日本看護科学会誌
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33 巻, 1 号
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巻頭言
研究報告
  • 大友 光恵, 麻原 きよみ
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_3-1_11
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,虐待予防のために母子の継続支援を行う助産師と保健師の連携システムの構造を記述することを目的とした質的記述的研究である.結果,連携の目的は,妊娠期から育児期を通して【母子へ継続した安心を提供する】ことであった.方法は,個別対応の【助産師と保健師の双方が母親と信頼関係をつくる】,組織内・外の【関係職種が支援の必要な母子を漏らさない網目をつくる】二重の支援であり,媒体となるのは【日常的な口頭のやりとりで情報を生かす】ことであった.連携の条件は,助産師と保健師が【虐待予防のために協力する意識を高める】,【互いを信じて支え合う】ことであった.虐待予防には,母親と専門職の関係を継続させることや文書だけではない情報の交換が重要であり,助産師と保健師の信頼関係があることで実践できていた.このことから虐待予防システムに関わる専門職の信頼関係を構築する必要性が示唆された.
  • 有賀 美恵子
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_12-1_24
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    目的:高校生の登校回避感情の関連要因を明らかにし,不登校を予防するためのより効果的な早期支援の可能性を検討する.
    方法:A県公立高等学校1年生3,985人を対象に自記式質問紙調査を実施した.登校回避感情測定尺度(学校への反発感傾向,友人関係における孤立感傾向,登校嫌悪感傾向)を用い,下位尺度別に属性,生活環境,生活習慣,身体的心理的社会的要因との関連を分析した.
    結果:学校への反発感傾向と有意な関連がみられた主な要因は,喫煙経験・対人恐怖心性・担任からのサポート・学業場面における不適応感,友人関係における孤立感傾向は対人恐怖心性・学校内の友人からのサポート,登校嫌悪感傾向は対人恐怖心性・不定愁訴・学業場面における不適応感・学校内の友人からのサポートであった.
    結論:対人恐怖心性や不定愁訴を持ち,学業や将来への意識が低い生徒が学校への反発的な感情を持ち,自分から集団に入れず,学校内に友人がいないことが孤立感を強めていると推測された.対人恐怖心性と不定愁訴の訴えは,不登校の潜在群を捉えるための重要な指標であり,養護教諭による適切な支援の重要性とコンサルテーションシステム構築の必要性が示唆された.
  • ―出生後よりICUにおいて継続して関わった看護師“A”に関する現象学的研究―
    林原 健治
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_25-1_33
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,先天性心疾患をもつ子どものターミナルケアにおける看護師の体験の本質とは何かを明らかにすることを目的とした.小児専門医療施設のICUに勤務する看護師“A”に面接し,語られた内容をGiorgiによる現象学的方法を参考に分析した.その結果,不変的意味の集合体として「子どもがいつ急変するか分からない状況に巻き込まれる」「子どもの生命に直結する家族の意思決定を見守る」「子どもに積極的治療を続ける中でターミナルケアを行う」「救命現場において子どものターミナルケアのための環境を整える」「生まれながら生命危機をもつ子どもと家族の関係を支える」「遺族を気遣いながら亡くなった子どものことを語り合う」の6つの意味群が形成された.さらにすべての不変的意味から,『Aは生命に直結する心臓に障害をもって生まれた子どもの不確かなターミナル期において,子どもの身体状態の急変を予測する中で絶えず葛藤を抱えながらも家族の思いに常に寄り添い,家族が子どもとの絆を強められるように限られた条件の中で最善の環境を保障しようとしていた』というAの個別的な体験の本質が導かれた.
  • 神崎 由紀
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_34-1_41
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    目的:地域で暮らす高齢者の見守りについて概念分析し,構成要素を明らかにして概念を定義すること.
    方法:Rodgers (2000)の概念分析の手法を用いて概念を定義した.文献は,医中誌WebおよびPubMed,CINAHLを使用し,検索された257文献から無作為に抽出した55文献を対象とした.概念の属性,先行因子,帰結について質的に分析した.
    結果:概念の属性は【心情や状況を考慮した距離の保持】【観察や測定による安否の確認】【住民や機関が協力した対象の把握】の3カテゴリであり,先行因子と帰結はそれぞれ4カテゴリで構成された.先行因子は,高齢者の要因と高齢者を取り巻く要因に大別された.帰結は,個々の高齢者への影響と,家族や地域の人々の関係を含む概念であった.そして,属性を基に概念を定義した.
    結論:本概念は,わが国の公衆衛生看護実践での高齢者の実態把握や予防活動の推進,地区組織活動の促進,教育・研究活動の向上のために活用可能である.
  • 谷村 千華, 森本 美智子, 萩野 浩
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_42-1_51
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,保存的療法を受けている外来通院中の変形性膝関節症患者が膝OAの病勢を強める因子を除去もしくは軽減し,症状や機能障害を上手くコントロールしながら望ましい生活を送るために必要なセルフケア能力を明らかにすることである.
    方法:変形性膝関節症患者18名に半構造化面接を実施し,分析には内容分析を用いた.
    結果:患者のセルフケア能力として,【自己への責任と意思に基づく判断】【自己の病気に関する知識を身につけていく力】【治療の遵守の必要性を把握する力】【自己の弱い部分を分析し自覚する力】【自己のペースを大切にする力】【自己の現状を肯定的に捉え受け入れていく力】【理想自己をモチベーションに変える力】【自己の取り組みを継続し効果を待つ力】【自己の病気の管理に必要となる情報に関心を向ける力】【病気・症状悪化予防のための方略の能動的な取り入れ】【関節への負担軽減のための調整】【自分が頼りにする人へ助けを求める力】が抽出された.
    結論:本研究結果は,看護職者における変形性膝関節症患者の視点に立脚したセルフケア能力への理解を深め,セルフケア能力を高めるための看護援助への示唆を与えるものと考える.
  • 杉本 圭以子, 影山 隆之
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_52-1_60
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    目的:救急搬送された自傷患者に対する救急看護師の関わり方の実態と,このうち自傷患者への対応として推奨される関わりを多く実施している看護師の特徴を,明らかにすること.
    方法:救急部門経験1年以上の看護師1,000名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施し,262名(26.2%)の回答を分析した.
    結果:救急看護師は自傷患者に対し救命と傾聴に努めているが,回避的な関わりも多くみられた.半数の看護師が自傷の理由をたずねており,3割が希死念慮を確認していた.自傷患者への対応として推奨される関わりの多さは,自傷者と接した経験,救急部門での自傷患者看護に関する研修経験,自傷患者看護のやりがい感,その際の不安の低さ,およびその際に同僚に自分の気持ちを表現できることと関連していた.
    結論:自傷患者への対応として推奨される関わりを学ぶこと,自傷患者へ対応するための院内体制を整備すること,これらを通して不安を軽減し自傷患者への看護のやりがい感を高めることが,自傷患者への適切な関わりを促進する可能性がある.
  • 香川 里美, 名越 民江, 粟納 由記子, 松岡 美奈子, 南 妙子
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_61-1_70
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,熟練看護師が長期入院統合失調症患者に対し,退院を意識して患者に関わり始めた時期から退院支援が終了するまでの,看護実践のプロセスを明らかにすることを目的とした.
    方法:研究協力者13名を対象に半構成的面接を行い,質的帰納的分析を行った.
    結果:本研究で見出されたカテゴリーは,《患者を捉え直すことで見えてきた退院可能性》【心の奥底にある退院への希望を引き出す】【退院支援に消極的な主治医との意思統一】【退院に賛同できない家族の心情と背景を理解する】【プライマリーナースが主体となるネットワークの構築】【安心を提供するプライマリーナースの役割遂行】【1対1の関わりから自信を持たせる】の7カテゴリーであった.《患者を捉え直すことで見えてきた退院可能性》は他のすべてのカテゴリーに影響を与える中心的現象と考えられ,本研究のコアカテゴリーに位置づけられた.
    結論:長期入院統合失調症患者の退院支援に関する看護実践のプロセスには,継続的に患者を捉え直しながら可能性を広げる柔軟な臨床判断と,失いつつある希望を引き出し,わずかな変化にも即応できる看護介入が必要である.
  • 包國 幸代, 麻原 きよみ
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_71-1_80
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    目的:保健師が生活習慣病予防のための保健指導を対象者中心とするための技術を記述することを目的とする.
    方法:保健師7名に対し行った半構成的インタビューの内容を分析し,生活習慣病予防のための対象者中心の保健指導を実践する保健師の技術を記述する質的記述的研究である.
    結果:対象者中心の保健指導を実践する保健師の技術とは,『保健師が対象者の人生に沿った生活習慣改善の方法を共に創るための技術』であった.それは,[対象者のありのままの人生を受け入れる]技術が基盤となり,対象者の語りを引き出し,心を占めている思いを捉え受けとめていた.これによって[共に創る関係を築く]ことをしていた.それは人として思いを伝え合える関係であった.この関係の上で[生活習慣改善の方法を共に創る]ことが可能となっていた.本技術を用いることにより保健指導が対象者中心となり,主体的で継続できる生活習慣改善が可能となると考えられた.
  • 梅田 奈歩, 山田 紀代美
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_81-1_90
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    目的:地域高齢者における転倒に関する経験が転倒恐怖感の媒介変数である転倒脅威に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
    方法:地域在住高齢者289名を対象に転倒に関する経験および筆者らが作成した転倒脅威項目24項目に関して質問紙調査を実施した.t検定および一元配置分散分析,重回帰分析にて経験が転倒脅威5因子に及ぼす関係性と影響力,本研究の概念モデルの予測力を検討した.
    結果:転倒自体よりも外傷経験が「身体的苦痛」因子に影響を及ぼし,つまずき経験は「自己の自立性の喪失」「重篤な末期へのきっかけ」の2因子に有意な影響が認められた.知人・家族からの情報は「身体的苦痛」「他者依存に対する心理的負担」に正の影響を及ぼし,地域の健康教室などの教育的な機会は「重篤な末期へのきっかけ」に負の影響を及ぼしていた.しかし,重回帰分析の結果,R2はいずれの因子とも0.1以下であり,転倒に関する経験だけでは転倒脅威全体を予測・説明できていなかった.
    結論:地域高齢者の転倒に関する経験は転倒脅威に特徴的な影響を及ぼすものではあるが,経験という条件のみでは転倒脅威を説明するには限界があり他の要因も含めた検討が必要であることがわかった.
その他
  • 坂下 玲子, 北島 洋子, 西平 倫子, 宮芝 智子, 西谷 美保, 太尾 元美
    原稿種別: その他
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_91-1_97
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
    目的:臨床の看護職に適した看護研究のあり方を検討するための基礎情報を得るため,臨床における看護研究の現状を明らかにする.
    方法:全国の中・大規模の病院のうち,無作為抽出した3000病院に所属する看護研究推進担当者に対し,郵送法による質問紙調査を実施した.
    結果:回答は1130病院(回収率37.7%)から得られ,回答時100床以上であった病院1116を対象に分析を行った.本研究において,中・大規模の病院では,高い頻度で(88.4%),看護研究が実施されていることが明らかになった.その目的としては,「スタッフの教育」が最も優先順位が高く,次いで「患者サービス向上」「業務の改善」であった.研究法としては,質問紙法による実態調査が多く,研究期間は1年が多く,研究時間や研究資金は不十分であり,研究成果を論文として発表する率は低かった(14.8%).看護研究を進めるのに不足しているものとして,データ分析や研究法の知識・技術があげられ,また病院内で研究を指導する人が求められていた.
    結論:本研究により,病院で取り組まれている看護研究における課題が明らかになり,今後,臨床の看護職により実施される看護研究の目的を明確にするとともに,組織外のリソースを活用した研究支援の必要性が示唆された.
  • 小松 浩子
    原稿種別: その他
    2013 年 33 巻 1 号 p. 1_98-
    発行日: 2013/03/20
    公開日: 2013/04/09
    ジャーナル フリー
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