日本看護科学会誌
Online ISSN : 2185-8888
Print ISSN : 0287-5330
ISSN-L : 0287-5330
28 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 呉 小玉
    原稿種別: 原著
    2008 年 28 巻 3 号 p. 3_3-3_13
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,9要素で構成した「MCEM」中国版の信頼性と妥当性を検証することである.
    【方法】研究対象は,中国における2回以上入院の経験がある要介護高齢者の主介護者249名であり,留置法または郵送法により,データを収集した.分析には,相関係数の算出,Cronbach α係数の算出や因子分析などを用いて,信頼性や妥当性を検証した.
    【結果】「MCEM」中国版は,内的整合性や因子分析によって64項目が51項目まで精錬された.51項目の信頼性や妥当性を検討した結果,信頼性に関しては,「社会的望ましさ尺度」とは有意な相関がみられず,反応性バイアスを受けていなかった.また,Cronbach α係数が0.88と高く,内的整合性が示された.さらに,テスト-再テストによる一致度指数は,0.08~0.18であり,いずれの項目にもAbs関数は,絶対値1を超えず,安定性係数0.82であり,安定性も支持された.妥当性に関しては,「介護者自己効力感スケール」と相関がみられ(r=0.33, p<0.01),基準関連妥当性が支持された.また,因子分析によって,9因子が抽出され,51項目の累積寄与率は54.8%であり,構成概念妥当性が支持された.
    【結論】検証の結果には,いくつかの課題が残されているが,この尺度は,中国の主介護者エンパワーメントをアセスメントするために有用である.
  • ──子どもが“安心”していられる関わりとは
    加藤 令子
    原稿種別: 原著
    2008 年 28 巻 3 号 p. 3_14-3_23
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,痛みを伴う治療や検査を受ける年長幼児への「伝え方」に関わる看護援助のあり方を導き出すことを目的とし,グラウンデッド・セオリーを用いて行った.参加観察は3歳~6歳の子どもが対象である22事例を対象に行った.半構成的面接は,のべ36人の看護師に実施した.結果,『共感しながら向かう』という看護援助のプロセスから,子どもが“安心”する現象が導き出された.『共感しながら向かう』という看護援助は,看護師の子どもの存在への認識として抽出された5つのカテゴリーからなる《看護援助の前提としての子どもの存在》が基になり,9つの認識のカテゴリーより構成された《援助を支える要素》が関連し合う【安心の共有】という《援助内容》をもつプロセスであった.このプロセスは,看護師が治療や検査の実施者と介助者であり,また,保護者も一緒に子どもと関わっており,このプロセスで関わられた子どもは,主体的および自律的な態度で検査や治療に臨んでいた.
研究報告
  • 島内 節, 鈴木 琴江
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 3 号 p. 3_24-3_33
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    目的:がんとがん以外の在宅高齢者の終末期ケアにおける経過時期別の緊急ニーズについて,両群の類似点と相違点および特徴を明らかにする.
    方法:2003年,2004年に在宅死した高齢患者のがん事例(A群)112名,がん以外の事例(B群)119名に対して訪問看護ステーションにおける緊急電話と緊急訪問の回数とニーズについて,在宅終末期ケアの「開始期」,「小康期」,「臨死期」の経過時期別(期間ごと)に調査した.
    結果:対象者の年齢は,A群79歳(SD 8.4),B群86.6歳(SD 7.9)で,在宅ケア期間は,A群が34日,B群が185日であった.A群一人当たりの緊急電話は3.3回,緊急訪問は2.2回,B群の一人当たりの緊急電話は3.5回,緊急訪問は2.7回であった.ケアニーズは,両群ともに「症状の変化」と「身体的ケア」が全期間を通じて高く,A群は,「疼痛コントロール」,B群では「介護技術」が高いニーズであった.
    結論:在宅高齢者の終末期ケアにおいては,これら経過時期別の緊急ニーズに対応したケアとその予防およびケア体制が必要と考えられた.
  • ──行動異常の程度と母親の健康度および疲労度との関連性
    別宮 直子, 吉村 裕之
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 3 号 p. 3_34-3_42
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    自閉症児をもつ母親が,家庭で療育の効果を知ることができれば,克服感や達成感につながり,療育活動を持続する力となり得る.本研究では,児の行動を観察することにより,症状の程度を簡便に評価できる自閉症児評価尺度の開発を目指した.評価尺度は6因子(社会行動,情動行動,認知行動,常同行動,感覚異常による行動,特異な行動)で構成し,確証的因子分析の結果,適合度指標(RMSEA=0.066)から十分な妥当性を確保していた.信頼性分析の結果,尺度全体のクロンバックのα係数は0.930と高い内的整合性を確保していた.自閉症児の行動異常の程度と母親の心の健康度および疲労度との関連を正準相関分析で解析したところ,社会行動,情動行動,感覚異常による行動,特異な行動などの程度が重いほど,母親の健康度が悪く,疲労度も大きくなることが判明した.この自閉症児評価尺度は,今後,自閉症児とその母親に対する支援方法を構築する上で役立つものと考える.
  • 飯岡 由紀子
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 3 号 p. 3_43-3_51
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    目的:更年期のような人生の過渡期では,自分に降りかかるさまざまな変化に柔軟に対応することが重要と考える.本研究では,flexibility(柔軟性)の概念分析を行い,更年期医療における概念の有効性の検討を目的とした.
    方法:2000~2005年の看護学,心理学,社会学,フェミニズムの領域から30文献を便宜的に抽出し,Rodgersのアプローチを参考に概念分析した.
    結果:flexibilityの属性は【滑らかで連動した動き】【多様な見解と統合的思考】【状況に応じた敏感な変動】【調整可能】【効率的】が抽出された.先行要因は〔常に変化する環境〕〔両立しがたい2つ以上の要求〕〔不確かさ〕〔変化や多様性を支持する傾向〕が,帰結には〈調整範囲が広がる〉〈外部からの衝撃に強くなる〉〈協調性が向上する〉〈思慮深くなる〉〈情緒的に安定する〉が抽出された.
    結論:更年期女性の健康を促進するケアにおいてflexibilityは重要な概念と考える.
  • 片山 美子, 小笠原 昭彦
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 3 号 p. 3_52-3_58
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    目的:がんとともに生きるがん患者の生活経験を捉え,こころの苦痛に関する仮説を得る.
    方法:調査期間を2004年3月16日から9月3日とし,一般病院で入院治療を受けている肺がん患者を対象に,半構造化面接を実施し質的分析を行った.
    結果:治療効果の判定内容が異なる男性10名の記述データが得られ,病者意識,こころの揺らぎ,魂の訴え,自己効力感の自覚など,こころの苦痛に関する26概念が抽出された.
    考察:心理学的ストレスモデルを用いて26概念を整理したところ,看護専門家として介入を要するこころの苦痛とは,「認知的評価に影響する事象」,「情緒的反応に影響する事象」,「コーピング方略」,「認知・行動的反応」からなる総合的なプロセスであると考えられた.
    結論:がん看護に従事する看護師には,こころの苦痛をプロセス全体として捉え,実践的なケアに結びつけることが求められている.
  • 高見 知世子, 森山 美知子, 中野 真寿美, 黒江 ゆり子, 任 和子, 森川 浩子, 長谷川 友紀, 林 静子
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 3 号 p. 3_59-3_68
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    【目的】疾病管理手法に則り,2型糖尿病患者のセルフマネジメントスキルの獲得を目的とした6カ月間教育プログラムを作成し,効果と運用性を検討した.
    【方法】2施設に通院する36名を対象に,無作為化対照試験を行った.介入群には開発した構造化プログラムを適用し,対照群は従来どおりとした.看護師と管理栄養士がプログラムに基づき,月1回30分の面接と電話モニタリングを行った.
    【結果】時間的理由で4名が中断したが,32名は最後まで継続した(完了率:81.0%).自己効力感が介入群において上昇し,食事や運動の目標達成度も有意に上昇したが,生理学的データの改善はなかった.最終アウトカムであるHbA1c,QOL得点は改善したが両群に有意差は得られなかった.プログラムの評価はおおむね良好であった.
    【考察】対象の選定,目標設定と指導,実施期間,対照群からのデータ収集方法について改善すべき点が考察された.有効な運用にあたっては,電子媒体等の活用と病診連携の重要性が示唆された.
  • 長屋 桂子, 箕浦 哲嗣
    原稿種別: 研究報告
    2008 年 28 巻 3 号 p. 3_69-3_78
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2011/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,産褥期における腹直筋の筋力回復過程を明らかにすることを目的として,腹直筋の筋活動電位を測定し,対象者の属性および分娩時の状況との関連について分析した.初産婦29名(年齢29.0±2.9歳,身長158.7±4.7cm,体重49.9±4.2kg)を対象に,妊娠15週から25週の間で1回,産褥1日目から5日目の毎日,産褥2週,1カ月,2カ月および3カ月目に測定を行った.右上部腹直筋に貼付した電極により,アブドミナルカールの動作における筋活動電位を測定し,全波整流した後,台形公式を用いて200 msecごとに連続的に積分して標準化した値を筋活動量とした.腹直筋の筋活動量回復には2カ月を要することが明らかとなり,褥婦の体形に対する不安を軽減する目安となると考えられる.また分娩時出血量と筋活動量の間に負の相関が認められ(r=−0.424),分娩時出血量に応じた保健指導を可能にすると考えられる.最後に,母乳哺育群は混合哺育群より,産褥1カ月目において筋活動量が有意に高いことが明らかとなり(p<0.05),母乳哺育の利点の一つとして保健指導に活用できると考えられる.
feedback
Top