伝える手段を検討しておき, 術直後は疼痛緩和を早期に行い, 学童の理解と看護師との説明との間のずれが生じることのないよう, 術直後看護師が説明した内容を学童がどのように理解したかを確認しながら関わることの重要性が示唆された.
  • 高齢者虐待防止と研究支援ネットワークづくりを中心に
    高崎 絹子
    2005 年 25 巻 2 号 p. 94-103
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
  • 20 years of Nursing Research
    Patricia G. Archbold, Barbara J. Stewart
    2005 年 25 巻 2 号 p. 104-122
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
  • 高田 早苗, 筒井 真優美
    2005 年 25 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
  • 実践者と教育・研究者のコラボレーション
    宮本 真巳, 嶋森 好子
    2005 年 25 巻 2 号 p. 122-131
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
  • 日本看護科学学会の将来に向けて
    片田 範子, 近藤 潤子
    2005 年 25 巻 2 号 p. 132-140
    発行日: 2005/06/20
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
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