本稿は,医療職にとって不可欠な「経験から学ぶ力」に焦点を当て,看護領域のシミュレーション教育においてリフレクティブな学習者・指導者を育むための実践的視点を論じるものである.本稿を通じて,経験学習を中核とした教育実践が,学びの連鎖を生み出す基盤となることを提言する.
第6回日本看護シミュレーションラーニング学会学術集会において,「看護学生から新人看護師へ学びをつなげる」をテーマに交流集会を開催した.本交流集会では,看護基礎教育に携わる教員,新人看護師を支援する臨床現場の指導者,看護部の教育担当者が,それぞれの立場から教育的な取り組みや課題を報告し,看護基礎教育と臨床実践をつなぐための具体的な方策について意見を交わした.交流集会の内容を踏まえたアンケート結果や質疑応答からは,教育と実践の間に存在する乖離,ICTリテラシーや社会人基礎力の不足,教える側の教育支援力に関する課題などが浮き彫りとなった.今後は,看護基礎教育と臨床現場との相互理解や連携を深め,指導者自身の学び直しを促進しつつ,立場を超えた継続的な対話と情報共有の場を創出していくことの重要性が示唆された.
本稿では,劇団員がSP活動をはじめる際に抱いた困難に着目し,SP活動の支援の充実や運営のブラッシュアップを図るための考察を行うこととした.女性劇団員20人を対象とし,模擬患者活動をはじめる際に抱いた困難についてのアンケート調査を行った.その結果,「シナリオの患者と自分との経験を重ね合わせてしまうこと」「知らない病名を演じること」「治療の状況や環境をイメージすること」「病気をもつ患者がどのような気持ちなのか想像すること」「自分の発言が学生の学びに影響すること」「学生の立場を思いやりすぎて演技に影響してしまうこと」の平均点が他の項目より高かった.患者像や受けるケアについて,早期に演習の依頼と説明を行う配慮,劇団員の強みを活かした演技とフィードバックの訓練,リラックスして演技に臨める環境調整,教育的な役割意識のさらなる醸成に向けた支援が重要となる.
本シナリオは「精神症状を訴える統合失調症の患者の対応」をテーマとしたシチュエーションベースド・トレーニングのシナリオである.学習目標は「①幻覚・妄想状態の患者の観察ができる」,「②幻覚・妄想状態の患者のアセスメントができる」,「③精神症状を訴える患者への看護介入ができる」である.シミュレーションは精神症状を訴える患者の精神状態の査定と訴えに対する看護実践を行う内容で,期待する学習者の動きは精神症状による患者の苦痛に寄り添う傾聴と共感の実践とした.精神科病院に勤務する看護基礎教育卒後3年目以内の現任者17名を対象に本シナリオのβテストを実施した.その結果,構造化された場で思考を語ることで自己洞察が深まる,他の学習者のシミュレーションを見ることで自身の看護実践を振り返ることができるなどの有効性が示唆された.また,お互いの看護実践について支持しあう対話が生まれるなど副次的な効果も確認された.
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