日本看護科学会誌
Online ISSN : 2185-8888
Print ISSN : 0287-5330
ISSN-L : 0287-5330
31 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
巻頭言
原著
  • ―筋ジストロフィー病棟におけるエスノグラフィー―
    小村 三千代
    原稿種別: 原著
    2011 年 31 巻 3 号 p. 3_3-3_11
    発行日: 2011/09/20
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,筋ジストロフィー病棟における看護師と患者との言語的・非言語的交流の様相を通して,看護師と患者に見られる相互作用を明らかにするためにエスノグラフィーを用い,筋ジストロフィー病棟の看護師18名および筋ジストロフィー患者20名,患者の母親3名に参加観察および面接を行った.分析結果から,1.病棟の沈黙の底に潜む看護師の気づかいと患者の歩み寄り,2.言語を介さずに患者の意図を汲む看護師の見えない働き,3.お互いに踏み込むことができない領域の3つのテーマが導き出された.看護師は,自らの感覚を働かせることで患者が感じている身体の感覚を感じ取る「共通感覚」という技を身につけ,言葉を交わすことなく患者の意図を読み取りかかわっていたこと,少ない言葉で通じ合う看護師と患者間の関係が両者に気づかいと甘えを生じさせ,それが死について触れることをお互いに避けようとする関係へと向かわせていることが示唆された.
研究報告
  • 加藤 栄子, 尾﨑 フサ子
    原稿種別: 研究報告
    2011 年 31 巻 3 号 p. 3_12-3_20
    発行日: 2011/09/20
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    研究目的:中高年看護職者の職務継続意志と職務満足に関連する要因を検討し,職務継続支援のための看護管理上の示唆を得る.
    方法:A県内3ヵ所の200~700床の一般病院に勤務する看護職者1,064名に,自記式質問紙調査を実施した.得られた有効回答のうち経験15年以上の看護職者223名を対象とした.分析方法は,t検定,STEPWISE法を用いた重回帰分析などを行った.
    結果:現病院で仕事の継続意志無は56名25.1%であった.仕事の満足度に影響する要因は,組織的要因では,〔看護管理システム〕が最も大きく,次いで〔給料〕,〔労働条件と福利厚生〕,〔スタッフ間の人間関係〕,〔病棟への所属感〕であった.専門性要因は,〔創造性〕であった.加えて燃え尽きが影響していた.
    結論:働きやすい良好な人間関係と職場環境への支援が必要である.また,労働条件,処遇改善への取り組みが看護管理者の重要な役割であることが示唆された.
  • 水戸 優子, 小山 眞理子, 片平 伸子, 山口 由子, 川守田 千秋, 植村 由美子, 野崎 真奈美, 鶴田 惠子, 手島 恵
    原稿種別: 研究報告
    2011 年 31 巻 3 号 p. 3_21-3_31
    発行日: 2011/09/20
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    目的:教育と臨床の専門家が合意する看護基礎教育卒業時の看護技術の到達目標と到達度を明らかにする.
    方法:デルファイ法により,看護の教育者91名および看護実践者98名の専門家の協力を得て158項目の看護技術の到達目標に関する質問紙調査を3回実施した.
    結果:到達目標は143項目に絞られ,うち138項目は教育者・看護実践者合わせて80%以上の同意率,残り5項目も74~79%であり,ほぼ合意が得られた.それらは,到達度Ⅰ(ひとりで実施できる)が33項目,到達度Ⅱ(指導のもとで実施できる)が53項目であり,日常生活行動援助の看護技術が多く含まれた.また到達度Ⅲ(学内演習で実施できる)が20項目,到達度Ⅳ(知識としてわかる)が37項目であり診療に伴う看護技術が多く含まれた.
    結論:明らかになった到達目標と到達度は,看護基礎教育と継続教育のギャップを埋め,看護技術教育の充実をはかる上で有用な基礎資料になると考える.
  • 坂井 郁恵, 水野 恵理子
    原稿種別: 研究報告
    2011 年 31 巻 3 号 p. 3_32-3_41
    発行日: 2011/09/20
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    目的:地域で生活する精神障害者の生きがいの具体的内容と特徴,生きがいに影響を与える体験を明らかにすることを目的とした.
    方法:対象は,3年以上地域生活を続け研究に同意が得られた精神障害者17名であり,半構成的面接を実施し,得られたデータを質的に分析した.
    結果:生きがいの内容を示す5つのカテゴリ【他者の存在と関わり】【現在の生活への肯定的な感情】【趣味】【信仰】【仕事】と,生きがいに影響を与える要因を示す6つのカテゴリ【自覚する症状と病気】【他者による肯定的な理解と助言】【現在の生活】【あえて距離をとる対人関係】【家族との関係】【生きがいの気づきにくさ】が抽出された.
    結論:地域で生活する精神障害者は,自分を理解し支えてくれる他者の存在や,現在の生活への肯定的な感情,現在の趣味を生きがいとしている者が多くみられ,生きがいは普段の生活の中に多様に存在していた.また,生きがいの気づきにくさをもつ者もおり,精神障害者にとって他者の関わりは重要であると考えられた.
  • ―施行者及び出産歴による比較―
    和泉 美枝, 羽太 千春, 我部山 キヨ子
    原稿種別: 研究報告
    2011 年 31 巻 3 号 p. 3_42-3_49
    発行日: 2011/09/20
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,超音波診断法の妊婦への心理的影響が施行者である医師と助産師,及び出産歴などの妊婦の背景により異なるかを明らかにすることである.
    方法:正常経過である妊婦215名を対象に,超音波検査後に無記名自記式質問紙調査を行った.
    結果:超音波診断法の心理的効果は,施行者である医師と助産師による差はなかった.しかし,初産婦や妊娠確定時に妊娠を肯定的に受け止めた妊婦,超音波診断法により胎児を自分とは別の個人,もしくは自分の一部だとの思いを強くする妊婦により顕著に表われていた.
    結論:助産師の超音波診断法実施においても医師と同等の心理的効果は得られ,助産師の実施も意義はあること,経産婦より初産婦に超音波診断法を用いた保健指導の効果が期待できること,同診断法を用いて胎児の存在を妊婦に意識付けできる関わりが重要であることが示唆された.
  • ―看護師の身体のあり様に着目して―
    伊藤 祐紀子
    原稿種別: 研究報告
    2011 年 31 巻 3 号 p. 3_50-3_60
    発行日: 2011/09/20
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    患者への気がかりをもとに看護していくプロセスを看護師の身体のあり様に着目して探究することを研究目的とした.修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより,看護師32名の半構成的面接データを分析した.結果として,36概念,8サブカテゴリー,5カテゴリーが生成された.看護師は,患者に抱いた気がかりをもとに【身体感覚からの察知】に【持ち前の判断と手立ての駆使】によって,患者に生じている変化を看護師の【内に取り込んでわかる】ようになる.ここから,2つのプロセスが生じていた.わかることで患者に馴染むことで【押し出される行為】に至るプロセスと,わかることから新たなわからなさが明らかになり,それを探索し続けるプロセスである.これらは同時に進行し,【関わりから得た手ごたえと方向性のリレー】によって帰結していた.この帰結は,次に関わる患者との相互作用の基軸になっていた.
その他
  • 三宅 優, 横山 美江
    原稿種別: その他
    2011 年 31 巻 3 号 p. 3_61-3_67
    発行日: 2011/09/20
    公開日: 2011/10/25
    ジャーナル フリー
    目的:国内において報告されてきた笑いの効果を身体面,精神面の二方向から概観し,看護の場で笑いを用いる有効性を提示することを目的とした.
    方法:引用文献の検索には,医学中央雑誌刊行会から,“笑い”or“ユーモア”をキーワードとして1980年以降,2009年5月までで検索を行い,29件採用した.また,国際誌はPubMedを用い,2000年以降,2009年5月までの文献からキーワード“laughter”and“effect”で検索し,20件を採用した.
    結果:笑いの身体面の効果としては,笑い体験によるNK細胞活性ならびにアレルギー反応などの免疫系に関して効果があったという報告が最も多く,その他疼痛緩和,血糖上昇抑制作用があることが報告されていた.また笑いの精神的効果として,ストレスコーピング,不安ならびに緊張の緩和などの効果が報告されていた.
    結論:笑いは,身体面と精神面両方での効果が期待できる.しかし,看護ケアとして笑いの効果を検討した研究は少なく,今後,看護師による笑いに関する介入研究の成果が期待される.
feedback
Top