小児腎移植後患者の思春期における療養行動の変化のプロセスと関連する条件を明らかにすることを目的に, シンボリック相互作用論を理論的前提に, グラウンデッドセオリーアプローチを用いた研究を行つた. 小児期に腎疾患を発症し, その後腎移植を受け, 現在病状が安定している高校生以上の25名の腎移植後患者に, 非構成的な面接を行つた. 対象者の年齢は, 17~36歳, 平均25歳であり, 腎移植後5~23年, 平均12年が経過していた.
分析の結果, 【療養行動の変化】という中核カテゴリーと,【気遣いの過不足状態】,【ダメになる怖さ】,【自己肯定感の営繕】という副次的なカテゴリーが明らかになつた. これらは, 成長と発達, ならびに順調な経過という前提となる条件のもとで, 小児腎移植後患者の思春期における療養行動の変化を構成していた.
小児腎移植後患者の思春期における【療養行動の変化】は, 従命から自律への変化であつた. この変化は,【気遣いの過不足状態】,【ダメになる怖さ】,[療養行動とやりたいことの対立による葛藤],[親による当事者化の啓蒙],[社会としての自覚],【自己肯定感の営繕】と相互に関連しながら起こつていた. 現在, 療養行動を逸脱しないようにふみとどまらせているものには,[危機的体験],[他者の逸脱の帰結],[親の献身の回顧的感受],[親の苦言] があつた. また, 療養行動の逸脱に関連する条件として[普通さの過信][場の流れの優先]が明らかとなつた.
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