におい・かおり環境学会誌
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37 巻, 4 号
JULY
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集(学校環境における空気環境・臭気の問題)
  • 学校環境における空気環境・臭気の問題
    岩下 剛
    2006 年 37 巻 4 号 p. 233
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    1990年代にシックハウスが問題となり,2003年にはこれを背景に建築基準法が改正されることになった.建築基準法の改正では,機械換気設備の設置の義務化,ホルムアルデヒド(HCHO)対策,クロルピリホス(C9H11Cl3NO3PS)使用の禁止などが行われた.また,最近ではシックスクールという言葉が各種雑誌,新聞,TVなどで扱われるようになった.通常,シックスクール症候群とは,新築・改築・改修直後の学校において,化学物質の濃度が高くなり,児童・生徒が不具合を訴える状況を指している.このように,我々の身の回り,特に住宅,学校などのような子供が滞在する空間における化学物質の問題が話題となっている.このような空間における空気質の知覚は,多くは臭気によってなされる.実際,1930年代に実施されたヤグローの「必要換気量と体臭」に関する有名な研究は,当時の学校教室における児童由来の体臭が深刻であったことを背景にしている.果たして,現代の学校における空気環境にはどのような問題があるのだろうか.上記のようなホルムアルデヒド,VOC(揮発性有機化合物)に代表される化学物質の問題だけであろうか.やはり,児童の体臭が問題であろうか.
    それとも,温度や湿度などの要因が問題であろうか.今回は「学校環境における空気環境・臭気の問題」を特集としているが,まずは,現在の学校の空気環境を把握するところから始めたいと思う.医薬品や飲料水など学校環境衛生に関する管理は,学校薬剤師が主として当たるという制度がとられてきた背景があり,空気環境についても学校薬剤師による環境調査が行われている.そこで,日本学校薬剤師会会長の杉下氏により,「学校教室の空気・温熱環境と健康問題」と題し,プールなどを含めた広い意味での学校環境と児童の健康について記述いただく.建築基準法とは別に,学校では「学校環境衛生の基準」という基準がある.日本学校薬剤師会常務理事の村松氏には,「学校教室環境の空気質問題」と題し,「学校環境衛生の基準」を中心に,教室の空気質を,建築や設備と関連付けて記述いただく.ところで,読者の方々は「学校と臭気」というキーワードから何を連想されるだろうか.多分,トイレと答えられる方が多いと思われる.「学校トイレ=汚い,臭い」という図式は,現代の学校では必ずしも当てはまらない.学校のトイレ改修が実施されており,学校のトイレ研究会事務局長の嶋氏には,学校トイレ環境の実態や清掃の点を含め,「トイレ改修と学習環境」という題で記述いただくことにした.しかし,児童・生徒が臭気源として挙げるのはトイレだけではない.児童・生徒の体臭や建材臭もあるだろうし,その他の臭気もあるだろう.児童・生徒に対して,不快な臭気を感じる頻度や,臭気発生源,臭気を感じる(学校内の)場所などをアンケート調査があるので,武蔵工業大学の岩下が,この調査結果の概要を「小学校における室内空気質および臭気環境に関する調査」と題して述べることとする.
    トイレ臭などのように「閾値以上の臭気レベルであれば,すなわち不快,除去すべき臭気」というのであれば,臭わないように(閾値以下になるように)対策をとれば良い.しかし,ヤグローの研究でも示されていたように,体臭の許容レベルは,閾値以下にすることではなく,においを感じても良いから受け入れられるレベルにすることである.ヤグローの臭気強度で言えば「軽度に感じるにおい」がこれに相当する.木質系内装材を使用している教室では木のにおいはするであろうが,閾値以上であっても多くの人にとっては特に問題はないであろう.しかし,ある特定の人にとっては自然の木のにおいであっても,ある濃度以上になると許容できない場合がある.学校ではさまざまな臭気発生源があり,その嗜好性も多様である.まずは現場の声を聞いて,その対応を考えていきたい.
  • 杉下 順一郎
    2006 年 37 巻 4 号 p. 234-241
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    学校には学校薬剤師が置かれていて学校の環境衛生検査や薬事衛生(薬物乱用防止教育)を校長の要請によって実施している.
    学校環境衛生は子ども達が安全で快適な学習環境のもとで授業をできるように施設設備の維持管理に努めていて,改善などの必要があるときには事後措置を講じるように校長に助言もしている.また,検査の結果などを環境教育の生きた教材とすることもでき,学校の環境衛生から家庭さらに地域へと広げることができるし,願いでもある.教育とは最大のワクチンと言われていて,地球規模での汚染が言われているおり,すこしでも「気づき」の精神が生れ汚さない態度が身に付ければと期待もしている.著者が行った事例などを紹介して学校薬剤師の職能の一端を記すことにした.
  • 村松 學
    2006 年 37 巻 4 号 p. 242-250
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    室内空気汚染の対策として,「学校環境衛生の基準」が平成16年に全面改訂された.このほか飲料水の衛生,排水,プール,衛生害虫などの項目も,さまざまな社会的な指摘を受けて改訂されたものである.社会的に問題となっているシックハウス症候群については,学校建築も同様であり,児童生徒の健康に影響を及ぼす影響が大きく,教室などに使われている建材や,空気質の低下と換気量の著しい不足が問題とされた.
     特に学校での汚染源,悪臭原因物質としては,新築時や増改築で使われている新建材や塗料からの化学物質の発生があり,その他,教材として使用されるフェルトペン,ワックスや洗剤など学校で日常的に使われている用品などがある.ここでは,ホルムアルデヒドなど揮発性有機化合物(VOC)と二酸化窒素(NO2)濃度の基準の追加など基準の解説と教室の換気の重要性とアスベスト(石綿)について述べる.
  • 高嶋 弘明
    2006 年 37 巻 4 号 p. 251-257
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    学校のトイレに行きたがらない子どもたちのことが,1996年に新聞で報道された.トイレの老朽化と清掃・メンテナンスが行き届かないことが,トイレ環境の劣化に拍車をかけていた.トイレ関連企業による「学校のトイレ研究会」を設立して,学校トイレの実態を調査し,改善に向けた啓蒙活動を行ってきたが,子ども任せの日常清掃だけでは限界があり,定期清掃と専門家による特殊清掃が必要である.トイレ改修にあたって,清掃性やエコロジーに優れた商品の選択と,計画的なメンテナンスが重要である.
  • 岩下 剛
    2006 年 37 巻 4 号 p. 258-270
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    小学校における空気質および臭気を調査するための実測を,夏季・秋季・冬季に鹿児島市の3つの小学校で行った.空気質の測定項目は揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド(HCHO),換気回数,温湿度である.また,教室において嫌な臭気を感じた経験の有無,教室の臭気源などに関するアンケート調査を児童に対して行った.夏季実測では教室の開口部が大きく開け放たれていたため18回/時という高い換気回数が測定された.一方,窓が閉められる冬季は換気回数は1回/時であった.改修が施された教室では夏季にVOC濃度が高かった.この教室の児童は他の児童に比べ,嫌な臭気を訴える割合が高かった.しかし,臭気源として挙げられるものは,汗のにおい(体臭)が改修工事由来と考えられるペンキ臭よりも多かった.
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