日本看護科学会誌
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37 巻
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原著
  • 細坂 泰子, 茅島 江子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 1-9
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/09
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    目的:乳幼児を養育する母親のしつけと虐待の境界の様相を明らかにする.

    方法:母親26名にしつけと虐待の境界と思われた体験を中心に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的に分析した.

    結果:しつけと虐待の境界に関連する様相として【母親が感情的になると無意識に押し付けてしまう子どもへのパワー】,【子どもの属性で異なるしつけ】が抽出された.その他に【しつけに対する他者評価の優位性】,【理想の母親像や母親としての責任感から蓄積する疲弊】,【周囲の支援や母親自身の力によって変化する心の余裕】が示された.

    結論:しつけと虐待の境界の様相では,感情優位となった時に子どもへのパワーが生じること,境界は子どもの属性で異なることが明らかになった.母親は他者評価を重視し,理想や責任感から疲弊していた.また母親の余裕はサポートや母親自身の力によって左右された.感情のコントロール法や知識の提供,母親への評価的サポート,コミュニティ拡大への支援,有効な社会資源の提供が示唆された.

  • 大串 晃弘, 清水 安子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 10-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/09
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    目的:急性冠症候群(以下ACS)を発症した糖尿病患者は受診までに多くの時間を費やす.そのため,発症からFirst Medical Contact(FMC)に至るまでのプロセスを明らかにする.

    方法:ACSを発症した糖尿病患者6名に半構造化面接を行い,質的統合法(KJ法)を用いて分析を行った.本研究は著者の所属施設と対象施設の倫理委員会の承諾を得て実施した.

    結果:【糖尿病との向き合い方:どうにもならない状況があっても自分なりに努力】【心筋梗塞への関心:糖尿病の教育を受けても,心筋梗塞の距離感がわからず他人事】【前駆症状の解釈:前駆症状を糖尿病や過労など他の原因と結びつける】【受診の決断:心筋梗塞と推察しているかどうかにかかわらずなんとなく「やばい」と察知】など8つのシンボルマークが明らかになった.

    結論:【糖尿病との向き合い方】や【心筋梗塞への関心】がFMCに至るまでの基盤となっていることより,FMCまでのプロセスを含めた個別的な患者教育の必要性が示唆された.

  • 小島 亜未, 加藤 佳子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 18-25
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/29
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    目的:健康づくりと生きがいづくり推進の必要性が言われている.本研究では,生きがいを日本発祥のWell-beingとしてとらえ地域住民の生きがいに影響する健康生成要因として,首尾一貫感覚(Sense of coherence: SOC)およびソーシャル・サポートとの関係を検討した.

    方法:健康診査受診者532名(男性275名44.2 ± 13.7歳,女性257名41.4 ± 12.7歳)を分析対象とした.調査内容は,SOC,ソーシャル・サポート,生きがいであった.

    結果:生きがいの全体および下位尺度を従属変数とし,SOCと重要な他者からのソーシャル・サポートを独立変数として重回帰分析を行った.その結果,SOC(β = 0.285~0.398)と重要な他者からのソーシャル・サポート(β = 0.184~0.331)は生きがいに影響していることが示された.

    結論:SOCと重要な他者からのソーシャル・サポートに着目することが,生きがいを高める支援につながることが示唆された.

  • ―複線径路・等至性モデル(TEM)による分析―
    三尾 亜喜代, 佐藤 美紀, 小松 万喜子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 26-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/29
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    目的:不妊治療を受療した女性が子どもを得ず治療終結を意思決定する過程の多様な径路と,多様な径路を辿る影響要因を明らかにし,その特徴から終結期の看護支援を見出す.

    方法:子どもを得ず不妊治療を終結した女性15名に面接調査を行った.分析手法は,複線径路・等至性モデル(TEM)を用いた.

    結果:終結過程は,治療を周囲に伝えるか否かの選択,治療継続か否かの葛藤,相談するか否かの選択,本当に治療をやめてよいかの葛藤などの分岐を経ながらそれぞれの径路で終結に向かっていた.周囲の期待・年齢の焦り,諦めきれない思いなどが治療継続を選択させ,夫や親の承認,医療者の対応,限界の自覚,産まれる子どものリスクと命の有限性の実感が,終結の意思決定に影響していた.

    結論:治療継続・終結への思いと影響要因を把握し,適切な情報提供と相談の機会を確保し,本人と重要他者が納得し選択できるように支援することが重要である.

  • 寺岡 三左子, 村中 陽子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 35-44
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/07
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    目的:日本の医療機関を受診した在日外国人の異文化体験の様相を明らかにする.

    方法:在日外国人22名に受診行動をとおして実感した異文化体験についてグループインタビューを行った.

    結果:対象者は【受診システムがわかりくい】【自分の病状や主張を正しく伝えるのが難しい】状況の中【医師は十分に対話してくれない】【壁をつくられて向き合ってもらえない】ことを経験し,【患者1人ひとりの文化的背景が注目されない】【拒否する権利を行使できない】と実感していた.また【決まり事の存在や根拠が理解できない】ことから【なじみのない『暗黙の了解』にとまどう】体験をしていた.【看護師の関わりは家族のようで安心できる】と思う一方【病気のことは看護師に頼れない】と認識していた.

    結論:在日外国人は,言葉の壁,外見に基づく先入観の壁,異文化が理解されないことに直面していた.医療者は,外国人に対する文化的側面への注目の欠如を自覚する必要がある.

  • ―療養スタイルの変化の可能性の評価という看護師の見極め―
    川村 崇郎, 太田 喜久子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 45-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/07
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    目的:2型糖尿病を有する高齢者に教育的支援を行う場面で,外来看護師は教育の方向性をどのように決定するのか明らかにする.

    方法:2型糖尿病を有する高齢者へ教育的支援を行った経験をもつ外来看護師6名に半構造的面接を行い,収集したデータを,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

    結果:12の概念で構成される【療養スタイルの変化の可能性の評価】という現象が明らかになった.看護師が【療養スタイルの変化の可能性を評価】することで,《変化に向けた教育》,《現状維持という方向性》,《方針の見直し》という3つの異なる方向性に至っていた.

    結論:【療養スタイルの変化の可能性の評価】は個々に適した教育の方向性を導くと同時に高齢者の安全を確保するために必要である.一概に変化を目指すのではなく,療養の方向性の検討,目標の共有,意欲の確認を行って《現状維持という方向性》への転換を検討する必要がある.

  • 青木 好美, 片山 はるみ
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 55-64
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/07
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    目的:希死念慮を持っている可能性がある自殺未遂患者にケアを提供する救急業務に従事する看護師の現状を明らかにすることを目的とした.

    方法:全国の救命救急センターのうち32施設に勤務する看護師764名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した.

    結果:有効回答者は302名であり,そのうち206名(68.2%)の看護師が希死念慮を確認した経験があった.197名の看護師から得られた自由記述を質的記述的分析したところ,「希死念慮を確認することに支障となること」の設問に対する記述から【自殺未遂患者に対するケアについての知識不足・能力不足】【再自殺・自傷への心配や懸念】【確認しにくい環境】【患者の身体的・精神的問題】という4つのカテゴリが抽出された.

    結論:救急業務に従事する看護師が自殺未遂患者に対してケア遂行を促進するためには,看護師の知識の向上,ケアするための環境調整,看護師のサポートの充実の3点が必要であることが明らかになった.

  • 風間 順子, 飯田 苗恵, 大澤 真奈美, 齋藤 基
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 65-75
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/07
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    目的:高齢者の閉じこもりに対する家族の認識の構造を明らかにすることである.

    方法:A県内の8市町村の介護予防事業対象者の家族10人を対象とし,高齢者の閉じこもりに対する家族の認識に関連する4点を質問項目として半構造化面接を行い,KJ法を用いて質的に分析した.

    結果:高齢者の閉じこもりに対する家族の認識は,要素1【私は“家族の絆を背負っている”】,要素2【気がかりで“少し重い”存在である】,要素3【高齢者が“主体的につくる”生活が理想である】の3つから構成され,それぞれが関係性を持ち,家族の認識の構造を示した.その構造とは,要素1が基盤となり,要素2および要素3が相互作用する関係にあった.

    結論:家族は高齢者の閉じこもりに対して,家族の家族観である家族の絆を基盤とし,適切な対応が分からず困惑する存在としての捉え方および主体的な生活を理想とする捉え方が相互に関係するという認識の構造を示した.

  • 沖中 由美
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 76-85
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/14
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    目的:ひとりで暮らす虚弱高齢者の希望と,老いの肯定的意識,健康状態,社会的役割,ライフスタイル,ソーシャルネットワーク,サポート受領との関連を明らかにする.

    方法:65歳以上の独居高齢者を対象に質問紙調査を実施した.分析対象者は要介護度1から非該当者までの463名であった.希望レベルはHerth Hope Index(HHI)により測定し,HHI得点を従属変数とする重回帰分析を行った.

    結果:対象者の年齢は83.4 ± 6.6歳で,HHI得点は33.1 ± 6.7点であった.HHI得点と有意な関連が認められたのは,老いの肯定的意識(β = 0.244),精神的健康(β = 0.241),社会的役割(β = 0.175),ソーシャルネットワーク(β = 0.027),訪問介護サービス(β = 0.124)であった.

    結論:虚弱な独居高齢者の希望を高めるためには,人生経験を振り返りながら老いを生きることを肯定的に意味づけし,近隣とのかかわりや社会活動への参加を通して他者とのつながりがもち続けられ,精神的健康状態が維持できるように支援することが重要である.

  • 尾﨑 伊都子, 渡井 いずみ, 宮川 沙友里
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 86-95
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/14
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    目的:肥満の若年男性労働者における行動変容の阻害要因とそれに対する個別および集団保健指導の技術を明らかにすることである.

    方法:労働者への保健指導経験が5年以上の保健師8人と管理栄養士2名を対象に,グループインタビュー調査を2回実施した.

    結果:行動変容の阻害要因として,肥満の若年男性労働者が行動変容に対してネガティブな心理状況にあることや,自分の健康問題への認識が欠如していること,柔軟に生活習慣を変容することが困難であることなどがあった.個別保健指導において専門職は継続した支援につなげる,健康を支援する身近な存在としての信頼関係を築く,減量への動機づけを引き出すなどの技術を用いていた.

    結論:若年男性労働者の減量支援では,食事やストレスコーピングなどに関する具体的な改善方策の提供と同様に,対象が人生における減量の目的と行動変容に対する動機づけをもてるよう支援することが重要である.

  • 清水 知子, 瀬戸 奈津子, 清水 安子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 96-104
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/28
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    目的:心臓血管手術経験をもち,疾患を抱えながら生活するマルファン症候群患者の体験を明らかにすることである.

    方法:研究対象者6名に半構成的面接を実施し,質的統合法(KJ法)を用いて分析した.

    結果:【突然死に対する恐怖心を見てみぬふりをしてやり過ごす】【他人とは違うというコンプレックスを仕舞い込む】【抗えない,努力のしようのない病気なので意識しないようにしている】【身近な人の死と手術経験を経て,命を大切に生きる】【結婚・子どもをもうけるかどうかの葛藤と消えない家族への呵責の念】【苦難を乗り越えて,今なら病気でも何とかなると思える】【社会の理解や医療・社会保障の整備を望む】【得た情報で不安になることもあるが,支えになる同病者との交流】のシンボルマーク8つが抽出された.

    結論:内在する思いに配慮しつつ,遺伝看護の実践,セルフケア能力を高める援助,医療環境の整備の必要性が示唆された.

  • 呉 珠響, 斉藤 恵美子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 105-113
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/31
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    目的:本研究は,無年金または低年金の定住コリアン高齢者が経験した健康に関連する生活上の困難さを明らかにすることを目的とした.

    方法:研究参加者は,地域で生活する65歳以上の定住コリアン高齢者とした.Spradley(1979)のエスノグラフィックインタビューの手法を参考に,8名の参加者に1対1の半構造化面接を実施した.

    結果:収集したデータから70のサブカテゴリと8つのカテゴリを抽出した.カテゴリは,お金がないから生活が厳しい,1世は読み書きができない,地域に入っていくことは難しい,自分たちも日本人もどちらも関わろうとしない,人とのつながりをもつ重要性を認識しながらもつながりが持てない現実がある,よりどころがない,アイデンティティがひとつだけではない,社会へのあきらめの気持ちから地域に少しずつ染まるという8つで構成された.

    結論:看護職は,高齢の外国籍住民の多様な文化的背景や習慣の違いによる生活上の困難さを理解して,支援することが重要である.

  • ―妊娠から子育てへの継続したかかわり―
    黒川 恵子, 入江 安子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 114-122
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    目的:保健師における特定妊婦への妊娠期から出産後の子どもの養育支援を含む,一連の支援プロセスを明らかにする.

    方法:母子保健5年以上の経験で,同一特定妊婦の妊娠期と出産後に2回以上かかわり,一連の保健師活動を自ら語ることができる保健師11名を対象に半構成的インタビューを行った.分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.

    結果と結論:特定妊(産)婦への保健師による支援プロセスは『子どもへの愛着を基に生活する能力の見極め』であった.このプロセスは【妊婦とのつながりづくり】【妊(産)婦の甘えられる居場所探し】【妊(産)婦の生活の見極め】【閉ざされないサポートづくり】【安全のためのネットづくり】で構成された.保健師は脆弱性を抱える特定妊(産)婦の主体性を育てるために,身近な人の潜在的力を活用しながら子どもの安全確認を関係機関に外在化し,特定妊(産)婦の内面に働きかけることが重要である.

  • 石川 孝子, 福井 小紀子, 岡本 有子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 123-131
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    目的:訪問看護による終末期がん患者への訪問時期別のアドバンスケアプランニング(Advance Care Planning;以下ACP)の実態を把握し,希望死亡場所での死亡の実現との関連を明らかにする.

    方法:全国より無作為抽出した1,000事業所の訪問看護師に,受け持った終末期がん患者についての郵送式質問紙調査を実施した.調査項目は,患者の死亡場所および希望死亡場所,訪問時期別のACP(予後理解を促す支援および希望死亡場所の確認と調整)の実践,希望死亡場所での死亡実現のための関連要因とし,希望死亡場所での死亡の実現を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った.

    結果:374名を分析対象とし,65.0%は自宅死亡,73.8%の希望が実現した.

    ACPのうち,生活上への支障を含めた予後の説明(以下,生活予後の説明)の実施割合は27.8~31.8%と低く,希望死亡場所での死亡の実現には,訪問全時期を通じて希望死亡場所の確認(調整済オッズ比:95%信頼区間;訪問初期,19.92:9.48–41.87,悪化期,21.10:9.53–46.71,臨死期187.35:51.79–677.64),悪化期の生活予後の説明(2.44:1.05-5.66)が関連した.

    結論:希望死亡場所での死亡の実現には,終末期を通しての繰り返しの希望の確認,症状悪化時に予後予測に基づいて生活予後の説明をすることが重要であることが示唆された.

  • ―中枢神経障害患者のしびれている身体の経験
    坂井 志織
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 132-140
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/09
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    目的:しびれている身体がどのように経験されているのかを,“他人みたい”と表現されることに着目し記述的に開示する.

    方法:Merleau-Pontyの身体論を思想的背景とした現象学的手法を用い,中枢神経障害によるしびれを経験していた4名から得た参加観察記録を分析,記述した.

    結果:他人みたいという違和感を含む経験は,しびれにより生じるからだの手応えの変容,日々の行為可能性が保証されない不安定さ,自ずと動いていた自分のからだではなく,自分のからだを自分で指示するという,指示し動かすからだでの日常生活から成っていた.

    結論:しびれている身体は,“私という身体”としてここに居るという,身体として感じていた確かさが揺らぐ経験であった.生活援助を通して患者の身体経験に関心を寄せ身体について共に考えることで,患者にしかわからないとされていたしびれを,共有可能な次元に近づける可能性があることが示唆された.

  • 杉山 祥子, 朝倉 京子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 141-149
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/14
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    目的:看護師は専門職として,自律性を発揮することが必要である.看護師が自律性を発揮する様相として,看護業務における自律的な臨床判断がある.本研究の目的は,看護師の自律的な臨床判断がどのように磨かれるのか,そのプロセスを明らかにすることである.

    方法:臨床経験8年以上の看護師14名に半構成的面接を行った.研究方法論は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを採用した.

    結果:15個の概念から5個のカテゴリーが生成された.看護師の自律的な臨床判断が磨かれるプロセスは,【知識を深める土台を築く】ことから始まっていた.看護師の自律的な臨床判断は,【育んだ技能を活用する】【自分以外の知識・技能を消化する】【判断の中身を振り返る】【知識と実践が深化する】の4つのカテゴリーを循環し磨かれていた.

    結論:看護師の自律的な臨床判断は,看護師が自ら知識を蓄え,看護実践を省察することによって磨かれていた.

  • ―2010年と2014年の全国調査の結果を比較して―
    戸村 ひかり, 永田 智子, 竹内 文乃, 清水 準一
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 150-160
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/14
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    目的:本研究は2010年と2014年に全国調査を行い,退院支援看護師(DPN)の実践状況を明らかにすることを目的とした.

    方法:全国の100床以上の病院に勤務するDPNに,2010年は819名,2014年は948名に質問紙調査を行った.調査項目はDPNの基本属性,DPNとしての実践能力(Nurses’ Discharge Planning Ability Scale:NDPASの得点)等.

    結果:2010年はDPN461名(回答率56.3%),2014年は479名(50.5%)を分析対象とした.両年とも平均年齢は約47歳で,DPNの平均経験年数は2010年が2.5年,2014年が3.1年であった.また,2014年の方がNDPASの〈A.退院後のケアバランスの見積力〉の得点が高かったが,残り3つの能力の得点については両年で有意差がなかった.

    結論:DPNによる支援の質を保証する為には,系統的・継続的な人材育成の必要性が示唆された.

  • 福山 智子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 161-169
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/14
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    目的:Oremのセルフケア理論を基盤として,若年女性が痛みの程度と緩和の必要性に応じて,意図的に有効な対処法を実施することで,月経痛のコントロールを目指した教育プログラムを開発し評価することである.

    方法:8大学を教育プログラムを実施する介入群としない対照群に非ランダムに割り付け,アウトカムについて教育プログラム前後で量的に測定した.アウトカムは月経痛の対応についての考え方,月経痛の知識,月経痛レベル,月経随伴症状,日常生活行動の支障,社会生活への影響,月経痛コントロールの7項目である.

    結果:介入群はセッションに参加し全質問紙に回答した49名(45.4%)を,対照群は全質問紙に回答した58名(57.4%)を分析した.介入群は対照群と比較して,有意に月経痛に対処しようという考え方に変化し,月経痛の正しい知識が増え,月経痛レベルと月経随伴症状が軽減し,月経痛コントロールができた.

    結論:本プログラムは,若年女性が意図的に月経痛をコントロールするために効果的である可能性が示唆された.

  • 水井 翠, 蔭山 正子, 御子柴 直子, 横山 惠子, 永田 智子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 170-178
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/18
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    目的:緩和ケア病棟(以下,PCU)という場において退院支援を行うことが,看護師にとってどのような意味を持つかを明らかにすることを目的とした.

    方法:エスノグラフィを用いて,都内にある1病院のPCUに勤務する看護師を中心に,参加観察及びインタビューを実施し,Spradleyの段階的研究手順法を参考にして分析した.

    結果:『その人らしさを追求し,患者・家族と共に家を目指すチャレンジ』というテーマが生成された.退院支援は看護師にとって,患者と家族の穏やかな時間を脅かすリスクを伴いながらも,その人らしく生きることを支えるために家を目指すチャレンジだった.看護師は,自宅退院を選択する際や,退院に向けて準備する際も常に退院支援に伴う葛藤を抱えながら,PCUに戻れることを保証して家へ送り出していた

    結論:退院支援というチャレンジに伴う葛藤に対処することにより,PCUにおける退院支援が促進される可能性がある.

  • 鈴木 英子, 髙山 裕子, 丸山 昭子, 吾妻 知美, 冨田 幸江, 山本 貴子, 松尾 まき, 小檜山 敦子, 佐藤 京子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 193-201
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
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    目的:新卒看護師のアサーティブネス測定尺度を開発することを目的とした.

    方法:質的先行研究と文献研究に基づき,新卒看護師のアサーティブネス尺度の原案を作成した.17病院の新卒看護師1,285人を対象に質問紙調査を実施し,妥当性と信頼性を検証した.

    結果:性別によるNNAS原案の総合得点の平均値に差が認められ,女性の有効回答701人を分析対象とした.最尤法,プロマックス回転での因子分析により16項目3因子が抽出された.さらに,確証的因子分析により探索的因子分析で得られた仮説モデルの適合度が確認された.信頼係数は,クロンバックα係数は .81,再テスト法の相関係数 .60,基準関連妥当性の日本版Rathus assertiveness scheduleとの相関係数 –.49であった.

    結論:信頼性,妥当性は概ね良好であった.

  • ―調査のミックス法から得たデータの質的帰納的分析より―
    田中 克恵, 加藤 真由美
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 216-224
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
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    目的:特別養護老人ホーム入所者の終末期に関わる多職種チームケアによって得られる成果とその構造を明らかにし,チームが目指す成果を検討する.

    方法:専門職員を対象とした全国アンケート調査,職種別のフォーカス・グループ・インタビュー(FGI),多職種チームFGIによって得た質的データを質的帰納的に分析しカテゴリの関係を検討した.

    結果:【本人が望んだ生活の維持と死】【本人と家族のよい関係】【家族の参加と不安の軽減】【他の入所者が死を肯定的に受け入れ】【チームケアの質の向上】【職員の成長と満足】【施設全体のケアの質の向上】の7カテゴリが見出された.【本人が望んだ生活の維持と死】【本人と家族のよい関係】【家族の参加と不安の軽減】【他の入所者が死を肯定的に受け入れ】【チームケアの質の向上】はチームケアによる直接的成果であり,残りの2カテゴリは間接的成果であった.

    結論:直接的成果を指標に多職種チームで評価しケアを展開することで,よりよい終末期ケアの実施が期待できると示唆された.

  • ~保護者の意見から~
    野高 朋美, 荒木田 美香子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 225-233
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
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    目的:知的障害者が医療機関の受診を困難と感じるプロセスを保護者の意見から明らかにする.

    方法:知的障害者の保護者3グループの計14名にフォーカスグループインタビューを行い,M-GTAで分析を行った.

    結果:保護者から明らかとなった知的障害者が医療機関の受診を困難と感じるプロセスは〔スムーズな受診への不安とその緩和に対する負担〕に加え〔医療機関での不快体験や失敗体験による受診負担の増加〕があり,〔受診負担解決への無力感〕〔受診への自信喪失〕が生じることで【医療機関を訪れることへの気後れ】となっていた.【保護者・医療機関・社会がそれぞれできる取り組み】は【医療機関を訪れることの気後れ】に影響すると保護者は考えていた.

    結論:知的障害者が医療機関の受診を困難と感じるプロセスは【医療機関を訪れることへの気後れ】であり,保護者・医療機関・社会のそれぞれの努力により軽減できる可能性が示された.

  • ―12脳神経を除く全身に焦点をあてて―
    加藤 広美, 山内 豊明
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 234-243
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
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    目的:脳卒中リハビリテーション看護認定看護師(以下SRN)が活用の必要性を認識している,脳卒中患者に対する12脳神経を除いた全身のフィジカルアセスメント項目を明らかにし,臨床現場において望まれる実施到達度とその項目について検討することである.

    方法:デルファイ法を用いて,全国のSRN126名に郵送で質問紙調査を3回行った.内容的妥当性と信頼性を検討した上で診査98項目を調査し,コンセンサスを示す同意率は51%に設定した.

    結果:参加同意者は126名で,第1回調査105名・第2回調査86名・第3回調査87名から返信があり,実践レベルでは急性期62項目・回復期56項目,アセスメントレベルでは急性期32項目・回復期34項目がコンセンサスを得た.

    結論:実践レベルの実施到達度が必要とされる項目は,脳卒中の発症に伴う機能障害の有無と程度,セルフケア能力をその場で看護師が判断すべき診査項目であることが示唆された.

  • 小児集中治療室入院児と面会するきょうだいへの働きかけ
    西名 諒平, 戈木クレイグヒル 滋子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 244-253
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
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    目的:きょうだいが小児集中治療室(以下PICU)に入院中の子どもに面会する場で,両親と看護師はきょうだいにどのように関わり,それがきょうだいにどのような影響を及ぼすのかを明らかにする.

    方法:A病院PICUで9名のきょうだいが面会する場面の観察と,きょうだいと一緒に面会した4名の母親と1組の両親へのインタビューを実施し,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

    結果:両親と看護師による,《患児との対面の促し》《患児への関心につなげる説明》《患児に触れる促し》【きょうだいを主役にする】という一連の働きかけが適切に行われることで,きょうだいに《患児を身近に感じている様子のきょうだい》という変化が生じていた.

    結論:きょうだいに《患児を身近に感じる》という変化が生じるためには,看護師が両親と協働してきょうだいの患児への関わりを促し,【きょうだいを主役にする】という働きかけを行うことが重要である.

  • ―新卒採用者との比較からの考察―
    伊東 美奈子, 光永 悠彦, 井部 俊子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 254-262
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
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    目的:既卒採用者の離職の状況が不明であることから,全国的な調査を行い,既卒看護師の採用・離職の特徴を明らかにする.

    方法:都道府県毎の病院数や病床数によって層化し,無作為抽出された1,200病院の看護部門長を対象に,病院属性と2013年度の採用数および年度内離職者数を尋ねる質問紙調査を行った.既卒と新卒の結果について比較した.

    結果:246施設の回答を分析した.2013年度に採用を行った施設は240病院であった.既卒者は300床未満,一般病院,療養病床や精神病床を主とする病院で採用され,新卒者は300床以上,特定機能病院や地域医療支援病院,一般病床を主とする病院で採用される傾向があった.また,新卒は非常勤採用が0.8%とほぼ常勤で採用されるのに対し,既卒は24.3%が非常勤採用であった.採用年度内の離職率は新卒7.9%に対し既卒は17.9%と高く,特に100床未満の病院において既卒者が離職しやすい傾向があった.

    結論:既卒採用者は,新卒採用者より早期離職に至りやすく,定着対策,離職対策を早急に検討する必要がある.

  • ―チームで取り組む再発防止―
    福田 紀子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 263-271
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/01
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    目的:看護師長による医療事故当事者,看護チームへの支援の構造とプロセスを明らかにする.

    方法:医療事故当事者,看護チームの支援に関わった経験のある看護師長26名が研究参加者となった.Grounded theory approachに基づくデータ収集とデータ分析を行った.

    結果:【チームで取り組む再発防止】をコアカテゴリーとし,《事故に関する情報の伝達》,《チーム内に生じる反応の把握》,《チーム全体の安心感の保証》《チームで乗り越えるための方向づけ》,《事故の乗り越えの後押し》,《患者の安全の脅かし》という7つのカテゴリーから構成される支援プロセスが明らかになった.

    考察:医療事故は看護チーム全体に心理的影響を与え得るものであり,再発防止の取り組みだけでなく,チーム内に生じる反応を把握しながら,スタッフの心理的な安心感を保証し,チームで困難を乗り越えるための支援の重要性が示唆された.

  • ―よりよい終末期ケアに焦点を当てて―
    田中 克恵, 加藤 真由美
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 279-287
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/01
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    目的:多職種チームケアをアウトカムの側面から評価する,「特別養護老人ホーム入所者の終末期に関わる多職種チームケア成果尺度」を開発する.

    方法:特養の看護職員,介護職員,介護支援専門員,生活相談員を対象に,無記名自記式質問紙調査を郵送法にて実施した.尺度項目に欠損がない243データを分析対象とし,探索的因子分析および検証的因子分析を行った.再テスト法により,尺度の安定性を検討した.

    結果:探索的因子分析の結果,【チームワーク】【本人の「生活と死」への支援】【家族・親しい人への働きかけ】の3因子25項目構造となった.検証的因子分析の結果,モデル適合度指数はGFI = .839,AGFI = .807,CFI = .897,RMSEA = .067であった.再テストにおける信頼性係数は,尺度全体で.80であった.

    結論:開発した尺度は妥当性および信頼性のある尺度であると示唆された.

  • 速水 恵美, 千々岩 友子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 288-297
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/01
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    目的:学齢期の発達障害児をもつ母親の推論の誤りと抑うつおよび養育態度との関連を明らかにした.

    方法:学齢期の発達障害児をもつ母親473名に推論の誤り,抑うつ,養育行動に関する尺度の自記式質問用紙調査を行った.

    結果:有効回答(率)は179部(37.8%)であった.母親の推論の誤りは,「選択的注目」に含まれる項目得点が高く,相談者がいない母親は,いる母親と比べ推論の誤りが強かった.「恣意的推論」「過度の一般化」「完全主義的思考」「選択的注目」の推論の誤りは,養育態度へ直接負の影響があったとともに,抑うつをきたすことで,さらに負の影響があった.つまり4つの推論の誤りが強く,抑うつ傾向である母親ほど,否定的養育態度を示した.

    結論:看護師は,母親の推論の誤りをアセスメントし,学齢期の発達課題を達成し難い子どもを養育する母親の心情を理解し,母親が客観的に子どもの成長や養育態度を捉えられるような認知療法的な支援を行うことが求められる.

  • ―病棟看護師と退院調整看護師の協働との関連性―
    木場 しのぶ, 齋藤 智江
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 298-307
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/01
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    目的:急性期病院病棟看護師のがん患者退院支援の実態を明らかにし,退院調整看護師との協働に焦点を当て関連性を検討すること.

    方法:急性期がん診療連携拠点病院の病棟看護師645名に自記式質問紙で基本属性,退院支援システムや研修体制,がん患者退院支援尺度5件法52項目で退院支援の実態を調査.各項目の基本統計処理,がん患者退院支援尺度の因子分析,各因子と退院調整看護師との協働,就業背景との関連を分析した.

    結果:因子分析後,最終43項目7因子構造の退院支援内容を得た.【退院調整看護師との協働】因子構成の9項目と他6因子との相関分析ですべてに相関がみられた.退院支援への興味・関心,研修会参加,カンファレンス実施は7因子と関連を示した.

    結論:急性期病院病棟看護師のがん患者退院支援の実態が明らかとなり,これらは退院調整看護師との協働と関連を示したため,がん患者の退院支援推進のためには積極的な協働活動が必要である.

  • 梶原 友美, 遠藤 淑美
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 308-318
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/07
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    目的:精神科救急病棟への非自発的入院初期の看護援助に対する認識を看護師,患者の視点から明らかにする.

    方法:看護師,患者に半構造化面接を行い,質的統合法(KJ法)を用いて分析した.面接は,入院初期の参加観察を参考にした.

    結果:対象は,看護師,患者,各5人であった.看護師の認識は9枚のラベルに分類され,【暴力につながり得るリスクの排除】の一方,【意に反した中でなんとか行う患者の意に沿う援助】といった論理構造となった.患者の認識は6枚のラベルに分類され,【入院時の理不尽な対応への怒りとあきらめ】の一方,【治療の受け入れにつながる患者の立場に立った関わり】といった論理構造となった.

    結論:看護師,患者とも,看護援助に対し,強制的な治療遂行の一方,主体性の支持という2つの側面があると認識していた.患者の意に反した治療の遂行は,必要な治療でも,患者に強制力を認識させる.一方,主体性の支持は,治療を安全に行いつつ,患者の強制力の認識を減らすと考えられ,入院初期から意識すべき側面といえよう.

  • ―患者に対する陰性感情経験を視野に入れた検討―
    松浦 利江子, 鈴木 英子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 319-328
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/07
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    目的:精神科看護師の自尊感情の関連要因を患者に対する陰性感情経験も視野に入れて明らかにし,看護師支援策を検討する.

    方法:9私立精神科病院に勤務する看護師737名を対象に質問紙調査を実施した.有効回答数は365名(49.5%)であった.調査内容は,基本的属性,職場環境要因,心理的健康,自尊感情尺度(Rosenberg, 1965;山本ら,1982)とし,自尊感情尺度合計得点を従属変数とした重回帰分析を行った.

    結果:重回帰分析の結果,自由度調整済み決定係数は0.44であった.自尊感情尺度合計得点と有意な関連が認められた要因は,環境制御力,患者に対する陰性感情経験への嫌悪度,既婚,職位が主任,コーピング行動は当事者と話し合う手法をとる,最長勤務領域が外科系病棟,であった.

    結論:患者に対する陰性感情への嫌悪感が過度にならない支援,患者を取り巻く精神科看護師も含めた人的・物的環境を制御する能力としての患者支援技術修得への支援,問題の当事者と話し合う対処方法修得への支援の重要性が示唆された.

  • 木全 真理
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 329-335
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/09
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    目的:本研究は,保険制度外の訪問看護の実践を把握し,その実践をする訪問看護ステーションの特性を明らかにする.

    方法:多職種が協働する場への参加がある5地域の訪問看護ステーション145カ所に,保険制度外の訪問看護の実態,事業所の体制に関する自記式質問紙を郵送した.分析は保険制度外の訪問看護実践の有無の2群に分けて,事業所の体制の属性を比較検討した.

    結果:有効回答は58カ所,そのうち20件に保険制度外の訪問看護の実践があった.その実践は,利用者が看護を受けたい,家族が家庭内の役割を担いたい,という理由が多かった.保険制度外の訪問看護の実践は,職員の実人数,利用者の人数や延べ訪問回数,保険制度外の訪問看護の自費設定をしていた事業所が多かった.両群では多職種協働する場への参加に差はなかった.

    結論:保険制度外の訪問看護は,規模の大きい事業所が利用者や家族からのニーズを汲み取り,実践に組み替えていた.

  • 中村 幸代, 習田 明裕
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 336-343
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/09
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    目的:病気を抱えながら就業した看護職の体験を記述することである.

    方法:過去もしくは現在,病気を抱えながら6か月以上看護職として就業経験を持つ8名を対象に半構造化面接を実施し,質的記述的に分析を行った.

    結果:12サブカテゴリーが得られ,最終的に【周囲の反応を汲み取る】【仕事と体調のバランスを模索する】【病気体験を看護職としての糧にする】【看護職への思いは揺るがない】【時には回り道しながら病気と歩む人生を受け入れていく】という5カテゴリーが抽出された.

    結論:希望や状況に応じて上司や同僚と相談し合いながら体調管理をしつつ働ける方法を模索していく必要性が示された.また,病気を抱えながら働くという状況を多様な働き方の一つとして捉え,気遣い合える職場の雰囲気を構築していくことの必要性が示唆された.

  • ―アクションリサーチを用いて―
    松尾 潤子, 赤澤 千春
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 344-352
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/09
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    目的:ラオス中核病院で働く看護師の臨床判断の特徴から,看護実践の課題を抽出し,課題への取り組みを実践するアクションリサーチ(以後ARと表記)を通して,看護実践がどのように変化したのかについて,終了時の臨床判断の特徴から明らかにし,AR過程で看護実践に変化をもたらした要因について検討する.

    方法:研究協力看護師17名とARグループを作り,3段階のAR過程をとった.AR開始前・終了時に研究協力者に対し,実践したケアについて半構造化面接を行い,データをタナーの臨床判断モデルを利用して質的分析を行い,会議記録を内容分析した.

    結果:臨床判断の特徴から,4つの看護実践課題を抽出した.AR過程によって,パターン化した看護師の臨床判断の特徴は,個の患者へ焦点化され,看護実践の変化をもたらした.

    結論:AR過程を通して,看護実践に変化が認められ,2つの変化要因が認められた.

  • 岩國 亜紀子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 353-363
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/09
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    目的:効果的なつわり軽減方法は妊婦により異なる.そこで,妊婦が自らに合ったつわり軽減方法を見出すセルフケア行動の向上を目指した2週間看護援助プログラムを提供し,準実験研究によりセルフケア能力(ESCA35)やつわり(INVR)への効果を測定した.

    方法:概念枠組みはOremセルフケア不足看護理論を基盤に作成した.介入群には三輪の省察的実践論を基盤としたプログラム(対面式介入3回,電話訪問2回,自己記録)を提供した.

    結果:介入群45名,対照群67名を分析した.ESCA35総得点,下位尺度得点の変化量は介入群の方が有意に大きく,INVR下位尺度「空嘔吐体験,空嘔吐頻度,つわり全体苦痛」得点は介入群のみ有意に低下していた.両群間では2週間後の得点に有意差はなかった.

    結論:本介入にはセルフケア能力を高め,空嘔吐やつわりの苦痛を軽減させる効果の可能性が示唆されたが,今後さらなる検討が必要である.

  • ―経験学習実行度の高かった上位10名の経験学習ノートの分析―
    倉岡 有美子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 364-373
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/09
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    目的:「経験学習を基盤とした看護管理能力開発プログラム」(以下,プログラム)に参加した就任初期の看護師長のうち経験学習実行度の高かった上位10名の経験学習の内容を明らかにすることである.

    方法:プログラムに参加した看護師長63名中,経験学習実行度の高かった上位10名が経験学習ノートに記述した合計41事例を,経験学習の段階ごとに質的帰納的に分析した.

    結果:看護師長の経験学習の内容として,看護師長が取り組んだ「挑戦的な課題」は7カテゴリーを,「内省」した内容は6カテゴリーを,挑戦的な課題から「獲得した知識・スキル」は6カテゴリーを,「異なる状況での試行」は2カテゴリーを生成した.

    結論:看護師長は,本研究の経験学習の内容を自分の看護管理実践に取り入れることで自分自身の経験学習を促進させることができると考える.今後,経験学習を応用した看護師長の育成に本研究の結果を活用できると考える.

  • 猪飼 やす子
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 399-407
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
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    目的:特発性間質性肺炎患者が認知する病気の不確かさの特徴及び関連要因を明らかにする.

    方法:40歳以上で安定期にある特発性間質性肺炎の外来患者を対象に,病気の不確かさを「療養の場を問わず使用できる病気の不確かさ尺度;UUIS」(26項目6下位尺度,得点範囲26~130点,得点が高いほど不確かさの認知が高い.)により調査した.また,特発性肺線維症群とそれ以外の群とを比較し,修正MRC,FVCを独立変数とした重回帰分析を行った.

    結果:51例を登録し,特発性肺線維症は13例であった.年齢71.3 ± 8.7歳,男性40名(78%)で,UUIS総得点の平均値84.7 ± 20.0であった.多変量解析では,修正MRCが【闘病力への自信の揺らぎ】への不確かさに関連していた.

    結論:特発性間質性肺炎患者が認知する不確かさは,呼吸困難感が【闘病力への自信の揺らぎ】の不確かさに関連しており,症状緩和に加えて心身両面への援助が必要である.

  • フロー体験チェックリストを用いた無作為比較化試験による検討
    玉木 朋子, 犬丸 杏里, 横井 弓枝, 冨田 真由, 木戸 倫子, 大野 ゆう子, 辻川 真弓
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 408-416
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/17
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    目的:終末期ケアシミュレーションシナリオを開発し,終末期ケアシミュレーションへの参加による学生のフロー体験の生成と終末期ケアに対する自信を測定することで開発したシナリオを評価することを目的とする.

    方法:参加希望のあった学生を教育群(n = 13)と対照群(n = 12)の2群に無作為に割り付けた.教育群に終末期ケアシミュレーション教育を実施し,両群の教育前後の2時点間のフロー体験の生成と終末期ケアに対する自信の変化を無作為化比較試験により評価した.

    結果:終末期ケアシミュレーション後,フロー体験の総得点は教育群が有意に高値を示した.終末期ケアに対する自信は教育群で有意に上昇した.

    結論:開発した終末期ケアシミュレーションシナリオは情報内容,量的バランス,挑戦水準ともに適切であったと考えられる.終末期ケアシミュレーションは,終末期ケアを効果的に習得する教育手段となり得る.

  • 浅海 くるみ, 村上 好恵
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 417-425
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/17
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    目的:外来化学療法中の転移・再発乳がん患者に生じる複数の症状の主観的体験と対処の実態を明らかにする.

    方法:転移・再発乳がん患者20名に半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した.

    結果:対象者は【幾重にも重なった症状で日常生活が滞る感覚に苛まれる】【自分で症状をコントロールできずにもどかしい】【この先も化学療法を継続できるのか危ぶまれる】という体験のなか,【複数の症状とうまく付き合う術を探る】【各症状の出現パターンから今後の見通しを立てる】【傷んだ身体への更なるダメージを避ける】という対処の実態が導かれた.

    結論:外来看護は,複数の症状による患者の生活への支障を網羅的に捉え,テーラーメイドなケアの提案が必要である.それには転移再発という不確実な状況下で培われた患者の経験値に着目した介入が有効と考える.今後は,患者の生活に支障を与えるトリガーとなるコア症状の特定とアセスメントツールの開発が必要である.

  • 北村 万由美, 江口 瞳
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 426-436
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/17
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    目的:分娩介助実習における助産師の教授活動尺度を開発し,信頼性と妥当性の検討を目的とする.

    方法:半構造化面接法で得られたデータを基に,79項目の分娩介助実習における助産師の教授活動尺度原案を作成した.分娩を扱う全国医療機関501施設に所属する3,988人を対象に調査を行い,項目の信頼性分析,探索的因子分析の後,併存尺度による基準関連妥当性を検討した.

    結果:回収数906人,有効回答数は875人であった.7因子52項目が採択され,【分娩進行に伴う診断ができるよう思考を促す】【安全・安楽な分娩と学生の学びを同時に保証する】【バースレビューの関わり方を伝える】【産婦の気持ちに沿うよう促す】【学生の自立を促す】【児娩出時は手に手を添える】【準備の極意を伝える】と命名された.Cronbach’s α係数は.960であり内的整合性が確認された.また助産師の専門職的自律性尺度,看護職の職業認識尺度との相関から基準関連妥当性が確認された.

  • 下地 智之, 豊里 竹彦, 眞榮城 千夏子, 平安名 由美子, 垣花 シゲ
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 437-445
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/17
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    目的:救急・集中治療領域における終末期治療の代理意思決定支援実践尺度を開発し信頼性および妥当性を検証する.

    方法:尺度原案は文献検討および内容妥当性を検討し作成した.全国の救命救急センター病床/ICUにて,看護師473名に質問紙調査を実施した.項目分析,IT相関,GP分析,探索的因子分析,基準関連妥当性の検証,既知集団法,および再テスト法を行った.外的基準は看護師の倫理的行動尺度を用いた.

    結果:探索的因子分析の結果,4因子18項目が抽出され,第1因子から順に【他職種連携】【代理意思決定の準備】【偏りのない姿勢と説明の確認】【代理意思決定を考える促し】と命名した.尺度全体のクロンバックαは0.89(下位因子0.74~0.84)であった.再テスト法の級内相関係数は0.71で,看護師の倫理的行動尺度との相関係数ρは0.54であった.資格および学習経験のある群が有意に高値であった.

    結論:救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実践尺度の信頼性および妥当性が確認された.

  • 岡田 麻里, 今井 多樹子, 井上 誠, 近藤 美也子, 土路生 明美, 船橋 眞子, 永井 庸央, 松森 直美
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 446-455
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/20
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    本研究の目的は,看護の実践現場で生じている多重課題演習とシャドウイング実習(以下統合実習と略す)による学びを明らかにすることである.対象は,A大学の3年次生61名(女性54名,男性7名)であった.データは,実習終了後のまとめの総合レポートで,分析方法は質的記述的方法である.分析視点は,学生は演習と実習を通して何を学んだかとし,学びに関する記述をコード化し,カテゴリ化を試みた.その結果,【メンバー看護師の自立の要件】,【多重課題に対応する実践的思考】【チームナーシングの基盤となるスタッフ間の関係構築】,【病院組織としてのチーム管理】,【多職種チームによる的確な情報交換】等,7つのカテゴリが抽出された.先行研究では4年次生で修得された学びが,本研究では3年次生で同様の学びを得ることが出来た.さらに,各カテゴリが【患者中心の看護の提供】とつながっていた点が,本研究から得られた成果であると考えられた.

  • 増田 恵美, 島田 真理恵
    原稿種別: 原著
    2017 年 37 巻 p. 464-472
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/23
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    目的:分娩後に骨盤周囲にさらしを巻く群(介入群)と巻かない群(対照群)では,産褥早期の骨盤周囲径測定値,腰背部痛の状況と腰背部痛による日常生活上の支障の程度について違いがあるのかを明らかにすることを目的とした.

    方法:介入群45名と対照群37名に,妊娠末期,産褥1,4日目に骨盤周囲径測定と質問紙調査を行い統計学的に分析した.

    結果:骨盤周囲径測定値は,2群間で差はなく,2群ともに妊娠末期の値より産後の値の方が小さかった.腰背部痛は,2群ともに各時期において6割程度の者が自覚し,痛みの程度に差はなかった.対照群では,産褥1日目に背部痛が発生する者が多かった.2群ともに日常生活上の支障については産褥経過とともに軽減していた.

    結論:産褥早期の骨盤周囲径は2群ともに妊娠末期より減少したが,さらしを巻くことにより,さらに骨盤周囲径を減少させる効果は確認されなかった.産褥早期にさらしを巻くことは背部痛の予防に寄与すると推測された.

総説
  • 山下 真裕子
    原稿種別: 総説
    2017 年 37 巻 p. 209-215
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/21
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    目的:精神障がい者の地域生活におけるセルフケアの構成概念を導く.

    方法:医学中央雑誌Web版,PubMed,CINAHLを用い,「精神障害者」and「セルフケア」or「自己管理orセルフマネジメント」あるいは“mental illness” or “mental disorder” or “psychiatric illness” or “psychiatric disorder” and “self care” or “self-management”をキーワードとしRodgers & Knafl(2000)の概念分析の手法に従い概念を特定した.

    結果:42件を分析した結果,セルフケアは「心身の健康状態の維持・向上,自己概念の変化,社会参加,地域生活の継続によるQOLの向上を導くために,生活の基礎を作り,生活を営み,生活の質を充実させるための行動」と定義された.

    結論:本概念は精神障がい者が望む生き方,暮らしを実現するために必要なセルフケアを見極め,支援を講じる際の指標として活用できる.

  • 文献検討
    永野 佳世, 神里 みどり
    原稿種別: 総説
    2017 年 37 巻 p. 374-382
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/24
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    目的:植込型補助人工心臓(以下,VAD)装着患者の介護者の研究動向を明確にし,在宅における療養支援について検討する.

    方法:国内文献は医学中央雑誌を,国外文献はMEDLINEとCINAHLを使用して検索を行った.文献のキーワードは,「補助人工心臓」,「介護者」,国外文献は,「VAD」,「caregiver」として2016年7月までの全文献を対象とし,25文献について検討した.

    結果:研究のテーマは,「VAD介護者の経験(16件)」「VAD患者のセルフケア・教育に関する介護者の役割(5件)」「VAD患者と介護者の意思決定支援とエンド・オブ・ライフの課題(4件)」の3つに分類でき,すべて国外文献であった.3つのテーマに共通して介護者の負担が示されていたが,具体的な支援の報告はなかった.

    結論:今後わが国のVAD介護者の経験を明らかにし,VAD介護者の負担軽減に向けた,在宅療養支援に関する研究の発展が望まれる.

  • ―ナラティブレビューから―
    日置 智華子, 藤本 薫, 永谷 実穂, 髙橋 眞理
    原稿種別: 総説
    2017 年 37 巻 p. 383-389
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/24
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    目的:更年期女性へのヨーガ介入研究をナラティブレビューし,その実践内容と効果との検討からプログラムの構成要素を見出すことである.

    方法:PRISMA声明の原則手順に準拠し,医学データベース(Ovid MEDLINE, CINAHL plus, PubMed)を用い,[女性]および[更年期][ヨーガ介入]に関する用語を検索用語とし,1997年~2016年3月の英語論文16件を分析対象とした.

    結果:ヨーガプログラムは11種類であり,介入期間は8~24週,各クラス1回の所要時間は45~90分,開催頻度は週1~5回,展開方法は集団実践のみと集団実践と併せて自宅実践の両者であった.介入内容には,座法,調気法,瞑想の3要素が取り入れられ,更年期症状の緩和に有効であった.

    結論:更年期女性におけるヨーガプログラムの構成要素は,座法,調気法,瞑想を基本とし,集団実践には訓練されたインストラクターとピアサポートの存在,自分のための時間確保と利便性の考慮が必要であることが見出された.

  • 文献レビュー
    松澤 明美, 白木 裕子, 津田 茂子
    原稿種別: 総説
    2017 年 37 巻 p. 390-398
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/24
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    目的:看護基礎教育課程における小児看護学シミュレーション教育の研究を概観し,今後の教育上の課題を明らかにする.

    方法:CINAHL,PubMed,医学中央雑誌Web版に2015年12月までに公表されたシミュレーションによる小児看護学教育に関する38論文を対象とした.

    結果:シミュレーションによる小児看護学教育の研究は近年急増し,小児の発達段階に焦点をあてたアセスメント・ケアをマネキン・高性能シミュレーターを用いたシナリオにより,講義・演習,一部は臨地実習を代替して実施していた.評価では知識,学習経験,技術・パフォーマンス,批判的思考,臨床判断力,自信・満足度等が用いられ,特にわが国では介入後のみの評価や学生の主観的評価であった.

    結論:小児の発達段階を踏まえたアセスメント・ケアを強調するシナリオ,一連の講義・演習におけるシミュレーションおよび臨地実習を含む教育デザイン,評価指標と測定方法等の研究デザインの課題が示唆された.

  • 嶋田 由枝恵, 宮脇 美保子
    原稿種別: 総説
    2017 年 37 巻 p. 456-463
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/20
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    目的:日本人の「終末期がん患者のスピリチュアルペイン」の概念を明らかにすることである.

    方法:日本国内の文献を対象に,Rodgers & Knafl(2000)の概念分析方法を用いて分析した.

    結果:7つの属性:【意味への問い】【死に対する不安】【尊厳の喪失】【罪責意識】【現実の自己への悲嘆】【関係性の喪失】【超越的存在への希求】,2つの先行要件,4つの帰結が抽出された.

    結論:本概念は,「終末期がん患者が,生命の危機の恐怖や病気の進行による身体機能の衰えに伴い無力感を抱くことによって,生きること・存在すること・苦悩することの意味,死への不安,尊厳の喪失,罪責意識,現実の自己への悲嘆,関係性の喪失,超越的存在への希求等について問い続けざるを得ない苦痛」と定義された.これは,欧米のそれと多くは共通しており,人間の根源性に関わるものであった.日本人の特徴は,属性の【尊厳の喪失】と強く結びついていた排泄行動と,帰結における【複雑な様相性】を示す表現方法にあることが考えられた.

資料
  • 平井 孝治
    原稿種別: 資料
    2017 年 37 巻 p. 179-184
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/18
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    目的:両親の生活困難度に影響を及ぼす摂食障害者の属性を検討することは,個別性のある家族支援を考えるための重要な判断材料となる.

    方法:摂食障害者の両親を対象に自記式質問紙調査を行った.質問紙の構成は,属性4項目と生活困難度尺度15項目とした.

    結果:有効回答数は45名(57%)であった.摂食障害者の年齢と「患児をおいて自由に外出ができない」「患児の世話で心身ともに疲れる」(P < .05),「自分だけの時間が持てなくなった」(P < .01)との関連を認めた.さらに,発症時期と「他の家族の結婚話などで気苦労が多い」(P < .05)との関連,入院歴と「患児をおいて自由に外出ができない」(P < .05)との関連を認めた.

    結語:摂食障害者が現在19歳以下であること,あるいは発症が20歳以上であること,入院歴があることによって,両親は困難を経験しやすかった.そうした点を考慮し,家族への支援をおこなう必要がある.

  • 小林 みゆき, 磯和 勅子, 平松 万由子
    原稿種別: 資料
    2017 年 37 巻 p. 202-208
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
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    目的:急性期病院に入院した後期高齢患者を対象に,CGAを用いた看護介入を提供し,介入の効果を検討した.

    方法:急性期病院に入院した75歳以上の高齢患者39名を,介入群20名(平均年齢83.9歳),対照群19名(平均年齢85.0歳)に割り付け,ベースライン,入院3週間目のADL・認知機能・意欲の変化,入院期間と退院先について比較した.

    結果:ADL,認知機能,意欲の総合得点に交互作用を認め,介入群は対照群よりもベースラインに比べ有意に上昇した.また,ADLの下位項目(トイレ動作,更衣,排便コントロール,排尿コントロール),認知機能の下位項目(5品の名前),意欲の下位項目(排泄)の得点に交互作用を認め,介入群は対照群よりもベースラインに比べ有意に上昇した.入院期間は,介入群と対照群に有意差を認めなかった.

    結論:CGAを用いた看護介入は,急性期病院に入院している後期高齢患者に対して,ADL,認知機能,意欲の低下予防に効果が示された.

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