におい・かおり環境学会誌
Online ISSN : 1349-7847
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ISSN-L : 1348-2904
36 巻, 1 号
JANUARY
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研究論文
  • 光田 恵, 平井 真貴, 吉野 博, 池田 耕一
    2005 年 36 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/10
    ジャーナル フリー
    本研究では, 一般大気環境で用いられている低濃度の臭気測定法を高齢者施設における低濃度臭気測定法として用い, 臭気感覚評価の視点から検討を行った. 測定を行った現地と採取した試料を持ち帰った実験室で臭気感覚評価を実施し, 評価値を比較, 検討した. その結果, 次のことが明らかとなった.
    本調査対象の高齢者施設の居室における臭気は, 新築特有の「建材臭・塗料臭」と, 施設特有の「し尿臭」の2グループに大別された. 建材臭・塗料臭に関しては, 「実験室」の評価の方が「現地」の評価よりも強度などが若干高くなる傾向がみられたが, 「現地」と「実験室」の評価傾向は類似していた. し尿臭については, 「現地」と「実験室」の臭気質に対する評価傾向は類似しているが, 臭気強度, 不快性について, 「現地」の評価の方が「実験室」の評価より高くなった.
    「現地」と「実験室」の評価値が異なった要因として, 既往の研究で, 建材臭・塗料臭は吸着管による回収率が特に高いが, し尿臭は回収率が若干低いとされていること, し尿臭については, 一時的に強い臭気が発生し, 臭気に変動があること, におい袋法では, 評価に袋固有の臭気が影響する可能性があること, 施設の居室において入室して評価する場合には, 空間の状況が把握できるため, 評価値に視覚的情報が影響する可能性があることが挙げられた.
  • 樋口 隆哉, 浮田 正夫, 関根 雅彦, 今井 剛
    2005 年 36 巻 1 号 p. 12-22
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/10
    ジャーナル フリー
    海辺環境における磯の香りに注目し, アメニティ要素の一つとして評価を試みるとともに, 従来の知見との比較・検討を行った. まず海岸現地調査を行った結果, 潮位が高くなると臭気強度が低下し, 照度が上昇すると特に干潮時において臭気強度がやや大きくなる傾向が認められた. また, 干潮時, 満潮時ともに照度が上昇すると快適性が向上する傾向にあった. 次に海藻静置実験を行った結果, 海水ありと比較して海水なしの条件で臭気強度が大きくなり, 明条件においては快適性が高くなる傾向にあった. 上記の結果には, 従来の報告にあるように, 潮汐による潮間帯の露出面積の変化や光の存在による生物活動の活性化が関与していると考えられた. さらに住民意識調査を行った結果, 多くの人々が磯の香りを認識したうえで, それを快適で必要であると感じていることが明らかになった. また, においの強度および許容度が住民意識の形成に関与していると考えられた.
  • 小林 剛史, 小早川 達, 秋山 幸代, 戸田 英樹, 斉藤 幸子
    2005 年 36 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/10
    ジャーナル フリー
    本研究は, におい刺激に関する情報の提示といった認知的要因がにおい刺激の知覚に及ぼす影響, およびにおい刺激の提示が初めて行われるのか, 2回目以降であるのかといった提示順 (学習効果) の影響について, におい刺激を断続的に提示する方法を用いて検討した. 実験参加者は, まず実験で使用されるにおい刺激 (アネトール) に関する説明 (ポジティブ, ネガティブな内容のいずれか) を受け, その後断続的に提示されるにおい刺激を計60回嗅ぎ, その間リアルタイムに強度評定を行った (1セッション). におい刺激は15秒ごとに200ミリ秒間提示した. その後, 1時間の休憩を挟んで, 初回のセッションでポジティブ教示を受けた参加者は2回目のセッションではネガティブ教示を, 初回のセッションでネガティブ教示を受けた参加者は2回目のセッションでポジティブ教示を与えられ, その直後に同刺激提示条件 (5回の練習も含む) でにおい刺激を嗅いだ. その結果, 分散分析 (教示×区間×提示順) においては, 順応に対するポジティブ, ネガティブ教示 (認知的要因) の効果, 提示セッションが初回か2回目かの提示順の効果 (学習効果) のいずれも見いだされなかった. そこで, ポジティブ, ネガティブ教示の要因を除外して, 初回と2回目のセッションの感覚強度をt検定で比較したところ, 初回のセッションの感覚強度は2回目よりも有意に高いことが見いだされた. 以上のように, 少なくとも断続的に提示されたにおい刺激の感覚強度は, におい刺激に対する教示の影響 (認知的要因) よりも, そのにおい刺激の提示セッションが初回か2回目かといった提示順 (におい刺激に対する慣れ: 学習効果) の影響を受けるという結果を得た.
研究速報
  • 遠藤 孝二, 榎本 長蔵, 岡本 健一, 小坂 芳雄, 村井 政志
    2005 年 36 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/05/10
    ジャーナル フリー
    環境省の低濃度臭気指数測定法マニュアルに示された捕集管を改良し小型化した嗅覚測定用低濃度臭気捕集管は, 三点比較式臭袋法によって目標測定下限の臭気濃度1 (臭気指数0) を測定することが可能で, 測定現場の臭気の強さ及び二重測定の結果では良好な一致が見られるなど臭気濃度及び臭質についての信頼性も高いものであった. この嗅覚測定用低濃度臭気捕集管を排出口測定に応用した場合, 洗浄施設や飲食店の排出口測定に適用できる可能性があり, また保存性能はバッグ試料と比べ7日後の臭気濃度の変化割合も比較的小さく臭質も再現できることが確認された.
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