日本看護科学会誌
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32 巻 , 4 号
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巻頭言
原著
  • 天野(小粥) 薫, 谷本 真理子, 正木 治恵
    原稿種別: 原著
    2012 年 32 巻 4 号 p. 4_3-4_11
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    目的:がん治療を受けながら下降期を生きる人々の自己の回復について明らかにすることである.
    方法:ステージIII期あるいはIV期の消化器がんに対するがん治療を受ける5名を対象に看護援助を実施し,その援助経過を記録したデータを質的統合法(KJ法)を用いて個別分析と全体分析を行った.
    結果:自己の回復は【悪化してゆく今ここにある身体の感受】【環境にゆるがされる現実の厳しさの認知】【安らぎを得るための方策の探求】【つながりをもつ他者との応答】【意味ある体験の確認】【今ここにいる自分の在り方の表明】の6つの性質から成り立つことが明らかになった.これは,悪化してゆく身体の感受を基盤に,対人関係に影響を受けるものであった.
    結論:がん治療を受けながら下降期を生きる人々の自己の回復は,他者と共に生きる人としての在り方を表すものであり,その人にとって意味ある時を生きてゆく可能性を内包したものである.本研究の結果は,人々が苦難の状況に置かれていても,その人らしく在ることを支援するケアの視点を示した.
  • 亀岡 智美, 舟島 なをみ, 野本 百合子, 中山 登志子
    原稿種別: 原著
    2012 年 32 巻 4 号 p. 4_12-4_21
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    目的:病院に就業する看護職者が,看護実践への研究成果活用に関わる能力向上に活用できる自己評価尺度を開発する.
    方法:次の4段階を経て尺度を開発した.(1)質的帰納的研究の成果に基づく看護実践への研究成果活用の実現に重要な行動の抽出,(2)質問項目の作成・尺度化とレイアウト,(3)専門家会議とパイロットスタディを通した内容的妥当性の検討,(4)調査実施と収集したデータを用いた項目分析の実施,因子分析に基づく下位尺度の構成,尺度の信頼性・妥当性検討である.
    結果:全35項目6下位尺度の5段階リカート型尺度「研究成果活用力自己評価尺度―臨床看護師用―」(以下,SRUC)を構成できた.全国の病院に就業する看護職者458名から収集したデータの分析結果は,尺度が,内的整合性と安定性による信頼性,構成概念妥当性を確保していることを支持した.
    結論:開発した尺度SRUCは,信頼性・妥当性を確保しており,看護職者が看護実践への研究成果活用に関わる能力を自己評価するために活用可能である.
  • 武田 江里子, 小林 康江, 加藤 千晶
    原稿種別: 原著
    2012 年 32 巻 4 号 p. 4_22-4_31
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    目的:母親から子どもへの「愛着」「養育」を測定する「愛着–養育バランス」尺度の信頼性と妥当性を検討する.
    方法:1か月,6か月~1歳未満,1歳6か月の子どもを持つ母親630名を対象に自記式質問紙調査を行った.「適応」「敏感性」「親密性」それぞれの愛着的因子・養育的因子の計6因子で構成された「愛着–養育バランス」尺度と,設定した外部指標を調査内容とし,尺度の信頼性・妥当性を検討した.
    結果:クロンバックのα係数0.882,探索的因子分析ではおおむね想定した因子構造が得られた.確認的因子分析ではGFI=.842,AGFI=.812,RMSEA=.074であった.既知グループ法で有意差がみられ,外部指標とは有意な相関がみられたが,0.7以上の相関ではなかった.
    結論:基準関連妥当性に検討の余地は残ったが,信頼性,構成概念妥当性は支持され,母親の養育者としての発達を測定する尺度として使用可能といえる.
研究報告
  • 草柳 浩子
    原稿種別: 研究報告
    2012 年 32 巻 4 号 p. 4_32-4_40
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    目的:子どもと大人の混合病棟における看護について,小児看護の立場から研究者と看護師が共に考える機会を創り出すことによって,看護師の意識やケアにどのような変化が起こるのかを記述し,そのプロセスを考察する.
    方法:アクションリサーチの方法を用いて,研究参加者である混合病棟の看護師15名と勉強会を開催しながら,看護師の意識やケアへの変化をみた.
    結果:看護師は日々必要とされている看護をこなすだけで精一杯になり,それ以外の看護の課題を考えないようにすることで,その場を乗り切る働き方を身につけていた.看護師のこのやるせない思いは,看護師に無力感を抱かせていた.看護師は看護の知識とともに患者の声が伝えられたことで,看護の知識と看護実践を結びつけることができた.そして看護師たちは病棟の現状を現実的に見直し,自分たちでできる工夫を考えて実行に移すことで,無力感を少しずつ変化させていた.
    結論:自分の看護に満足せず無力感を抱える看護師が,看護を変化させるきっかけをつかむためには,看護師同士で語り合いながらよりよい看護を実践していけるような支援が必要である.
  • 小林 裕美, 中谷 隆, 森山 美知子
    原稿種別: 研究報告
    2012 年 32 巻 4 号 p. 4_41-4_51
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    目的:在宅で終末期を迎える人を介護する家族の予期悲嘆尺度を作成し,その信頼性,妥当性を検証することである.
    方法:文献検討と予備調査を基に,尺度の質問原案51項目を作成した.終末期の家族を介護する「ターミナル家族」 99名から有効回答が得られ,比較群として「非ターミナル家族」(68名)にも調査し分析した.
    結果:項目分析,因子分析の結果,19項目4因子「お別れ準備へのスピリチュアルペイン」「身体と生活の疲労感度」「死別への先行不安」「消耗状態」からなる尺度を作成した.本尺度は,Cronbach's α係数(0.87)など複数の信頼性係数が0.85以上で十分な内的整合性が確認できた.外的基準としたGHQ28により基準関連妥当性,また,ターミナル家族と非ターミナル家族の比較により構成概念妥当性が確認できた.
    結論:本尺度は信頼性と妥当性が確認でき,在宅で終末期を迎える人を介護する家族に活用できる可能性が示唆されたが,さらに尺度を洗練させる必要がある.
  • 川崎 千恵, 麻原 きよみ
    原稿種別: 研究報告
    2012 年 32 巻 4 号 p. 4_52-4_62
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    目的:在日中国人女性の,育児経験における困難と困難への対処のプロセスを記述する.
    方法:日本で出産を経験し学童までの子どもを育てた経験を持つ,首都圏近郊在住の中華人民共和国出身の在日中国人女性8名に半構造的面接を行い,質的記述的分析を行った.
    結果:育児で繰り返し遭遇する困難として«日本の文化的な母親をイメージできない»,«異文化の見えない壁に遮られる»,«異文化の中で自分を見失う»の3つの困難が段階的に抽出された.また,対処方法として,«予期できない困難に学習を重ね対処する»が抽出された.困難に繰り返し対処する結果得られるものに«母親としての新しい自分を見出す»が抽出された.困難への対処を経て得られたものとして,«母親としての新しい自分を見出す»が抽出された.
    結論:本研究の結果を困難の各段階でみられた在日中国人女性の心の変化や対処に着目したところ,Pedersenの5段階モデルと類似していたことから,育児を始めることで文化変容を迫られ,母親になると同時に異文化適応を経験していることが示唆された.
総説
  • 蔭山 正子
    原稿種別: 総説
    2012 年 32 巻 4 号 p. 4_63-4_70
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    目的:家族が精神障害者をケアする経験の過程について国内外の文献をレビューし,研究の動向と過程における共通段階を明らかにする.
    方法:データベースを用い,統合失調症,うつ病,躁うつ病の精神障害者をケアする家族の経験を段階的に過程として記述している1980年以降の国内外の研究論文を検索した.
    結果:海外14論文と国内3論文の合計17の質的論文が対象論文となった.家族の経験全般を分析した海外の9論文から,共通する12の段階,「問題への気づき」「効果的に対処できず憔悴」「危機の訪れ」「診断もしくは疾患と認識」「専門家やシステムへの不満」「否定的感情」「喪失・悲嘆」「スティグマによる困難」「不安定な病状」「効果的な対処方法やシステムの活用」「病状の安定・慢性化」「現実的な希望」を抽出した.
    結論:抽出した共通段階はわが国においても適応可能だと考えられるが,わが国における家族の経験全般を含む過程を研究することが望まれる.
  • 阪井 万裕, 成瀬 昂, 渡井 いずみ, 有本 梓, 村嶋 幸代
    原稿種別: 総説
    2012 年 32 巻 4 号 p. 4_71-4_78
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    目的:看護師のワーク・エンゲージメント(以下,WE)に関する研究の方法論を包括的に整理し,今後の研究の方向性について示唆を得ることを目的とする.
    方法:CINAHL, MEDLINE, PubMed, PsycINFO,医学中央雑誌を用いて,nurse, engagement, work engagement,看護師,エンゲージメント,ワーク・エンゲージメントの用語で検索した.2004~2011年11月までに発表された20文献を対象とした.
    結果:調査対象は病院勤務の看護職が大半であった.また,さまざまな病院・部署を同時に扱うことによる影響が考えられ,方法論上の課題が明らかとなった.WEの測定尺度は4つあり,近年はJob Demands–Resources modelを概念枠組みとしたUtrecht Work Engagement Scaleを用いた研究が多かった.看護師のWEの向上は,看護師の身体症状・うつ症状の軽減に限らず,組織の効率性やケアの質の向上にも寄与することが明らかとなった.
    結論:今後は,所属機関や部署ごとの特性を考慮した変数設定や解析方法を取り入れること,看護師のWEの向上を視野に入れた具体的な実践や介入が及ぼす効果を科学的に検証することの必要性が示唆された.
その他
  • 縄 秀志, 小松 浩子, 中込 さと子, 山田 覚, 片田 範子, 太田 喜久子, 才木 クレイグヒル滋子, 亀井 智子, 宮脇 美保子
    原稿種別: その他
    2012 年 32 巻 4 号 p. 4_79-4_84
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2013/01/09
    ジャーナル フリー
    目的:臨床看護研究が実施される病院における看護研究の倫理審査体制の現状と課題を明らかにし,病院における看護研究倫理審査についての今後の方向性を検討した.
    方法:便宜的サンプリングとし,設置主体別(国・公・法人・大学附属・専門等)の協力の得られる病院を各1つ選択し,研究倫理審査の責任者あるいは倫理審査に精通している者を対象に,聴き取り調査を実施した.
    結果:6病院のデータ分析の結果,(1)すべての看護研究が研究倫理委員会で審査されている病院から,研究倫理委員会とは別に看護部内で審査されている病院や審査システムを持たない病院まで,審査体制はさまざまである,(2)審査基準の有無と内容にも差異がある,(3)研究倫理委員会に看護師がいない病院や倫理の専門家(倫理学者等)がいない病院もある,(4)通常/簡易審査の基準が不明確である,審査期間が長すぎる,研究倫理に関する知識が不足しているなどの課題があげられた.
    考察:看護研究の倫理審査が適切に行われるためには,倫理審査を担う人材育成に取り組むことが急務であり,学会や看護協会が教育・研修プログラムを提供すること,研究倫理に関する知識について情報発信を行うことが必要である.
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