目的:在宅で侵襲的人工呼吸療法を行う筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者が困難に対応するために必須の対処資源である心の支えになる他者と喜び・楽しみの内容を把握し,これらと属性と病気・療養に関する特性との関連を解明するとともに,前向きに生きる力を表すHopeとの関連から意味づけを行うこと.
方法:面接調査の結果をもとに作成した質問紙を用いた無記名の郵送配票調査を実施し,121ケースを分析対象とした.HopeレベルはHerth Hope Index尺度を用いた.
結果:患者の9割が心の支えになる他者と何らかの喜び・楽しみを有していた.心の支えである他者が家族だけではなく医療・介護職者と友人・知人と支援者にまで及んでいたのは13%であり,喜び・楽しみが「身近で些細な癒されるもの・愛でるもの」だけではなく「人との関わり」と「ALS関連の情報収集」と「積極的な行動や活動」に及んでいたのは22%であった.これらを多領域にわたってもつ人ほどHopeは高かった.意思伝達装置のパソコンを利用する人で,心の支えになる他者や喜び・楽しみを多領域にわたって有していた.
結論:本研究では,これまで重要と言われてきた心の支えになる他者や楽しみといった対処資源が,身近なものを基盤として徐々に外に広がるという構造をもつこと,外部に広がるほどHopeが高いことが新たに明らかとなり,生活の質が高まる可能性が示唆された.患者への支援は,Hopeを維持し向上するという観点からも,これらの対処資源の維持・創出を目指すことが重要であり,社会とのつながりや意思伝達装置の利用が効果的である.
抄録全体を表示