目的:地域高齢者における転倒に関する経験が転倒恐怖感の媒介変数である転倒脅威に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
方法:地域在住高齢者289名を対象に転倒に関する経験および筆者らが作成した転倒脅威項目24項目に関して質問紙調査を実施した.t検定および一元配置分散分析,重回帰分析にて経験が転倒脅威5因子に及ぼす関係性と影響力,本研究の概念モデルの予測力を検討した.
結果:転倒自体よりも外傷経験が「身体的苦痛」因子に影響を及ぼし,つまずき経験は「自己の自立性の喪失」「重篤な末期へのきっかけ」の2因子に有意な影響が認められた.知人・家族からの情報は「身体的苦痛」「他者依存に対する心理的負担」に正の影響を及ぼし,地域の健康教室などの教育的な機会は「重篤な末期へのきっかけ」に負の影響を及ぼしていた.しかし,重回帰分析の結果,R
2はいずれの因子とも0.1以下であり,転倒に関する経験だけでは転倒脅威全体を予測・説明できていなかった.
結論:地域高齢者の転倒に関する経験は転倒脅威に特徴的な影響を及ぼすものではあるが,経験という条件のみでは転倒脅威を説明するには限界があり他の要因も含めた検討が必要であることがわかった.
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